好評をいただいているこの『ギタリストなら絶対に聴くべき名盤40』シリーズ。ブリティッシュ・ブルース編、昭和歌謡編に続く第3弾は“戦前ブルース”がテーマです。まずはチャーリー・パットン、ロバート・ジョンソン、ブッカ・ホワイトなどミシシッピ/デルタ・ブルースの必聴名盤からスタート!
文・選盤=小出斉 協力=七年書店
V.A.
『RCAブルースの古典』
●ギタリスト:トミー・ジョンソン、ブラインド・ウィリー・マクテル、他
戦前オムニバスの決定盤
オリジナルは、日本で初めて作られた本格的戦前ブルース3枚組。RCA系列だったビクター/ブルーバードの音源を使い、初期のカントリー・ブルース、ジャグ・バンド、デルタ・ブルース、シティ・ブルース……と各面にテーマを設け、戦前ブルースの世界を伝える。後に登場した続編も合わせて再編集した2枚組CD。
チャーリー・パットン
『The Best Of Charlie Patton』
●ギタリスト:チャーリー・パットン
デルタ・ブルースの父
録音開始は1929年とちょっと遅かったが、何といっても、“デルタ・ブルースの始祖”、チャーリー・パットンである。「ポニー・ブルース」など、低音弦をスラッピングしながら、ポリリズミックに演奏するデルタ・スタイルから、肉声のようにスライドをコントロールするバラッド調やスピリチュアルズまで、聴きどころしかなし。
V.A.
『伝説のデルタ・ブルース・セッション1930』
●ギタリスト:チャーリー・パットン、ウィリー・ブラウン、サン・ハウス
デルタの悪魔的迫力
1930年9月、チャーリー・パットンと、デルタ屈指のギタリストであるウィリー・ブラウン、サン・ハウス、女性ピアニストのルイーズ・ジョンソンが会したセッションをまとめた1枚。サン・ハウスは戦後の再発見後の録音もいいが、この時の5曲/8サイドの悪魔的迫力には及ばない。パットン、ブラウン含め、デルタ・ブルースの真髄。
トミー・ジョンソン
『Big Road Blues』
●ギタリスト:トミー・ジョンソン
州都ジャクスンの代表選手
アル中でも有名だったトミー・ジョンソンはミシシッピの州都ジャクソンを代表するブルースマンで、ポリリズミックな演奏が特徴。チャーリー・パットンと同じ農場で働いていたこともあり、奏法に共通点もあり。何曲かでバックにつくチャーリー・マッコイも名手で、トレモロ・ピッキング技が凄い(時にマンドリンも弾く)。
ロバート・ジョンソン
『King Of The Delta Blues Singers Vol.1』
●ギタリスト:ロバート・ジョンソン
デルタ・ブルースの王様
名プロデューサー、ジョン・ハモンドの肝煎りで61年に発売されたアルバム。「Cross Road Blues」、「Walkin’ Blues」、ボトルネックが指板の上を駆け巡る、爆発的な「Preachin’ Blues」など、デルタ・ブルースの王様としての姿がここに。エリック・クラプトンもボブ・ディランも本作にKOされ、ここから伝説が始まった。
ロバート・ジョンソン
『King Of The Delta Blues Singers Vol.2』
●ギタリスト:ロバート・ジョンソン
デルタの王様、第二集
70年になって編集された第二集。第1集はボトルネック・ギターの妙技もたくさん聴けるデルタ・スタイル、対して本作はシティ・ブルースに感化されたものや、ウォーキン・ベース曲が中心。今では2枚組CDで全録音が容易に聴けるが、分けて聴くことでロバートの2面がより味わえる。ストーンズの「むなしき愛(Love In Vain)」の原曲はこちら。
ブッカ・ホワイト
『Parchman Farm』
●ギタリスト:ブッカ・ホワイト
B.B.も憧れたボトルネック
B.B.キングの従兄弟で、若きB.B.もそのボトルネック・ギターに憧れたミシシッピ・ブルースマン、ブッカ。本作は37/40年の14曲をまとめたもの。鼻声で唸るような重厚な歌も凄いが、タイトル曲や「Bukka’s Jitterbug Swing」など、スピード感溢れ、時にパーカッシブなスライド・ギターも聴きどころ。
スキップ・ジェイムズ
『Devil Got My Woman』
●ギタリスト:スキップ・ジェイムズ
クリームの原曲も収録
ロバート・ジョンソンの「Hellhoud On My Trail」の原型「Devil Got My Woman」や「Hard Time Killin’ Floor」など、何とも陰鬱なブルースを残したスキップ・ジェイムズ。マイナー・チューニングを用いたそのスタイルは、ミシシッピ州ベントニアというごく一部の地域で形成された。クリーム「I’m So Glad」の原曲も。31年録音。
V.A.
『Mississippi Blues Vol.3』
●ギタリスト:ロバート・ペットウェイ、サニー・ボーイ・ネルソン
ファンクの元祖的カッティング
41/42年のロバート・ペットウェイと、36/37年サニー・ボーイ・ネルソン、そしてネルソンがバックをつけた女性歌手ミシシッピ・マチルダの全録音集。南部ブルースの古典「Catfish Blues」のペットウェイによるオリジナル録音の、豪快なドライブ感、ファンクの元祖のようなカッティングを一度は聴いて。本CD版は音質も向上。
V.A.
『Mississippi Masters :Early American Blues Classics1927-1935』
●ギタリスト:ガーフィールド・エイカーズ、キング・ソロモン・ヒル、他
ミシシッピ・ブルース11人衆
録音は少ないながら、ユニークな戦前のミシシッピ・ブルースマン11人の20曲を集めたコンピ。レアなだけでなく、北ミシシッピのガーフィールド・エイカーズのリズムが捻じれたような演奏、ブラインド・ジョー・レイノルズの、クリームがカバーした「Outside Woman Blues」のオリジナルなど、どれも聴きごたえ十分だ。
*本記事はギター・マガジン2021年3月号にも掲載しています。
『ギター・マガジン2021年3月号』
特集:ギター・ヒーローが愛した、アコースティックの世界。
クラプトン、デュアン、フルシアンテ。キースにピートにジョン・メイヤー。Jマスキスにガルシアにハウ。コイツら全員、アコギもヤバい!!!