2026年5月にCOTTON CLUBで行なわれたラーゲ・ルンドの来日公演。本記事では、ライブで使用されたサウンド・システムについて、本人のインタビューを交えてお届けする。
取材・文=三木深 通訳=トミー・モリー 機材撮影=小原啓樹
Lage Lund’s Sound System

ピックアップ、マイクの信号が混在する
サウンド・システム
【Gear List】
①Hotone / Ampero Press(ボリューム/エクスプレッション・ペダル)
②Chase Bliss / Warped Vinyl HiFi(コーラス/ビブラート)
③Neural DSP / Quad Cortex mini(アンプ/エフェクト・プロセッサー)
④BOSE / T4S ToneMatch(ミキサー)
ラーゲのメイン・ギター(Westville Guitars Prospect)は、USA Kent Armstrong製のマグネティック・ピックアップに加え、ホール内にBartlett AudioのMandolin Mic(マンドリン用コンデンサー・マイク)がインストールされており、それぞれのアウトプットが搭載されている。

マグネティック・ピックアップからの出力は、まず足下の①Ampero Pressにインプットし、OUTPUT端子から②Warped VinylのIN端子に接続。そして①Ampero PressのEXP OUT端子からは②Warped VinylのEXP/CV端子に接続されているため、①Ampero Pressはボリューム・ペダルとしてだけでなく、②Warped Vinylのパラメーターをコントロールするエクスプレッション・ペダルとしても機能する。
②Warped VinylはBounce、Warp、Lagのdipスイッチをオンにしていた。②Warped Vinylに関してラーゲは、“何かが欲しい時に使う感じ。例えばマーク(ターナー/sax)のうしろでコンピングしている時とかに使うことが多いかな”とコメント。過去のライブ映像を確認したところ、常に①Ampero Pressに足を置きながらボリューム・コントロールを行なっていたが、今回のライブでは操作をしていたようには見えなかった。
②Warped VinylのOUT端子からは、台の上に置かれた③Quad Cortex miniのINPUT 1端子に接続される。③Quad Cortex miniでは常にリバーブをオンにしていたり、時々ディレイを使うこともあるそうだが、アンプ/キャビネット・シミュレーターは一切使用しておらず、基本的にはEQを少しだけ加えただけのダイレクトのサウンドを鳴らしているとのこと。
③Quad Cortex miniからはアウトが2つ出ており、1つはOUT 3/L端子からフェンダー’65 Deluxe Reverbへと接続。そしてもう1つは、OUT1/L端子からXLRケーブルで④T4SのINPUT 2端子に接続。以上がマグネティック・ピックアップからの信号の流れだ。
ギターのホール内にインストールされたBartlett AudioのMandolin Micからのアウトは、XLRケーブルで④T4SのINPUT 1端子に接続される。
ピックアップの出力とMandolin Micの出力は、④T4SのMAIN OUT L端子から1本のXLRケーブルで出力され、RadialのLX3(スプリッター)のINPUT端子に接続。そして本機のTHRU端子からはPA卓へ、Isolated-2のOUTPUT端子からはJBLのEON612(パワード・スピーカー)に接続されていた。
つまり、フェンダー’65 Deluxe Reverb、JBL EON612、そして会場の外音用スピーカーという3つからサウンドが鳴らされている。
Amplifier
Fender
’65 Deluxe Reverb
アンプはフェンダーの’65 Deluxe Reverbを使用。スピーカーは12インチのJensen C12Nが1発搭載されている。アンプの出音はSennheiser e906(ダイナミック・マイク)で収音されていた。

インプットはNORMALで、入力感度の低い2に接続されている。本番前のためか、各ノブはVOLUMEが0、TREBLEが5手前、BASSが4.5程度に上げられていた。
リバーブとトレモロ用のフット・スイッチも接続されていたが、ライブ中に操作することはなかった。
Interview
Chase Blissのペダルはすごく好きなんだ。
ほとんど楽器みたいなものなんだよね。
アンプを使用せずに、Quad Cortex miniから直接PAに送ることもあるのでしょうか?
いや、僕はアンプを使いんだ。もしアンプの状態が良くなかったり、良い音が得られない時は使わないこともあるけど、基本的には使いたいと思っている。だからQuad Cortex miniではアンプ・シミュレーションを一切使っていない。キャビネット・シミュレーションも使ってないよ。基本的には少しEQを加えたダイレクト・シグナルで、その音とコンデンサー・マイクで拾った音をミックスしているんだ。
逆にかなりグレイトなアンプに当たった時なんかは、ダイレクト・シグナルをあまり使わないこともある。だからいくつか選択肢を持っている感じかな。

