インタビュー後編では、ケヴィンのサウンドの土台になっているピッキングや、ケヴィンの音に近づけるためにはどうすればいいかなど、核心に迫る内容に言及。2026年6月号と一緒に読み進めてください!
取材・文=小林弘昂

ギター・マガジン2026年6月号
my bloody valentine
ケヴィン・シールズが描く恍惚のシューゲイザー・サウンド
2026年5月13日(水)発売
ケヴィンの演奏は
ピッキングの支配力がかなりある。
ケヴィンのギターについてですが、弦高は高くもなく低くもなく、弦も.011〜.048ですし、普通のセッティングでしたよね。アームにテープをグルグル巻いてカチッと奥まで挿さらないようにはなっていましたけど。
ピックアップのこだわりもあんまりなさそうで、そんな感じでしたね。どちらかというとギター本体ではなく、ピッキングの音なんでしょう。“三味線弾き”とまでは言わないけど、ああいう感じでアタックでは倍音を出さずにガンガン弾いていて、ピックの当て方が上手でしたよね。そしてアームはダウンしかしないから、右手がすごくシステマチックだなと思ったんです。インタビューの最後、ケヴィンが目の前でギターを弾いてくれたじゃないですか?
通訳さんが持ち込んだ日本製のジャズマスターを生音で弾いてくれましたね(笑)。
通訳さんのジャズマスターを弾いていても、“あ、ケヴィン・シールズの音だ”って、けっこう感動でしたね。右手がシステマチックだから、オブリを弾く時はワンアクション挟んでニュアンスが変わっちゃうけど、曲中のストロークは全部同じ。変則チューニングにしないと左手が大変なので、シンプルなボイシングでコードを押さえられるようにしているんでしょう。
曲が変わっても右手の振り幅は変わらず、そのおかげで均等的な音が出せているのではと思いました。
うん。ケヴィン・シールズの音はピッキングだなと。誰かもそれを言ってたんですよね。バーリー・カドガンかな? “とにかくケヴィンはピッキングがすごく良いんだ”みたいなことを言っていて、たしかにそう思いました。
あれだけたくさんの機材を使っていても、結局はフィジカルが超大事だということですね。
ケヴィンくらいの固定された“自分のいつもの音”みたいなものがないと、たぶんエフェクターが入ってきた時にわけがわからなくなると思うんですよ。エフェクターに寄っていくとグチャグチャしてくるから。ケヴィンは揺るがない自分のプレイとピッキングがあって、それに対してゲインを調節してくから、あれだけのアンプがあっても、いつでも同じように鳴らせるという。
たしかに。機材、特にアンプやエフェクターによって自分の弾き方が変わるところがあります。
普通は機材の音に持っていかれるじゃないですか。
例えば“このマーシャルはハイがすごく出るから抑えめに弾こう”とか、“歪ませたVOXはもっと強く弾いていいかな”みたいなことがあるんですけど、右手を一定にすることで機材のバランスも取れていくと。
そうですね。機材側のポテンシャルを出す/出さないとかのピークを自分で決めているんだと思うんですよ。“こういう風に弾いたらこういう反応をするアンプじゃないと嫌だ”みたいな。だから、そこがブレてないなという感じがしましたね。
極端に言うと、ケヴィンはジャズマスターでもジャガーでも同じような音がしている印象があって、むしろビリンダのほうがギターが変わると音も変わっていたんですよ(笑)。だからやっぱり、ケヴィンの演奏はピッキングの支配力がかなりあるんでしょうね。あれだけ均等に弾けるとアンプのサグの具合とかも調節しやすいんだと思います。
自分から出ている音が揺らがないから、機材をいろいろいじれるんでしょうね。
そう。だから自分の揺るがない音があるかどうか。目の前で弾いてくれただけで、“ケヴィン・シールズの音だ!”って思いましたもん。
生音の“パチン!”っていうアタックが、まさにそうでした。
