モグワイの来日公演でスチュアート・ブレイスウェイトが使用した4本のギターを本人が解説! モグワイの来日公演でスチュアート・ブレイスウェイトが使用した4本のギターを本人が解説!

モグワイの来日公演でスチュアート・ブレイスウェイトが使用した4本のギターを本人が解説!

2025年3月、モグワイが約3年ぶりの来日公演を行なった。3月12日(水)Zepp Shinjuku公演の本番前、スチュアート・ブレイスウェイト(g)に最新使用機材についてインタビュー。本記事では、スチュアートが本公演で使用した4本のギターを本人の解説付きでご紹介する。ちなみに機材撮影の際、スタッフから“ギターは絶対にラックから動かさないでくれ”と言われてしまったため、ギターの全景写真は後日ギター・テックのギャヴィン・マクスウェル(アイドルズのテックも兼任)から送ってもらったものを掲載する。

取材・文=小林弘昂 通訳=トミー・モーリー 機材撮影=小原啓樹、Gavin Maxwell

Stuart Braithwaite’s Guitars

1989〜1990 Fender
American Standard Telecaster

1989〜1990 Fender / American Standard Telecaster
Photo:Gavin Maxwell

最初の1本と同じシリーズの2代目メイン・ギター

スチュアートのメイン・ギターは、“E9”から始まる6桁の数字のシリアル(E907266)から判断するに、1989〜90年製と思われるAmerican Standardシリーズのテレキャスター。ボディにはガンメタル・ブルーというレアなカラーが採用されている。ブリッジは両サイドの縁がなく、サドルも6連というモダンな仕様が特徴。

スチュアートはギターを始めた頃、本器とまったく同じシリーズ/スペックのテレキャスターを購入し、メイン・ギターとして90年代から愛用していた。しかし、ツアーの際にお気に入りの1本を紛失してしまう可能性を考え、2008年頃に導入したのが本器である。

センターにはSeymour DuncanのLittle ’59というシングル・サイズのハムバッカーが増設されており、スチュアートはライブではセンター・ピックアップしか使用しない。また、ボリューム・ノブとトーン・ノブの間にキル・スイッチも増設されている。

以前はピックガードにスコットランド国旗のステッカーが貼られていたが、数年前から剥がされた状態に(もしくはピックガードごと交換された可能性も)。

1989〜1990 Fender / American Standard Telecaster

使用楽曲(2025年3月12日@Zepp Shinjuku)

  • 「Hi Chaos」
  • 「What Kind Of Mix Is This?」
  • 「How To Be A Werewolf」
  • 「Ritchie Sacramento」
  • 「Pale Vegan Hip Pain」
  • 「Fanzine Made Of Flesh」
  • 「Hunted By A Freak」
  • 「Mogwai Fear Satan」
  • 「My Father, My King」

1970’s Gibson
Les Paul Deluxe

1970's Gibson / Les Paul Deluxe
Photo:Gavin Maxwell

ハードな歪みを生むレス・ポール・デラックス

20年以上前に購入したという、70年代のレス・ポール・デラックス。スチュアートは楽器店から80年代のものだと言われたそうだが、購入後に70年代のものだと気がついたとのこと。ピックアップはギブソン・ロゴが刻印されたミニ・ハムバッカーが搭載されている。

ペグがKlusonからGroverに交換されており、トラスロッド・カバーも交換されている。

この日は「Ithica 27 Φ 9」、「Auto Rock」、「We’re No Here」の3曲で使用。「Ithica 27 Φ 9」のみC♯-A-E-G♯-G♯-G♯という変則チューニングにセッティングされた。

ピックアップ・ポジションはフロントを選択。

1970's Gibson / Les Paul Deluxe

使用楽曲(2025年3月12日@Zepp Shinjuku)

  • 「Ithica 27 Φ 9」(C♯-A-E-G♯-G♯-G♯ Tuning)
  • 「Auto Rock」
  • 「We’re No Here」

Fairlane Guitars
Cardinal

Fairlane Guitars / Cardinal
Photo:Gavin Maxwell

ロンドンのハンドメイド・ブランドのオリジナル・モデル

1曲目の「God Gets You Back」で使用された、Fairlane GuitarsのCardinal。本器はスチュアートがブランドから借りているものだという。ピックアップはTV Jonesと思われるフィルタートロンが搭載されている。ブリッジとトレモロ・ユニットはMastery製を採用。

ピックアップはフロントを選択していた。

Fairlane Guitarsはロンドンに工房を構えるハンドメイド・ギター・ブランドで、2020年にスタート。ラナ・デル・レイなど多くのアーティストのギター・テックを務めるルーベン・ゴットとケビン・ウィリアムズの2名によって立ち上げられた。

Fairlane Guitars / Cardinal

使用楽曲(2025年3月12日@Zepp Shinjuku)

  • 「God Gets You Back」

2020 Fender
American Professional Ⅱ Jazzmaster

2020 Fender / American Professional Ⅱ Jazzmaster

近年お気に入りのジャズマスター

「Lion Rumpus」で使用された、American Professional Ⅱシリーズの2020年製ジャズマスター。ボディ・カラーはマーキュリーというものだ。

