デヴィッド・リンドレーの名演に酔いしれて。 デヴィッド・リンドレーの名演に酔いしれて。

デヴィッド・リンドレーの名演に酔いしれて。

3月3日に逝去したギタリスト/マルチ弦楽器奏者=デヴィッド・リンドレー。セッション・ギタリストとして、そしてソロ・アーティストとして数々の名演を残した故人の足跡をたどるべく、2つのプレイリストを作成した。

文/選曲=山本諒 写真=Photo by Aaron Rapoport/Corbis/Getty Images

リンドレーの歌心をとことん味わう!

デヴィッド・リンドレーという偉人のプロフィールはこちらに譲るとして、とにかく彼の素敵な演奏をたっぷり聴くことが彼を偲ぶ最も良い方法だろう。マルチな弦楽器奏者ゆえにフィドルやマンドリンなども弾くリンドレーだが、ここではギター・プレイに絞ってプレイリストを2つ作成した。ぜひ味わってほしいのは、氏の抜群の歌心。どちらも楽曲のムードを重視した、メロディアスなプレイがキラキラと輝いている。

トロピカル・リンドレー(ソロ・ワーク名演集)

まずはソロ名義で発表した楽曲を中心にピックアップ。ソロ活動を始めた80年代、リンドレーはおもにレゲエを基調としたワールドワイドなトロピカル・ミュージックを志向した。自身のバンド、エル・ラーヨ・エキス(El Rayo-X)名義でリリースされた『El Rayo-X』(81年)や『Win This Record』(82年)、『Very Greasy』(85年)など、とにかく快活で晴れ渡ったサウンドが魅力的だ。しんみりした気分から解放されて、とにかく楽しんで聴いてほしい。

また、アメリカのギタリスト=ヘンリー・カイザーとのコラボレーションで制作した90年代のワールド音楽作品群からも選曲した。マダガスカルの現地ミュージシャンらと録音した『A World Out Of Time Vol.1』(92年)からチョイスした「Hana」はぜひ耳を傾けていただきたい。ご存知、沖縄が誇る名曲「花〜すべての人の心に花を〜」(喜納昌吉&チャンプルーズ)のマダガスカル・カバー(!)である。楽園感溢れるサウンドをバックに、とろけるようなスライドを披露するリンドレーの表現力に酔いしれよう。

 

センチメンタル・リンドレー(70’sサポート名演集)

続いては、サポート・ギタリストとして参加した楽曲からセレクト。最も有名なのは、長きに渡る盟友=ジャクソン・ブラウンとの仕事だろう。特に3rdアルバム『Late For The Sky』(74年)は、リンドレーの持ち味であるメロディ・センスが炸裂した屈指の名盤である。得意とするスライドだけでなく、通常の押弦プレイでも存在感が大きく、エイモス・ギャレットばりのとろけるようなプレイを披露している。

その他、ライ・クーダーのサイド・ギタリストとして参加した楽曲や、グラハム・ナッシュ、ジェームス・テイラーとの仕事もピックアップ。リンドレーのソロ名義で体現したレゲエ〜ワールドな作風と異なり、本プレイリストはまさに豊穣なるアメリカン・グッド・ミュージックの宝庫といった趣。外で焚き火でもしながら、ぜひ聴いてみてはいかがだろうか。