そうそう! あれがあるからファズがかかっていても“ブオー”とならない。ファズは“ブオー”っていう音なんだけどね(笑)。でも、ピッキングが強いというわけでもないんですよ。ピッキングの音の抜けるスピードが速いというか、独特の鳴らし方で、アタックだけが“パンパンパン”と鳴る感じ。だけど、“面で鳴っている感じ”もギターから出ていましたね。“ちゃんとしたプレイヤーってそういうことなんだな”と思いましたよ。
同じ個性でも、例えばマイケル・ランドウとかのピッキングとはまた別だけど、自分の音を出すルールがあるなんだなって。僕らもケーブルのチェックをする時にそういう感じがありますよ。“同じように弾かなきゃ”って。
そうですよね。
機材に持っていかれないようにしないと、ケーブルとかオーバードライブって音が変わっちゃうんです。たぶん、一般的にシューゲイザーが好きな人って“フワ~”とした音を出そうとするから、ピッキングがけっこう柔らかいんですよね。でもケヴィンはその真逆にいる(笑)。“シュッ”と鳴らして、機材で”フワ〜”っとさせるというか。
フェンダーのジャズマスター紹介の映像で生音で弾いている場面があったけど、僕はカメラのコンプレッションでああいう風に聴こえているんだと思っていたんですよ。でも、目の前で生で聴いても同じ音がしていたから、あれは大事なポイントかもしれないですね。“たしかにVOXアンプをああいう感じで弾いたら良い音するね”っていう感じ。音がちゃんと立っていて、ボヘボヘしていなかった。
自分の弾き方と、ジャズマスター&ジャガー、そしてVOXアンプが中心にあって、そこから色を付けていくという。
うん。それを理路整然と説明してくれて、すごくありがたいなという感じでしたね。本当はもうちょっとギターの話をいろいろ聞きたかったんですけど、彼のギターに対してのこだわりに関して、僕らが理解できていないところもあるだろうなと思って。
細いネックを押さえた時って
ネックの鳴りが死ぬんですよ。
ケヴィンが“フェンダーの細いネックがすごく重要だ”みたいなことを言っていて、“そんなこと言う人いるんだ!”と思いました。
“普通は太いネックだろ!”って(笑)?
そうです。みんな“太いネックのほうが良い音しますよ”って言うじゃないですか?
その発言もそうなんですけど、ケヴィンって意外と“今でもギター小僧だな”と感じさせる会話がありましたよね。別の機材の話でもそういう雰囲気があったんですよ。たしかAC15CC1の話の時、“そんな安いアンプでいいのか?”みたいなことを言われて、“安くても自分の欲しい音が出ていればいい”みたいな感じで話していたりとか。だから、“WEB上の楽器スレッドとかもチェックしてるのかな?”と思っちゃうくらい、機材オタクっぷりがよくわかりましたね(笑)。
紫色のジャガーはケヴィン曰く63年製とのことでしたが、その年代のフェンダー・ギターのネックってワイド・グリップのものが多いですよね? でもそのジャガーのネックはかなり細いそうで。
ストラトも61~62年はわりと細いグリップですけど、63~64年になると太くなっていって、スティーヴィー・レイ・ヴォーン信仰以降は太いネックのほうが良いみたいなことが言われていますよね。レイ・ヴォーンのNo.1ストラトのレプリカを見たことがあるんですけど、別にネックは太くなかったですよ(※No.1ストラトは62年製ネックと63年製ボディの組み合わせ)。
そもそもが違っていたと。62年製で太いネックってあまり見ないですからね。
たしかにジョン・メイヤーの音とかは、太いネックから出るコンプレッションや、アタックの“パン!”っていう音がすごく大事だったりしますよね。でもケヴィンのストロークと太いネックの組み合わせでは、あの音は出ないはずだから、もうケヴィンのおっしゃるとおりですよ。“やっぱりあなたの好きな音には細いネックが合いますよね!”みたいな(笑)。
あと、僕がそれを聞いて思ったことがあって。細いネックを押さえた時って、なんていうか……ネックの鳴りが一瞬死ぬんですよ。
そうなんですか!?