V-Mod Ⅱ Single-Coil Jazzmasterが搭載されたモデルで、スチュアートはこのピックアップを気に入っているとのこと。常にフロント・ピックアップを選択しているという。

Fender / American Original '60s Jazzmaster
Photo:Gavin Maxwell

ちなみに上写真の白いAmerican Originalシリーズの’60sジャズマスターは、ギャヴィンがAmerican Professional Ⅱと間違えて送ってくれたもの。今回の来日公演では使用されなかったものの、最新作『The Bad Fire』(2025年)のレコーディングでは活躍したそうだ。ブリッジがチューン・オー・マティックに交換されており、サドルをナイロン製に換装。

使用楽曲(2025年3月12日@Zepp Shinjuku)

  • 「Lion Rumpus」

Pick

Jim Dunlop / Tortex Standard .60mm

ピックはJim DunlopのTortex Standard .60mm。

Interview

今はかなりジャズマスターを弾いていて、
それくらい気に入っている。

本番前の忙しい時間にインタビューを受けていただき、ありがとうございます。今回のライブで使用するギターについて詳細を教えてもらえますか?

まず、黒いレス・ポールは20年くらい前……ひょっとしたらもっと前に買ったんだ。買った時は80年代って聞いていたけど、シリアル・ナンバーを確認したら実は70年のものでね。けっこう良い値段で手に入れられたよ。かなり重いんだ。

基本的にレギュラー・チューニングかドロップDでプレイしているけど、1曲だけC♯-A-E-G♯-G♯-G♯という、かなり変則的なチューニングにする曲もある。

そのチューニングはどの曲で使うんですか?

初期にリリースした7インチ・シングルの1つ、「Ithica 27 Φ 9」(1996年)だね。

カスタム・モデルと思われるギター(Fairlane GuitarsのCardinal)は、どこのブランドのものですか?

ラナ・デル・レイのギター・テクニシャンをやっている知り合いがいて、わりと最近、彼が友人とFairlane Guitarsっていうブランドを始めたんだ。これは借り物なんだけど、そのテクニシャンがハンドメイドで作ったもので、グレイトなギターだよ。

オレは1弦22フレットのDをよくプレイするから、今は22フレットのギターを作ってもらっているところなんだ。

ジャズマスターはここ数年使用頻度が高いですよね。

これはAmerican Professional Ⅱシリーズのものだね。フェンダーの人たちが親しくしてくれていて、新しいギターができると時々オレに送ってくれるんだ。今はスタジオでかなりジャズマスターを弾いていて、とても気に入っている。ピックアップも凄く良いんだよ。いつもフロント・ピックアップを使っているんだ。これはフェイバリット・ギターの1つだね。

不動のメイン・ギター、テレキャスターについても教えて下さい。

これは80年代後半から90年代前半あたりのものだと思う。実はオレが最初に買ったギターもテレキャスターで、これとまったく同じモデルなんだよね。

そうなんですか!?

このテレキャスターと色と年式がまったく同じなんだ。最初に買ったテレキャスターは本当にグッドでね。同じテレキャスターを見つけたことで、最初に買ったものをツアーに持って行かなくてもよくなったんだ。“空港でなくしてしまうんじゃないか?”という心配から解放されたよ。

このテレキャスターはいくつか手が加えられていますよね?

センター・ピックアップとキル・スイッチを追加している。センター・ピックアップはSeymour Duncanのもので、いつもセンター・ピックアップを使っているよ。ライブでほかのピックアップ・ポジションを使うことはないけど、スタジオでは使うこともあるね。

なぜセンター・ピックアップのみを使用するんですか?

昔はフロントを使っていたと思うけど、センター・ピックアップを載せたら、そのサウンドを気に入ってしまったんだ。もう20年以上前のことだね。

弦のゲージは?

.011〜.049だね。

ピックはJim Dunlopの.60mmという、薄めのものを使っていますよね。

かなり前からこれだね。たまに少しだけ厚い、黄色のピックを使うこともあるよ。

ツアーでオフの日があれば、楽器を買いに行くことはありますか?

あるよ。でも今回のツアーはそのチャンスがないんだ。いつだって行きたいと思ってるんだけど……。日本のフェンダーは色んなカラーとかを展開しているし、いつも興味があるんだよね。

あなたの地元には大きな楽器店はないのでしょうか?

グッドなショップはいくつかあるけど、東京やロンドンのようなクレイジーなショップはないかな。でもまた日本に来るチャンスはあるだろうし、その時にFender Flagship Tokyoにリベンジしてみるよ。

日本に滞在している時、楽器を購入したことはありますか?

そりゃあもちろん。長年かけて何台かペダルを買ってきたよ。実は前回の来日時(2022年)、SquireのJ・マスキスのシグネチャー・ジャズマスターを買ったんだ。グレイトで今でも気に入っているよ。

2025年3月12日(水)Zepp Shinjuku

【Setlist】
01. God Gets You Back
02. Hi Chaos
03. Ithica 27 Φ 9
04. What Kind Of Mix Is This?
05. How To Be A Werewolf
06. Ritchie Sacramento
07. Pale Vegan Hip Pain
08. Fanzine Made Of Flesh
09. Auto Rock
10. Hunted By A Freak
11. Mogwai Fear Satan
12. We’re No Here
13. Lion Rumpus

-Encore-
14. My Father, My King