大山純(ストレイテナー)が語る、新作『The Ordinary Road』で見つけたギター・アレンジの境地 大山純(ストレイテナー)が語る、新作『The Ordinary Road』で見つけたギター・アレンジの境地

大山純(ストレイテナー)が語る、
新作『The Ordinary Road』で見つけたギター・アレンジの境地

2024年10月に12枚目となる新作『The Ordinary Road』を発表したストレイテナー。“テナー節”が炸裂するアグレッシブな楽曲から、美麗なメロディを活かしたピアノ・バラードまで、彼らの魅力が余すところなく詰め込まれたアルバムとなっている。今回、リリース・ツアーのリハーサル前に、ギタリストの大山純へギターのアレンジやサウンド・メイクにフォーカスしたインタビューを行なった。

取材・文=伊藤雅景 人物撮影=ピー山

今は“あまり弾かないほうがカッコ良いんじゃねえか?”
っていうことも感じていて。

今作『The Ordinary Road』のギターについて色々と聞かせて下さい。2024年の8月に先行リリースされた「COME and GO」は、単音のギター・リフが印象的でした。

ギター3発から始まるイントロの飛び出しは、“違和感の勝利だな”と作りながら思いましたね。例えが難しいんですけど、ファレル・ウィリアムスの「Happy」の始まりって5カウントで、2拍裏からメロディが入ってくるんですよ。その違和感や引きつける力みたいな部分は意識しました。

ギター・パートはレコーディング中に考えることも多かったと聞きました。

アドリブの部分もありましたね。でも、いつもよりは少ないかもしれない。「パレイドリア」のアウトロはアドリブでいこうと決めておいたんですが、レコスタでは全然弾けずに、一度諦めて(笑)。改めて作ったフレーズのほうがハマりましたね。

オンライン(宅録)でのアレンジ作業などはありましたか?

いや、全部スタジオで合わせながら作ってます。あっくん(ホリエアツシ/vo,g)から“聴いといて”って弾き語りが送られてきて、そのあとスタジオでみんなで“せーの”で合わせるんです。これはずっと変わってないですね。

合わせるまで全体像がわからないという。

あっくん自身が、デモをあんまり作り込まないんです。彼はバンドに任せてくれる人だし、それを“面白い”と言ってくれるので。

近年のストレイテナーの楽曲には鍵盤やシンセの要素も多いですが、それらのパートとギターの兼ね合いはどのように考えているのでしょうか?

鍵盤やシンセは、レコーディングの最後の最後にあっくんが入れてくれてるんですよ。

全部の楽器が入れ終わってからなんですね。

そうなんですよ。彼が“こういうのやりたかったんだよね”みたいに、知らないうちに入れてくれていて(笑)。でも、なんとなく“こういうのを入れてくるだろうな”っていうのは予想して隙間を作っておくことはありますね。「COME and GO」の間奏みたいに。

そこのセクションの浮遊感や意外性には耳を惹きつけられました。

俺は“あとであっくんが色々入れるのかな?”っていう感覚でギターの隙間を空けてたんですけど、最終的に聴いたらあっくんも特に埋めていなくて。あっくんも“OJが色々やるのかな?”と思ってたみたいでした(笑)。結果的に、そこはライブでベース・ソロ・パートみたいになってますね。

大山純
大山純

「COME and GO」だけではなく、今作は全体的にギターの隙間を多く残したアレンジも特徴です。

確かに音数はだんだん減っていってますね。

ギター・ソロなども減りましたよね。以前は「冬の太陽」(『Behind The Scene』収録/2014年)を筆頭に、「シンデレラソング」、「SCARLET STARLET」(『Resplendent』収録/2013年)など、激しいソロが多めでしたけど。

その頃はめちゃくちゃやってました(笑)。でも、今は“あまり弾かないほうがカッコ良いんじゃねえか?”っていうことも感じていて。そのほうが曲が生きるかなと。

ギター・パートがシンプルになったことで、プレイの難しさなどを感じることなどはありますか?

よくありますね。特に「COME and GO」とか、1音ミスった時のダメージ、デカいぜ(笑)? 超ムズイ。

(笑)。ほかに難しいと感じたポイントはありますか?