言葉にすると難しいんですが、“グッ”と握った瞬間、音が変わるんです。太いグリップって強く握ってもあんまり音が変わらないんですけど、細いグリップは握り込んだ時に音がおとなしくなって、対照的にロー感が出たりするんですよ。つまり、強く押さえた時に“ブン!”っていうパワー感が出て、優しく押さえると弦鳴り音の“ジャリン”や“チャリーン”っていう音が際立つ。
だから僕は、ケヴィンがそれも含めて言ってるような気がしたんです。“良い音楽はスリム・ネックから生まれる”って、すごい発言ですよね? “この人、生粋の音楽オタクだわ~”って思いました。ベーシストの人もたまに“薄いネックのほうがダイナミクスを調節できるんだよね”みたいなことを言うんですよ。
オタクですね〜(笑)。
彼が気を悪くしないといいけど、相当なオタクですよ(笑)。“ジャンジャン、ジャンジャン、ジャンジャン、ジャンジャン”の頭のところだけ強く握ると音がダンピングするというか、鳴りがおとなしくなって……要するにサグですよね(笑)。
たしかにケヴィンの演奏って、小節の頭のコード・ストロークでアーム・ダウンさせるじゃないですか? それと関係しているんじゃないのかなと。
左手を強く握ったら絶対に右手にも力が入るじゃないですか? だから“人力サグ”ですよね(笑)。“ここもサグの話になってるんじゃないのか?”と思って。
とんでもないです(笑)。
ビンテージ・ギターって長い間いろんな人たちに握られてきたから、指板やネックのうしろの形までもデコボコなんですよ。だからあれはどこかにぶつけたというわけではなく、よく使うところが押し固まっていったんです。ネックって形が変わるんですよね。僕の63年製ストラトや65年製ジャガーなんかも、最近のCNC加工で作られたキッチリしたネックを握ったあとに触ると、“こんなに凸凹なのか?”って思います。
ケヴィンはそこまで言語化はしていなかったけど、たぶん細いネックを“グッ”と握った時の音の感じを言っているんだと思うんですよね。だから相当ヤバいです。今の話も含めて考えると、あの人は全部がサグなんですよ。サグというか、ダンピング感というか、ハネ感やバネ感。それをとても重要だと考えているのでは。
ウーリィなファズ・サウンドと、トレモロと、サグですよ。
超一貫していて、逆にそれしかない。
それってケヴィンが影響を受けてきた音楽と通ずるところもあるんでしょうか?
わかんないんですよね~。Repeat Percussion系のトレモロをあれだけ使う人って、やっぱりスペースマン3とかのサイケ・ロックからの影響なのかなと思うんですけど。ギターのピッキングやプレイ的にはビートルズなのかなと思ったり。ケヴィンの根本的なルーツって何なんでしょうね?
最初の影響はMC5やラモーンズのパンクですよね。
ラモーンズは相当好きだと言っていましたよね。の“ダダダダダダ”っていうピッキングの感じは、たしかに彼の演奏から感じられる。
あとはピート・タウンゼントやジミ・ヘンドリックスです。
おお、“THEサグ・サウンド”なダイナミクス系ギタリストですね。ファズ・サウンドやエフェクトのルーツとしても納得。
サーストン・ムーアやJ・マスキスもダイナミクス系ですもんね。
Jからの影響は初期mbvの曲からすごく伝わりますね。でもギターの感じでいくと、やっぱり60~70年代のロックからの影響なんですかね。ロック小僧的なプレイをやっていったら、ああいう風になっていったのかも。ケヴィンはあまりピッキングで強弱を付けず、ほかの機材やタイム感とかで強弱やサグ感を付けて、曲をダイナミックにさせている感じなのかな?
シグネチャー・ペダルのFender Shields BlenderにもSAGノブが付いてたし、ケヴィンにはその感じが重要なわけですよね。Shields BlenderのSAGは“極端すぎませんか?”みたいな感じがしましたが(笑)。それと、Jと一緒に出ている試奏動画も面白かったですよね。ケヴィンがペダルを操作してSAGをけっこう深い音にした時、Jは“どうすんのこの音?”みたいな状態でフレーズに困っていたと思う(笑)。でも、ケヴィン的にはあれがすごく重要なんでしょう。それとケヴィンがずっと持っているVOX Tone Bender MKⅢがあるじゃないですか?
デビーのボードからははずされていましたけど、今回も日本に持ち込んでいましたよね。
僕がデジマート・マガジンの『Depper’s View』で紹介したシリコン・トランジスタのMKⅢが、まんまケヴィンと同じやつだったらしいんですよ。でも、僕はもう誰かに売っちゃって持ってなかったんですね。売った理由があって、それはアタックが遅いからなんですよ。
アタックが遅いとは、具体的にどのような感じなのでしょう?
ピッキングした音の頭が凹んでから出てくるというか、“バーン”と弾いても“ンバーン”って出てくる感じ。深く歪ませるとバイオリン奏法みたいなアタックのつぶれ方をしていて、それが僕は好きじゃなかったんです。でもケヴィンにはそれがすごく重要で、“ほかのMKⅢではあれは出ない”と言っていて。それすらも今思えばサグですからね(笑)。
ファズですらもダンピングだと。
そうそう。それが好きみたい。
それってリバース・リバーブと一緒ですよね?
