マック・デマルコが2026年2月の来日公演で使用したシステムを本人が解説! マック・デマルコが2026年2月の来日公演で使用したシステムを本人が解説!

マック・デマルコが2026年2月の来日公演で使用したシステムを本人が解説!

2026年2月、マック・デマルコが6年ぶりの新作『Guitar』を引っ提げた全国5箇所の来日ツアーを行なった。東京公演に際して、ギター・マガジンWEBではマックに初の対面インタビューと機材撮影を敢行。本記事では、マックが使用したシステムを本人の解説付きでご紹介。

取材・文=小林弘昂 通訳=トミー・モリー 機材撮影=星野俊

Mac DeMarco’s Effects

ギター・プロセッサーのIR機能と
ラック・エフェクターを活用

【Gear List】
①BOSS / DD-8(ディレイ)
②BOSS / TU-3(チューナー)
③Kemper Amps / Profiler Stage(ギター・プロセッサー)
④Alesis / MicroVerb 4(マルチ・エフェクター)
⑤Furman / M-8X2(パワー・コンディショナー)

ギターからの接続順は、まずアンプのハードケースの上に置かれた①DD-8と②TU-3を通り、足下の③Profiler Stageにインプット。③Profiler Stageの標準ジャック・アウトからはモニター用のBOSS KATANA-50 GEN 3につながれ、XLRアウトからはPAに信号が送られている。

③Profiler Stageのセンド/リターンには④MicroVerb 4が接続されており、MIDIを活用して③Profiler Stage側でプリセットを呼び出しているという。

以前のライブではコンパクト・エフェクターと実機のフェンダーVibro Champを使用していたが、IR機能が目的で6年ほど前に③Profiler Stageを導入。おもにVibro Champをプロファイリングしたクリーン・サウンドを使用している。しかし、6年前に取り込んだものを現在も使い続けているため、IR機能が優れたもう少し小型のギター・プロセッサーの導入を検討しているとのこと。

③Profiler Stage内のエフェクトは、プリセットによってコンプレッサー、ブースター、ディレイ、リバーブを使用。

使用しているプリセットは下記の5つ。

[1] Vibro Champモデリングのクリーン
[2] Vibro Champモデリングのクリーン+④MicroVerb 4のプリセット・プログラム37番(Classic stereo chorus)
[3] Vibro Champモデリングのクリーン+④MicroVerb 4のプリセット・プログラム84番(Chorus and delay into a bright room, for rhythm guitar)
[4] Vibro Champモデリングのクリーン+④MicroVerb 4のプリセット・プログラム82番(Fluid flange/delay/room program for guitar)
[5] Vibro Champモデリングのクリーン+④MicroVerb 4のプリセット・プログラム44番(Faster, shallow stereo flange)

基本的には[2]〜[4]の3つのプリセットを使い分けており、[2]はビブラート、[3]はコーラスがかかったメインの音色、[4]はコーラスとショート・ディレイにセッティング。[4]はあまり使用しないが、このサウンドでレコーディングした楽曲があるため一応スタンバイさせているのだという。「Freaking Out The Neighborhood」では[5]を呼び出す。

④MicroVerb 4のINPUTノブは3時手前、MIXノブはMAX、OUTPUTノブは2時方向にセッティングされていた。

マックが④MicroVerbと出会ったのは19歳の頃。カナダのエドモントンとモントリオールで目にし、エフェクト然としたものにトライしてみたかったこともあり試してみたという。のちにケヴィン・シールズがMidiVerb Ⅱを愛用していることを知るが、いまだにトライできていないとのこと。

今回のツアーから導入された①DD-8は発振専用で、WARMモードに設定して「Moonlight On The River」で使用。FEEDBACKノブをMAX、TIMEノブをゼロ位置にし、E.LEVELノブをいじって音量をコントロールしていた。

Amplifier

BOSS
KATANA-50 GEN 3

マックの背後には、日本でレンタルしたBOSSのKATANA-50 GEN 3が置かれていた。マイキングはされておらず、ステージ上でのギター・サウンドのモニター用として使用。

