クリス・ファーロウの変名による、いぶし銀な「ストマン」カバー クリス・ファーロウの変名による、いぶし銀な「ストマン」カバー

クリス・ファーロウの変名による、いぶし銀な「ストマン」カバー

“月曜の朝にさ、皆の気分が晴れるような音楽を毎週届けたいのよ。何かアイディアない?” そんな編集長の問いに、WEB担当Fはこう答えた──“月曜は「ストマン」一択ですよ”。そうして立ち上がった企画が、この“月曜朝のストーミー・マンデー”です。今週は英ロックの重要ボーカリスト=クリス・ファーロウが“リトル・ジョー・クック”という変名でリリースした「ストマン」をご紹介! ギタリストは不明だが、オブリまで1本でプレイするいぶし銀なバッキングが聴けるナイス・カバーだ。

文=小出斉 デザイン=猪野麻梨奈


“黒人っぽさ”がひとつの売りとなった60年代

アメリカ上院議会で“ブルースの年”と認定された2003年、マーティン・スコセッシ総指揮のもとに企画された“ブルース・ムーヴィー・プロジェクト”。どの映画作品も面白かったが、個人的に一番興味深かったのが、イギリスにおけるブルースの影響を検証した『レッド、ホワイト&ブルース』(マイク・フィギス監督作品)。

その中でも印象的だったのが、クリス・ファーロウの登場。ジャガー=リチャード書き下ろしの「アウト・オブ・タイム」を録音するなどローリング・ストーンズとは縁深く、60年代ブリティッシュ・シーンでは、ヴァン・モリスンやエリック・バードンなどとも並び、“クロっぽい”シンガーとして評価されていた。

今回紹介する「ストマン」は、62年にはデビューしていたファーロウが、65年にリトル・ジョー・クックの変名で録音し、英スーから発売されたもの。作曲者クレジットはビリー・エクスタインなどになっており、おそらくボビー・ブランド版をもとにしているのだろうが、けっこう我流っぽい節回し。

このドスの効いた歌声は“誰なんだ?”と噂になり、黒人歌手と間違われたという逸話がある。これは本人も自慢の様子。“黒人っぽさ”が60年代の英国ロック・シーンの評価のひとつの軸となっていた、というのがよくわかるエピソードだ。