“リバースの1音目がリズミックに速く出てこないとダメだ”と言っていましたが、要するにちょっとだけ遅れて逆回転の音が出てほしいと。だからサグ的な発想と一緒ですよね。
本当に好きな音が一貫しているんですね。
Repeat Percussion系のトレモロって、“ジャーン”と弾いても“フパパパ、フパパパ”ってなるじゃないですか? その頭がつぶれる感じがあるから、普通のスクエア・トレモロじゃなくて“そっち系のトレモロ”が好きなんだと思う(笑)。だからBig Muffも“バシャー!”じゃなくて“ゥイン”って鳴るTriangleタイプが好きなんだろうな。
しかもケヴィンってマフ系のトーンを絞ってるじゃないですか?
鼻が詰まったような、いわゆる“ウーリィ”な音ですよね。VorgのWarp Soundも“ゥオン”っていう音ですし、ケヴィンがプライマル・スクリームの時に使っていたCrowther Audioのディストーションもワウの半止めじゃないけど、そういう鼻詰まりの音ですから。あとはUni-Tronも「if i am」みたいにわかりやすい時もあるし、音のレイヤーの一部になっている時もありますけど、そうやって使ってるみたいですね。
やっぱり、あの山のようなペダル・トレイを見てもかわるように、重要なのは鼻詰まった音と、トレモロと、サグですよ。彼の求める音は超一貫している。
これがケヴィンのサウンドの秘密だと。
でも、わかったところでそれだけじゃ済まないですよ。最低4台のアンプが必要になります(笑)。だから僕みたいな“普通の音が出したい人”がケヴィンと同じ仕様のVOX Tone Bender MKⅢを持っていても、あんまり意味がなかったんですよね。使いこなせなかった。ケヴィンのプレイに近づけたり、mbvみたいな曲をやるには最適ですけど、“このファズを踏んだ瞬間に音を爆発させてやるぜ”みたいな使い方はできないですもん。爆発させるためには、アンプを4台同時に鳴らさないといけない(笑)。
だからBig MuffもRam’s Headや3rdじゃなくて、TriangleやLittle Big Muffをずっと使っているという。
そうなんでしょうね。Little Big Muffもちょっとサグるというか、コンプレッションがかかって鼻詰まるもんね。
Box Of Rockもそうですよね。
Box Of RockなんてモロにJTM45的なサグですよ。取って付けたような、素晴らしいサグ感(笑)。
わりとデフォルメされたロー感やミッド感が好きなんでしょうね。それをより強調させたい時にオート・ワウやフィルター系のエフェクターを使ってるんじゃないのかなと思います。
ギターのアタック音を消すためにそうしている感じですかね。Uni-Tronの使い方とか、今回の話を聞くまではまったくわけがわからなかったですもん。さっきも言ったけど、今回のインタビューのあとにLine 6のHelix Stadiumでケヴィン・シールズ・パッチを作ってみたんですよ。アンプ・モデルを2台使って、トレモロと、止めた状態のフィルター・ワウを入れて。でも、難しかったです。アナログのRIGをデジタルに置き換えただけでは再現できない。
そうだったんですか。
ただ、LRに異なるアンプを当てて音を広げると、すごくそれっぽくなったんですよ。モノラルだとダメでしたけど、LRでアンプによってルーティングを分けて、フィルター・ワウやトレモロを入れると良い感じまでいける。
1本はドライなVOXアンプ・モデルのラインを作らなきゃいけないんですけど、やっぱりそれが重要で。ドライなVOXがないと何も成立しないというか、“これは何の音ですか?”みたいなことになるんです。VOXでコアを作って、エフェクトかけまくりのマーシャルやHiwattを別の回線で鳴らすと、すごく厚みのある音になる。でも、ソロを弾くような音ではないですね。壁を作っていく感じ。
そういうソロやオブリのプレイには向かない音なんですかね。
そうですね。音の層というか壁を作ると。だからケヴィンの話が理解できれば誰でも作れる音なのかもしれないけど、それを使う曲がないですよね。だからケヴィンの音と、その音で演奏されるmvbの楽曲は本当に素晴らしい。リバース・リバーブを入れたアンプ2台程度では到底たどり着けない、唯一無二の世界がありました。
削ぎ落とせばアンプ3台、ペダル10台でも再現できる音だけど、“mvb全曲をそれでやって”と言われると、ケヴィン的には無理なんでしょうね。とはいえ、ライブであそこまで機材を揃えて実行する根性というか意志がすごいなと思いましたよ。
還暦を超えてあんなことはできないですね。