Interview

時々、機材から離れようとするんだけど、
長くは続かなくてね。

あなたの足下にギター・プロセッサーが置かれていて驚きました。

Kemper Stage(③)を使っているんだけど、そんなにいろいろやっているわけじゃない。ほとんどは自分が持っている小さいアンプのIR(インパルス・レスポンス)として使っているんだ。昔の作品は、実はおばあちゃんからもらったフェンダーのVibro Champで録っていたんだよ。

なぜ今になってKemper Stageを導入したんですか?

コロナ禍の初めの頃まで、KemperのIRでアンプをプロファイリングできることに気づいてなかったんだよね。しかもKemperではオリジナルのアンプよりもゲインを足すことができて、オーバードライブも生み出せるんだ。僕はKemperにAlesisのMicroVerb 4(④)を組み合わせている。

以前のライブでは足下にコンパクト・エフェクターを並べていましたが、ついにMicroVerbを使うようになったんですね。

Kemperのナイスなところは、MIDI信号を送れるところだ。これまでAlesisをあまり使わなかった理由の1つは、プリセットを変えるたびに、いちいちしゃがんでボタンを押さなきゃいけなかったからでね。でもMIDI接続したKemperならスイッチを踏むだけで済む。

Alesisは壊れやすくて、今はたぶん25台くらい持っていると思うな。つい先月、“Reverb.com”が“マック・デマルコのギター・サウンドを紐解く”みたいな動画を作ったんだけど、その動画のおかげかMicroVerbの価格が上がっちゃっていたよ。でも僕はその動画が公開される前の週に、ネットでほとんど買い占めちゃったんだよね。新幹線に乗っている時にもその動画の話をしていて、“オンラインで見つけたら全部買い続けよう!”と思って何台か買ったんだ。

先手を打ったんですか(笑)。

パット・メセニーは“誰にも自分の音を使わせないぞ!”とRolandの青いギター・シンセを買い占めていたらしいけど、僕も同じ気持ち。想像してみてよ、僕のスタジオに来たらAlesis MicroVerbが壁一面にあるところを。バカみたいだけど最高だろ(笑)? だから買い続けてるんだ。

素晴らしいです(笑)。

でも、機材を買い始めた頃はこんな感じではなかったんだ。レコーディングを始めたばかりの頃は情報がほとんどなくて、“Reverb.com”も存在していなかったからね。今なら簡単に価格を調べたり、リサーチしたりできるけどさ。MicroVerbは、当時、道を挟んだ向かいに住んでいた友人から買ったんだ。“いくらが妥当かわからないけど60ドルでいいよ”って言うから、“じゃあ買うよ”っていう感じだったな。

テープ・マシンみたいな機材も“Craigslist”でモントリオールの人とトレードしたんだ。ミキシング・コンソールは裏路地のガレージ・セールで20ドルで売っているのを見つけて買って、2枚の作品を作ったよ。だから基本的に手に入った機材を使うという感じだったんだ。

情報がないからこそ、実際に買って使ってみるしかなかったという。

今では変な機材が集まることに慣れてしまったよ。SilvertoneやTeiscoのギターも同じで、当時は誰も欲しがらなかったんだ。クソみたいなものだと思われていたから、50ドルとかだったんだよね。でも、今では認めてもらえて嬉しいよ。ちょっと狂っているけど面白いよね(笑)。

例えばカセット・マシンなんかは、Mk.geeがTASCAM 424でレコーディングしたということで1,500ドルくらいで売られていたりする。プラスチックのカセット・レコーダーがだよ? 狂ってるよ。自分にとっての秘伝の機材は、もう秘密にしておかなくちゃならない時代だよね(笑)。

MicroVerbを使用していることからも、あなたはかなりの機材オタクだと言われています。それは自負していますか?

