2025年2月9日(日)、Reiの活動10周年を記念し、フェンダーから自身初となるシグネチャー・モデル、Rei Stratocaster R246が発売された。もともと彼女が愛用していた、リードⅡのネックとストラトキャスターのボディを組み合わせたギターをもとに製作が進められたが、24フレット・ネックを始め、随所に“らしさ”が感じられるこだわりのスペックが採用されている。本モデルへ込めた想いをRei本人にインタビュー。
取材・文=小林弘昂 ギター撮影=小原啓樹
Fender
Rei Stratocaster R246
愛用ストラトをもとにした自身初のシグネチャー・モデル
2023年にReiがフェンダーとパートナーシップを結んだことにより製作がスタートした、自身初のシグネチャー・モデル。もともと愛用していたリードⅡのネックとイングヴェイ・マルムスティーン・モデルのストラトキャスター・ボディを組み合わせたギターをベースにしているが、ネックを24フレット仕様に変更し、さらに幅広いプレイを可能にした。
24フレット・ネックを採用するにあたり、各ピックアップの位置がブリッジ寄りに変更されたり、ボディが通常のストラトキャスターよりも小さく設計されたりと、結果的にオリジナリティ溢れる仕様になったとのこと。
本器のモデル名は、Reiが24フレットの6弦ギターを製作したため、Rei Stratocaster R246と命名。さらに東京で誕生したギターということで、国道246号(東京都千代田区から静岡県沼津市を結ぶ延長約125kmの一般道路)の意味も含まれたダブル・ミーニングとなっている。
色んなギターを弾いてきた自分だからこそ
作れるものにしたいなと思っていました。

Reiさんの活動10周年を記念し、2月9日(日)にRei Stratocaster R246が発売されました。反響はいかがですか?
たくさんポジティブな反響をいただいていて、予約がいっぱいで夏頃まで納品をお待ちいただいている状況です。とっても嬉しいです。
製作はいつから始まったんですか?
2023年からですね。フェンダーとパートナーシップ契約を結ばせていただいて、“ぜひシグネチャー・モデルを!”ということでお話をいただきました。フェンダーのギターはジャズマスター、デュオ・ソニックⅡ、テレキャスターなど色々と使ってきたんですけど、自分が一番長く愛用しているリードⅡのネックとストラトキャスターのボディをかけ合わせたギターがあって、それをベースにしたストラトを作ろうと思いました。
もとになったストラトと、このRei Stratocaster R246は、ネックの握り心地なども同じように製作したのでしょうか?
そうです。もとになったストラトのスペックをベースにしていまして。代表的なのは、おっしゃったようにネックの幅ですね。スタンダードのものから2mmくらい幅が狭いのかな。リードⅡのネックがCシェイプなので、これもCシェイプにして同じような細いネックにしました。

細いネックのメリットとは?
女性の方やキッズ、手が小さい方でも弾きやすいというのは圧倒的な利点だと思います。
Reiさんは様々なギターを所有していますが、ネック幅によってサウンドの変化を感じることはありましたか?
全然違うと思います。私はクラシック・ギター出身なんですけど、クラシック・ギターってネックの幅があるので、それによって音も太くなるんですよ。特にアコースティックやクラシック・ギターは、ネックによって音質の違いが出ると思います。
ネックが太い分、音が豊かになるという魅力はあるのですが、今回のシグネチャー・モデルはエレクトリック・ギターという特徴を活かして、エレクトロニクスでそこを補填できればいいなと思いました。
なるほど。そしてフェンダー・ギターでは珍しい24フレットを採用しています。その理由は?
様々なギターを弾いている中、折々で“あと2フレットあればな……!”という気持ちになっていたので、利便性があって弾きやすいギターを作りたかったんです。一般のプレイヤーの方々も曲をコピーしている時に、“もうちょっとフレットがあればこのフレーズを弾けたのに!”と、私と同じ気持ちになることが多いのではないでしょうか。なので、色んなギターを弾いてきた自分だからこそ作れるものにしたいなと思いました。それと偶然だったんですけど、今回のシグネチャー・モデルは開発を進める中で結果的にボディも小さくなったんです。

