2026年1月に、約5年ぶりとなる9枚目のアルバム『Selling A Vibe』をリリースしたザ・クリブス。10月2日(金)には、本作を引っ提げた8年ぶりとなる来日公演が渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて実現した。本記事では、ライアン・ジャーマン(vo,g)が使用したペダルボードを本人の解説とともにご紹介。
取材・文=小林弘昂 通訳・翻訳=トミー・モリー 機材撮影=星野俊
Ryan Jarman’s Pedalboard


ジョニー・マーから譲り受けたペダルで作る
重厚なディストーション
【Pedal List】
①BOSS / TU-3W(チューナー)
②Mr. Black / Eterna Custom(リバーブ)
③Fulltone / OCD(オーバードライブ)
④Menatone / King of the Britains(ディストーション)
⑤Electro-Harmonix / Stereo Poly Chorus(コーラス)
⑥BOSS / CE-5(コーラス)
⑦BOSS / RV-6(リバーブ)
⑧Electro-Harmonix / Switchblade+(ABボックス)
⑨strymon / Zuma(パワー・サプライ)
シンプルにまとめられたライアンの足下。ギターからの接続順は、ボード内の①〜⑦につながれたあと、アンプ・ヘッドの横に置かれた⑧Switchblade+にインプット。ここでアウトが2つに分かれ、2台のアンプ(Orange OR120)に接続される。

ライアンは普段からOrangeやMatampのアンプを愛用しており、クランチ程度まで歪ませている。そこに④King of the Britainsを加えた状態がメインの歪み。右側のboostスイッチもオンにしており、かなりドライブさせた状態で、ギターから手を離すとフィードバックを起こしていた。
もともと④King of the Britainsはジョニー・マーから譲り受けたものなのだが、ライアンはマーシャル系のペダルに興味を持たず、10年ほど放置。時は流れ、『Night Network』(2020年)では普段のライブ機材をスタジオに持ち込まない状態で楽曲を制作したこともあり、たまたま本機を使用したところ、“そこで初めて史上最高のオーバードライブ・ペダルだと気づいた”という。

おそらく③OCDは、④King of the Britainsよりも軽い歪みが必要な際にオンにしていたと思われる。もともとは長年IbanezのTS9を愛用していたが、ゲイン幅が広い③OCDに乗り換えたとのこと。

②Eternaは1曲でしか使用しないとのことで、今回のライブでも未使用だった。

⑤Stereo Poly Chorusは、『For All My Sisters』(2015年)や『24-7 Rock Star Shit』(2017年)のレコーディングで多用していた1台。CHORUSモードでビブラートのような強めのエフェクトに設定し、今回のライブでは「Back To The Bolthole」と「Pink Snow」でオンにしていた。ライアン曰く、“とにかく壊れる”とのことで、現在はもともと本機を使用していた楽曲をセットリストからはずしているとのこと。

⑥CE-5は、⑤Stereo Poly Chorusよりも軽いコーラスに設定し、「Never The Same」のラスト、「Mirror Kissers」の間奏、「Be Safe」などで使用。

⑦RV-6はPLATEリバーブを常時オン。ノブはすべて10時方向にセッティングされていた。
シールドとパッチ・ケーブルは、オレゴン州ポートランドのメーカー、Divine Noiseに製作してもらったもの。
Interview
今ではもう
これなしではやっていけない。
アンプのクランチをプッシュするメインの歪みとして、King of the Britains(④)を使用しているのでしょうか?
そのとおり!

OCD(③)との使い分けは?
以前はずっとTube Screamerを使っていたんだ。もしペダルが1台しか使えないとしたら、Tube Screamerは間違いなく史上最高のお気に入りだね。でも、もっとゲインを稼げるOCDに切り替えた。ディストーションに近いところまで歪ませることもできるからね。そこまで歪ませて使うことはあまりないんだけど。