機材は大好きだよ(笑)。最近はエフェクト・ユニットにもハマってきて、Alesisをまた使い始めたしね。でも基本的にはシンプルにしたいんだ。

ギターのエフェクトだけじゃなく、僕の機材オタクっぷりはマイクやプリアンプ、コンバーターとか、そういうところにも表われているんだよね。それに自分で全部やるのも好きで、変な音を出すことを楽しんでいる。時々、機材から離れようとするんだけど、長くは続かなくてね。いつも引き戻されちゃうんだよ。

おそらく、この記事を呼んでいる読者もブラザーな気分になっていると思います(笑)。

そうだといいな(笑)。

Kemper Stageで、Vibro Champのほかに使っているアンプやエフェクトのモデリングは?

ほとんどVibro Champのモデリングだけだけど、クリーンなパッチではKemperに入っているビブラートやリバーブを使うこともある。Alesisを使っていても、たぶんKemperのアンビエントなプレート・リバーブやチェンバー・エコーが少しだけ混ざっているかな。

ペドロはもっといろいろ使いこなしていて、常にセッティングをいじっているよ。でも僕はほとんどKemperのエフェクト・ループに入ったAlesisの1つのサウンドを加えているだけだね。それだけで十分。Alesisですごく変な感じのビブラート・サウンドも出しているし、「Freaking Out The Neighborhood」ではフェイザーも使っているよ。

ライブでは「Salad Days」や「My Kind Of Woman」などでコーラスがかかったキレイなギターをプレイしていますよね。でも実はコーラスよりもビブラートが好きなんだとか。

そうだね。僕はビブラートが好きなんだと思うし、最近のいくつかの作品でもほとんどビブラートを使っている気がする。でも、“これが自分の音だ”というものが1つあってね。それはビブラートっぽい音に少しコーラスが混ざっていて、さらに少しのモジュレーション・ディレイが入っているようなサウンドなんだ。MicroVerbから出てくる、あのちょっと変な音だね。

ビブラートが好きなのは、プリンスやセイント・ヴィンセントの影響もあったりしますか?

プリンスは本当に大好きだし、ものすごく大きな存在だね。僕がプリンスみたいにファンキーにプレイできるようになることはたぶんないと思うけど、彼のサウンドは本当にすごいよ。セイント・ヴィンセントもそうだね。昔、彼女とはたくさんのツアーを一緒にやったんだ。彼女もとてもクールだよ。

2人ともそうだけど、アニー(クラーク)は特にギターでいろんな型破りなことを試してきた人だよね? 以前、彼女の演奏を見た時、たぶんMIDIピックアップか何かを使っていたと思うんだけど、“なんだこれ、どうやったらギターがこんなサウンドになるんだ?”と思った。クレイジーだったよ。ゴツいディストーション・サウンドなんだけど、アンプから出ている感じじゃないというか……変なんだけど、パーフェクトなディストーション・サウンドだったんだよね。だから僕にとっては、実験している人はみんなかっこいい。プリンスは間違いなく偉大なギタリストだね。

ペダルが多すぎだって? それは間違い。
エフェクトが多すぎる? それも間違い。

ライブではペドロもあなたと同じセットアップで音作りをしていますが、何か狙いが?

ペドロの機材は僕と同じで、少しだけセッティングを変えている感じだね。バンドに加入する時に僕が組んだんだ。その時は、“これがあればケースに入れてどこにでも持ち運べるな”と思っただけだったけど、彼はもっと掘り下げて遊んでくれているよ。そういえば、彼のAlesisは僕のより壊れやすいんだよね。でもどうしてかわからないけど、彼は完璧に直す方法を習得している。不具合が出ても不思議なタッチで問題なく動き出すんだ(笑)。

立ち位置後方に置かれたBOSSのアンプにはマイクが立てられていないので、ギターのモニター用ですか?