さっき話した「パレイドリア」のアウトロと、「雨の明日」のギター・アレンジはけっこう苦労しましたね。

我々はいつもお互いにコードをすり合わせていないんですよ。紙に書いて残したりとかもしていなくて。でも「雨の明日」はそうもいかなかった。“ここはメジャーなんだけど?”、“そこ7th入れないで!”とか、“じゃあコード名は何だよ!?”という状態で2日くらいやっていて(笑)。それで今作で初めてコード譜を書きました。“あっくんコード言って!”って(笑)。

進行が複雑なので、キーだけでは追いきれないというか。

ダイアトニックとまったく関係のないところに動いたりするメロディやコード進行だったので、そこは難しかったですね。

「雨の明日」のギターの音数は絶妙ですよね。少なすぎず、緊張感がありました。

そうですね。そういう“弦の隙間”についてはメンバーともよく話しますよ。弦で埋めちゃうと、曲に奥行きがなくなっちゃうんですよね。MAXが見えちゃうというか。なので、そういった隙間や空気感を意識することは大切です。

大山純
大山純

以前、“歌詞からインスピレーションを受けてギター・フレーズを作ることが増えてきた”と話していましたが、今作でもそういったフレーズはあったんですか?

それは『COLD DISC』(2016年)あたりからやり始めていたんですけど、その時期に“歌詞が変わったから、フレーズの印象と合わなくなっちゃったかもな”みたいな文章をポロッとツイートしたことがあったんですよ。

あっくんがそれを見たのかどうかはわからないんですけど、そのツイート以降、歌詞を書くのが速え速え(笑)。デモの段階で8割くらいはもう完成されていて。気を遣ってくれてるのかな……(笑)。

「Exelion」で
初めてリア・ピックアップを使いました。

レコーディングでの使用機材に関しても聞かせて下さい。ギターは何を使いましたか?

“Mei(飼っていた猫の名前から命名)”1本ですね。アンプはライブで使っているフェンダーのSuper Sonicです。

“Mei”は2020年頃に導入したFreedom Custom Guitar ResearchのJMタイプですね。ハムバッカーが搭載されていることもあり、当時はバンド・サウンドへの影響も大きかったと思います。導入した理由などはあったんですか?

楽曲にファットなギターの音色を求められてきているなっていうのを感じてきていたんです。俺も“シングルコイルじゃ足りないな”と思い始めていて。俺が勝手に使い始めたんですが、それがハマりましたね。

単音の存在感的なところでしょうか?

そうですね。あと、4人で音を出した時のパワー感。今までは俺が占める割合が凄く小さかったんですよ。ファットなシングルコイルの音色を出したつもりでも、ローはほかの楽器に持っていかれて、チリチリした高音しか耳に入ってこないみたいな。あとは、レコーディングでもラフ・ミックス1発目とかだと、“あれ?全然聴こえねえ”ってなることが多くて。

確かにMeiを導入したあとの音源(『Applause』以降/2020年)は、OJさんの音色の重心が低くなりましたね。

今のミドル感は良い感じですね。

ホリエさんはレコーディングでどんなギターを使っていましたか?

まんべんなく使ってた気がするな。ストラトキャスター、テレキャスター、SG……。でも、SGを使うことは減ってきましたね。それはきっと俺とのバランスを考えてくれているんだと思います。

エフェクターはどんなラインナップでしたか?

ライブで使ってるボードをそのまま使っていますね。

ディレイやリバーブなどの空間系エフェクトも、ボード内で完結しているんですか?

完結していますね。以前はプラグインであとがけもやってたんですけど、やっぱりボードで完結したほうが自分のイメージをエンジニアさんに伝えやすいので。

例えば、プラグインだと自分の思ってたディレイではないものになってしまったりもするじゃないですか。なので、足下で90%以上の音作りを完結させて、それでも足りない時はエンジニアさんに足してもらうというやり方ですね。

ストレイテナーのライブでは空間系のサウンドをOne ControlのBJF-S66から出力していることもありますが、レコーディングでも同じ方法で録っているんですか?

レコーディングでは空間系もSuper Sonicから出してます。One Controlはライブでギミック・エフェクトを鳴らすだけの専用機ですね。おもに「吉祥寺」や「シーグラス」の間奏で使ってます。

“クリーンだけどソロっぽく弾きたいフレーズ”で、Super SonicとOne Controlをダブルで鳴らすっていう感じですね。フェンダーは歪んでいて、One Controlからは完全なクリーンが鳴っている。そうすると音が前に出るんですよ。

今作で新しく開拓した音作りのポイントなどはありましたか?

