2011年のイベントで初共演。2014年からは対バン・ツアーを通じ、数々のステージをともにしてきたThe BirthdayとBRAHMAN。今回、フジイケンジとKOHKIのギタリスト対談が実現! お互いをリスペクトし合っている2人に、影響を受けた音楽やサウンドメイクについてなど、ざっくばらんに話してもらった。対談を進めていくうちに、新たな事実の発覚が……!?
取材・文=小林弘昂 人物・機材写真=星野俊
KOHKI君は「BAD FEELING」が
天才的に上手いよね。
──フジイケンジ
今回なぜお2人にお声がけさせていただいたかというと、以前からフジケンさんとお話する中でKOHKIさんのお名前があがったり、逆にKOHKIさんとのお話の中でもフジケンさんの話題になったりすることがあったからなんです。まず、お2人の初めての出会いは?
KOHKI 僕らよりも昔からご活躍されているので、一方的に知ってはいたんですけど、知り合ったのはThe Birthdayと何回か対バンするようになってからですね。ここ何年かです。
フジイ 僕はZepp TokyoでBRAHMANとツーマンをやったのが古い記憶としてあります。TVの撮影が入ってたよね。
ちょうど10年前、2011年8月のBLACK LIST 015 “ROCK FOR JAPAN”かもしれないですね。対バンする前からフジケンさんはBRAHMANを聴いていたんですか?
フジイ 聴いてましたよ。おっかないバンドだなって(笑)。
KOHKI それ、ボーカルだけですから(笑)。僕はもう、フジケンさんは“めちゃくちゃ良い音を出す人”っていうイメージで。“僕にはあんなの絶対弾けないな”みたいな。魅力のあるギタリストっていう感じですかね。
フジケンさんは、KOHKIさんにどういう印象を?
フジイ 最初はやっぱり轟音のイメージが強かったけど、知れば知るほどアルペジオにすごく艶があったりとか、開放弦を使った共通音の巧みなアルペジオの組み立て方とかが、めっちゃおしゃれだなと(笑)。
KOHKI おしゃれなんですか!?
フジイ 褒め言葉にもなってないかもだけど(笑)。
KOHKI いやいやいや……うれしいですよ(笑)! おしゃれだととらえてくれたんですね。面白いです。
KOHKIさんはパンク/ハードコアの一面もありつつ、カントリーもブルースも弾けるマルチなギタリストですよね。どういう音楽を聴いて育ってきたんですか?
KOHKI 小学生の時、ロックの入りはBOØWYですね。中学からはLAUGHIN’ NOSEやTHE BLUE HEARTSを聴くようになって。特にLAUGHIN’ NOSEのファンになって、NAOKIさんのコピーばっかりしてました。BOØWYは難しすぎて。
そうなんですね。フジケンさんとKOHKIさんは年齢が少し離れているということで。
KOHKI そうですね。西片(明人/サウンド・エンジニア、PAチーム・SPC peakperformance代表)と同じですか?
フジイ その1個下かな。
KOHKI じゃあ6個上ですね。
世代的には少しズレているんですかね。フジケンさんはどんな音楽を聴いていました?
フジイ 僕はフォーク・ブームの時代で、吉田拓郎さんとかのフォークを聴いていましたね。それから親戚の家にあったビートルズとかローリング・ストーンズとかのレコードを聴いてたかな。
それからギターにのめり込んでいくキッカケは?
フジイ KOHKI君はBOØWYって言ってたけど、やっぱりBOØWYも輝いていましたし、その当時はTHE STREET SLIDERSとかARBとか、カッコ良い日本のバンドがいっぱいいて。RCサクセションとかも聴いてましたね。
BRAHMANの「不倶戴天」という楽曲のソロに3連のカッティングがあるのですが、KOHKIさんはそこを“広島カッティング”と呼んでいましたよね。
KOHKI あれをやった時に、TOSHI-LOW君から“藤井一彦さんとか、フジケンさんとか、広島出身の人ってカッティングする流れがある”みたいなことを聞いて。たしかに印象的なんですよね。
フジイ いや、BRAHMANにもバキバキにカッティングあるじゃん(笑)!