Quad Cortex miniでは、リバーブやコーラスといったエフェクトを使うこともないのですか?
リバーブは少しかけているし、時々ディレイも使うよ。だから多少のエフェクトやEQは使っているって感じだね。
エフェクトは基本的にかけっぱなしで、曲中に操作することはほとんどないのでしょうか?
そうだね。演奏中にそういう操作をするのは、できれば避けたいんだ。演奏だけでも気にすることがたくさんあるからね(笑)。
足下はAmpero Press(①)とWarped Vinyl(②)のみという、非常にシンプルな構成になっていますね。
Ampero Pressはボリューム・ペダルでもあり、エクスプレッション・ペダルでもあるんだ。Warped Vinylのサウンドが聴こえるのは、基本的に僕がボリュームを上下させた時だけだよ。そのサウンドはなんて表現すればいいのかわからないけど、少し変に揺れる感じなんだよね。ちょっと奇妙なニュアンスというか。僕はそういう少し変な感じのサウンドが欲しくて、Warped Vinylを使っている。
Chase Blissのペダルはすごく好きなんだ。とにかく面白いし、ノブもいっぱいあって、ほとんど楽器みたいなものなんだよね。それに僕はマニュアルを読んだり覚えたりするのがあまり好きじゃないから感覚的に操作していて、Chase Blissのペダルを通すと何が起こるかわからないんだ(笑)。
具体的にどの曲のどのパートで使っているのでしょうか?
曲の特定のパートというより、もっとテクスチャー的なものだね。何かが欲しい時に使う感じ。例えばマークのうしろでコンピングしている時とかに使うことが多いかな。レコードを再生しているような感じで、ちょっとグリッチしたり、回転数が少し上下したようなサウンドになる。とにかく、ちょっと変なニュアンスなんだよ(笑)。
だから常に使うわけじゃないけど、たまに完全にピュアなアコースティック・サウンドじゃないものが欲しい時に使うんだ。ほかのギタリストならディストーションとかを使うのかもしれないけど、僕にとってはこれがその役割なんだと思う。
「Haitian Ballad」の終盤や「Terrible Animals」の中盤には、グリッチのような不思議なエフェクトがかかったギター・パートが登場しますが、音作りはどのように行ないましたか?
あんまり覚えてないんだ。あのアルバム(『Terrible Animals』/2019年)のレコーディングは、普通のジャズ・レコードみたいな感じでスタジオに1日入って、たぶん6時間くらいで録ったんだよね。その後、家に持ち帰ってダビングをけっこうやったよ。スタジオじゃなくて家でやっている時は、“これとこれを組み合わせて、エクスプレッション・ペダルを使ったらどうなるかな?”っていう感じでいろいろ試していて、純粋に実験しているんだ。時には“なんかクールで変なサウンドになったぞ!”っていう発見があるね。
でも、そういうものは基本的に再現できないんだ。Chase Blissのペダルもそうなんだけど、クールなサウンドが見つかっても、それをどう再現すればいいかがわからないよ(笑)。その時だけ起こるものなんだ。
アンプはおもにフェンダーのDeluxe ReverbやTwin Reverbを使用していますよね。どんな部分が気に入っていますか?
Deluxe Reverbが好きなのは、いろんな意味でグッドだからだね。こういう少しアコースティック寄りのバンドでは、ボリューム的にかなり扱いやすいんだ。Twin Reverbのサウンドも好きなんだけど、あれはちょっとラウド過ぎる。ちゃんとアンプが鳴っている感じを得るには、ボリュームを少なくとも3くらいまでは上げたくなるんだけど、Twin Reverbは2で十分ラウドだからね。Deluxeにはいくらかの温かみがあるし、すごく一般的なアンプだから、どこに行っても用意してもらえるんだ。
キャリアの初期には“Polytoneのこのアンプがいい”とか、特定のアンプをリクエストしていたこともあったんだけど、多くの会場では用意できなかった。そうすると毎晩違うアンプを使うことになってしまう。僕はある程度一貫性のあるものを使いたいっていう気持ちもあるんだよね。もちろん部屋によってサウンドは変わるし、いろんな条件も違う。ビンテージ・アンプも大好きなんだけど、実用面を考えると、僕にとってはこれがベストな選択なんだ。
レコーディング時には、いつもと違うアンプを使用することはありますか?
スタジオに自分のアンプを持ち込まない場合は、そこにあるもの次第だね。基本的にはDeluxe Reverbを使うことが多いかな。でもスタジオによってはすごく素晴らしいビンテージ・アンプが置いてあることもあって、そういう時はそれを使うこともある。Ampegとか、古いギブソンのアンプだね。
ただ基本的には、自分が心地よく使えるものをプレイしたいんだ。5種類ものアンプを試して時間を無駄にするようなことはしたくなくて、“じゃあDeluxeでいこう、これはよく知っているアンプだからこれでいこう”っていう感じだね。マイクに関してもシンプルに素早く進めたい。特に自分名義のレコーディングじゃない場合は誰かの時間を無駄にしたくないから、すぐに音を出して音楽に入ることを優先している。






