古市コータローが語る『ジューシーマーマレード』“バンド史上最高の状態”で生み落とされたザ・コレクターズの“現在” 古市コータローが語る『ジューシーマーマレード』“バンド史上最高の状態”で生み落とされたザ・コレクターズの“現在”

古市コータローが語る『ジューシーマーマレード』
“バンド史上最高の状態”で生み落とされたザ・コレクターズの“現在”

1986年の結成以来、35年以上の長きにわたり音楽シーンを牽引しているザ・コレクターズが、25枚目のアルバムとなる『ジューシーマーマレード』を完成させた。バンドのルーツであるブリティッシュ・ロックの魅力が凝縮された快作に仕上がっており、アコースティック・ギターで描き出す叙情的な世界から、骨太なリフが楽曲をリードするロック・ナンバーまで、最新型のザ・コレクターズをたっぷりと堪能することができる。バンドのギタリストとして、アンサンブルの屋台骨を支える古市コータローにアルバム制作を振り返ってもらった。

取材・文:尾藤雅哉(ソウ・スウィート・パブリッシング) 写真:後藤倫人

今のコレクターズは
これまで活動してきた中で
バンドの状態が一番良い

2022年は、コレクターズの武道館公演を皮切りに、ソロとして新作アルバム『Yesterday, Today&Tomorrow』を発表するなど精力的に活動していましたね。この1年を振り返ってみていかがですか?

 今年はレコーディングとライブで1年が終わってしまいましたね。特に3月に武道館をやってからは、あっという間だったかな。さらに自分のソロ・アルバムのリリースとツアーに加え、春にはアラバキ(ARABAKI ROCK FEST)の“GTR祭2022”(※同フェス恒例のギター・セッション企画)みたいなプロジェクトもあったりして。

武道館公演はいかがでしたか?

 コレクターズとしては二度目の武道館ワンマンだったんだけど、武道館のステージに立つこと自体は4回目なんです。だからステージの感覚もつかめていたので、凄く良い感じでやれましたね。

武道館公演の成功は、今回のアルバム制作にも影響がありましたか?

 ありました。武道館で凄く良いライブができたこともあって、バンドの状態も良くなったんですよ。その雰囲気のままアルバムのレコーディングに入れたのも良かったですね。

“バンドの状態が良い”と感じる具体的なポイントは?

 シンプルに、今、このバンドで音を出すのが本当に楽しいんだよね。ライブで演奏するのが楽しいし、お互いの信頼関係も良いバランスになってきた。なのでセールスまわりに関してはレーベルのスタッフなどサポートしてくれる人たちにお任せして、俺たちは無邪気にバンドをやるのが一番良いんだろうなって感じよ。

 “バンドで何が一番大事なんだろう?”って考えたら、やっぱり“演奏に没頭できること”だと思う。音楽をやる上での原点だよね。ひょっとしたら今のコレクターズは、これまで活動してきた中でバンドの状態が一番良いんじゃないかな。

古市コータロー(g)

新作『ジューシーマーマレード』は、どのような作品に仕上がりましたか?

 “最新型のザ・コレクターズ”としか言いようがない作品になったね。何か特別なコンセプトがあるわけではないんだけど、曲を書く時に、リーダー(加藤ひさし/vo)には“何か好きなことに振り切ったら?”みたいな話はしたね。

様々なブリティッシュ・ミュージックの魅力が凝縮された1枚だと感じました。

 そうだね。バンドのルーツは間違いなくその辺だから、本当にザ・コレクターズらしいと思うよ。

曲はどのように作っていったんですか?

 曲の作り方は2ndアルバムからずっと変わっていないんだ。リーダーが弾き語りで作ってきた曲をバンドでアレンジしていくってスタイルだね。そうやってできあがっていった曲を順番に録っていく感じかな。制作に関しては、特に悩むこともなく順調だったね。

ギターの音作りはどのように?

 基本的なリズム・ギターはアンプで録るんだけど、それ以外のダビング・パートはほとんど(Line 6)POD。もちろんアコギはマイクで録るけど。

今回のアルバムは、アコギがポイントになっている曲も多いですよね。

 結果的にそういう仕上がりになったよね。「ジューシーマーマレード」や「GOD SPOIL」なんかは“アコギの曲”って感じだもんね。

中でも「GOD SPOIL」からは、ブリティッシュ・フォーク的な雰囲気を感じました。

 たしかにあるね。この曲は指で弾いているんだけど、指弾きはもともと得意じゃなかったんだ。でもコロナで自粛している時に自宅で指弾きばかりしていたら、だんだん慣れてきて。アコギの録音だけはどうやってもごまかしが効かないんで、少しでも慣れようと思ってかなり練習したね。