ボディは結果的に小さくなったんですね。
はい。24フレットを採用すると、ボディのカッタウェイが深くなりすぎてしまう可能性があったんです。他社の楽器でも“24フレット・ギターのルックス”というものがあると思うんですよ。でも私はフェンダーのDNAを守るということに重点を置いているので、ストラトのシルエットを保ちながら24フレットを実現するためにはどうすればいいのかを考えて。
少し前に、ボディとヘッドを94%に縮小しているMade in Japan Junior Collectionというシリーズがリリースされていて、それを採用したらレギュラー・スケールの24フレットとストラトキャスターのルックスを両立できるんじゃないかというアイディアがありました。それからプロトタイプを作ってもらい、ヘッド落ちがしないかなど、いくつかの実験を行なったうえで今回の仕様になりました。
ビギナーの方でも
扱いやすい音色にしたかった。
Reiさんの楽曲の中で24フレットを使う曲はありますか?
あります! 今回、シグネチャー・モデルのために書き下ろした「GUITARHOLIC」という曲は24フレットないと弾けないソロが入っています。“これでしか弾けない曲を作ろう”と思って作りました。
そうだったんですね! 楽曲のお話はのちほど詳しく聞かせていただきます。ギターのスペックに話を戻しますと、2点支持ブリッジやGraph Tech製のテフロン・サドルなど、実用的なパーツを積極的に採用していますよね。
このモデルのもとになったギターは、ネックがリードⅡで、ボディが80年代イングヴェイ・マルムスティーン・モデルのストラトなんです。それには2点支持ブリッジとブロック・サドルが載っています。そのスペックを引き継いでいるんですけど、結果的にブロック・サドルはGraph Techに換えています。2点支持ブリッジはチューニングの安定性がありますし、Graph Techのサドルも長年弾いてきた中で効果があるなと思って採用しました。

2点支持ブリッジとテフロン・サドルによるサウンドの傾向はあったりしますか?
どうなんでしょう? 音質面でサドルを弾き比べたことがないんですけど、トラスロッドやBベンダーの有無など、パーツの材質によって音が変わることもあるので、聴き比べてみたいですね。
このシグネチャー・モデルのサウンドの方向性は、どのようなものをイメージしていましたか?
ストラトキャスターってバーサタイルで、音色に幅があって、汎用性の高いギターだと思います。カメレオンみたいな。私の作品には色んなジャンルの音楽性があるので、利便性に優れています。なので、色んなスタイルを弾くプレイヤーの方に対応できるのではないかと。
もとになったストラトはイングヴェイ・モデルなので、もともとDiMarzioのピックアップが載っていたんですけど、私はより幅広い音色が出せるようにVintage Noiselessに交換しています。そういう経緯があったので、このシグネチャー・モデルにもVintage Noiselessを採用することにしました。

Vintage Noiselessはそういう理由で採用したんですね。
はい。ほかに70年代のストラトも持っているんですけど、そっちは立ち上がりが良くて鋭利な音がしますね。個性的なんですが、アーティキュレーションが甘いと粗が凄く目立つ。ストラトによってもそれぞれ音の特性があって興味深いです。なので、このシグネチャー・モデルはストラトの中でも良い音がしつつ、まだまだこれからスキル・アップしていこうと意気込んでいるビギナーの方でも扱いやすい音色にしたいと思いました。
プレイヤーによってはモダンにもビンテージにもいけるという。
そうですね。新旧混ざったスペックかなと思います。ネック・ラジアスはビンテージ仕様ですけど24フレットで先進的ですし。私がフェンダーというブランドが好きな理由の1つは、DNAを保持しつつも常に革新的なデザインや楽器を作ることに挑戦しているからです。その温故知新の精神を自分の楽器にも込められればなと思っていました。
ギターの楽しさに目覚める人が
1人でも増えたらいいなと思ってデザインしました。
2023年から製作がスタートしたとのことでしたが、最初のプロトタイプができあがったのはいつ頃だったんですか?
去年の夏頃です。結果的に楽器としての不釣合いな部分がなくて安心しました。あとは自分が想像していた以上に実用性があって、これを1本持っていたらほかのギターが使いづらいくらい(笑)。めちゃくちゃ使いやすいギターでした。
Reiさんが普段使っているアンプやエフェクターと組み合わせた時の印象は?
“太さも軽快さもある”と言うと矛盾しているかもしれないんですけど、実際にそうで。軽やかさがある=ペラペラで薄い音を想像してしまうかもしれないんですが、ちゃんと音の芯や、大きい音で鳴らした時に体に響いてくる太さもありつつ、重たさはないというか。バランスが取れていて凄く使いやすいです。
ピックアップもそれぞれ個性があるので、メロウな曲を弾く時はネック・ポジションで軽くスプリング・リバーブをかけていて、スピード感のある曲ではブリッジ・ポジションでクランチをかけてアンプのミドルを上げています。あとは実際に持っていただきたいんですけど、楽器自体が本当に軽くて体への負担も少ないですし、長いセットリストのライブでも全然疲れないですね。
自分のセットとの相性もバッチリで、ライブでも大きなアドバンテージになっていると。
そうですね。この記事を読んでストラトを魅力的に思っていただけたら嬉しいんですけど、何より店頭で手に取って弾いていただきたくて。音や弾きやすさを実際に体感してみてほしいです。
先ほどピックアップ・ポジションにも触れていただきましたが、Rei Stratocaster R246を弾く時にReiさんがよく使うポジションは?
わりと均等に全部使っていて、最近はネック・ピックアップを気に入っています。ほかのギターでネック・ピックアップを鳴らすとモコモコしすぎていて、“甘さが欲しいんだけど抜けも欲しいなぁ”とワガママに思う時があるんですけど、そこを上手く両立したトーンになったので、ネック・ピックアップをけっこう使います。
Rei Stratocaster R246をライブで導入してから何か新たな発見はありましたか?
ハイ・フレットを以前よりも使うようになったので、親指をネック裏に添えずに弾くっていう練習を強化したり(笑)。単純に、“高い音ってかっこいいぜ!”という気持ちになっています。あとはフレットがナロー・トールなんですけど、高さがちょうどいいのか1弦の24フレットをロング・トーンで伸ばしても音が詰まったりしないので、ついつい弾いちゃいます。

