ギタリストなら絶対に聴くべきニッポンのブルースの名盤40(4/4) ギタリストなら絶対に聴くべきニッポンのブルースの名盤40(4/4)

ギタリストなら絶対に聴くべきニッポンのブルースの名盤40(4/4)

最終回のテーマは「関東圏での隆盛〜ホンモノとの共演」。東京を拠点としたバンドのアルバムと、日本のギタリストたちが本場アメリカのブルースマンと共演したライブ盤を中心に紹介します。

文・選盤=久保木 靖

ローラー・コースター
『That’s Nothing New』

●リリース:1984年
●ギタリスト:小出斉、吾妻光良

東京拠点の本格派バンド登場!

妹尾隆一郎(harp)と山崎美樹(d)を中心に誕生したローラー・コースターは、東京を拠点としたブルース・バンドの雄。一時解散後、山崎がリーダーとなり高円寺のジロキチでライブ収録した初作がこれ。小出がスクイーズ・スタイルに背を向けた渋いギターでエディ・テイラーを彷彿すれば、吾妻はワイルド・テキサスばりのはっちゃけたプレイで対抗!

ローラー・コースター
『Keep It Up』

●リリース:1986年
●ギタリスト:小出斉、吾妻光良、小安田憲司

ご機嫌なシャッフルに酔う!

メキメキと実力を付けてきた小出を前面に出した2nd。小出、吾妻ともにギターは各々の個性を発揮したプレイで聴き手を魅了するが、「Every Night~」では新加入の小安田がスクイーズ・スタイルのオブリで絡む。ちなみに、3rd『Boogie Discounter』(1991年)は吾妻、4th『Something For Little Walter』(1991年)は妹尾をフィーチャー。

吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズ
『Swing Back With The Swinging’ Boppers』

●リリース:1983年
●ギタリスト:吾妻光良

日本発ジャンプ・バンド参上!

吾妻の到達点の1つが、豪快なスウィング・ビートに乗ってギターをギャンギャン喚かせるバッパーズだ。本ライブ盤はワイノニー・ハリスなどのカバーのほか、CD化に際してキャブ・キャロウェイの秀逸な日本語カバー「おいこらお嬢ちゃん」も収録された。「Win With Me Baby」や「Strollin’ With Bones」に心躍らなければギター・フリークじゃない!?

吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズ
『Hepcats Jump Again』

●リリース:1988年
●ギタリスト:吾妻光良

センス抜群の日本語オリジナル

スタジオ収録となった2nd。「昔つきあってた女」など日本語オリジナルを聴くにつけ、日本ブルースが抱えてきた“歌詞問題”の解答を得た気になる。メロウな「I Need You So」や、ジャイヴな「Why Did You Say?」など、ギターもすでに真似事の粋を脱したワン・アンド・オンリーの世界を構築。「I Can Dream~」のボーカルは国分友里恵だ。

松竹谷清 With ジューク/ジ・アップ・タイト
『Real Live!』

●リリース:1982年
●ギタリスト:松竹谷清、小出斉、木下和彦

永井隆プロデュースのレア盤

東京のブルース・バンド“ジューク”と名古屋のR&Bバンド“アップ・タイト”による2枚組ライブ盤。個性派ボーカリストの松竹谷をフィーチャーしたジューク終盤は、泥臭いスライドが炸裂するエルモア祭り! ゲスト参加の小出を前面に出したサイドもある。一方、アップ・タイトはスウィートなギターが映えるメロウ・チューンで真価を発揮。

Hi-Tide Harris
『Celebrating With Hi-Tide Harris』

●リリース:1978年
●ギタリスト:ハイタイド・ハリス、塩次伸二、山岸潤史、石田長生

リアル・ブルースを日本勢が迎撃

サンフランシスコ出身で、かのジョン・メイオールのバンドにも在籍したブルースマンの日本でのライブ盤。ブルース・ロックなスタイルで弾き倒すハリスに対し、迎え撃つ日本勢のソロの出番は決して多くはない。しかし、「I Need~」での石田のクリーン・トーン・プレイなど聴きどころ多し。ほかにチャールズ清水(k)や妹尾隆一郎(harp)らも参加。

大木トオル・ブルース・バンド
『Manhattan Midnight』

●リリース:1979年
●ギタリスト:コーネル・デュプリー、アダム・ファルコン、ルイス・X・エルランガー

NY録音の東洋人ブルース!

本場アメリカでも活躍したボーカリストの凱旋盤で、ジミヘンが作ったエレクトリック・レディ・スタジオで収録された。テンポやサウンドなど一本調子ではあるものの、お洒落でファンキーなブルースにこだわったところに大木の気概を感じずにはいられない。ブラコン全盛期のNYで、よくもこれだけのブルースができたものだ。マーク・ナフタリン(k)も参加。

Phillip Walker Band With George “Harmonica” Smith
『The Blues Show! Live At Pit Inn 1979』

●リリース:1980年
●ギタリスト:フィリップ・ウォーカー、吾妻光良、山岸潤史

若き日の吾妻&山岸が大活躍!

テキサス・ブルースの流れをくむモダン派の初来日公演をとらえた1枚。時にトリッキーなフレーズを放つウォーカーに対し、リズム・ギターを担った吾妻は「That’s All Right」や「Mississippi River Blues」でダウン・ホームなソロを披露。ゲスト参加の山岸はエルモア・ジェームスでも知られる「Yonders Wall」で吠える! ハープは大御所ジョージ・スミスだ。

Various Artists
『Yeah Records Singles Collection』

●リリース:1987年
●ギタリスト:近藤房之助、河内淳一、小川逸文、塩次伸二、吾妻光良、松本孝弘、松川敏也、村上孝之、小出斉、中島正雄

80年代のシーンを捉えた名コンピ

ビーイング系列のブルース専門レーベル“Yeah Records”に残されたシングルのコンピ。ジャニス・ジョプリンそっくりな桜井ゆみ(「Move Over」でのギターはB’zの松本!)など楽しい。特に注目したいのは、吾妻&チャールズ清水(k)をバックにしっとり仕上げた妹尾隆一郎(harp)の「I’m Still~」や、ジャズ的なプレイに挑んだ塩次の「Evening Baby」だ。

B.B.King & Sons
『Live』

●リリース:1990年
●ギタリスト:B.B.キング、吾妻光良、山岸潤史、野呂一生

御大が日本勢に目を細めた瞬間

パワフルなB.B.のボーカルとギターに圧倒されつつ、同じステージでパートをシェアし合う上田正樹(vo)や梅津和時(as)など日本の“息子たち”の姿に感涙。全員でのセッションとなった「Caldonia」ではロックな山岸、ジャジィに音を詰め込む野呂、テキサス野郎よろしくぶっ飛んだ吾妻と、その熱きプレイのオンパレードに開いた口が塞がらない!

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*本記事はギター・マガジン2021年7月号にも掲載しています。

『ギター・マガジン2021年7月号』

【特集】
浮雲
東京事変

■浮雲とファントム
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■新作『音楽』を彩った浮雲の愛器たち。
■SPECIAL INTERVIEW 2:椎名林檎が語る“ギタリスト浮雲”
■東京事変 全作品ディスコグラフィー
■『音楽』での浮雲のギター・プレイ徹底解説! (*電子版にはスコアは収録されておりません)
■GM SELECTION SPECIAL(※電子版には収録されておりません)
「キラーチューン」東京事変
「空が鳴っている」東京事変
「閃光少女」東京事変
「修羅場」東京事変
「透明人間」東京事変