 フィンガーピッキングって、昔はフォークの人みたいになっちゃうから少し敬遠していたんだけど、だんだんと良さに気づいたというか。

エレキ・ギターのアルペジオも織り込まれていますよね。

 エレキでアコギをフォローするようなイメージで弾いたかな。「GOD SPOIL」って、ライブだとすべてエレキで弾いているんだ。こないだファンクラブのイベントでもすべてエレキでやったんだけど……悪くなかったね。

 サステインがあり過ぎるのは嫌だからギター本体のボリュームをかなり絞って弾いています。ツアーが始まって何回かやっていくうちに、もっと良いポイントが見えてくるんじゃないかな。

コレクターズのライブだと、コータローさんがアコギを弾く場面はほとんどないですよね。

 もうほとんどないね。アコギを弾くとしたら、ソロのライブの時くらいかな。ソロ活動をやるようになって、自分が歌うことが増えたことも関係しているかもしれないね。

 弾き語りでライブをやるようになって、アコギという楽器に対してずいぶん慣れたこともあって。以前だと、アコギを弾くってことはレコーディングの時だけの特別なことだったりしたんだけど、最近は凄くアコギが身近な存在になったかな。

古市コータロー(g)

ギター・ソロよりもバッキングのほうが100倍楽しい

「パレードを追いかけて」のイントロの、ブーミーに歪んだギター・サウンドも印象的でした。

 ベーシックは、マーシャル(※1975年製のLead & Bass 50 Combo)にギターを直でつないで弾きました。バッキングに関しては、何も(エフェクターは)踏んでいませんね。

マーシャル・アンプの使用歴も長くなりましたね。

 そうだね。手に入れたのが2015年だから、もう長い付き合いになってきたけど、今ではES-335でこのマーシャルを鳴らす音が、“ザ・コレクターズの音”って感じがする。

基本となるセッティングは?

 ベースは10、ミドルは7~8、トレブルが4くらいで、プレゼンスが2~3くらいかな。年月が経ってるからか、高音域がうるさくないのよ。トレブルの感じが嫌じゃない。凄く良いよ。

「もっともらえる」は、コータローさんの真骨頂とも言えるロックなバッキング・ワークをたっぷりと堪能できる1曲です。

 ザ・コレクターズ節とも言えるような曲だよね。ああいうバッキング・ギターは得意技です。

シンプルだからこそ、カッコよくかき鳴らすのが難しいプレイだと感じました。

 そこは10代の頃からずっとこだわってきたところなんだよね。簡単そうなんだけど、実際にやってみると簡単じゃないというか。激しく弾いているように見えて、実はフェザー・タッチ。そういうところには昔からこだわって、自分なりの“鳴らし方”を探してきたんだよね。

 やっぱり理想とする音やプレイっていうのが自分の中に絶対にあるわけじゃん? 常にそれを探してやっているから、プレイヤーとしてちょっとずつ進化しているのかもしれないけど……基本的な部分でギターとの向き合い方はずっと変わっていない気がする。

「イエスノーソング」は、ヘヴィなサウンドでかき鳴らすバッキングと長尺ソロが印象的でした。

 この曲は、リーダーが“ヘヴィにやりたい”ってところからできあがった曲ですね。

この曲では16小節のソロを披露していますが、ほかの楽曲ではコンパクトなソロにまとめられている傾向があります。

 そうだね。俺自身、あまりギター・ソロ・タイプのギタリストじゃないのよ。バッキングをやっているほうが100倍楽しいってことは事実だね。自分がギターでアピールしているポイントっていうのは、やっぱりバッキング。バンドでギターを弾き始めた頃から、そのスタンスは変わっていないよ。

 ソロを弾くのも嫌いじゃないんだけど……俺の場合、ソロなんて8(小節)あれば十分だよ(笑)。

「長い影の男」は、ハイ・フレットでウネるベース・ラインに対して、ギターは白玉のフレーズやトレモロなど効果音的なアプローチです。

 自分としては、80年代のニュー・ウェイブみたいな雰囲気を狙ったよ。トレモロとかのエフェクトは、すべてPOD。ギターを弾いていると、“このフレーズにはエフェクトがかかってるほうがいいな”って思いついたりするから、そういう時にPODを使って音を細かく作り込んでいく感じかな。

なるほど。ではレコーディングで一番活躍した機材は……。

 間違いなくPODだね。昔からある赤色の豆みたいなやつ。

こんなにも良い音で録れるんですね。

 アンサンブルに対して、自分が鳴らしたい音のシミュレーションがしやすいから、PODを使うほうが結果的に良い方向に進むことが多いんだよね。そういえば今回、エンジニアから“コータローさん、PODで音を作るのがうまいですね”って言われたな(笑)。

