岡田拓郎が選ぶ、マーク・リーボウの多才なる世界を覗くプレイリスト 岡田拓郎が選ぶ、マーク・リーボウの多才なる世界を覗くプレイリスト

岡田拓郎が選ぶ、マーク・リーボウの多才なる世界を覗くプレイリスト

ギター・マガジン2026年8月号では、ジャンルや時代を軽やかに横断しながら、唯一無二のギター像を築いてきたマーク・リーボウのロング・インタビューを掲載。今回、ギタリスト/音楽家・岡田拓郎が、そんなマーク・リーボウの美意識を辿るために選んだプレイリストを公開。ジョン・ゾーンやトム・ウェイツ、カサンドラ・ウィルソンらとの名演はもちろん、ソロ名義や初期録音、そして〈Marc Ribot y Los Cubanos Postizos〉までを並べることで、40年以上にわたって変わることのない彼の音楽観が浮かび上がる。雑誌インタビューで語られた言葉とあわせて聴けば、マーク・リーボウというギタリストが、なぜこれほど多くの音楽家から信頼され続けているのか、その理由もきっと聴こえてくるはずだ。

デザイン=猪野麻梨奈

伝統と前衛が同居する、マーク・リーボウの肖像。

Okada’s Comment

 ふといつだかの記憶で、伝統を受け継ぐ姿勢と前衛的な態度が同居していることを言い当てた言葉があったような気がして、辞書を開いてみたがそんな言葉はなく、そんな言葉があればマーク・リーボウの音楽を上手く言い得ることができるのにな、などと考えていました。

 おそらく彼の演奏を初めて聴いたのが、YouTube黎明期の動画で、ジョン・ゾーンのアコースティック・マサダで演奏しているのを観たときのことだったと思います。リア・ポジションを使いながもブリッジきわきわを力強く弾く姿が目に映り、そこから飛び出してくる金属的でありながらも温かみのあるトーンとがあまりにも一致していたのが印象的でした。

 “そう! ギターはこうやって弾くんだ!”

 繊細でアコースティックなタッチを聴かせたかと思えば、かつてのブルースが持っていた埃まみれのざらついた響きを鳴らす。90年代には、名実ともにトップランナーたちの未来的なサウンドの中にクラシカルな語法を持ち込むことで、”先鋭”という言葉が時間とともに古びてしまうことを知っているかのような、歴史時間から少しだけはみ出したような感覚を逆説的に獲得していったかのようでした。

 また、アメリカ生まれの彼が、自国と長く緊張関係にあるキューバ音楽へ深く傾倒し、その抗いがたい身体性を自らの演奏へ取り込み、そして第一次トランプ政権下には、かつてレジスタンスのために歌われた音楽が現代においてもなお意味を持ち得ることを示し続けてもいます。

 彼のアティテュードは、その横断的で理性と身体性を行き来するギター・プレイや、彼の生み出す音楽そのものから聴き取ることができます。そして、彼にとっておそらく初めての録音であるEmile Yoan and the Ancestorsでの演奏から、常に一貫した美意識も感じずにはいられません。

──岡田拓郎

Track List

  1. These Foolish Things / Marc Ribot
  2. Gevurah / John Zorn
  3. Daddy’s Trip To Brazil / Marc Ribot
  4. Fat Man Blues / Marc Ribot
  5. Goodbye To Peach / John Lurie
  6. Poem / Emile Yoan and the Ancestors ※サブスクリプション上では配信されておりません。
  7. Spirits / Marc Ribot
  8. Lost / Cassandra Wilson
  9. House Where Nobody Lives / Tom Waits
  10. Choserito Plena / Marc Ribot Y Los Cubanos Postizos

岡田拓郎

1991年生まれ、東京都福生市出身。2012年より森は生きているで活動を開始、2017年『ノスタルジア』よりソロ名義でも始動。柴田聡子や優河、never young beachなどをはじめ、サポート、プロデューサー、エンジニアとして多方面で活躍。ソロ名義の最新アルバムは『Konoma』(2025年)。7インチ・シングル「Still Water」が2026年8月17日に発売。

Bandcamp:https://hitujiotoko22.bandcamp.com/album/konoma
X:https://x.com/outland_records
Instagram:https://www.instagram.com/okd_tkr/?hl=ja

ギター・マガジン2026年8月号
長渕剛 永遠不滅のうた

2026年7月13日(金)発売のギター・マガジンでは、FRUEZINHO 2026で来日したマーク・リーボウのインタビュー&機材を掲載。偽キューバ人たちでのキューバ音楽への向き合い方、ルーツへの距離感、使用機材など1万字超えのインタビューと共にお届け。