豊富なラインアップを展開するフェンダーのエレクトリック・ギターのなかでも、特に選択肢が多いストラトキャスター。初心者はもちろん、ベテランでもつい目移りしてしまって、「自分に合ったベストな一本」を見つけられないことがあるのでは?
ここでは、比較的手に取りやすい価格帯ながら、モダンなスペックで即戦力として活躍できる“Player Ⅱ Modified シリーズ”と、そのベースとなったスタンダードな“Player Ⅱ シリーズ”のストラトキャスター各モデルの仕様を徹底比較する。
細かな仕様の違いをチェックすることで、理想の一本を見つけられるはずだ。
“Player Ⅱ シリーズ”、“Player Ⅱ Modifiedシリーズ”とは?
手に取りやすい11万円(税込)からという価格帯と、ビンテージ・スペックとモダン・スペックのちょうど中間に位置する「誰にでも扱いやすいスペック」で人気を博し、現在のフェンダー製品で最大の出荷本数を誇るシリーズが、メキシコ製のスタンダードな製品ラインである“Player Ⅱ シリーズ”。
そして、この“Player Ⅱ シリーズ”をベースとし、工場出荷時点ですでに改造(=モディファイ)を施したというコンセプトでモダン・スペックなど魅力的な仕様を取り入れたのが、“Player Ⅱ Modified シリーズ”となる。演奏者が求める「ツボ」をおさえたモディファイにより、即戦力として活躍できるモデルが揃う。
“Player Ⅱ Modified”&“Player Ⅱ”ストラトキャスターのラインアップ
“Player Ⅱ Modified シリーズ”のストラトキャスターは、定番3シングル・ノイズレス・ピックアップの“Player II Modified Stratocaster”と、ブリッジ・ピックアップが専用のノイズレス・ハムバッカーになった“Player II Modified Stratocaster HSS”、さらにロック式トレモロ・システムが搭載された“Player II Modified Stratocaster HSS Floyd Rose”の3モデル展開。



よりスタンダードな“Player Ⅱ シリーズ”には、“Player II Stratocaster”と”Player II Stratocaster HSS”という、ブリッジ・ピックアップが異なる2種のストラトキャスターがラインアップされている。

Player II Stratocaster HSS(税込価格115,500円~)
トレモロ・ユニットに注目。ブリッジに決定的な違いが


ブリッジを正面から見ると、“Player Ⅱ”(左)、“Player Ⅱ Modified(右)”は両シリーズとも2点支持トレモロ。ただし、“Player Ⅱ Modified シリーズ”ではブリッジサドルが、よりサスティーンを稼げる専用のブロックタイプへとモディファイされているのが、外観上でもわかる特徴だ。
そして、“Player Ⅱ Modified シリーズ”のストラトキャスターには、トレモロ・ユニット内部に大きな変更点が。


正面から見ただけではまったくわからないが、実はブリッジ裏からボディ内部に向かって接合されているトレモロブロックを、従来の形状から大胆にカット。これまでにないほど薄型に面取りされているのだ。
これにより、ボディ木部のザグリは“Player Ⅱシリーズ”のストラトと共通でありながら、アーム・ダウン時のトレモロ・ユニット可動域が大幅に拡大している。


上の写真で比較すると、可動域の違いは一目瞭然だろう。このブリッジは、“Player Ⅱ Modified シリーズ”で初採用された新型パーツだ。
PUは各シリーズ専用設計。Player Ⅱ Modifiedは新設計のNoiselessピックアップ


“Player Ⅱ シリーズ”のストラトキャスター各モデルは、Playerシリーズ専用ピックアップであるPlayer Series Alnico 5 Strat Single-Coilを搭載(写真左)。
一方、“Player Ⅱ Modified シリーズ”のピックアップは、コイルを縦積みにスタックしてノイズキャンセルするNoiselessピックアップ(Player II Noiseless Strat)。これはPlayer Ⅱ Modified用として新設計されたピックアップだ(写真右)。

また、“Player Ⅱ Stratocaster HSS”のブリッジ側に搭載されたハムバッカーは、Player Series Alnico 2 Humbuckerであるのに対し、“Player II Modified Stratocaster HSS”ならびに“Player II Modified Telecaster SH”は、“Player Ⅱ Modified シリーズ”専用新設計のハムバッカー、Player II Modified Humbuckerで、後述するコイルスプリットにも対応。より幅広い音作りのニーズにこたえてくれる。
“Player Ⅱ Modified シリーズ”は「プッシュ/プル・スイッチ」で音のバリエーションを強化
外観からはわからないものの、“Player Ⅱ シリーズ”にはない、“Player Ⅱ Modified シリーズ”最大の特徴と言っても過言ではないのが、「トーン2」のノブに組み込まれた「プッシュ/プル・スイッチ」だ。
3シングル、HSSというピックアップ構成によってプッシュ/プル・スイッチの挙動は異なるが、それぞれ伝統的なモデルのピックアップ・セレクターの操作だけでは得られない、より幅広いサウンドメイクに役立つ。
Player II Modified Stratocaster
~ネック側ピックアップが常時ONに~

3基のシングルコイル・ピックアップ構成の“Player II Modified Stratocaster”の場合、プッシュ/プル・スイッチ機能をオンにすると、ネック側のピックアップが常時オンの状態となる。
つまり、5Wayピックアップ・セレクターでブリッジ側PU(ポジション1)を選択しているときにはテレキャスター的な「ブリッジPU+フロントPU」が可能となり、またブリッジ側ハーフトーン(ポジション2)の状態では「ブリッジPU+ミドルPU+フロントPU(すべてのPUがオン)」にできるというわけだ。
Player II Modified Stratocaster HSS
~ハムバッカーをシングルコイル化~

