【会員限定】アイドルズのマーク・ボーウェンが2025年1月の来日公演で使用した、3台のアンプ 【会員限定】アイドルズのマーク・ボーウェンが2025年1月の来日公演で使用した、3台のアンプ

【会員限定】アイドルズのマーク・ボーウェンが2025年1月の来日公演で使用した、3台のアンプ

現代のイギリスを代表するロック・バンドに成長をとげたアイドルズが、2025年1月に約6年半ぶりとなる単独来日ツアーを開催した。1月27日(月)のZepp DiverCity公演にて、マーク・ボーウェンとリー・キアナンの機材撮影に成功。さらにマーク・ボーウェンの対面インタビューも行なうことができたので、膨大なシステムを解説してもらった。本記事では、マークが来日公演で使用した3台のアンプを本人のコメントと共にご紹介。

取材・文=小林弘昂 通訳=トミー・モリー 機材撮影=星野俊

Mark Bowen’s Amplifiers

・Orange / AD200B MKⅢ & Orange / OBC115
・1977 Hiwatt / DR103 & 1974 Hiwatt / SE4123
・Roland / JC-120

Orange / AD200B MKⅢ & Orange / OBC115、1977 Hiwatt / DR103 & 1974 Hiwatt / SE4123、Roland / JC-120

様々なテクスチャーを生み出す3台のアンプ

マークのアンプは3台。すべて日本でレンタルしたものだ。HiwattのDR-103とSE4123、Orangeのベース用アンプであるAD200B MKⅢとOBC115の2台を鳴らしていることが多く、Roland JC-120を鳴らす場合はHiwattをミュート。各アンプのオン/オフの操作は、マークの足下に置かれたThe GigRigのG3(プログラマブル・スイッチャー)で行なっている。

Roland / JC-120

JC-120はCHANNEL-2のLOWにインプット。BRIGHTスイッチはオフで、各ノブはVOLUMEが8時半、TREBLEが10時、MIDDLEとBASSがMAXにセッティングされていた。

JC-120は、「Jungle」のようなキレイなクリーンが必要な際に使用するウェット・サウンド用アンプとのこと。おもに最新アルバム『TANKG』(2024年)の楽曲のみで使用するという。マーク曰く“JC-120はペダルのサウンドを素直に出してくれるし、サウンドもルックスも素晴らしい”

Orange / AD200B MKⅢ

AD200B MKⅢはPASSIVEにインプット。各ノブはMASTERとMIDDLEが11時手前、TREBLEとBASSはMAX、GAINが10時にセッティングされており、かなりドンシャリなサウンドだということがわかる。キャビネットにはHeil SoundのPR40というダイナミック・マイクが立てられていた。

Hiwatt / DR-103

Hiwatt DR-103はNORMALのHIGHにインプット。各ノブはNORMAL VOLが12時手前、BASSが1時過ぎ、TREBLEが2時、MIDDLEが2時過ぎ、PRESENCEが3時過ぎ、MASTER VOLが1時にセッティングされていた。本機はおもにミドルを担当しているという。Orangeと同じく、HiwattにもHeil SoundのPR40が立てられていた。

Others

Rivera / RockCrusher Recording

アンプの裏には、RiveraのRockCrusher Recording(アッテネーター/ロード・ボックス)が2台置かれていた。これはOrange AD200B MKⅢとHiwatt DR-130の音量が大きすぎる際に使用するものだが、今回のジャパン・ツアーでは未使用。韓国公演はライブ会場が小さかったため、本機で出力を落としていたとのこと。

Lehle / Dual SGoS

RockCrusher Recordingの上にはLehleのDual SGoS(ABYスイッチャー)が置かれていた。メインのペダルボードの最終段(BOSS NS-1X)から本機に接続され、ここからそれぞれOrange AD200B MKⅢ、Hiwatt DR-103、JC-120へインプット。本機はMIDIでコントロールされており、3台のアンプのオン/オフはマークの足下のボード内にあるThe GigRigのG3で操作している。