KOHKI でも、フジケンさんのはカッティングでビートを刻むんじゃなくて、突発的に入るというか。
フジイ あぁ〜、それはたぶんパブロックの流れかなぁ。
KOHKI で、“広島カッティング”って言うらしいです(笑)。
フジケンさんも一彦さんも、近いものを感じるカッティングのサウンドですよね。あの切れ味が鋭い感じっていうのは、ほかのギタリストのプレイとは違うというか。
KOHKI “ズクツチャー! ズクツチャー!”っていう3連っぽいやつですね。
フジイ でもさ、KOHKI君は「BAD FEELING」が天才的に上手いよね。
KOHKIさんがフジケンさんの前で「BAD FEELING」を弾いたんですか(笑)?
フジイ いや、ネットに上がってる映像を観て。
KOHKI 恥ずかしい(笑)。
フジイ これ以上完璧に「BAD FEELING」のフレーズ弾いてる人って見たことなくて。
KOHKI そうですかね? 今はいるんじゃないですか?
フジイ いや〜、あれはすごいと思ったな。
KOHKI 中学生の時に、あれが弾けるヤツが偉いみたいな風潮があったんですよ(笑)。それで練習したんですよね。
フジイ あれ、けっこう難易度が高いよね?
KOHKI 難易度っていうか、布袋さんの癖ですよね。技術的にそんなに難しいことはやってないんですけど、空ピックの微妙なニュアンスとか、休符の入れどころみたいな、そういうところなんでしょうね。
フジイ パッと一聴して、誰もがコピーしたくなるような華があるよね、あのフレーズはね。
“一旗揚げるぞ!”みたいのはなかったですけど、
バンドがやりたかったんですよね。
──KOHKI
フジケンさんはカッティングの練習はしていたんですか?
フジイ いや、何かをコピーしたっていうのは、あんまりないかなぁ……。でも、やっぱりドクター・フィールグッドとかは好きでしたね。
KOHKIさんはパブロックは?
KOHKI そんなに詳しくないですね。初期パンクは好きですけどね。やっぱり田舎だったんで、あんまり情報が入ってこなかったんですよ。
なるほど(笑)。出身は和歌山ですよね?
KOHKI 和歌山のド田舎なので。
フジイ 和歌山!? じゃあメンバーのみんなとは違うんだね。
KOHKI 違いますね。ドラムとベースが長野の松本なんですよ。TOSHI-LOW君は茨城の水戸で。
フジケンさんの地元の福山はブルースが盛んな土地だと、以前のインタビューでおっしゃっていましたよね?
フジイ ブルース喫茶みたいな、レコードが棚にたくさん置いてある店があって、たまり場みたいな感じになってて。そこで色々レコードを聴かせてくれたりしていましたね。
KOHKI それって高校の時くらいですか?
フジイ そうそう。
KOHKI 良い環境ですね〜。うらやましいな(笑)。
当時の地方だと、音楽のトレンドを追うのも大変だったのでは?
KOHKI そのわりには、僕はけっこう追求しているほうでしたけどね(笑)。田舎者のわりにはアンテナ張ってがんばっていました。
フジケンさんはどうやって音楽の情報収集を?
フジイ いや〜、全然。だから東京に出てきてからですよ。輸入盤のレコードを買いに行けたし。それまでは友達からテープをダビングさせてもらったりだとか、ブルース喫茶のマスターに借りたりだとか、そんな感じでしたね。
上京したタイミングって?
KOHKI 僕は19歳ですね。
フジケンさんも?
フジイ うん。
そして音響の専門学校に入学するんですよね?
フジイ そう。
KOHKI あ、僕もです。でも一週間くらいですぐに辞めちゃうんで。
フジイ 卒業しなかったの?
KOHKI はい(笑)。え、しました?
フジイ したよ。
KOHKI 偉いですね。どこの専門学校ですか?
フジイ 西やんと一緒。
KOHKI あ、じゃあ僕とも同じです。
フジイ ……嘘!? 後輩だ〜! 超後輩だ〜(笑)! でも、一週間しか行ってないんでしょ(笑)? そこで僕は西やんと知り合ったかな。
KOHKI そうなんですか!
