2025年9月から2026年2月にかけて全18公演開催された高中正義のライブ・ツアー、『高中正義 SUPER TAKANAKA WORLD LIVE 2025-2026』。ここでは、本ツアーで高中が使用したサウンド・システムを解説しよう。
取材・文=小林弘昂 機材撮影=星野俊 協力=高橋順一郎、FREE THE TONE コーディネート=近藤正義
Takanaka’s Sound System
ギター・テックとFREE THE TONEが組み上げた
超大型サウンド・システム
【Gear List】
①Shure / AD4D(ワイヤレス受信機)
②FREE THE TONE / FC-449(1ループ・ボックス)※未使用
③dbx / 160X(コンプレッサー)
④FREE THE TONE/ Custom Connector Panel
⑤TC Electronic / Ditto Jam X2 Looper(ルーパー)
⑥Xotic / EP Booster(ブースター)
⑦BOSS / FB-2(フィードバッカー/ブースター)
⑧FREE THE TONE / DVL-1H(ボリューム・ペダル)
⑨FREE THE TONE / JB-82C(ジャンクション・ボックス)
⑩FREE THE TONE / ARC-4(プログラマブル・スイッチャー)
⑪Electro-Harmonix / Q-Tron+(エンベロープ・フィルター)
⑫CAJ / Custom Passive Attenuator
⑬FREE THE TONE / FC-452(アウトプット・ドライバー)
⑭Fractal Audio Systems / FM9 MARK Ⅱ Turbo(アンプ/エフェクト・プロセッサー)
⑮MACKIE / 1604-VLZ Pro(ミキサー)
⑯Avalon / U5(プリアンプ/DI)
⑰Avalon / U5(プリアンプ/DI)
⑱Mesa/Boogie / Dual Rectifier(アンプ・ヘッド)
⑲MIDAS / XL42(マイク・プリアンプ)
⑳FREE THE TONE / AS-1R(リバーブ)
㉑KORG / SDD-3000(ディレイ)
㉒Furman / PL-Plus DMC(パワー・コンディショナー)
㉓FREE THE TONE / EFS-3(ARC-4拡張フット・スイッチ)
㉔KORG / DTR-1(チューナー)
㉕TASCAM / TA-1VP(ボーカル・プロセッサー/マイク・プリアンプ)
㉖FREE THE TONE / AS-1R(リバーブ)
㉗KENTON Electronics / THRU-12(MIDIスルー・ボックス)
㉘FREE THE TONE / FC-451(MIDI PCコンバーター)
高中のギター・テックを務める高橋順一郎氏とFREE THE TONEによって設計された現在のシステム。かなり複雑な内容だが、ケーブルのイン/アウトを明確にし、トラブルのもとを減らすことでセッティングが素早く行なえるようになっている。
このシステムでは、下記の3つの信号をMIDIで管理している。
・⑭FM9用の信号
・⑱Dual Rectifier用の信号
・ボーカル用の信号
ギターからの出音は、事前に組まれた楽曲ごとのMIDIプログラム、もしくは高中の足下に置かれた⑩ARC-4を操作することで⑭FM9と⑱Dual Rectifierを切り替えているが、客席用のスピーカーからは最終的にどちらもサウンド・システム内で使用している⑮1604-VLZ Proからサウンドを出力している。これは高中がラインのハッキリとしたサウンドを好んでいるためだろう。
ギターからは、まずワイヤレスで①AD4Dに信号が送られ、そのあとはドロワー内の②FC-449を経由し、③160Xへと接続されている。
②FC-449は特注の1ループ・ボックス。エフェクターを追加する際に使用するそうだが、撮影時には何もループされていなかった。
③160Xはコンプレッサーとしてではなく、ギターを持ち替えた際の音量差を補うために活用しているとのこと。

③160Xのアウトからは、ラック下部に設置された④Custom Connector Panelの“To STAGE”というラベルが貼られた一番左側のジャックへ接続。