「アサギマダラ」は、アコースティックの12弦ギターがフィーチャーされたナンバーです。

 ちゃんと鳴らすのは難しかったね。弾きにくいし、指は痛いし……大変でした。この曲は、作曲者であるリーダーから“全編にわたって12弦が鳴っているイメージ”と言われたので、頑張って弾きましたね。モデル名は覚えていないんだけど、たしかギルドのギターじゃなかったかな。スタジオでレンタルしたモデルです。

「ヒマラヤ」では、ワウを駆使したギター・ソロも耳に残りました。

 ワウはもう自分にとってはスニーカーみたいなもので、一番欠かせないエフェクターであることは間違いないね。ペダルをゆっくり開いていくような奏法からリズミカルなプレイまで色んなことが表現できるし、ちゃんと音が変わったということがわかるというのも良いよね。

ワウ以外にも欠かせない機材はありますか?

 特にはないんだけど、ピックはオニギリ型で厚さがヘヴィ(約1.0mm)じゃないと困る。最近、アコギを弾く時はミディアム(約0.70mm)に変えてみたんだけど、それはそれでアリだったな。ただ、エレキ弾く時は、もう絶対ヘヴィじゃないと無理だね。

古市コータロー(g)

なるほど。改めてアルバムで使用した機材について教えて下さい。

 ギターは、いつものギブソンのES-335と、エキゾチックのTLタイプ。基本的には、もうほとんどES-335でやってますね。シェア率で言えば90%以上は335。手に入れてから20年以上使い続けているから、もう完全にオールド・ギターだよね。今回のレコーディングで、リッケンバッカーを使ってみた曲があったんだけど……ちょっとES-335でもやってみようかって持ち替えたら、やっぱり335のほうが圧倒的にザ・コレクターズっていう音だったんだよ。

 アンプは、マーシャルのLead & Bass。エフェクト系はPODと、マクソンのOD-880も使ったかな。ワウは、もう25年くらい使い続けてるVOX。全然壊れないね。

ちなみに今、気になっているギターはありますか?

 ES-345がちょっと気になっていて……できればバリトン・スイッチが付いているモデルが欲しいね。

作品制作を終えて、改めて一言お願いします。

 ソングライティングにしても、バンドのアレンジにしても、原点的なものを感じる。だから“結局、俺らってこうだよね”ってアルバムになったかな。さっきも話したけど、凄く“今のザ・コレクターズ”が表現された作品だと思います。

LIVE INFORMATION

THE COLLECTORS Live Tour 2022 “Lick the marmalade!”

11月27日(日)柏・PALOOZA 開場 16:00/開演 16:30
12月4日(日)札幌・SPiCE 開場 16:00/開演 16:30
12月10日(土)名古屋・CLUB QUATTRO 開場 15:45/開演 16:30
12月11日(日)大阪・BIGCAT 開場 15:45/開演 16:30
12月17日(土)福岡・CB 開場 16:00/開演 16:30
12月18日(日)岡山・YEBISU YA PRO 開場 16:00/開演 16:30
12月24日(土)仙台・darwin 開場 16:00/開演 16:30

Information

チケット料金: 前売 ¥5,200/当日 ¥5,700(スタンディング/D代別/税込)
TOTAL INFORMATION: VINTAGE ROCK std.
→ TEL.03-3770-6900[平日12:00-17:00]
WEB http://www.vintage-rock.com/


THE COLLECTORS CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE 2023

会場

渋谷CLUB QUATTRO

日程

2023年1月15日(日)
2023年2月12日(日)
2023年3月12日(日)
2023年4月16日(日)
2023年5月14日(日)
2023年6月11日(日)
2023年7月16日(日)
2023年8月13日(日)
2023年9月10日(日)
2023年10月15日(日)
2023年11月19日(日)
2023年12月10日(日)

時間:OPEN15:15 START16:00
チケット代:¥5,200(前売、ドリンク代別)

※情報は記事公開時のものです。最新のチケット情報や公演詳細はTHE COLLECTORS公式HPをチェック!

作品データ

ジューシーマーマレード
ザ・コレクターズ

コロムビア/COCP-41913/2022年11月23日リリース

―Track List―

  1. 黄昏スランバー
  2. ジューシーマーマレード
  3. GOD SPOIL
  4. パレードを追いかけて
  5. 裸のランチ
  6. もっともらえる
  7. サンセットピア
  8. イエスノーソング
  9. 負け犬なんていない
  10. 長い影の男
  11. アサギマダラ
  12. ヒマラヤ

―Guitarist―

古市コータロー