GM DISC REVIEW 2021 Augustギタマガおすすめの新譜をご紹介! GM DISC REVIEW 2021 Augustギタマガおすすめの新譜をご紹介!

GM DISC REVIEW 2021 August
ギタマガおすすめの新譜をご紹介!

『苦楽』 人間椅子

徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-74961 ¥2,900 発売中

【参加クレジット】
和嶋慎治 (vo,g)、鈴木研一 (vo,b)、ナカジマノブ(vo,d)

【曲目】
①杜子春
②神々の行進
③悪魔の処方箋
④暗黒王
⑤人間ロボット
⑥宇宙海賊
⑦疾れGT
⑧世紀末ジンタ
⑨悩みをつき抜けて歓喜に到れ
⑩恍惚の蟷螂
⑪至上の唇
⑫肉体の亡霊
⑬夜明け前

和嶋慎治のギター・プレイが冴え渡った通算22枚目となるアルバムが登場!

 2020年2月にドイツとイギリスで初の海外ワンマン・ツアーを実現させるなど、世界へ向けて本格的に動き出した人間椅子がデビュー通算22枚目となるアルバムを発表した。今作も和嶋慎治のヘヴィでグルーヴィーなギター・リフを軸にした楽曲が中心になっているが、サウンド面で重厚感が増しており、攻撃性を強く押し出した作品に仕上がっている。和嶋のギターと鈴木研一とナカジマノブのリズム隊が一体となってグイグイ押しまくる演奏は迫力満点で、これまでなかったタイプの曲もあるなど、ギター・リフの引き出しの広さも耳を惹く。楽曲に取り入れた凝った演奏や緩急を取り入れたアレンジ、メロディにも進化を感じさせる中、⑥でのテルミンを取り入れた宇宙戦争的なアプローチを始め、各曲でギター・ソロも目立っており、指先まで神経が行き届いたエモーショナルなプレイはまさに圧巻だ。(Jun Kawai)

『シリアル』 パステル

P-ヴァイン PCD-20438 ¥2,200 8/18

【参加クレジット】
 パステル(vo,g,b,etc)、ハオティング/エリザトゥウィンキーズ/ベン・ケスラー(vo)

【曲目】
①カニーニャ・ラブ
②レット・ユー・feat・ハオティング
③パークス
④バンブー・feat・エリザトゥウィンキーズ
⑤デイライト・feat・ベン・ケスラー
⑥モーレア
⑦キャラメル
⑧キモノ

ブラジル音楽をフィーチャーしたロンドン界隈の若きSSW

 近年、トム・ミッシュを筆頭にオスカー・ジェロームやブルーノ・メジャーなど、優れた若きギタリスト/SSW/トラックメイカーを続々と輩出しているロンドンの音楽シーン。フランス領ポリネシア(リゾート地で有名なタヒチを含む)出身で、現在はロンドンを拠点にするパステルもその1人だ。デビュー作である本作を一聴して、1人でマルチな楽器をこなす多才なトラックメイク術や洗練されたサウンドからすぐにFKJの『French Kiwi Juice』(2017)を連想したが、どうやら彼は実際にFKJのサポートを務めているそうで納得。音像の仕上げ方も近い印象だ。一方、ギターでのリズム・ワークやコード進行にブラジリアン・ジャズやボサノヴァなどブラジル音楽の要素を多く取り入れている点に彼の個性が際立つ。ギター・ソロも多く、ペンタを主体に少ない音数で的確にコード・トーンを突いていくスタイルが実に現代的。(田中雄大)

『A Residency in the Los Angeles Area』 Naia Izumi

輸入盤

【参加クレジット】
Naia Izumi(vo,g)、他

【曲目】
①Honesty
②Natural Disaster
③Six Inch Stilettos
④Voodoo
⑤Water
⑥What Happened To Love?
⑦Good At Being Lonely
⑧Sad Song
⑨As It Comes
⑩Be Still
⑪Personal Heaven
⑫Hand In Hand
⑬Soft Spoken (Sound City Version)

次世代型タッピングを駆使するネオソウル・ギタリストの1stフル

 米NPRの“The Tiny Desk Contest 2018”でグランプリを獲得し注目を集めていたナイア・イズミが、ついに1stフル・アルバムをリリース。タッピングを駆使した伴奏を弾きながら歌うという先鋭的な技巧派ギタリストで、本作でもネオソウル的な“映える”演奏が満載だ。ギターは⑦のソウルフルに歌い上げるソロなども聴きどころだが、①や⑩で聴けるようなバッキングこそ評価したい。スペースのあるトラックでの効果的なオブリや、ボイシングで魅せるシンプルなコード・プレイなど、“ネオソウル・ギター、かくあるべし”というフレージングからはたくさんのアイディアが得られるはず。⑪なんかはグルーヴィなモダンR&Bながら、ギターはどこかジャズ・ロック的だったりと、かなり新しさを感じるだろう。また、歌ものソウル作品としても純粋に楽しめるのもポイントだ。②や④などの代表曲も再録されているので、ぜひここから注目を!(福崎敬太)

『ダウンヒル・フロム・エヴリホェア』 ジャクソン・ブラウン

ソニー SICX-30122 ¥2,860 発売中

【参加クレジット】
ジャクソン・ブラウン(vo,g)、グレッグ・リース、ヴァル・マッカラム(g)ボブ・グラウブ(b)、マウリシオ・リワーク(d)、ジェフ・ヤング(k)、他

【曲目】
①スティル・ルッキング・フォー・サムシング
②マイ・クリーヴランド・ハート
③ミニッツ・トゥ・ダウンタウン
④ヒューマン・タッチ
⑤ラブ・イズ・ラブ
⑥ダウンヒル・フロム・エヴリホェア
⑦ザ・ドリーマー
⑧アンティル・ジャスティス・イズ・リアル
⑨ア・リトル・スーン・トゥ・セイ
⑩ソング・フォー・バルセロナ

相変わらずの青春の巨匠ぶりを聴かせるジャクソン・ブラウン7年ぶりの新作

 コロナ禍にあっても積極的にステイ・ホーム・セッションを配信し続けているジャクソン・ブラウン。その風貌は年相応の貫禄がついてきたが、歌声の瑞々しさはまるで変わらない。時代の中で悩み考え、彷徨うように言葉を歌にしていく。こういった姿は、72年のデビュー以来まるで変わらないのだ。言葉はさらに鋭さを増している。世界中の様々な出来事を下り坂に例えて歌われるタイトル・トラックや、レスリー・メンデルソンとデュエットした「ヒューマン・タッチ」など、歌詞が心の奥にまで突き刺さってくる。後者は、エイズ治療に革命をもたらした医療従事者をドキュメントした映画『5B』のために書き下ろされた曲だ。バッキング・スタッフではスティール・ギターのグレッグ・リースが素晴らしい。時には、かつてのデヴィッド・リンドレーを思わせる音色で、完璧なまでのバッキングを聴かせている。(小川真一)

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