そして④Custom Connector Panelの“To STAGE”からは、高中の足下に置かれた右側のペダルボード内の⑤〜⑧へと接続される。
⑤Ditto Jam X2にはEXT MIC端子を用いてPAからクリックの信号を送信しており、そのテンポに合わせてギター・フレーズをループできるようになっている。以前は「SHAKE IT」でループを作っていたが、本機は操作が難しく間違えることも多かったため、現在は使用をやめたそうだ。今は⑤Ditto Jam X2の代わりに現行品のMXR Dyna Compを入れているとのこと。
Dyna Compは「OH! TENGO SUERTE」のようなクリーン・トーンでスライドをプレイする楽曲で使用し、サステインを伸ばしている。しかし、オンにするとスイッチング・ノイズが乗ってしまうため、⑧DVL-1Hでボリュームを絞ってからオンにするという。
⑥EP Boosterのノブはゼロ位置で常時オン。高橋氏曰く、“高中さんに聞いたわけじゃないですけど、おそらく音を太くするために使っていると思います”とのこと。
⑦FB-2はモデル名のとおりフィードバックが必要な楽曲がいくつかあるため、その時々でオンにしているという。本来であれば本機を用いず、ギターをステージ・モニターに近づけてフィードバックさせたいそうなのだが、高中曰く“それが上手くいくかどうかは運なんだよね”とのことで、仕方なく使用しているのだとか。
⑧DVL-1Hは歪みをクリーン〜クランチまで落としたり、「渚・モデラート」や「哀愁のヨーロッパ」や「YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE」などではボリューム奏法も行なっている。「哀愁のヨーロッパ」では最後にボリュームを絞りきったあと、高橋氏がマイクを持って高中のピッキングの生音を拾いに行くこともあり、これが海外ではウケるのだそう。本機のチューナー・アウトからは、中央のボード内の⑨JB-82Cを経由して㉔DTR-1に接続されている。
ちなみに、右側のボードの空いているスペースにはディレイや歪みに対応するエクスプレッション・ペダルを入れていたが、撮影時のライブではすでに使われておらず、取りはずされていた。現在は同じ場所に現行品のワウを入れているとのこと。
⑧DVL-1Hのアウトからは、⑨JB-82Cを経由して⑩ARC-4へインプット。⑩ARC-4のLoop 1には、⑨JB-82Cと④Custom Connector Panelを経由し、ラック内のドロワーに収められた下記2台のペダルがループされている。
・Loop 1=⑪Q-Tron+ → ⑫Custom Passive Attenuator
⑪Q-Tron+は「OH! TENGO SUERTE」でオンにしていた。後段に接続されている⑫Custom Passive Attenuatorは、ボリュームを下げるための特注エフェクター。⑪Q-Tron+はオンにすると音量が極端に上がってしまうため、⑫Custom Passive Attenuatorで抑えている。本機は電源不要のパッシブ駆動だ。
以前は⑩ARC-4のLoop 3もしくはLoop 4にトーキング・モジュレーターを接続し、「OH! TENGO SUERTE」などで使用していたが、現在ははずされている。

⑩ARC-4からの出力はOUT-AとOUT-Bから2系統出ており、どちらも⑬FC-452に接続。ここで2つに信号が分かれ、⑬FC-452のA-OUTからは⑱Dual Rectifierへ。B-OUTからは⑭FM9へとつながれている。
グランド・ループによるノイズ対策のため、⑬FC-452でアンプ側に送る信号と、ライン側に送る信号のグランドをアイソレートしているとのこと。
⑭FM9は高中のサウンドを担うメインの機材で、楽曲ごとに本人が細かくプリセットを作成している。そのため、高橋氏もどのような音色がプリセットされているかは把握できていないという。
ディスプレイに表示された文字から、Mesa/BoogieやDiezelのアンプ・モデルを始め、ディストーション、ディレイ、コーラス、ピッチ・シフター、ランダム・アルペジエーターなど、様々な音色を使い分けているのが確認できた。