ブリッジ・ピックアップにPlayer II Modified Humbuckerを搭載している“Player II Modified Stratocaster HSS”と“Player II Modified Stratocaster HSS Floyd Rose”では、プッシュ/プル・スイッチ機能でハムバッカーをコイル・スプリットし、シングルコイル・ピックアップとして使用可能。HSS構成ながら、3シングルのストラトのような運用も可能となり、非常に汎用性が高い。
弦のテンションまで計算されたヘッド周辺のモディファイ


細かなハードウェアにいたるまで、パーツのモディファイが行なわれている“Player Ⅱ Modified シリーズ”。ヘッド周りでわかりやすいのは、ビンテージ風なルックスだった“Player Ⅱシリーズ”のClassicGearチューニングマシンから、安定性の高いロック式チューナーに変更されている点だろう。
しかし、ここで特筆すべきは、“Player Ⅱ Modified シリーズ”ではすべての弦のポストが一回り背の低い「ショートポスト」化されていること。ぱっと見では判別が難しいが、側面からの比較写真を見ると、その違いがわかるはずだ。


ショートポスト化には、ナットからポストへ向かう弦が急角度になることで弦のテンションが上がり、より芯のあるサウンドが得られるというメリットがある。ストリングガイドも、クラシックなスタイルだった“Player Ⅱシリーズ”に対し、モダンなものに変わってチューニング安定性向上に貢献している。


また、フェンダーではあまり前例のない「TUSQ」ナット装備であることも、“Player Ⅱ Modified シリーズ”の特徴だろう。


Graph Tech社の人口象牙であるTUSQを用いたナットは、チューニングの安定に有効なだけでなく、音質面ではハイのピーク音域が出やすい特性があり、きらびやかなサウンドになる。もちろん、フェンダーらしいシングルコイル・サウンドとの相性はばっちりだ。
ボディ&ネックの木工部
“Player Ⅱ シリーズ”および“Player Ⅱ Modified シリーズ”におけるボディ材は、アルダーを基本として、“Player Ⅱ シリーズ”には、のちにチェンバード・アッシュとチェンバード・マホガニーが追加された。
ちなみに、“Player Ⅱ シリーズ”のストラトキャスターは、3シングルのモデルであっても、ボディにはブリッジ・ピックアップとしてハムバッカーを搭載できるだけのサイズのザグリ(穴あけ加工)が施されている。購入後にピックアップ交換を行なう場合でも、木部への後加工は必要ない。
ネックはメイプルのモダン“C”シェイプ、指板はワンピースのメイプルかローズウッドで、9.5インチ(241 mm)ラジアス、22フレット。ミディアムジャンボフレットというところまで、各モデルほぼ共通だ。
これは「誰の手にもなじみ、ストレスなく演奏できる仕様」に対する、現代のフェンダーからのひとつの解答とも言えるのかもしれない。
そして、ここで取り上げたストラトキャスターのなかで、木工部の仕様が唯一異なるのが、“Player II Modified Stratocaster HSS Floyd Rose”。

このモデルだけはフロイドローズのロック式トレモロ・ユニットおよびロックナットとの組み合わせのため、指板ラジアスがフラットな12インチとなっている。演奏性の面でも、速弾きなどテクニカルなプレイを多用する演奏者にうってつけだ。
プレイスタイル別、選ぶべきストラトキャスターは?
誰もが扱えるスタンダードで汎用性の高い“Player Ⅱシリーズ”と、そこにモディファイを加えてプレイの可能性を広げた“Player Ⅱ Modified シリーズ”。どちらも手に取りやすい価格帯のシリーズながら、初心者からベテランまで満足できる仕上がりだ。
ここで紹介した各モデルを、プレイスタイル別にオススメするなら以下のようになる。
●Player II Modified Stratocaster HSS
ハムバッカーも備えたモダン仕様でありつつ、プッシュ/プルで伝統的なストラトとしても使える「全部入り」を求める人にオススメ。
●Player II Modified Stratocaster
定番のストラトが持つルックスとピックアップ構成はそのままに、Noiselessピックアップなどのモダンなスペックによる扱いやすさを求める人にオススメ。
●Player II Modified Stratocaster HSS Floyd Rose
ハードロックやメタル、テクニカルな演奏に対応できるストラトキャスターを求めている人にオススメ。今回唯一のフロイドローズ搭載モデル。
●Player II Stratocaster、Player II Stratocaster HSS
「初めての一本」など、扱いやすく、入手しやすいストラトキャスターを検討しているなら、間違いなくオススメの一本。ピックアップ構成はお好みでチョイス。
自分に合ったスペックを選べるラインアップの豊富さはもちろん、多彩なカラー・バリエーションの存在も見逃せない、“Player Ⅱ Modified シリーズ”と“Player Ⅱ シリーズ”のストラトキャスター。
2025年最新フェンダーのスタンダードとモダンなモディファイの妙を、ぜひ店頭で手に取って体験してみてほしい。特に仕様やサウンドメイクの幅が広い“Player Ⅱ Modified シリーズ”なら、どんなプレイヤーにとっても理想的な一本が見つかるはずだ。
Fender
Player Ⅱ Modifiedシリーズ ストラトキャスター
・Player II Modified Stratocaster(税込価格 174,900円)
・Player II Modified Stratocaster HSS(税込価格 181,500円)
・Player II Modified Stratocaster HSS Floyd Rose(税込価格 187,000円)
Fender
Player Ⅱシリーズ ストラトキャスター
・Player II Stratocaster(税込価格 110,000円~126,500円)
・Player II Stratocaster HSS(税込価格 115,500円~134,200円)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp