大滝詠一楽曲で聴ける村松邦男のギター・プレイ。 大滝詠一楽曲で聴ける村松邦男のギター・プレイ。

大滝詠一楽曲で聴ける村松邦男のギター・プレイ。

ギタマガ流大滝詠一特集となれば、取り上げるべきギタリストは鈴木茂と村松邦男のご両人! 『ロンバケ』でもエレキを弾いているのも、概ねこの2人である。ということで本記事ではまず、村松邦男の参加楽曲を厳選してご紹介。大滝詠一作品のほとんどに参加し、献身的なリズム・ギターを披露し続けた男をピックアップだ!

文=編集部 写真=山川哲矢

 村松邦男は言わずと知れたSUGAR BABEのギタリストだが、バンド解散後のメインとなった活動の1つが大滝詠一作品のサポート・ワークである。はっぴいえんどの活動中に作られた1st『大瀧詠一』(1972年)を除けば、ほとんどの作品でギターを弾いており、特に『NIAGARA MOON』(1975年)から『A LONG VACATION』(1981年)までのいわゆる“コロムビア期”のアルバムではほぼ村松1人がエレキ・ギターを担当。まさに大滝作品において欠かせないギタリストなのである。

 ナイアガラ・レーベルの記念すべき第1弾作品であり、大滝がプロデューサー/レコーディング・エンジニアとして活躍した名盤『SONGS』(SUGAR BABE/1975年)で素晴らしいリード・ギターの数々をレコーディングした村松だが、大滝作品では一転、献身的なリズム・プレイに終始。『GO! GO! NIAGARA』(1976年)や『NIAGARA CALENDAR』(1977年)といったアルバムでは、とにかく職人のようにリズム・ギターを提供したといい、“どの曲かもわからないままひたすらにバッキングばっかり弾いていた”と当時を述懐している。また同時にこの経験が、ギタリストとしての修行にはうってつけだったという。

 さて今回特集を作るにあたり、村松の主要な名演をまとめたプレイリストを作成してみた。全体的に派手なプレイは少ないが、「あの娘にご用心」や「座 読書」などで披露するゴキゲンなカッティングが実に楽しい。もう気分はウキウキである。『ロンバケ』以前の大滝が追い求めた“ノベルティ・ソング”路線を軽やかに彩った村松の仕事を、ぜひこの機会に感じ取っていただきたい。

 村松が珍しくリード・ギターを披露しているのが『ロンバケ』収録の「我が心のピンボール」。『ロンバケ』でリードを弾いているのは概ね鈴木茂なのだが、この曲だけ例外的に村松がテーマ・リフやギター・ソロを担当している。テーマ・リフのサウンド感は本作の涼しげな世界観からちょっとはずれた(?)、ハードなディストーションといった趣だが、“こういうバカバカしいのは茂さんじゃなくて僕に弾かせるんですよ(笑)”と村松は語っている(2015年の本誌インタビューより)。とは言うものの、中盤とエンディングで聴かせるギター・ソロは実にキャッチーでメロディアス! SUGAR BABEでいくつものスウィートなリード・ギターを弾いた男の面目躍如である。

 日本のポップス史に燦然と輝く『A LONG VACATION』。本作はもちろん、大滝の極上のボーカルや全体の多幸感あふれるサウンドに浸る作品である。が、本作でさりげなく鳴る素晴らしいギター・プレイの数々に耳を傾けるのも一興だ!

作品データ

『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』

ソニー/SRCL-12010~12011/2021年3月21日リリース

―Track List―

【CD1】
01.君は天然色
02.Velvet Motel
03.カナリア諸島にて
04.Pap-pi-doo-bi-doo-ba物語
05.我が心のピンボール
06.雨のウェンズデイ
07.スピーチ・バルーン
08.恋するカレン
09.FUN×4
10.さらばシベリア鉄道
【CD2】
『Road to A LONG VACATION』

―Guitarists―

安田“同年代”裕美、三畑卓次、笛吹利明、福山享夫、川村栄二、松下誠、松宮幹彦、吉川“二日酔ドンマイ”忠英、徳武弘文、村松“カワイ・ギター教師”邦男、鈴木“Hoseam-O”茂