ギタリストなら絶対に聴くべきニッポンのブルースの名盤40(3/4) ギタリストなら絶対に聴くべきニッポンのブルースの名盤40(3/4)

ギタリストなら絶対に聴くべきニッポンのブルースの名盤40(3/4)

『ニッポンのブルースの名盤40』の第3回のテーマは「関西圏から関東圏へ」。ここで紹介するアルバムのギタリストのクレジットにも、吾妻光良小出斉など東京を拠点に活動するミュージシャンたちの名前が登場し始めます。

文・選盤=久保木 靖

妹尾隆一郎
『Messin’ Around』

●リリース:1976年
●ギタリスト:塩次伸二、川口充、服田洋一郎、近藤房之助、尾関隆、森川義経、樽井敏幸、山室俊介、江口善明、内田勘太郎

主役を盛り立てる豪華ギター陣

リトル・ウォルター・スタイルでブロウする“ウィーピング・ハープ・セノオ”の1stで、参加ギタリストの顔ぶれだけでも狂喜乱舞。妹尾は大阪出身だが、関東と関西のミュージシャンの橋渡し的な役目も果たした。冒頭「Bobby Sox Blues」のイントロからノックアウトされること必至! 個人的には、1970年代に発表された日本ブルース作品の中での最高峰。

妹尾隆一郎
『Boogie Time』

●リリース:1977年
●ギタリスト:吾妻光良、中島正雄、鈴木茂、渡辺香津美、泉谷しげる

ポップとジャジィを加味した2nd

ほぼオリジナル(英語詞)で揃え、ホーン・セクションを導入。多様化した楽曲に併せて参加ギタリストにも変化が。鈴木がボトルネックを滑らせれば、泉谷はエレキを手にリズムを躍動させ、渡辺は随所でジャジィな顔を覗かせる(「Rockin’ Chair」はハープとギターのデュオ!)。妹尾のバンドで活動を開始した若き日の吾妻も2曲に参加する。

花伸
『Boogie Live』

●リリース:1978年
●ギタリスト:花岡伸二、端山剛

Jコットン好きにもほどがある!

憂歌団の花岡憲二(b)の弟、伸二を中心に結成された花伸のデビュー作で、京都大学西部講堂でのライブ。日本のブルース・バンドの多くが王道のシカゴ~アーバン・スタイルだったところに、ジェイムズ・コットンが『100% Cotton』で見せたブギを引っ提げたことで新世代を感じさせた(ボーカル&ハープは宮井操)。

花伸
『Dance With Hanashi』

●リリース:1978年
●ギタリスト:花岡伸二、端山剛

ソウルなオリジナル&カバー

ソウルフルなロック・バンドへと成長を遂げた2ndで、ファンキー&ブギな元気の良さはそのままに日本語オリジナルが中心となった。彼らが好きなJ・ガイルズ・バンドも取り上げたエディ・フロイドのソウル・チューン「Raise Your Hand(熱くなれ!)」を日本語カバーしているが、これがなかなか秀逸。伊藤銀次の初プロデュース作でもある。

ウシャコダ
『土一揆』

●リリース:1979年
●ギタリスト:菅野賢二、中村智

待望の関東発・個性派の登場!

1978年、ヤマハ主催のEastWestにてシャネルズらを抑えてグランプリを獲得した千葉出身のウシャコダの1st(ライブ録音)。コミック・バンド的な要素もあったが、その根底には幅広いブラック・ミュージックが根付いていた。後半に“ソロ大会”となる「Woke Up This Morning」では、菅野と中村のストレートなブルース・フィーリングが徐々に白熱していく。

ウシャコダ
『Powerful Salad』

●リリース:1980年
●ギタリスト:菅野賢二、中村智

ジャケットはエロなのか!?

パワフルなソウル・ナンバーのほか、ジャイヴな「ふかし煙草」、カリプソの「あんただけ」、レゲエの「キン作カッポレ」、変形ブルース進行の「Leave Town Blues」などの日本語オリジナルを揃えた2nd。売りにしていた田舎臭さとは対照的な洗練されたアレンジが全編を貫く。1980年当時、ウシャコダはマディ・ウォーターズの来日公演の前座を務めている。

ブレイク・ダウン
『Live』

●リリース:1980年
●ギタリスト:服田洋一郎、近藤房之助

壮絶なブルース・スピリット!

ブルース・ハウス・BB解散後、その核だった“はっちゃん”こと服田が、名古屋で活動していた近藤を誘って京都で始動させたブレイク・ダウン。このデビュー作は持ち味が十二分に現われた実況盤だ。服田のシカゴなギター&レイジーなボーカル、近藤のモダンなギター&パワフルなボーカルというツイン・フロントの壮絶なブルース・スピリットに震える!

ブレイク・ダウン
『I’ve Been A Good Thing For You』

●リリース:1981年
●ギタリスト:服田洋一郎、近藤房之助

英語歌詞にこだわる気骨な姿勢

スタジオ録音となった2nd。一般的なブルース・バンドだったら、ここで日本語のオリジナルを入れてくるところだが、彼らはリトル・ウォルターやジミー・リードほかのカバーで揃え、あくまで英語のブルースに固執した。ギターが泣くタイトル曲、気だるいアレンジが効いた名曲「Chicago Bound」、スクイーズ炸裂の「It’s My Own Fault」など、聴きどころ満載だ。

ブルー・ヘブン
『Live』

●リリース:1980年
●ギタリスト:小出斉、吾妻光良

ブチ切れるギター・ソロに慄く

ウエスト・ロードを解散したあと、永井隆(vo)が結成したのがブルー・ヘブン。これは東京・下北沢にあったライブハウス、スーパー・マーケットで収録されたデビュー作で、吾妻の影響によるものか、ジャンプ~テキサス・ブルース色が濃い。「She Walks Right In」や「Hot Little Mama」など、ブラス・セクションに導かれてブチ切れる吾妻のソロに慄く!

ブルー・ヘブン
『Big Boss Men』

●リリース:1982年
●ギタリスト:小出斉、菅野賢二

ロッキン・ブルースにシェイク

ウシャコダを脱退した菅野が合流し、R&B~ロックンロール、ひいてはパンキッシュなパワーを爆発させた2nd。日本語によるオリジナル3曲のほか、ジミー・リードやJ.B.ルノア、ドン&デューイなどをロッキンなアレンジで取り上げている。「Babe, Babe, Babe」のスライド、「Everynight~」のスクイーズなど、破壊力のあるギターが痛快だ。

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*本記事はギター・マガジン2021年7月号にも掲載しています。

『ギター・マガジン2021年7月号』

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■『音楽』での浮雲のギター・プレイ徹底解説! (*電子版にはスコアは収録されておりません)
■GM SELECTION SPECIAL(※電子版には収録されておりません)
「キラーチューン」東京事変
「空が鳴っている」東京事変
「閃光少女」東京事変
「修羅場」東京事変
「透明人間」東京事変