まさかの事実が(笑)!
フジイ やっぱり東京に行くためにはどっかの学校に入らないと。東京に出てプロになるっていう、そんな粋狂なヤツはいなかったですよ。進学っていう目的が必要だったんでね。
そうですよね。KOHKIさんもミュージシャンになるために?
KOHKI “一旗揚げるぞ!”みたいのはなかったですけど、バンドがやりたかったんですよね。
ライブで良いなって思ったら足下を見たりして。
やっぱり現場で使ってるのが確実だからさ。
──フジイケンジ
KOHKIさんは今日、PsychederhythmのModerncaster TLを持ってきていただきました。
KOHKI 最近はライブで色んなギターを使ってるんですけど、これを一番弾いているので。それとP-90とバー・ブリッジが載ったギブソン・カスタムの54年リイシュー・ゴールドトップもよく使ってますね。クリーンも歪みも両方いけるので、ライブ用として。フジケンさんはほとんどビンテージですもんね?
フジイ うん。
フジケンさんはすごいギターをたくさんお持ちで。
KOHKI (ギター・マガジン2019年6月号のフジイケンジ特集を見ながら)すごいですよね! お店みたい。下手な楽器屋さんよりすごいですよ。ゴールドトップ、ヤバいですね。54年のオリジナルですもんね?
フジケンさんのギターの中で気になるものはありますか?
KOHKI いやもう、目移りしすぎて。でも、やっぱりフジケンさんと言えばジャズマスターが印象的です。59年製と60年製って同じジャズマスターでも音が違いますか?
フジイ まぁ、個体差だよね。ジャズマスターは58年が1stイヤーなんだけど、それに近い59年製のほうが音が太い感じかな。
KOHKI もう20年近く前に買ったやつですけど、僕もラウンド指板の62年製ストラトを持ってるんですよ。それも音が太いですもんね。
フジイ あ〜、前に言ってたね!
KOHKI 20代の時に買ったので、“これはまだ自分には早い、オッサンになったら使おう”と思っていて。で、もう全然オッサンになっちゃって(笑)。こないだ何曲かライブで使いましたね。
フジイ ハハハ(笑)。
フジケンさんは最近デュオ・ジェットとかのグレッチも使っていて。
フジイ そう。
KOHKIさんもホワイト・ファルコンを使いますもんね。
KOHKI そうです。借りものなんですけどね。
どういう時にグレッチを?
KOHKI テンポが遅くて、あんまり埋めないというか、クランチでいける曲で使っています。
アンプはMesa/BoogieのTriple Rectifierで?
KOHKI 僕はMesa/BoogieとBad CatのBlack Cat 30Rを足下のABボックスで切り替えているんです。だからどっちでも使えるんですけど、グレッチの時のメインはBad Catですね。
フジイ ホワイト・ファルコン、めっちゃ良い音してた。BRAHMANにアルペジオ・イントロ始まりみたいな曲があって、それで使っていて、“すげぇ良い音だね”って楽屋でも話したよね。
KOHKI グレッチって、ほかのギターとけっこう違いますよね。粘らないというか、粘りがなくないですか?
フジイ うん。テロンテロンとしてる。
KOHKI ちょっとぶっきらぼうな音っていうか、まとわりつかない音っていうか、そういう印象なんですよね。
「満月の夕」もホワイト・ファルコンで弾いていますよね?
KOHKI そうです。
あの曲のアルペジオにはstrymon TIMELINEのdTAPEモードでディレイをかけてますよね?
KOHKI クリーンの時にショート・ディレイをかけてます。あのショート・ディレイ、もう10年くらい設定を変えてないですね。
ええ(笑)! その1つのセッティングで色んな曲を弾いてるんですか?