うん。僕らは今回BOSSのKATANAを使っているんだけど、以前は長いことRolandのKCっていう青いアンプを使っていたんだ。キーボード用のアンプだから、ギターをつなぐと変なサウンドになるんだけどね。そもそもKemperを使い始める前はVibro ChampをKCの上に置いて、Z型のホルダーに取り付けたShure SM57でVibro Champのサウンドを拾い、そのマイクをKCにつないでボリュームを増幅させていたんだ。Vibro Champのボリュームを良い感じにして、KCを擬似キャビみたいにして、もっと大きく鳴らしていたんだよ。上手くいく時もあれば、ただのフィードバック祭りになる時もあって、面白かったな。そのやり方に慣れちゃったんだ。

最終的にVibro Champはライブに持って行かなくなったけど、KCだけは使い続けていた。でもギター・アンプみたいなサウンドは出ないから、ペドロが“KATANAっていうアンプを試してみようよ”と言い出して、それ以来KATANAを使っている。すごくナイスなサウンドだし、音量の大きさや存在感がちょうどいい。Line 6のSpiderみたいな練習用のアンプを鳴らしているみたいな感じだけど、ちゃんと良い音がするんだ(笑)。

レコーディング時の音作りのこだわりを教えてください。

最近は、“とにかくやってみて、それがどうなるか”ということに、もっとオープンになってきた気がする。例えばマイクをどこに置いてみて、それがどんな感じになるのかを実験するみたいにね。でもドラムだけは今でも難しい時があって、みんなドラムのレコーディングにはイライラしているんじゃないかな? ドラマーに良い音でプレイしてもらっても、録音を聴き返してみたら台無しになっていることに気づいたりして、“クソ、あれは良かったのに!”となるんだ。

ギターは常にトライのくり返しだよ。例えばアコースティック・ギターなら、“マイクをどこに置く? もっと離す? どれくらい静かに弾く? 部屋の中のほかの雑音はどうなる?”みたいな感じでね。でも時々、レコーディングが変であればあるほどかっこよく感じたり、好きになったりするんだ。『Guitar』のレコーディングでは、マイクを立てたらプリアンプの設定をまったく変えなかったよ。けっこうノイジィな音質になったのは、マイクから離れて演奏していたからでね。

それはなぜ?

ソファから動きたくなかったからなんだよね。座ったまま全部のテイクを録ったんだ。でもクールなサウンドになっているよ。

最近はテープ・レコーディングをやることも多くて、そのプロセスも好きだな。デジタル・レコーディングはいろんなことが予測できてグッドなサウンドになるけど、テープ・レコーディングでは時々、“あっ、やってしまった!”みたいなところにマジカルな要素があって、それをそのまま受け入れられるんだ。それが楽しいし、新鮮さを保ってくれているんだよね。

たくさんお話ししていただき、ありがとうございました。最後に日本のギター・オタクへメッセージをお願いします!

僕もギターが大好きだよ。これはもう病気みたいなもので、みんなで共有しているんだ。“機材を持ちすぎだ!”と言ってくる人もいるだろうけど、彼らは間違っている。ペダルが多すぎだって? それは間違い。エフェクトが多すぎる? それも間違い。エンジョイするんだ。サンキュー!

2026年2月23日(日)KANDA SQUARE HALL


【Setlist】
01. Shining
02. For The First Time
03. Sweeter
04. On The Level
05. Phantom
06. Salad Days
07. Punishment
08. I Like Her
09. Rock And Roll
10. Still Beating
11. On The Square
12. Passing Out Pieces
13. Home
14. Heart To Heart
15. Knockin
16. Ode To Viceroy
17. Little Dogs March
18. Another One
19. Rooster
20. Freaking Out The Neighborhood
21. Holy
22. Moonlight On The River
23. My Kind Of Woman
24. Chamber Of Reflection
25. Nobody

作品データ

『Guitar』
マック・デマルコ

VMG
UICB-1036
2025年8月22日リリース

―Track List―

01. Shining
02. Sweeter
03. Phantom
04. Nightmare
05. Terror
06. Rock And Roll
07. Home 
08. Nothing At All
09. Punishment
10. Knockin
11. Holy
12. Rooster

―Guitarist―

マック・デマルコ