「Exelion」で初めてリア・ピックアップを使いました。音が前に出た気がしますね。偶然リアをクリーンで強めで弾いた時の音が、“あ、カッコ良い”と思って。たぶんピックアップ・セレクターがズレちゃってただけだと思うんですけどね(笑)。その偶然で思いつきました。

過去曲でリアを試したくなった曲はありますか?

「Last Stargazer」とかはきっと合うと思いますね。

「YES, SIR」などはどうでしょう。

合うと思いますけど、俺はライブでハープを吹かなきゃいけないから(笑)。

ストレイテナー。左から日向秀和(b)、ナカヤマシンペイ(d)、ホリエアツシ(g,vo)、大山純(g)。
ストレイテナー。左から日向秀和(b)、ナカヤマシンペイ(d)、ホリエアツシ(g,vo)、大山純(g)。

今作のツアーも始まっていますが、新曲を実際に鳴らした感想を改めて教えて下さい。

良い曲が揃っていますね。それと改めて、“俺のギターって癖があるな~”とは思いました(笑)。アレンジの時にエゴを出してるつもりはないんですけど。

どういう部分で癖を感じましたか?

サビで、単音リフかアルぺジオしか弾いてなかったんですよ(笑)。

たしかに、今作でOJさんがサビでストロークをしている箇所は少ないですね。

最近は本当にストロークが減りましたね。昔はよくやってましたけど。今はアルペジオの裏メロを単音で済ませちゃって、“そこが俺だな”って思いました。

ツアーでは昔の楽曲もセットリストに入ってくると思いますが、自分のギター・アレンジに対して、何か変化を感じたりはしましたか?

感じます。やっぱり昔は何とかしようと凄く頑張ってますね(笑)。

ギター・リフが引っ張っていく曲も多かったですもんね。

そうそう。昔の俺も頑張ってますね。「DONKEY BOOGIE DODO」、「クラムボン・インザエアー」、「OWL」、「MEMORIES」……ギター・リフ、頑張ってるね。

最後に、次回作への展望などを聞かせて下さい。

俺らは毎回、“今回やったものに対しての反発”というか、カウンターみたいな作品を絶対出しているので、たぶん次回作もそうなっていくと思います。今作でやらなかったことをやるんじゃないかな。そうなったら、ギターももっと変わっていくと思います。

LIVE INFORMATION

ストレイテナー
“The Ordinary Road Tour”

  • 11月30日(土) 北海道/札幌 PENNY LANE24
  • 12月1日(日) 北海道/旭川 CASINO DRIVE
  • 12月7日(土) 石川/金沢 EIGHT HALL
  • 12月8日(日) 新潟/LOTS
  • 12月13日(金) 茨城/水戸 LIGHT HOUSE
  • 12月21日(土) 長崎/DRUM Be-7
  • 12月22日(日) 熊本/B.9 V1
  • 1月18日(土) 滋賀/U☆STONE
  • 1月19日(日) 三重/松阪M’AXA
  • 1月25日(土) 愛媛/松山 WStudioRED
  • 1月26日(日) 岡山/YEBISU YA PRO
  • 2月1日(土) 福岡/DRUM LOGOS
  • 2月8日(土) 愛知/名古屋 DIAMOND HALL
  • 2月9日(日) 大阪/なんばHatch
  • 2月15日(土) 東京/豊洲PIT
  • 3月1日(土) 沖縄/桜坂セントラル

チケット

前売:6,000円(税込・D代別)
当日:6,500円(税込・D代別)
※未就学児入場不可

※情報は記事公開時のものです。最新のチケット情報や公演詳細はストレイテナー公式HPをチェック!
https://www.straightener.net/

作品データ

『The Ordinary Road』 ストレイテナー

『The Ordinary Road』
ストレイテナー

ユニバーサル
TYCT-60236
2024年10月30日リリース

―Track List―

  1. COME and GO
  2. Zero Generation
  3. Skeletonize!
  4. Exelion
  5. リヒトミューレ
  6. 雨の明日
  7. インビジブル
  8. 工場夜景
  9. パレイドリア
  10. Uncertain

―Guitarists―

ホリエアツシ、大山純