いや〜、無理ですよ。理屈ではわかる、音の絵は描けるけど、実行する元気はないですよね。
お金も人員も必要じゃないですか。ツアーで稼いだお金を全部サウンドに注ぎ込んでる感じですよね。
エフェクト、そしてスタジオですかね。新しいスタジオは元馬小屋だって言ってたけど、超行ってみたいです。細かいこだわりを見たら、楽しくて死んじゃうかもしれない。
“ファズは歪ませるな”
っていうことですね。
スタジオではPete Cornishの機材をいっぱい使っているらしいですからね。
Pete Cornishのなめらかな音というか、整頓されて角が立たないリッチな音を使いつつ、アンプのスピーカーはオールドで、マイクは超ハイエンド。でもファズ・サウンドやフル・アップのTweed Deluxeを鳴らすというバランスが、すごくかっこいいなと思いますね。
僕はU2のジ・エッジのギターの音もすごく好きなんですけど、彼もわざわざラック・エフェクターのあとにVOXアンプをつないで、インピーダンスのイタズラでちょっと艶が出るようにしている。それは偶然だったらしいんですけど、そういう音を持っている人って魅力的なんです。機材を持っているだけじゃなくて、使うという。ミスマッチを1回試して、良かったら採用して、それで曲を作るところまでいかないとダメですよね。良い音だなと思ったら、それを聴かせる曲を作らなきゃいけない。ケヴィンはそれをずーっと実行してくれている。
ケヴィンはたぶん機材先行で曲を作ってるんだと思います。
わからないけど、そんな気もしますよね(笑)。チューニングと音色が先行みたいな。
ジ・エッジもそういう時があるんじゃないですかね? 80年代にリバース・リバーブを有名にしたギタリストもジ・エッジだと思いますし。
Whammyもそうですしね。“踏んで楽しかったから曲にしちゃった”みたいな。「Zoo Station」とか当時、“Whammyを踏みたいだけじゃないですか?”って思ったもん(笑)。デヴィッド・ギルモアもそういうところがありますね。
“Uni-Vibe踏んだら良い感じのフレーズできました!”って感じですよね(笑)。
そうそう。デモ・テープ・バージョンとか聴くと、機材の音が先行して、そこから閃いたリフを弾いているもんね。新しい機材や多くのペダルが、作曲や楽曲の展開にいかに重要かという話ですよ。
ジミヘンだってそうですよね。当時、“一番新しい機材は何だ?”と探ってサウンド・ボックス(リズム・マシン)やワウ、Uni-Vibeを取り入れたりしていましたし。ケヴィンはそれの最たるものかもしれないです。
レス・ポールやジミヘンから始まり、ギルモア、ジ・エッジ、そしてケヴィンが生まれたという。
時代の流れ的にね。ケヴィンはルーツがパンクでしたけど。でも、ジ・エッジのルーツもジョイ・ディヴィジョン的なニューウェイブとラモーンズか。
U2といえばラモーンズです。
たしかに。そういうところから発生したんだけど、音オタクのほうに行ったりとか、みんなと違う音を出したい人が音色をベースに作った曲に、僕は引っかかるのかもしれないですね。“かっこいいな!”って思っちゃうというか、真似したくなる。インタビューが終わってから改めてルー・リードやスペースマン3を聴いていたんですけど、ケヴィン・シールズを感じましたね。
ほかに印象的だったことはありましたか?
僕がmbv好きだからですけど、ケヴィンと好きな機材がけっこう被ってたのがたまらなかったですね。VOXアンプ、Zila Cabs、スピーカー・ケーブル、Love Bombとか(笑)。Black FlagのJTM45も持ってるみたいだし。
Red PandaのContext V1も嬉しかったです(笑)。
そうだよね! “Contexって小林君がこないだ修理に持ってきたやつじゃん!”って思った(笑)。
ケヴィンはContextのgatedモードをリバース・リバーブ代わりに使ったことがあるそうで、自分も試してみたら“これでいいじゃん!”と思いました。
そうなんだ。そういえば、“リバース・リバーブにもいろいろと良し悪しがある”という話は非常に面白かった。例えば僕はDigiTechのHardWire RV-7が好きで、そのReverseモードを使ってみたけど、たしかにアタックがちょっと遅くてmvb的な使用法ではダメでしたね。
もちろんYamaha SPX90は大丈夫だったから、“あー、こういうことか”と。ケヴィンはかなりリバース・リバーブを試しているみたいだね? シューゲイザー系のポッドキャストで“自作リバース・リバーブを作った人がいる”のくだりがケヴィンの口から出た時はひっくり返るかと思いましたよ!