Lehle / P-Split Ⅲ

JC-120の裏にはLehleのP-Split Ⅲ(パッシブ・スプリッター/DI)がセットされており、LehleのDual SGoSから本機を経由してJC-120にインプットされていた。

Interview

1×15キャビネットは
インパクトを生み出してくれるんだよ。

アンプはいつもOrange、Hiwatt、JC-120の3台を愛用しているそうですが、2024年のライブ映像を観るとJC-120の代わりにVOX AC30を使っていましたよね?

最新アルバム(『TANGK』/2024年)のレコーディングでVOXを使ったんだ。その時はナイジェル・ゴッドリッチと一緒に仕事をしたんだけど、彼はVOXの大ファンでね。ジョニー・グリーンウッドもVOXを使っているだろう? ナイジェル・ゴッドリッチはとても美しい60年代のVOXアンプを何台か持っていて、それらはすべて独特のトーンを作り出していた。

VOXは去年のグラストンベリーのステージでも使ったよ。1stアルバム(『Brutalism』/2017年)の楽曲にバッチリなトーンを作り出していた。でも、もっとクリーンなサウンドにする必要があって、JC-120に切り替えることにしたんだ。JC-120は世界で最もクリーンなアンプだからね。ペダルのサウンドを素直に出してくれるし、サウンドもルックスも素晴らしいよ。

アンプは常に3台すべてが出力されているのでしょうか?

ほとんどの場合はOrangeとHiwattから音が出ていて、JC-120をオンにする時にHiwattをミュートするっていう使い方だね。

今日のステージに用意されていたOrangeのアンプ・ヘッドとキャビネットはベース用です。なぜベース用の機材を選んでいるんですか?

Orangeのヘッドは1×15に、Hiwattのヘッドは2×12に接続するのが僕の本来のシステムだ。今日使うOrangeのAD200Bはベース・アンプで、1×15キャビネットに接続すると低音だけじゃなくゴツンとくる感じも与えてくれる。でも、いかにもベースっていうサウンドではないんだ。僕はベースで出せないような音が欲しかったからね。

ベースと干渉しないように気をつけていることは?

アダム(・デヴォンシャー)のベース・サウンドは全体的にギターっぽいところがあって、代わりに僕が少しロー・エンドを占めているのが音作りの大きなポイントだね。それにプラスして、インパクトのあるサウンドにすることも重要だ。1×15キャビネットはそのインパクトを生み出してくれるんだよ。適切なアンプとマイクの組み合わせにすることで、さらに明瞭度が高まるのさ。OrangeのAD200BはTREBLEとBASSをMAXにしているんだけど、MIDDLEを少し抑え気味にしていて、ギタリストとしては珍しい設定だと思う。

Hiwatt DR103の設定は?

Hiwattはミッド・レンジを担っている。突き刺したり、グラインドするようなサウンドなんだ。実はHiwattに4×12キャビネットを組み合わせるのは僕の好みじゃないんだよね。4×12って位相に問題があったり、ミドルの欲しいところを削り取ってしまうところがある。2×12だとそういった問題が少なくなるし、ステージ上のボリュームを下げることもできるんだ。

2025年1月27日(月)Zepp DiverCity

【Setlist】
01. IDEA 01
02. Colossus
03. Gift House
04. Mr. Motivator
05. Mother
06. Car Crash
07. I’m Scum
08. Roy
09. 1049 Gotho
10. Jungle
11. The Wheel
12. When The Lights Come On
13. Divided and Conquer
14. Gratitude
15. Benzocaine
16. POP POP POP
17. Television
18. Crawl!
19. The Beachland Ballroom
20. Never Fight A Man With A Perm
21. Dancer
22. Danny Nedelko
23. All I Want For Christmas Is You
24. Rottweiler