5年ぶりとなる3rdアルバム『ATOMIC CHIHUAHUA』を発表し、2025年3月に日本各地で灼熱のステージを展開したINABA/SALAS。稲葉浩志(vo)がB’zやソロとはまた違った、ファンキーな一面を発揮しているのも大きなポイントだ。本記事ではギタリストのスティーヴィー・サラスが語るアルバム制作インタビューの前編をお届けしよう。
取材/文=鈴木伸明

「ONLY HELLO」のテーマは、
ブルース・スプリングスティーンの自伝的映画を観たことがきっかけになった。
新作『ATOMIC CHIHUAHUA』は、INABA/SALASの3枚目となるアルバムです。全体のテーマは決めていましたか?
いや、何も決めていなかった。そもそもアルバムを作る予定ではなかったんだよ。2ndアルバム『Maximum Huavo』(2020年)のツアーがコロナでキャンセルになってしまったから、その代わりのツアーをやるために配信用に1曲だけ新曲を作るつもりでいたんだ。3週間だけスケジュールを空けてね。で、(稲葉)浩志と曲作りをスタートしたら、いつの間にか7曲もできていて、それならアルバムとして出そうということになったんだ。
まぁ、それを言うなら1st『CHUBBY GROOVE』(2017年)もアルバムにするつもりはなくて、単純に浩志と一緒に音作りを楽しんでいたら、まわりから“作品として残したほうがいい”と言われて、アルバム作りに発展していったんだけどね。予想外で、自分でもビックリしたくらいだ。
そうだったんですか。
あのアルバムは急いで作ったから、ギターはデモ音源のままのテイクが多いんだ。録り直す時間もないぐらい、その時の勢いで作り上げてしまったからね。ただ、アルバムは凄く売れたし、ツアーもすぐに完売となって、高く評価してもらえたよ。
その後、2ndアルバムの『Maximum Huavo』はもう少し時間をかけることができた。浩志から“ギターをもっと入れてほしい”と言われて、色々と考えてギターを弾いたけど、今となっては少し入れ過ぎてしまった気がしているよ。凝り過ぎてクレイジーなフレーズが多かったから、ツアーのためにギターを覚え直すのにかなり苦労したね(笑)。
今作『ATOMIC CHIHUAHUA』の中で最初にできた曲は?
最初に完成した曲を答えるのは非常に難しい。というのも、あまりにも時間がなかったから、ロサンゼルス、ロンドン、カナダ、東京という4つのスタジオを使って同時進行でレコーディングを進めたんだ。でも、一番最初に曲のアイディアに着手したのは「YOUNG STAR」だったね。
早い段階から曲の構想について2人で話し合って進めたのは「ONLY HELLO」だ。あの曲は、ブルース・スプリングスティーンの自伝的映画を観たことがきっかけになっている。友人の死など、年を重ねていくことで起きる様々な事柄に向き合う深い内容の映画に感銘を受けて、浩志に連絡したんだ。“自分たちも年を重ねてきたわけだし、そういうことをテーマにしてみてはどうだろう?”ってね。そこから発展していったのが「ONLY HELLO」のpart1とpart2なんだ。

自分の作品はすぐには聴き直せない。
ようやく『Maximum Huavo』を聴き始めているよ(笑)。
今回のアルバムで個人的に思い入れの強い曲はありますか?
まだわからないな。自分の作品はすぐには聴き直せないんだ。カラーコードの1st(『Stevie Salas Colorcode』/1990年)だって、いまだに冷静には聴けない。あれは最悪だ。もちろん世界中で称賛してくれる人がいるのは知っているけど、オレにとっては聴くのがおそろしい最悪のアルバムなんだ(笑)。INABA/SALASについては、ようやく『Maximum Huavo』を聴き始めていて、けっこう良いと思う曲があるね(笑)。
あなたのデビュー作『Stevie Salas Colorcode』は名盤ですよ!
ありがとう(笑)。たしかに世界中で“「Two Bullets And A Gun」は名曲だ!”と言ってくれる人がいる。『Back From The Living』(1994年)は2枚組のアナログ盤になっていて、今どきのキッズが“「Tell Your Story Walkin’」は素晴らしい!”なんて言ってくれるよ。彼らの年齢を聞くと、曲が発表されたあとに生まれていてね(笑)。でも、そんな具合で自分の作品を冷静に聴くには時間がかかるのさ。
作品データ

『ATOMIC CHIHUAHUA』
INABA/SALAS
VERMILLION RECORDS
BMCV-8074
2025年2月26日リリース
―Track List―
- YOUNG STAR
- EVERYWHERE
- Burning Love
- DRIFT
- LIGHTNING
- ONLY HELLO part1
- ONLY HELLO part2
―Guitarist―
スティーヴィー・サラス