アルバート・コリンズの十八番フレーズ3選!〜オープンFmで鋭く切れ込む“凍結”サウンド アルバート・コリンズの十八番フレーズ3選!〜オープンFmで鋭く切れ込む“凍結”サウンド

アルバート・コリンズの十八番フレーズ3選!〜オープンFmで鋭く切れ込む“凍結”サウンド

毎週、1人のブルース・ギタリストに焦点を当てて深掘りしていく新連載『ブルース・ギター・ヒーローズ』。ここではアルバート・コリンズの十八番フレーズを紹介しよう。

文/譜例作成=久保木靖

まず、アルバート・コリンズのチューニングを確認しよう。図1のように1弦から6弦へ[F-C-A♭-F-C-F]とするオープンFmチューニングだ。1〜3弦はすべて半音上げなので、この部分に関してのフィンガリングは一般的なチューニング同様。

アルバート・コリンズのチューニング

その上で、開放弦を効果的に活用するため、カポの使用を欠かさない。ちなみに、これはゲイトマウス・ブラウンからの影響だ。そして、右手は親指と人差指で弦を鷲掴みにするようにはじくフィンガー・ピッキングである。

◎Phrase 01 “冷ややかさ”を演出するスタッカート

◎Phrase 01 “冷ややかさ”を演出するスタッカート

譜例は代名詞的な曲「Frosty」(Key=D)の冒頭フレーズを模したもので、最初の音はまさに親指と人差指ではじいている。2拍目のF音(3弦開放)を短く切る(スタッカートする)ことで、“冷ややか”なニュアンスとなっていることに注目したい。

なお、五線は実音、TAB譜はカポをつけたフレットを0fとするフレット数をしるしている(以下同)。

◎Phrase 02 凶暴な印象の“切り込み→畳み込み”

◎Phrase 02 凶暴な印象の“切り込み→畳み込み”

コリンズの常套フレーズとして、“フレーズの1発目の音を切り込むように伸ばして、最後は畳み込む”というのがある。ソロでよく見られる技だが、ここでは代表曲「Too Tired」(Key=A)の冒頭部分をサンプルとして紹介したい。

譜例のように、1音目(2弦3フレットから5フレットへのスライド)は4分音符をしっかりと伸ばし、2拍目から3連符で下行、4拍目のハンマリングは音を短く切る。これで“切り込み→畳み込み”という図式を成立させている。マイナー・ペンタトニック・スケールに♭5th(E♭音)と3rd(C#音)を加えた音使いだ。

なお、全休符となっている2小節目は、『Ice Pickin’』では同じフレーズをオルガンがくり返しているが、ゲイリー・ムーアの『Still Got The Blues』バージョンでは、1小節目をムーアが弾き、2小節目でコリンズが同じフレーズをレスポンスしている。

◎Phrase 03 親指と人差指で爪弾くオクターブ奏法

◎Phrase 03 親指と人差指で爪弾くオクターブ奏法

親指と人差指によるフィンガー・ピッキングを最大限に活かしたオクターブ奏法もコリンズの得意技だ。

譜例はスロー・ブルース「The Highway Is like A Woman」(Key=G)のソロの出だしを参考に作ったもの。1弦開放と4弦開放がオクターブ違いの同音であることから、下の図2に示すように、同じフレットを爪弾いていくだけでオクターブ奏法が成立する。

図2

全体の音使いはマイナー・ペンタトニック・スケールに3rd(B音)や6th(E音)を加えたもので、これはT-ボーン・ウォーカーに代表される、ジャズからの影響の色濃いテキサス・ブルースならではのもの。