ギタリストなら絶対に聴くべきスウィング・ジャズの名盤40(2/4) ギタリストなら絶対に聴くべきスウィング・ジャズの名盤40(2/4)

ギタリストなら絶対に聴くべきスウィング・ジャズの名盤40(2/4)

『ギタリストなら絶対に聴くべきスウィング・ジャズの名盤40』の第2回のテーマは「ジャンゴ・ラインハルトとアコースティック・スウィング」。ジャンゴに代表されるマヌーシュ系と、アコギでスウィングするギタリストたちのアルバムを紹介します。

文・選盤=久保木 靖

ジャンゴ・ラインハルト
『Anthology』

●リリース:2009年(1934〜53年録音)
●ギタリスト:ジャンゴ・ラインハルト

欧州を席巻したマヌーシュ派の祖 

ステファン・グラッペリ(vln)と組んだクインテットから晩年のビバップ・コンボまでを俯瞰した3枚組。左指が不自由だったとは信じがたいほどの驚異的なプレイのオンパレードで、ギターが脇役だった時代に大々的にソロを奏でた功績は計り知れない。ジャンゴが手にしたセルマー・マカフェリ・ギターはジャズ・マヌーシュのトレードマークとなった。

ジャンゴ・ラインハルト
『With His American Friends』

●リリース:1998年(1935〜45年録音)
●ギタリスト:ジャンゴ・ラインハルト

ジャズ奏者としての真価を発揮

前掲『Anthology』がリーダー演奏だったのに対して、本作は渡仏したアメリカのジャズマンのセッションに客演したものをコンパイル(3枚組)。コールマン・ホーキンス(ts)の「Avalon」ではマヌーシュ魂を感じさせる凄まじい刻みに思わずたじろぐ。また、ラリー・アドラー(harmonica)の「Body And Soul」での歌いまくったプレイには感涙必至だ。

ジャンゴ・ラインハルト
『Djangology』

●リリース:1961年(1949年録音)
●ギタリスト:ジャンゴ・ラインハルト

激情的プレイに胸が高鳴る!

ローマのクラブにおけるライブ。ジャンゴのギターが全体を支配しているという点でやはり本作が決定打だ。血が沸き立つようなエモーショナルなアドリブ・ラインと自由奔放なバッキング・スタイルは唯一無二で、まさに1人ビッグバンド! 名曲「Minor Swing」はオリジナル・バージョンと甲乙つけがたい名演だ。23曲収録のリイシュー盤がオススメ。

V.A
『Les Freres Ferret : Les Gitans De Paris 1938-1956』

●リリース:2009年(1938〜56年録音)
●ギタリスト:バロ・フェレ、サラーヌ・フェレ、マテロ・フェレ

マヌーシュ系のもう1つの流派

ジャンゴのライバルであり、良き友人でもあったバロ、サラーヌ、マテロのフェレ3兄弟のビンテージ録音をコンパイルした3枚組。彼らは本来ミュゼットや伝統的なマヌーシュ音楽を得意としたが、ジャンゴに負けず劣らずのテクニックを武器にジャズにも取り組んでいた。スウィング・ワルツ「Ma Theo」や艶っぽい「Deux Guitares」が琴線に触れる!

V.A.
『Gipsy Jazz School : Django’s Legacy』

●リリース:2002年(1938〜2002年録音)
●ギタリスト:ジャンゴ・ラインハルト、ファピー・ラフェルタン etc

ジャズ・マヌーシュ入門に最適

ジャンゴとそのフォロワーをギュッと詰め込んだ2枚組。モダン期にマヌーシュ・スタイルをやりきったチャン・チャウ・ヴィダルやパトテ・ブスケといった隠れ名手から、ジャンゴ直系のチャボロ、そして近代を代表するテクニカル派のビレリやラファエル・ファイス、ストーケロ・ローゼンバーグまでがズラリと並ぶ。ジャンゴの弟ジョセフや息子バビクも見逃せない。

オスカル・アレマン
『Swing Guitar Masterpieces 1938-1957』

●リリース:1998年(1938〜57年録音)
●ギタリスト:オスカル・アレマン

無骨でやたら上手いラテン気質

アルゼンチン出身だが、1930年代にパリにいたことでジャンゴと接点が生まれ、ジャズ・シーンでも認識されるようになったアレマン。その全盛期を捉えたパリ〜ブエノスアイレス録音の2枚組だ。トレモロを駆使した独奏「Whispering」やボーカルも披露する「Besame Mucho」など、とにかく多才。素早く絞るようなビブラートが印象的だ。

スピリッツ・オブ・リズム
『1933-1945』

●リリース:1998年(1933〜45年録音)
●ギタリスト:テディ・バン、ユリシーズ・リヴィングストン

このジャイヴなノリ、たまらん!

親指ピッキングの名手がテディ・バンだ。本作はジャイヴ・グループ、スピリッツ・オブ・リズム期をコンプリートに収録。「I’ve Got The World〜」での中低音域中心のソロを聴くと弦楽器の良さがしみじみ伝わってくる。また、オリジナル「Walkin’ This Town」は楽曲の良さもさることながら、バンがエレクトリックを使った演奏では出色。

テディ・バン
『The Very Best Of Teddy Bunn 1937-1940』

●リリース:1999年(1937〜40年録音)
●ギタリスト:テディ・バン

独奏でもとことん猛烈グルーヴ

リーダー・セッションと美味しいプレイが聴けるセッション・ワークで構成された名コンピ。イン・テンポで猛烈にグルーヴする独奏「King Porter Stomp」と「Guitar In High」は、“これらを聴かずに死ねるか!”と言うほどの価値! また、ボーカルも披露する「If You See Me Coming」での表情豊かなブルース・プレイも秀逸だ。

ファッツ・ウォーラー&ヒズ・リズム
『The Unique Mr Waller』

●リリース:2004年(1939〜41年録音)
●ギタリスト:アル・ケイシー

T-ボーンを虜にしたブルース感覚

チョーキングを駆使したソロと、6thや9thを取り入れたコード・ワークから、T-ボーン・ウォーカーにも影響を与えたとされるケイシー。彼の名が一躍知られるようになったのは、このウォーラー(p, vo)のグループ在籍時だ。名刺代わりの「Buck Jumpin’」は全編ギター・ソロ。「Everybody Loves〜」では嵐のようなコード・ソロも!

アル・ケイシー
『Buck Jumpin’』

●リリース:1960年
●ギタリスト:アル・ケイシー

朴訥とした語り口が郷愁を誘う

45歳の時にリリースした1st。当時すでにエレクトリックを使っていたが、本作では初心に返ったかのようにアコギでスウィングしている。テクニックはあまりなく、一聴するとたどたどしいフレージングが逆にメランコリックな郷愁を誘う。タイトル曲でのシンプルながらもアイディアに満ちたハーモニクス・プレイはライブで歓声が沸き立つところ! 

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*本記事はギター・マガジン2021年8月号にも掲載しています。

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