KOHKI それでやってます。僕、TIMELINEの性能の1%くらいしか使ってないんじゃないかな(笑)。
フジイ そうそう、KOHKI君からディレイを教えてもらったんです。TIMELINEのSWELLモードを巧みに使いこなしていて。
KOHKI 巧みってほどじゃないですけど(笑)。
フジイ “あれどうやってんの?”って聞いたら、“TIMELINEのSWELLですよ”って。でも、僕は同じstrymonでもVOLANTEってやつを買っちゃったんですよ。やっぱりTIMELINEにすればよかったなって(笑)。
KOHKI フジケンさんもこういうデジタルものを使うんですか? 意外です。
フジイ ライブとか対バンとかで、ギタリストの空間系とかが良いなって思ったら足下を見たりして。やっぱり現場で使ってるのが確実だからさ。今はThe Birthdayとは別現場で、Line 6のM9(マルチ)が便利だなと思って使ってます。
フジケンさんの
機材を独自のチョイスで選ぶ感じがカッコ良いなと。
──KOHKI
フジケンさんはアナログ機材にこだわってるのかなと思っていました。
KOHKI めちゃくちゃ潔いですもんね。
フジイ デジタルだと理解できないんですよ。ツマミがいっぱいあるから(笑)。プリセットをバンクするものもあるじゃん。
KOHKI 僕もけっこう苦手ですよ。
フジイ KOHKI君にTIMELINEの設定を聞いたら、“全部同じですよ。10年くらい変えてません”みたいな感じだったので、そういう使い方も良いなと思ったんです。
KOHKI まぁ、良いのか悪いのかっていう(笑)。
フジイ TIMELINE、場所取るからね。ボードの間取りがあって、“これを入れるなら何かをはずさないといけない”ってなると、なかなか踏み切れなかったりするんだけど……。
KOHKI この間、BOSSのCE-1(コーラス)を使ってましたよね?
フジイ うん。ボードからはみ出てるけど。
KOHKI あれこそデカいですよね(笑)。CE-1、前から欲しいんですよ。そういえばフジケンさんのボードに入っているDOD(FX10)はブースターですか?
フジイ うん。ちょっとプッシュする時用の。
KOHKI これ、あんまり使ってる人を見たことないですね。フジケンさんのこういうチョイスがカッコ良いなと思っていて。普通に売ってる高いブースターとかじゃなく、独自のチョイスで選ぶ感じが良いなと。
フジケンさんが機材を選ぶ基準は?
フジイ 真似です。一緒にやったギタリストとか、対バンの人が使ってるやつをコッソリ見たりして。で、良いなと思ったら試してみたりとかする。自分で掘り下げて、調べて、YouTubeで試奏動画を観たりするよりも、現場でですね。
KOHKI 逆にDODのブースター、めちゃくちゃ気になりますもん。
フジイ それはあんまり大したことないよ。ずーっと使ってるから、もうはずせないだけで(笑)。
KOHKIさんもボードにBOSSのPS-2(ピッチ・シフター)をずーっと入れてますよね。
KOHKI 僕、途中からBRAHMANに入ったんですよ。前のギタリストがPS-2をすごく使っていたので、必要だなっていうことで入れてたんですよね。で、それが今に至ってるというだけなんです。PS-2は1オクターブ上が足されるようにしていますね。
そういうことだったんですね。でも、KOHKIさんが加入してからも色んな曲で使っていますよね。
KOHKI 使ってますね。特に初期の曲とか、これがないと印象がすごく変わる曲があって。だからはずせなくて、入れっぱなしにしている感じですね。PS-2、ちょっと音痴なんですよ。試しに今どきのピッチ・シフターを使うと、すごく小綺麗になっちゃって、何か違うんですよね。フジケンさん、キッチリ“ここでこれを踏む”っていうのは決めてます?
フジイ うん。揺れもの系はわりと決める。
KOHKI 僕、適当にかけたりするんですよね(笑)。
フジイ 気分で?
KOHKI はい。もちろん決まってるものはあるんですけど。それ以外で“ここかけてみようかな”とか。
フジイ ああ〜、そういうのはある!
The Birthdayだと気分でかけるのはディレイですか?
フジイ ディレイとトレモロかな。
KOHKI フジケンさんのトレモロはBOSSのですけど、モディファイではない普通のやつですよね?
フジイ うん。これね、チバ君の。
KOHKI BD-2も普通の現行のやつですよね?
フジイ うん。
KOHKI そこがカッコ良いですよね、だいたいBD-2を使ってる人って、モディファイした高いやつなんですよ。
古市コータローさんはAnalogmanのBD-2を使っていますよね。
KOHKI あ、じゃあそんなに言ったら怒られるんで……アリということで(笑)!
いや、人それぞれなんで(笑)!
KOHKI (笑)。フジケンさんのは、楽器屋で買ったままじゃないですか。それでめちゃくちゃ良い音してるっていうのは、一番カッコ良くないですか?
フジイ モディファイしたやつは値段が高くなるもんね。
KOHKI でも、これで十分良い音してるわけだから別にモディファイしなくても……そんなこと言ったらダメですかね(笑)?
KOHKI君のアンプの使い方っていうのは、
“あ、こういうのもアリだな”と思った。
──フジイケンジ
お2人はアンプの歪みで音作りをしているところも共通点ですが、音作りをする際のポイントは?
フジイ 僕はもうギターを挿した時に、そのアンプの特徴が一番カッコ良く出るサウンドを作るかな。アンプの比重ってけっこうデカいじゃないですか? だからそのアンプを選んだからには、そうしたほうがいいのかなと。
KOHKI フジケンさんは2台同時に鳴らしてるんでしたっけ?
フジイ そうそう。だからアンプ2台使いというのも共通点で。
KOHKI 僕はどっちか片方しか鳴ってないんですけど。
フジイ そうだよね。それがビックリした。たしかにBRAHMANサウンドはそうだなと。
KOHKI でも、最近は1台のアンプでやるほうがいいのかなって思ってきたりもしてるんですけどね。
フジイ いやいや! そのままでいいと思うよ。
KOHKI 西片先輩も“そろそろ1台でいいんじゃない?”って(笑)。
フジイ あの発想は西片明人の?
KOHKI もともと最初は1台だったんですけど、“実験的にやってみよう”みたいな感じで西片先輩と話し合って。クリーンはクリーン用のアンプ、歪みは歪み用のアンプでマイク録りすると、向こうはPA卓で音を作りやすいじゃないですか。っていうことでずっと2台でやってたんですけど、1つの音が歪んだりクリーンになったりするほうが、1本柱が見えて芯があるように聴こえるんじゃないかなと。
フジイ そしたら、1台のアンプはずっと鳴ってるような設定にしたらいいんじゃない? 僕は1台は鳴りっぱなしで、ギター・ソロとかサビとかでバーンともう1台がプラスされるようにしていて。でも、最近はもう2台鳴らしっぱなしとか、ギターがうるさくない曲とかは1台にしたりとか、色々やってるんですけど。
KOHKI なるほど。たしか山口洋さんもそんな感じなんですよね。
フジイ うん。だからKOHKI君の使い方っていうのは、“あ、こういうのもアリだな”と思った。そっちのほうがクリーンと、グワッと激しい歪みとの緩急の付け方ができる。
KOHKI 極端ですよね。でも、僕らみたいなバンドには合ってるのかもしれないです。
フジイ で、1台のアンプでそれをやろうとすると難しいと思うんですよ。今みたいにバーンとキャラが変わるっていうのは一番良い使い方だと思いますよ。
KOHKI でも難点があって。僕、歪みはMesa/BoogieのRectifierっていうハイゲイン・アンプなんですけど、クリーンのBad Catから切り替えた時に音が引っ込むんですよね。やっぱり歪みの時ってドカンといきたいじゃないですか。静と動で言えば“動”のところ。ドカンといきたいのに、踏んだら逆にスッと下がった感じになるんですよ。お客さんが聴く表の音はPAのほうでドカンとくるような感じになってるんですけど、中音は引っ込んでるんですよね。
フジイ あぁ〜。
KOHKI だから、そこがちょっと嫌なんですよね。そこがどうにかなればいいんですけど、しょうがないじゃないですか。絶対クリーンのほうが強いし。
フジケンさんはクリーンにする時はボリューム・ペダルでアンプの歪みを落とすんですよね?