たしかに、TSだとそこまで歪みませんよね。
あとは、同じオーバードライブだけでサウンドを作り続けることに少し飽きてきていたんだ。ジョニー・マーがバンドにいた頃、彼はKing of the Britainsを使っていて、オレに2台くれたんだよね。でも正直に言うと、最初に手に入れた時はあまり気に入らなかった。
それはなぜ?
マーシャルっぽいトーンが出るペダルだと言われていて、オレは昔からマーシャルの大ファンというわけではなかったからね。でも『Night Network』(2020年)の曲を作っていた時、スタジオに自分の機材を何も持って行かなかったから、使えるペダルはKing of the Britainsしかなくて、そこで初めてこれが史上最高のオーバードライブ・ペダルだと気づいたよ。
どういうところを気に入ったんですか?
オレがオーバードライブに求めていること実現してくれるんだ。アンプをナチュラルにドライブさせた時のようにダーティーなサウンドを生み出し、オーバードライブならではの生々しさが加わる一方で、自分がプレイしている音の明瞭さや繊細なニュアンスをすべて維持してくれる。オンにした瞬間にそういった繊細なニュアンスが失われてしまうペダルってけっこう多くて、強いコンプレッションによってコードを構成するいくつかの音が埋もれてしまうんだ。
今ではもうこれなしではやっていけないし、絶対に持って行かなければならないペダルの1つだよ。以前のUKツアー中にジョニーからもらったうちの1台が壊れてしまって、これを作っていたビルダーに連絡を取ったんだ。彼はもう20年くらいペダルを製作していなかったんだけど、送ったら修理してくれてね。これからも長く使えることを願っているし、準備万端だよ。
Stereo Poly Chorus(⑤)とCE-5(⑥)、コーラスを2台使用していますよね。
最近はPoly Chorusを2曲でしか使っていない。弾いていて楽しいペダルだから、以前はかなり頻繁に踏んでいたんだけど、とにかく壊れるんだ。もううんざりしてきたから、Poly Chorusを使う曲をセットリストからはずそうとしてきたよ。でも、どうしてもはずせない曲が2曲あって、そのためだけに今でも用意しておかなければならない。
ほかの曲でコーラスが必要な時はCE-5を使っている。こっちは本当に控えめな使い方だけど、オレはBOSSのペダルが大好きなんだ。

Eterna(②)はどのような使い方を?
ポートランドで作られているブティック・メーカーのシマー・リバーブで、使っているのは1曲だけ。めったに演奏しないけど、いつかやる時のためにペダルボードに入れておかなきゃいけないんだよね。
このペダルはオレが初めて使ったシマー・ペダルで、初めて聴いた時、“絶対にどこかで使い道を見つけよう!”と思った。でもこれってペダルが持つ問題で、オレがペダルをあまり好きになれない理由の1つでもあるんだよ。新しいサウンドが手に入ると思うと、誰もがワクワクして手に入れてしまうよね? そうすると、今度はそのペダルの使い道を見つけなければならないと感じ、ペダルボードに置き場所も確保しなければならなくなる。ペダルのことなんて忘れて、リフや自分の演奏に集中したほうがずっと良いのにね。ドアくらいの大きさのペダルボードを使っている人が、どれほどのストレスを感じているのか想像もつかないよ。オレにはあんなものを扱う忍耐力はないね。

「In Your Palace」や「Broken Arrow」のフィードバックっぽいサウンドは、どうやって作ったんですか?
あれはオーバードライブさせて、フィードバックにPoly Chorusを加えたんだ。『24-7 Rock Star Shit』(2017年)と『For All My Sisters』(2015年)の2枚では、けっこうPoly Chorusを使っていて、フィードバックと組み合わせた時のスウェルだったり、パルスのような感じが気に入っていたんだよね。それからも時折やっていたんだけど、このPoly Chorusが壊れたらもう終わりかなと思っている。本当にどういうわけかわからないけど、頻繁に壊れてしまうんだ。

2026年10月2日(金)渋谷duo MUSIC EXCHANGE
【Setlist】
01. Dark Luck
02. I’m A Realist
03. Hey Scenesters!
04. Girls Like Mystery
05. Summer Seizures
06. Never The Same
07. We Share The Same Skies
08. My Life Flashed Before My Eyes
09. Things You Should Be Knowing
10. Back To The Bolthole
11. Running Into You
12. A Point Too Hard To Make
13. Another Number
14. Shoot The Poets
15. Looking For The Wrong Guy
16. Come On, Be A No-One
17. Men’s Needs
18. Mirror Kissers
19. Be Safe
20. Pink Snow
作品データ

『Selling A Vibe』
ザ・クリブス
ビッグ・ナッシング/ウルトラ・ヴァイヴ
PIASR1573CDJ
2026年1月9日リリース
―Track List―
01. Dark Luck
02. Selling A Vibe
03. A Point Too Hard To Make
04. Never The Same
05. Summer Seizures
06. Looking For The Wrong Guy
07. If Our Paths Never Crossed
08. Self Respect
09. You’ll Tell Me Anything
10. Rose Mist
11. Distractions
12. Brothers Won’t Break
―Guitarist―
ライアン・ジャーマン


