ギタリストなら絶対に聴くべきモダン・ジャズの名盤40(3/4) ギタリストなら絶対に聴くべきモダン・ジャズの名盤40(3/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき
モダン・ジャズの名盤40(3/4)

『モダン・ジャズの名盤40』の第3回。今回はジョー・パス、ジム・ホール、パット・マルティーノが1960年代から70年代にかけて発表したアルバムを紹介します。

文・選盤=久保木靖

Joe Pass
『For Django』

●リリース:1964年
●ギタリスト:ジョー・パス

名演「Django」は必聴!

ジャンゴへの想いを凝縮させた初期の傑作で、ビ・バップに忠実な教科書的プレイが満載。ジョン・ルイス(p)作の名曲「Django」は、のちのちギタリストがカバーする際のお手本に。ピアノの代わりにセカンド・ギターを配した編成も面白い。なお、ここでパスが弾いているのはジャズマスターかジャガー、いずれかのソリッド・モデルと思われる。

Joe Pass
『Virtuoso』

●リリース:1974年
●ギタリスト:ジョー・パス

ソロ・ギターの歴史はここから!

全編ソロで奏でられたジャズ・ギター史に燦然と輝く金字塔。上声部とベース・ラインを分離させたピアノ的奏法、自由なテンポ感、コード進行を感じさせるシングル・ノートなど、本作によってジャズ・ソロ・ギターが定義されたと言っても過言ではない。曲は有名スタンダードが中心。ES-175をアンプに通さず、直接マイクで生音を拾う手法で録られている。

Ella Fitzgerald & Joe Pass
『Fitzgerald & Pass…Again』

●リリース:1976年
●ギタリスト:ジョー・パス

ボーカル伴奏の究極形!

好評だった『Take Love Easy』(1974年)に続き、ボーカルとギター、たった2人だけで収録。『Virtuoso』が“ソロ・ギターの金字塔”なら、こちらは“歌伴の究極形”といったところ。ボーカルに優しく寄り添うステディな伴奏と対話するかのようなオブリガートは絶品この上ない。パスはここではガット・ギターを手に、フィンガー・ピッキングを行なっている。

Jim Hall
『…Where Would I Be?』

●リリース:1972年
●ギタリスト:ジム・ホール

スタイルが確立された重要盤

まったくシンプルでないコード進行の「Simple Samba」やミルトン・ナシメント作「Vera Cruz」などでブラジル色を出しつつ、名ブルース「Careful」や、ソロで奏でられる「I Should Care」などもあり、ジムのスタイルが確立されたと言える重要盤だ。初期は寡作だったため、本作は1957年のデビュー作以来わずか3作目。タイトル曲はジムの奥さんが作った曲。

Jim Hall
『Concierto』

●リリース:1975年
●ギタリスト:ジム・ホール

新時代のジャズ・ギター到来

その名を広く世に知らしめることとなった大ヒット作。斬新なリズム・セクションに乗って、新時代の到来を感じさせるジムのプレイが眩しい。「Concierto De Aranjuez」はマイルス・デイヴィスが取り上げたことからジャズでも演奏されるようになった曲で、本作ではアナログ盤のB面をこの1曲が占めていた。チェット・ベイカー(tp)ほか、メンバーも豪華。

Jim Hall
『Live!』

●リリース:1975年
●ギタリスト:ジム・ホール

インタープレイの真髄を聴く!

カナダのトロントで収録された傑作ライブで、当時のレギュラー・トリオによる充実の演奏が軒を連ねている。特にパーカー作「Scrapple From〜」や「I Hear〜」における会話を楽しんでいるかのようなインタープレイには目を見張るばかり。後期のジムはフルアコの生鳴りを重視していたが、ここではアンプのサステインを活かしたトーンが美しく映えている。

Pat Martino
『El Hombre』

●リリース:1967年
●ギタリスト:パット・マルティーノ

ジャズ探求者、衝撃のデビュー

コンガやボンゴを配し、3拍子「Waltz For Geri」で始まるなど意表を突かれるが、出てくる音はストレートアヘッド。ジョビン作「Once I Loved」を始め、とにかく歌いまくるラインに心が揺さぶられること必至。そして、ソロで8分音符がメロディアスに連なる「Just Friends」は、初期最大の名演と誉れ高い。これを聴かずしてジャズ・ギターを語るなかれ。

Pat Martino
『Live!』

●リリース:1972年
●ギタリスト:パット・マルティーノ

トリップ必至の怒涛のライブ!

“鬼気迫る”とはまさに本作を指す。このライブにおいてマルティーノは“弾き出したら止まらない”状態にあり、その血気盛んぶりというか、集中力たるや尋常でない。観客共々、ある意味トリップしていたに違いない。モーダルな「Special Door」や、ボビー・ヘブのヒット曲「Sunny」など、各10分以上(全部で3曲だけ)だが、あっという間である。

Pat Martino
『Exit』

●リリース:1977年
●ギタリスト:パット・マルティーノ

黙って聴き、そして泣け!

こと後進への影響力では本作が断トツ。屈指の名演である「Days Of Wine And Roses」と「Blue Bossa」のコピー譜が何度雑誌や教則本に掲載されたことか。プロ・アマ問わず弾けるギタリストが多くいるはずだ。そして、ベニー・ゴルソン作のバラード「I Remember Clifford」におけるシングル・ノートの限界を超えた表現にはただただひれ伏すばかり。

Jim Hall, Kenny Burrell & Attila Zoller
『Guitar Genius In Japan』

●リリース:1970年
●ギタリスト:ジム・ホール、ケニー・バレル、アッティラ・ゾラー

日本に集結したジーニアス!

かつて新宿にあった厚生年金会館での“ギター・フェスティバル・イン・ジャパン”をスタジオで再現。3人のギタリストが3曲ずつ同じリズム隊を使ってそれぞれ妙技を披露していく。ハンガリー出身のゾラーはアヴァンギャルドなプレイでも知られるが、ここではストレートな4ビートをプレイ。ラスト「Just Friends」はソロ回しもある全員でのセッションだ。

<前ページへ | 次ページへ>


*本記事はギター・マガジン2021年5月号にも掲載しています。

『ギター・マガジン2021年5月号』

【特集】ちょっとじゃじゃ馬、それがイイ!
ムスタング偏愛。

フェンダーのショート・スケール・モデル、ムスタングを様々な角度から徹底分析! ギタマガ初のムスタング100P級特集です!