フレットの高さも色々と検証したんですね。
例えばブロードキャスターにはトラスロッドが入っていないから音が丸いとか、Bベンダーが付いていると音がギラギラするのと同じように、私はフレットがジャンボだと音が硬くなるような印象を持っていて。なので、プレイアビリティと音のバランスは取らないといけないなとは思っていました。
スプリングの張り方に関して、何かこだわりは?
私はハの字に3本張っていて、アームの動きは柔らかめが好きなのでそうしています。今はブリッジのフローティングを低めにしていますけど、アーム・アップもするので、曲やムードによってはもう少し上げてもいいのかなと思います。

Rei Stratocaster R246の一番気に入っているところは?
ボディの色とヘッド裏の“R246”ロゴです。ロゴは私がデザインしていて、70年代ストラトキャスターのデカールをオマージュしたフォントです。色は当時と同じようにゴールドとブラックを使っていて、Rと4には24フレットにある2つのドット・ポジション・マークを入れているんです。お気に入りのポイントですね。
そもそもReiが作った24フレットの6弦ギターというところから“R246”という名前がついたんです。それと東京で生まれたギターということで国道246号の246を入れたので、ダブル・ミーニングなところもあるんですが、最終的に24と6を区別するためにロゴの色を変えました。

Rei Stratocaster R246に加え、Reiさんのシグネチャー・ピックとストラップも発売されています。
ギターは弾きやすさを一番重視して作ったのですが、やっぱり女の子としてファッショナブルな楽器を持ちたいという気持ちはずっとありますし、ギターの楽しさに目覚める人が1人でも増えたらいいなと思ってデザインしました。
ボディのカラーは自分のデビュー・アルバム『BLU』(2015年)のジャケットとなるべく近いものを作ってもらったんですけど、ストラップとピックも同じ色をベースにしています。ストラップは伝統的なフェンダーのツイードを自分流にアレンジして、ボディとマッチングしたブルー・ツイードにしました。
なかなかストラップまでデザインする人も少ないですよね。
そうかもしれませんね。何年か前にハマ・オカモト君が横ロゴのモノグラム・ストラップをオリジナル・カラーで復刻して、ナイス・アイディアだなと感嘆しました。私も自分のアクセサリーをフェンダーの名のもとにデザインする時は、古参ファンがニヤつくオマージュと、モダンなオリジナリティのハイブリッドが理想的だなと妄想していましたね。
そんな思考で生まれたデザインではありますが、プレイヤーに嬉しいディテールにもこだわっているんです。例えばストラップにはピック・ホルダーとケーブルを通すループが付いていて、実用的でかっこいいんです。お金を貯めてパテントを取ろうかと思っています(笑)。
ユーザー・フレンドリーでありながらユニークなので、
本当に色んなプレイヤーにオススメしたい。
改めて「GUITARHOLIC」について聞かせて下さい。これはRei Stratocaster R246のサウンドにインスパイアされてできた曲なんですか?
まずは、この24フレット仕様のギターでしか弾けない曲を作ろうというところから始まりました。“私とギター”というテーマの曲です。歌詞に関して言うと、ミュージシャンといえば華やかなステージでギターを弾いているシチュエーションをついつい想像されると思います。もちろんそういう自分とギターの関係性もあるんですが、部屋の中1人で気持ちを吐露している時に話を聞いてくれたり、本音を音にしてくれたり、パーソナルな親友のような側面もギターは持っている。なので、その両面を表現できるようなメッセージ性のある曲にしたいなと思っていました。
YouTubeのFender Music Japanのチャンネルで公開された「GUITARHOLIC」のプロモーション・ビデオでは、Rei Stratocaster R246にカポを2つ付けていたり、Reiさんがネック・プレートのネックレスをしていたりと、ところどころに遊び心満載のギミックがありました。
今回、ビジュアル撮影のディレクションをして下さったのは藤井風さんやSuchmosなども手がけている山田健人さんという方で、山田さんと話し合って撮影しました。よく見てもらうと地面に弦が6本張ってあったり、ピックアップが6つの照明として舞台装置で配置されていたりするんですよ。シンプルで強さもあるけれど、ギター愛もディテールで感じられるような青いビデオにしようということで、こういう内容になっています。
ビデオには吉田一郎さん(b)とBOBOさん(d)が登場していますが、レコーディングも2人が参加しているんですか?
