ルーツに根ざしたロックンロールを鳴らす平均年齢20歳の4人組ロック・バンド、暴動クラブが、このたび1stアルバム『暴動クラブ』をCD限定でリリースした。今回、ギタリストのマツシマライズがギター・マガジンに初登場! ギターを始めたキッカケから、アナログ機材でのモノラル・レコーディングにこだわったというアルバム制作、使用機材について徹底インタビュー。
取材・文=小林弘昂 機材写真=本人提供
「Rock This Town」には
ギタリストに必要なエッセンスがすべて詰まっている。
ギター・マガジン初登場ということで、まずはマツシマさんのルーツについて聞きたいのですが、どんな音楽を聴いてきたんですか?
中学生の時は、おもに50年代のロカビリーを聴いていましたね。それと姉がPLASTICZOOMSのSHO(ASAKAWA)さん(vo)と結婚して、義理のお兄さんになったんです。彼から80年代のニューウェイブとか、かっこいい音楽を色々と教えてもらったりしました。
その中でも特に魅かれたギタリストはいましたか?
ブライアン・セッツァー、あとはアズテック・カメラのロディ・フレイム(vo,g)です。アズテック・カメラの1stアルバム(『High Land, Hard Rain』/1983年)って、かなりギターがフィーチャーされているじゃないですか? それを聴いた時に“凄くかっこいい!”と思いましたね。でも基本はロカビリー・ギターから入っていきました。
ロカビリーはブライアン・セッツァー以外だと、どういうギタリストを?
ジーン・ヴィンセントのギタリストだったクリフ・ギャラップや、エルヴィス・プレスリーのギタリスト、スコッティ・ムーア。あとは80年代のカントリー・ギタリストのアルバート・リーですね。良い意味で粗いんですけど、タイトな演奏をするギタリストが好きです。
ギターを始めたキッカケは?
もともと姉がギターを弾いていて、家にSquireのストラトが置いてあったんですけど、最初はそれを見てもギターを始めたいとは思わなかったんです。で、当時は姉がライブハウスで働いていたこともあって、よく連れて行ってもらっていたんですね。そこで生のバンドを観て、まずベースを始めたいと思うんです。
最初はベースだったんですか。
はい。小学2年生くらいの時、まずはベースをかじったんです。それで1年くらい弾いていたんですけど、ちょっと飽きちゃって。でも小学6年生くらいの時、暇だったのかそれまで興味のなかったギターを手に取って弾いてみたら、ベースを弾いていたということもあって少し上手くできたんですよ。“これはいけるんじゃないか?”と思って(笑)。その時はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTにハマっていたので、曲のコードを見様見真似で覚えていきました。
そうだったんですね。最初の頃、ほかにはどのような練習をしていたんですか?
教則本を買って基礎練習をするっていうのは、やってこなかったんです。というより、そもそもそういう本の存在すら知らなかったですし。最初は家にあったバンドのライブDVDを再生して、それを観ながら“この音はここを押さえるのかな?”って目でコピーしていったんですよ。どう押さえても違うなっていう時は映像を一時停止して、画面に近づいて見たりして(笑)。
目コピですか(笑)。
Cコードとかもわからなかったんですよ。そういうのってネットで調べれば出てくるじゃないですか? でも、当時は携帯電話も持っていなかったし、インターネットが身近にある環境でもなかったので、ギターの情報はDVDの中のギタリストだけだったんです。
そんな中、ギタリストとしてブレイクスルーした瞬間は?
やっぱりブライアン・セッツァーのギターをコピーしたのが大きかったですね。コピーというか、ずっと悪戦苦闘していただけですけど(笑)。ストレイ・キャッツの「Rock This Town」(1981年)を最初にコピーしたんですけど、あの曲にはギタリストに必要なエッセンスがすべて詰まっていると思うんです。パワー・コードに小指を足すバッキングとか、ジャズっぽい響きのコードとか、ソロのチョーキングとか。で、気づいたら“ちょっと上手くなってる……!?”みたいな感じでした。もうストレイ・キャッツのおかげですね。
その時もDVDを観て目コピや耳コピをしていたんですか?
最初はそうだったんですけど、もう携帯電話を持ち始めた時期だったので、YouTubeでひたすら本人が弾いている映像や、“弾いてみた動画”とかを観ていました。ほかの人の動画を観て、“いや、これはオレのほうが合ってるでしょ!”みたいなのもあったりして(笑)。インターネットを使い始めてからは、だいぶ楽になりましたね。
「Mystery Train」のイントロのリフを
そのまま拝借しているんですよ。
ここからはアルバムの話を聞かせて下さい。今作はTHE NEATBEATSの眞鍋“Mr.PAN”祟さんのスタジオ、GRAND-FROG STUDIOでオール・アナログ機材によるモノラル・レコーディングを行なったそうですね。やはりアナログ録音にはこだわりがあったんですか?
はい。アナログの機材でしか録れない空気感や質感がありますし、昔のロックに影響を受けたバンドをやっているんだったら、やっぱり当時の機材で録ったほうが色が出るんじゃないかなって。
2024年では逆にかなり異質なサウンドになっています。マツシマさん的にはどのような印象でしたか?
立体的な音ですね。もちろん古いレコーディング機材を使ったということもあるんですけど、例えばドラムを録る時はバスドラにマイクを1本、ドラム・セットの上にマイクを1本置いただけですし、ギター・アンプもけっこうオフ・マイクだったんですよ。それが大きいんじゃないかなと思いました。僕の大好きなジミー・ペイジも言っていたんですけど、アンプとマイクの距離を開けることによって奥行きができるというか。そうすることで音が立体的になるし、何か重ね録りをしてもグチャグチャにならない。それができるのは眞鍋さんしかいないんですよ。
曲作りはどのように進んでいったんですか?
決まった方法はないんですけど、だいたいは僕か釘屋(玄/vo)が弾き語りで軽いデモを作ってバンドに持って行って、ダメ出しされつつ、改善して仕上げていくという感じですね。各パートはそれぞれに任せています。あとはセッションで作る曲もありますね。
ギターのフレーズはデモ制作やセッションの段階で出てきたものを採用することが多いんですか?
デモの段階ではとりあえず手癖に任せて弾いていって、そこから“誰々のギター・ソロを拝借しよう”とか、“ここはあえて音をはずしてみようかな”とか、手癖の要素をなくしていく感じです。ただ、「Born to Kill」のソロに関してはデモと変わってないんですよね。デモを作っている時、急にフレーズがパッと降ってきてバシッとハマる瞬間がたまにあって、それが本当にキレイなんですよ。色んなフレーズを試したんですけど、デモのソロが一番かっこよかったので、それを採用しました。
「カリフォルニアガール」のリフとソロはアコースティック・ギターで弾いていますよね。なんとなくジミー・ペイジっぽさを感じたんですけど、そういうイメージはありましたか?
この曲はバッキングだけの弾き語りのデモを釘屋が持ってきて、“ギターは何を弾こうかな?”と考えていたんです。イントロのアコギはバディ・ホリーの「I’m Gonna Love You Too」(1958年)みたいな、50’sのロックやポップスでよく出てくる1〜2弦を使ったリフにしたいと思っていて、ソロに関しては今おっしゃっていたようにジミー・ペイジのようにしたかったんですね。その前に、なんで僕がジミー・ペイジを好きなのかっていうことを話さないといけないですね(笑)!
お願いします(笑)。
彼は50年代のロックで育ってきたギタリストなので、時折ロカビリーやカントリー的なフレーズを弾くんですよ。それが大好きで! そういうフレーズって普遍性があるから誰が弾いても同じようになっちゃうんですけど、ジミー・ペイジが弾くと彼にしか出せない雰囲気になって、それが凄く好きなんです。例えば『The Song Remains The Same』(1976年)っていうライブ・アルバムの「Whole Lotta Love」の途中にはメドレーがあるんですね。
アルバム最後の曲ですね。
そのメドレーの中には、『The Song Remains The Same』やほかのブート盤でもお馴染みの「Boogie Chillen」(1948年)っていうナンバーがあって。そこでジミー・ペイジ独自のロカビリー・ギターが聴けるのでオススメです(笑)。というのがあって、「カリフォルニアガール」は“ジミー・ペイジがアコギを使って50年代チックなソロを弾いたらどうなるかな?“というイメージを持って考えていきました。
インストの「Voodoo Rag」はギャロッピング奏法が印象的でした。これはどうやって作っていったんですか?
もともとはインディーズ時代に出したロカビリー調の曲を再録してアルバムに入れるつもりだったんですけど、“今のほうがもっと良い曲が書ける”ということになって、「Voodoo Rag」はそれをアップデートして新しく作った曲なんです。最初は歌ありだったんですけど、インストにすることになったんですね。僕はこの曲を作っている時に「Mystery Train」(1953年)をよく聴いていて、イントロのリフをそのまま拝借しているんですよ。それからトントン進んでいって、自分の好きなカントリーやロカビリーのギター・フレーズを挟んでいって、3コードにまとめていきました。
今作にはTHE ROOSTERSの名曲「C.M.C.」のカバーが収録されています。これはTHE ROOSTERS好きの城戸(”ROSIE”ヒナコ/b)さんからのリクエストだったんですか?
いや、事務所のプロデューサーからの提案だったんです。たくさんカバー曲の候補を出されて、なかなか決まらなくて。そういう中で「C.M.C.」を提案されたんですけど、最初は“いや、THE ROOSTERSのカバーはやりたいけど「C.M.C.」じゃないでしょう!”みたいな感じだったんですよ(笑)。THE ROOSTERSのカバーをやるには覚悟がいるので、ほかの曲を考えていたんです。でも、メンバー全員曲を覚えているし、1回スタジオで合わせてみたら“意外と良いかもしれない”となって。
そうだったんですか(笑)。花田裕之さんのギターを踏襲した部分はありますか?
もちろんTHE ROOSTERSが大好きなのでリスペクトを込めました。間奏の2回目のソロでオクターブ奏法を入れているんですけど、そこだけは原曲どおりにやろうとずっと決めていて。それ以外は「C.M.C.」の緊迫したテンションがずっと続いている雰囲気を壊さない程度に、好きなように弾いています。
アルバムのレコーディングで使用した機材について教えて下さい。
ギターは8割くらいが僕の持っているギブソンのレス・ポール・カスタムで、あとの2割は眞鍋さんのスタジオにあった60年代のHarmonyのStartone。アンプはおもにSelmerのTreble ‘N’ Bass 50で、それも眞鍋さんのスタジオにあったものですね。「すかんぴん・ブギ」だけは僕のアンプなんです。
マツシマさんのメイン・アンプは?
Sound Cityの120です。音はあとでどうにでもなると思って、とりあえず見た目で買って膨大なローンを抱えました(笑)。
最高です(笑)。ということは、アンプのボリュームを上げて歪ませたんですか?
Selmerに関してはそうですね。僕のアンプは自分でマスター・ボリュームをあと付けしたので、そこで調節しました。基本はアンプ直なんですけど、「C.M.C.」のリフとかは眞鍋さんのスタジオにあったMaestroのFZ-1Sっていうファズを借りて使っています。
少し話が戻りますが、マツシマさんのメイン・ギターであるレス・ポール・カスタムについて詳しく聞かせてもらってもいいですか? 3ピックアップ仕様ですよね?
あれはカスタムショップ製なんですけど、Historic Collectionじゃないんですよ。2012年製で、59年か60年のリイシューだったと思います。もともとビグスビー付きの3ピックアップが買いたかったんですけど、今その仕様のカスタムはMurphy Labからしか出ていなくて、物凄く高いんですね。なので仕方なく2ピックアップのカスタムを買って、買ったその日に自分でビグスビーを付けて、真ん中にピックアップ・カバーを増設しました(笑)。センター・ピックアップはダミーなんです。
え、自分で付けたんですか!?
改造大好きなので(笑)。日本製のテレキャスター・カスタムを中学生の時に買ったんですけど、すぐにALLPARTS製のエイジドされているネックに付け替えて、ペグをKlusonに換えて、ピックアップをAmerican Vintageシリーズのものに交換して、ボディも全部の塗装を剥いで、下地を塗って、ラッカーを吹いて、さらにクリアを吹いたりして……。
マジですか! そんなことをしてるギタリスト、越川和磨さん以来に見ました(笑)。
グレッチの6120も持っていて、フレットを全部交換したり、ピックアップのポールピースの高さを調整したり。Sound Cityのアンプもマスター・ボリュームを増設しただけじゃなく、ゲインをアップする改造もしています。もともとはリペアに出せるお金がなくて、自分でやろうと色々試行錯誤していたら上達したという(笑)。
最後に、暴動クラブはこれからどのようなバンドになっていきたいと考えていますか?
例えばイギリスにはレッド・ツェッペリンやローリング・ストーンズがいるし、アメリカにはストレイ・キャッツやジミヘンがいる。でも、日本は世界的に見てそういうバンドが少ないと感じるんですよ。なのでジャンルは一旦置いておいて、“日本には暴動クラブがいるんだ!”と思ってもらえるような存在になりたいです。
作品データ
『暴動クラブ』
暴動クラブ
BEAT EAST/FORLIFE SONGS
FSCR-1
2024年8月7日リリース
―Track List―
01.とめられない
02.Born to Kill
03.ロケッツ
04.すかんぴん・ブギ
05.カリフォルニアガール
06.ROAD RUNNER
07.まちぼうけ
08.いとしのクロエ
09.Voodoo Rag
10.チェルシーガール
11.C.M.C.
―Guitarist―
マツシマライズ