Contextみたいな便利なペダルがある一方、ケヴィンがSPXにこだわる理由ってあるんでしょうか?
SPX90とかのラック・ユニットは信号が強いというか、ライン・レベルだから、VOX AC30の前に入れると中域がちょっとスクープされるんですよ。だから弾きやすくなって良いかもしれない。Hiwattに使っても邪魔な中低域がなくなって、けっこう良かったです。
最近、改めてSPX90を買ってたので試してみます!
まだ届いてないんですけど、僕も前から欲しかったShere SoundのWhirligig Vibrato Tremolo Phaserを買いましたよ。しかし、今回ケヴィンはペダルを50台買ったと言っていましたけど、たぶん全部試して曲になるんでしょうね。
ペダルが増えたから、また新たにレコーディングを始めるんでしょうか(笑)。
“一生終わらないのでは?”と心配になります。ケヴィンの機材コレクション、相当すごいことになってそうですね。いつか見てみたい。
本日はありがとうございました。最後に、ケヴィンの音を再現したい人に何かメッセージはありますか?
これまでのケヴィンの幻影に惑わされないほうがいいと思いました。ケヴィンは“機材の魔法使い”みたいに思われていますけど、まずはギターをちゃんと弾きやすくセットアップして、アンプ直で弾いても自分の好きな音が出るようにしている。そうしないと、いくらリバース・リバーブとファズで肉付けしてもどうにもならないですから。
あと、“ファズは歪ませるな”っていうことですね。“歪ませるのではない、サグらせるのだ”と(笑)。もちろんフルテンのファズもありましたけど、基本は“アタックをダイナミックに聴かせて、リズミカルに演奏するためにファズを踏む”。今回印象的だったのはそこでした。
よくイメージするグランジやシューゲイザーのサウンドのまま機材を使ってしまうと、ケヴィンのようにはなれないという。
うん。違和感をどれだけ出していくか。ただ変わった音を出せばいいというわけじゃなくて、自分の出したい音が違和感にならなきゃいけないんですけどね。機材を過度にセッティングするというよりは、それらを重ねていって1つの音を作るというプロセスが大事だと思いました。それと、頭の中でどういう音を出したいのかを具現化すること。一見、意味のなさそうなディレイを必要とするかしないかは、自分の中で鳴っていたら必要ですから。
でも一番は、ケヴィンみたいな音が出したいなら、“ギターをちゃんと弾け”ということですね。ピッキングとVOXアンプで自分の音の骨組みが作れなかったら、“まずはちゃんとギターを弾け”ってケヴィンに言われますよ(笑)。
“そんなんじゃ機材に遊ばれるぞ!”と(笑)。
本当にそんな感じでしたよね。毎度お馴染みですけど、“ギターを練習しよう”と強く言いたいです。練習というよりかは、鳴らし方ですね。
技術的な上手いと、ギターを上手く鳴らすのは別物ですもんね。
そう。上手く弾こう、速く弾こうじゃなくて、ギターを自分の好きな感じで鳴らせるように練習することですね。それが最強かもしれないです。ケヴィンは僕が好きなダイナミック・ニュアンス系のギタリストとは対極にいる感じでしたけど、その代わりに“機材でニュアンスを出す方法”が知れたし“ギターを上手く鳴らすには?”という問いに対する面白さと発見がありました。
村田善行 Profile

むらた・よしゆき/東京・渋谷の楽器店Hoochie’sに在籍し、そのかたわら専門誌などでライター業や製品デモも行なう。新製品やビンテージを問わず、ギター、ペダル、アンプに関する確かな知識と経験に基づいた機材レビューの的確さは高い評価を得ている。

ギター・マガジン2026年6月号
my bloody valentine
ケヴィン・シールズが描く恍惚のシューゲイザー・サウンド
2026年5月13日(水)発売