⑭FM9の信号はステレオ・アウトで出力し、④Custom Connector Panelを経由して、ラックの上に置かれた⑮1604-VLZ Proの1chと2chにインプットされる。そして⑮1604-VLZ ProのMAIN OUT-LとMAIN OUT-Rからは⑯⑰U5に接続され、PAに信号が送られるというわけだ。
⑱Dual Rectifierは「SHAKE IT」、「渚・モデラート」、「Saudade」など数曲のみで使用。ちなみに「Saudade」では、本機の歪みサウンドと⑭FM9で作成したRectifierのモデリング・サウンドを4小節ごとに交互に鳴らして遊ぶこともあるのだそうだ。
⑱Dual Rectifierのスピーカー・アウトからは、ステージ袖に置かれたサイレント・ボックスに接続される。サイレント・ボックス内にはALTECのスピーカーが収納されており、スピーカーからの出音をマイクで収音。そして、その音はラック内の⑲XL42に送られ、ドロワーに収納された⑳AS-1Rへ。⑳AS-1Rからステレオ・アウトになり、㉑SDD-3000を経由して⑮1604-VLZ Proの15chと16chへ接続。こちらも最後に⑯⑰U5からPAに信号が送られる。
高橋氏曰く、“㉑SDD-3000は再生能力が高く、ディレイ音は実音からほとんど劣化しない”そうだ。そのため高中は、短いフレーズを弾いたあと㉑SDD-3000でディレイさせ、その間にアクションを行なうことがあるという。ほかにはパンニング・ディレイを使用することも。
ここまでがギター・サウンドの信号の流れとなる。
高中は2つのマイクをセットしている。1つはMCと「トーキョーレギー」などでのノーマル・ボーカル用、もう1つはエフェクトをかけたボーカル用だ。
エフェクト・ボーカル用マイクからの信号は、ラック内の㉕TA-1VPを経由して㉖AS-1Rへ。㉖AS-1Rからステレオ・アウトになり、⑮1604-VLZ Proの3chと4chに接続。そしてこちらも⑯⑰U5からPAに信号が送られる。『Takanaka Sings』(2013年)の頃に導入した㉕TA-1VPでオートチューンをかけているとのこと。

これらすべての機材はMIDIを用いてコントロールされている。その核にあるのはライブ中に高橋氏が操作するMacBookと⑩ARC-4なのだが、⑩ARC-4のMIDI設定が複雑だそうで、ラック裏に設置された特注の㉘FC-451で信号をMacBook用に変換しているとのこと。
このようなMIDIプログラム・ナンバーは本来ギター・テックが作成することが多いのだが、なんと高中は毎回すべての作業を本人が行なっているそうで、ライブ前に高橋氏と“ここで何番を押してくれ”という打ち合わせをしたり、高橋氏への指示を書いた付箋を事前にMacBookなどに貼っておくのだそう。
2025年9月12日(金)かつしかシンフォニーヒルズ
【Setlist】
01. BLUE LAGOON
02. RADIO RIO
03. BELEZA PULA
04. BRASILIAN SKIES
05. JUNGLE JANE
06. Illusion
07. SUMMER YOU
08. SHAKE IT
09. 渚・モデラート
10. Mido
11. OH! TENGO SUERTE
12. トーキョーレギー
13. SEXY DANCE
14. Saudade
15. PALM STREET
16. M 5
17. TROPIC BIRD
18. READY TO FLY
-Encore-
19. Jumping Take Off
20. YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE
ギター・マガジン2026年10月号
『ソロ・デビュー50周年総力特集 高中正義』
9月11日(金)発売のギター・マガジン2026年10月号では、世界的にムーブメントを巻き起こしているTAKANAKAサウンドを、本人インタビューや最新使用機材の紹介、奏法分析など多角的に分析する総力特集を掲載。

















