ギタマガ創刊40周年を記念してスタートした、1年間限定の特別連載。毎月テーマの異なる名盤を、がっつり40枚紹介していきます。今月は昭和歌謡の中からギターが映える名曲をチョイス! まずは日本の若者たちがベンチャーズやグループサウンズに熱狂した1960年代の作品から見ていきましょう。さらにロックの影響が色濃く出た70年代前半の歌謡曲も紹介します。
選盤・文=馬飼野元宏
加山雄三
『加山雄三のすべて~ザ・ランチャーズとともに』
●リリース:1966年
●ギタリスト:加山雄三、喜多嶋修
ニッポンのエレキ代表!
エレキ・ブームの只中に発売された1stで、全曲自作による画期的な1枚。「君といつまでも」も収録されているが、ここはやはり「ダイヤモンド・ヘッド」に対抗して作られたインスト「ブラック・サンド・ビーチ」や英語詞による「ブーメラン・ベイビー」などランチャーズと組んだエレキ名曲を。加山の白いモズライトは、エレキ少年たちの憧れだった。
ザ・ワイルド・ワンズ
『ザ・ワイルド・ワンズ・アルバム』
●リリース:1967年
●ギタリスト:加瀬邦彦、鳥塚繁樹
GSでギターを堪能したいなら
のちに湘南サウンドと呼ばれる、爽やかな魅力が満載の1st。デビュー曲にして代表作の「想い出の渚」での、加瀬の12弦ギターの爽快な音色が心地よい一方で、間奏に取り入れたテープの逆回転操作でサイケなギターが響き渡る「ジャスト・ワン・モア・タイム」など、ガレージ的なサウンドにも果敢に挑戦。GSでギターを堪能したいならこのバンド!
ザ・タイガース
『サウンズ・イン・コロシアム』
●リリース:1971年
●ギタリスト:森本太郎
凄みあるグランド・ファンクのカバー
1970年8月、田園コロシアムでのライブ盤。アイドル人気の影で見逃されがちなバンドとしての実力が存分に発揮されている。森本のギター・プレイの凄味は、「エニバディーズ・アンサー」から「ハートブレイカー」へと続くグランド・ファンク・レイルロードの2曲でわかる。ことに後者で圧巻のソロを聴かせ女性ファンの歓声をかき消してしまうほど。
小山ルミ
『ベンチャーズ・ヒットを歌う! 二つのギター』
●リリース:1971年
●ギタリスト:クレジットなし
テケテケ旋風、ベンチャーズ歌謡
「京都の恋」、「雨の御堂筋」などのベンチャーズ歌謡集。ベンチャーズのインストに無理やり歌詞を付けた「十番街の殺人」や「急がば廻れ」はラブソング仕様の無茶な出来だが、ちゃんとテケテケも挿入されていてファン歓喜。彼女の代表作「さすらいのギター」のボーカルに呼応するギターは、ベンチャーズが弾いてるわけでもないのにそれっぽい。
布施明
『日生劇場の布施明』
●リリース:1971年
●ギタリスト:水谷公生、直居隆雄
ニュー・ロックな布陣のライブ盤
1971年、日生劇場リサイタルの実況録音盤。水谷と直居(g)、寺川正興(b)、チト河内(d)、柳田ヒロ(k)という凄腕メンツをそろえた、思い切りニュー・ロック仕様。「うわさの男」のリズミカルなリフ、「Love will make a better you」でのテクニカルなソロ、さらに「Heartbreaker」では序盤のメロウなリフと後半のエモーショナルなソロが圧巻。
ハイソサエティー
『ファースト・ヒット・アルバム』
●リリース:1971年
●ギタリスト:高橋洋一
初期ジャニーズのスーパー・バンド!
初期ジャニーズが誇るスーパー・バンドの2nd。全作カバーで、シカゴ「長い夜」のギター・リフを完璧に再現し、同じくシカゴ「ぼくらに微笑みを」では軽やかなカッティングを聴かせる。白眉はドアーズの「When The Music is Over」! 歌はともかくブルージィでサイケでピロピロ~なギター・ソロを延々と弾きまくっているのはリーダーの高橋洋一。
里見洋と一番星
『一番星/新盛り場ブルース』
●リリース:1971年
●ギタリスト:古賀修
カルト人気を集めるプログレ歌謡
あまりにカルトな、和製ハード・ファンク・ロックの名盤。ギターは里見洋とともにレオ・ビーツ、ルートNO.1と渡り歩いた古賀修。「長崎は今日も雨だった」のうなり狂うエレキの響き、刺激的なカッティングで始まり中盤の妖しいソロも濃厚なプログレ歌謡「ミツコの運命」など、本気か狂気か判然としないサウンドを支えるのは間違いなくこのギター。
ゆかりとニュー・サウンズ
『LOVE』
●リリース:1971年
●ギタリスト:神谷重徳
歌声と絡むジャジィなギター
伊東ゆかりが岡崎広志、伊集加代子、東海林修らと組んで発表した全編英語詞による1枚。バカラックのカバー「ONE LESS BELL TO ANSWER」、「CLOSE TO YOU」の2曲は、ストリングスの代わりにギターとフリューゲルホーンが大活躍のソフィストケイトされたサウンドで、ジャジィなギターが伊東のさらりとしたボーカルとも相性良し。
南沙織
『傷つく世代』
●リリース:1973年
●ギタリスト:クレジットなし
レイラ風のイントロも飛び出す
通算6作目。「いとしのレイラ」から影響を受けたと思しきイントロ・フレーズのリード曲「傷つく世代」を始め、スピード感あふれるギター・プレイは当時のアイドル歌謡としては画期的なもの。ほかにも、サンタナ「ブラック・マジック・ウーマン」風のフレーズが飛び出す「純情」やスティール・ギターの音色が爽やかな「早春の港」など名曲多数。
優雅
『はじめまして優雅です』
●リリース:1974年
●ギタリスト:クレジットなし
筒美京平アレンジの最高作のひとつ
台湾出身の女性アイドル、優雅のファースト。ドラム・ブレイクではじまり、エッジの利いたギター・リフが印象深いデビュー曲「処女航海」のイントロは、筒美京平アレンジの中でも最高作のひとつ。小川みきのカバー「燃える渚」での爽快なソロ、岡崎友紀のカバー「私は忘れない」でのキレのいいカッティングなど、かなりギターを意識した筒美作品集。
*本記事はギター・マガジン2021年2月号にも掲載しています。
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