フジイ あとは弾き方ですね。音量の話になると、The Birthdayとは別の現場でギターを弾いていて、ギター・ソロになったらPAの人がフェーダーを上げていくんです。でも、ソロに変わった瞬間に上がらなくて、だんだん上がっていく感じがすごく嫌で。それで自分でソロのボリューム・アップをやりたくて、アンプの2台使いを始めたんですよ。
そういうキッカケだったんですね。
フジイ でも今は佐々木(直)さんっていう方にThe BirthdayのPAを何年もやってもらってるので、ソロでパッと上げてくれます。だからもう2台鳴らしっぱなしでもいいのかなって。
KOHKI 曲を知ってる人じゃないとわからないですもんね。頭からドカンと出してほしいのに、フェードインになるという(笑)。
そこを突き詰める人たちは、アンプの歪みが一番良いとわかりつつ、エフェクターで音を作るようになるじゃないですか? そういうスタイルにしようと思ったことは?
KOHKI うーん……“この小さい箱でやってるんだな”となると、気持ちが上がんない。
フジイ ハハハ(笑)。
KOHKI 例えばZeppとかの大きい会場で、スマホみたいなサイズのエフェクターからメインの音が鳴ってると思うと、“こいつから?”って思う。これ本当にそうなんですよ! 何か頼りないなって。古い考えなんですけど(笑)。
フジイ 古いね(笑)。
KOHKI マジでそう思ってます(笑)。テンション上がらないんですよ。最近、少し考え方が変わってきてはいるんですが。
フジイ でも、たしかにそうだね。
フジケンさんは最近のサポート現場ではエフェクターで音作りをしてるんですもんね。やっぱり中音を小さくするという目的で?
フジイ そうですね。ものすごく小さくしてやります。そこで自分のいつものキャラを100%出してやっても、全然それは楽しくないんで。やっぱり周りとの兼ね合いじゃないですか? だからそこで一番気持ち良くなれるのは、ちゃんとバランスの取れた状態でやったほうがいいから。
KOHKI もうThe Birthdayとはアンプからギターから、機材はガラッと変えるんですか?
フジイ うん。全部。
話は変わりますが、ギターのフレーズはどうやって構築してくんですか? セッションの中で出てきたフレーズを採用していくのでしょうか?
KOHKI いや、前もって考えるフレーズもあります。僕らはトラックから作っていくほうが多いので、例えばイントロだけとか、色んなパーツを持っていって組み合わせるんですよ。たまにTOSHI-LOW君が歌だけ持ってきたりする時もあるんですけど。
フジイ あ、そうなんだ。
KOHKI まずオケを作って、最後にボーカルを乗っけることが多いですね。
フジイ メロディも決まってないってこと?
KOHKI そうなんですよ。たまにTOSHI-LOW君がメロディを持ってきて、そこから作ることもあるんですけど、本当にそれって全体の2割くらい。あとは全部オケが先ですね。もちろんTOSHI-LOW君も入れてみんなで“ああしよう、こうしよう”とオケを作るんですけど、その時点で歌メロはないんですよ。だから“もうちょいこっちのほうが歌を乗っけやすいかな”となったらそこを変えたりとか、歌メロを想像しながらやってるわけで(笑)。だからけっこう特殊かもしれないですね。
対してThe Birthdayはチバさんが鼻歌でメロを付けながら、セッションで曲作りを進めていくんですよね?
フジイ わりとチバ君が曲の断片とかを持ってきたり、そこからやっていくから、もう最初のセッションで大まかなアレンジができます。その時はまだ歌詞がないけど、イメージしやすいですね。
KOHKI 鼻歌とか、歌詞なしで歌ってくれるんですか?
フジイ うん。“なんとなくコードはこんな感じで”みたいなのがあって。
フジケンさんはよく“歌詞でフレーズが変わる”ということも話していますが、チバさんの歌詞が完成してからギターを考え直すことも?
フジイ 歌入れは一番最後なので、ギターのテイクが何個かあったりすると、最後に違うものに変えたりとかはあるけどね。
KOHKI あ、レコーディングの時まで歌詞がわからないっていうことですか?
フジイ うん。でも、最近は歌詞が早めにできてることがけっこうあるので。
KOHKIさんはオケができあがったあと、ボーカルに影響されてギターを変えるっていうことはないですか?
KOHKI けっこうあります。もう1本重ねようかなとか、抜こうかなとか。歌が終わったあとでも、余った時間で僕ら普通にやりますもん(笑)。
空間のある曲が多いっていうか、
スペースがあるから、想像力を働かされました。
──KOHKI
KOHKIさんにThe Birthdayの新作『サンバースト』を聴いていただきましたが、どのようなアルバムでした?
KOHKI もう、すごくソリッドですね。もちろんカッコ良い。今どきああいう音を出す人っていないですよね。僕だったら“ここはディレイがなきゃ絶対に弾けないな”っていうところを、平気で素の音で弾いている。空間系もかけてないですよね?
フジイ あ〜、曲によってはそういう印象のものがあるかもしれない(笑)。
KOHKI すごく生々しい感じがしましたね。
フジケンさんは今回、ショート・ディレイとトレモロくらいしか使ってないですもんね。
KOHKI アルペジオもドライな音で弾いてるんですよ。あれすごいですよね。僕には怖くてできない。でも、それってそれだけで趣のある音ということだから、やっぱり腕なんですよね! あとビックリしたのが「ショートカットのあの娘」。あのテンポ感、珍しくないですか?
フジイ ちょっとBRAHMANを……。
そう、BRAHMANっぽさをすごく感じたんですよ(笑)。
KOHKI BRAHMANっぽいっていうのもあったんですけど、昔のパンクみたいで。UKっぽいというか。
フジイ ハハハ(笑)。やっぱり対バンでツアーを回るとね、意識するところもあるんじゃないですか? でも、僕らのほうが世代がちょっと上だから、やっぱりBRAHMANの感じとは違いますよね。ハードコアの感じもちょっと古めで。
KOHKI あと「スイセンカ」で12弦ギターを使ってましたよね? あれ、めっちゃ良い音です。
フジイ 本当ですか?
The Birthdayで初めて12弦を使ったらしいです。
KOHKI へぇ〜。曲にも合ってますし。
フジイ ちょっとOAUを意識して……。
影響されまくってますね(笑)。
フジイ でも、OAUのワールド・ミュージックな感じというか、ああいう風にはなれない(笑)。
KOHKI 昔のレコードだと単音のオブリで12弦ギターがよく使われてたじゃないですか? 僕はそういう印象でしたけどね。
12弦もですし、『サンバースト』は機材面でもフジケンさんの新しい側面がありましたよね。
KOHKI あと音が全部立っているというか、つぶれてないですね。「ショートカットのあの娘」以外はほとんどクランチですよね?
フジイ そうね。クランチです。
KOHKI 空間のある曲が多いっていうか、スペースがあるから、想像力を働かされました。僕らは待てないですからね。すぐ埋めちゃいますもん。
フジイ ハハハ(笑)。
KOHKI それができるっていうのは、やっぱりすごいなって。それは曲作りでもあるし、ギターのフレーズでもあるし、チバさんのボーカルだったりとかもだし。
本日はありがとうございました。対談はいかがでしたか?
フジイ 楽しかったですよ。
KOHKI 楽しかったですね。まさかフジケンさんと対談ができると思ってなかったので、嬉しいです。
それと専門学校が同じだったという事実も明らかになりました(笑)。
フジイ そうですよ〜! ちょっと嬉しいです。これから後輩として接し方が変わるかもしれないですね(笑)。
Guitars
作品データ
『サンバースト』
The Birthday
ユニバーサル/UMCK-1690/2021年7月28日リリース
―Track List―
01.12月2日
02.息もできない
03.月光
04.ラドロックのキャデラックさ
05.レボルバー
06.アンチェイン
07.晴れた午後
08.スイセンカ
09.ショートカットのあの娘
10.ギムレット
11.バタフライ
―Guitarists―
チバユウスケ、フジイケンジ