はい。それぞれの楽器の良さを感じられるアレンジや、とにかく演奏する姿がかっこいいということにこだわりましたね。シグネチャー・リフがくり返される中、メロディがバースからコーラスに移り変わっていくというスタンダードなロック・テンプレートの曲ではありますけど、それをオリジナルのものとして消化したいなと思っていました。
レコーディングの際、2人からRei Stratocaster R246について何かコメントはありましたか?
思いのほか“音が良いね!”と言われることが多かったです。凄く嬉しかったですね。やっぱりミュージシャンやエンジニアの方に音が良いと言われるのは、お墨付きをいただいたような気持ちになります。
最後に、このRei Stratocaster R246はどんな人に手に取ってもらいたいですか?
長い間ギターを弾いてきたプレイヤーの方には、このギターの素晴らしさをより深く理解してもらえる自信があるんですが、誰かにオススメするならば、これからギターを始める方ですね。弾きたい楽曲やフレーズを妨げないフレット数や、長い間練習していても体が疲れない軽量な仕様や、学生の方や体が成長している方でも握りやすいネック……ユーザー・フレンドリーでありながらユニークなギターなので、本当に色んなプレイヤーにオススメしたいんですけど、特にこれからギターを始める方に手に取っていただきたいです。
それとシグネチャー・モデルではあるんですが、24フレットのストラトが将来的にフェンダーのスタンダード・ラインナップの1つになってくれればいいな。

Fender
Rei Stratocaster R246
【スペック】
ボディ
●Body Material: Basswood
●Body Finish: Satin Urethane
●Body Shape: Stratocaster®
ネック
●Neck Material: Maple
●Neck Finish: Satin Urethane Finish on Back, Gloss Urethane Finish on Front
●Neck Shape: Rei Original “C”
●Scale Length: 25.5″(64.77 cm)
●Fingerboard Material: Rosewood
●Fingerboard Radius: 7.25″ (184.1 mm)
●Number of Frets: 24
●Fret Size: Narrow Tall
●Nut Material: Bone
●Nut Width: 1.578″ (40 mm)
●Position Inlays: Pearl Dot
エレクトロニクス
●Bridge Pickup: Vintage Noiseless™ Single-Coil Strat®
●Middle Pickup: Vintage Noiseless™ Single-Coil Strat®
●Neck Pickup: Vintage Noiseless™ Single-Coil Strat®
●Controls: Master Volume, Tone 1. (Neck Pickup), Tone 2. (Middle Pickup)
●Switching: 5-Position Blade: Position 1. Bridge Pickup, Position 2. Bridge and Middle Pickup, Position 3. Middle Pickup, Position 4. Middle and Neck Pickup, Position 5. Neck Pickup
●Configuration: SSS
ハードウェア
●Bridge: 2-Point Synchronized Tremolo with Graph Tech® Saddles
●Hardware Finish: Nickel/Chrome
●Tuning Machines: Pure Vintage Single Line “Fender Deluxe”
●Pickguard: 3-Ply Parchment
●Control Knobs: Aged White
●Switch Tip: Aged White
●Neck Plate: 4-Bolt
その他
●Strings: Nickel Plated Steel (.009-.042 Gauges)
アクセサリー
●Case/Gig Bag: Included: Deluxe Gig Bag
【市場想定売価】
181,500円(税込)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp