ギタリストなら絶対に聴くべきスウィング・ジャズの名盤40(3/4) ギタリストなら絶対に聴くべきスウィング・ジャズの名盤40(3/4)

ギタリストなら絶対に聴くべきスウィング・ジャズの名盤40(3/4)

『ギタリストなら絶対に聴くべきスウィング・ジャズの名盤40』の第3回のテーマは「チャーリー・クリスチャンとエレクトリック・ギターのパイオニアたち」。登場するギタリストはチャーリー・クリスチャン、エディ・ダーハム、フレディ・グリーンジョージ・バーンズ、レス・ポール、フロイド・スミス、タイニー・グライムスの総勢7名です。

文・選盤=久保木 靖

チャーリー・クリスチャン
『The Genius Of The Electric Guitar』

●リリース:2002年(1939〜41年録音)
●ギタリスト:チャーリー・クリスチャン

金科玉条として崇め聴くべし!

C・クリスチャンが表舞台で活躍したのはわずか2年ほど。そのベニー・グッドマン(cl)楽団でのスタジオ録音をすべてコンパイルしたのがこの4枚組だ。斬新なコード解釈によるシングル・ノートのソロ、リフを用いた作曲、そして発売されたばかりのエレクトリック・ギター(ギブソンES-150)のパワー……これらが渾然一体となった破壊力たるや!

チャーリー・クリスチャン
『Jazz Immortal – After Hours Monroe’s Harlem Mintons』

●リリース:1957年(1941年録音)
●ギタリスト:チャーリー・クリスチャン

モダン・ジャズへの導火線

『ミントンハウスのチャーリー・クリスチャン』という邦題で知られる歴史的ライブ盤。ソロ・スペースが小さい昼の仕事への不満が一気に爆発したように、歪んだテナー・サックスのような音色でイマジネーションあふれるフレーズを次々とくり出す。オフ・ビートの強調、ドミナントでのコード分解+クロマチックなど、ビバップの雛形となるプレイが満載だ。

チャーリー・クリスチャン
『Celestial Express』

●リリース:1999年(1939〜41年録音)
●ギタリスト:チャーリー・クリスチャン

アコギでもグイグイ突っ走る!

ベニー・グッドマン(cl)が絡まない音源ばかりを集めたコンピ。「Tea For Two」などジェリー・ジェローム(ts)とのライブ音源はドライブ感満点で、前掲『Jazz Immortal〜』に比肩するクオリティ。また、「Jammin’ In Four」などエドモンド・ホール(cl)とのスタジオ音源はクリスチャンがアコギ(ギブソンL-5)を弾きまくった数少ない演奏として有名だ。

レスター・ヤング
『The “Kansas City” Sessions』

●リリース:1997年(1938〜44年録音)
●ギタリスト:エディ・ダーハム、フレディ・グリーン

真のパイオニアの斬新プレイ

ヤング(ts)と、ジャズ界で最初にエレキの録音(1937年)を残したダーハムとが中心となったコンボの全録音。リズム・ギター(グリーン)を配していることから、ダーハムは自身をリード・ギターという認識でサウンドをコントロール。「Countless Blues」の低音リフ、「Love Me〜」のコード・メロディなど、(当時としては)斬新極まりない!

ジョージ・バーンズ
『Quiet! Gibson At Work Vol.1』

●リリース:2015年(1938〜57年録音)
●ギタリスト:ジョージ・バーンズ

ひたすら管楽器的に弾き倒す!

もう1人のエレキのパイオニアがバーンズ。このコンピには10代半ばで起用されたビッグ・ビル・ブルーンジーなどのブルース・セッションのほか、アルバム『Country Jazz』の音源が丸々入るなど、かなりお徳。カントリー・テイストなシングル・ノートを弾き倒すので、ややもすると金太郎飴になってしまうところを高い技術がギリギリ回避。

レス・ポール
『The Complete Decca Trios-Plus(1936-1947)』

●リリース:1997年(1936〜47年録音)
●ギタリスト:レス・ポール

あふれ出るトリッキー・プレイ

エレキ・ギター黎明期の偉人としてこの人も忘れてはいけない。トリオを率いたジャズ演奏を中心とした2枚組で、トリルやトレモロ・グリスを多用した音数の多いトリッキーなプレイが満載だ。ジャンゴ・フレイバーを振りまく「Dark Eyes」や、ビング・クロスビー(vo)をバックアップした「It’s Been〜」には釣り込まれること間違いナシ!

レス・ポール
『The Jazzman』

●リリース:2008年(1944〜47年録音)
●ギタリスト:レス・ポール

巨人も認めるユニーク・プレイ

前掲『The Trio’s〜』がリーダー・セッション中心だったのに対し、こちらは客演したジャズ・プレイにもフォーカスした2枚組。ジャム・セッション「Blues」で見せるナット・キング・コール(p)との掛け合いは抱腹絶倒! アート・テイタム(p)やウィリー・スミス(as)らジャズの巨人もタジタジなほどに個性が際立っている。

フロイド・スミス
『Relaxin’ With Floyd』

●リリース:1996年(1972年録音)
●ギタリスト:フロイド・スミス

エレキの古株が見せた意地

エレクトリック・スティールを用いたアンディ・カーク楽団での「Floyd’s Guitar Blues」(1939年)で一躍名を挙げたスミス。それから33年を経て制作された唯一のリーダー作がこれだ。オルガンをバックにアーシーかつロッキンなプレイを展開する。「Without You」はウェスに捧げた全編オクターブ奏法の曲だ。

タイニー・グライムス
『Electric Guitar Master』

●リリース:1998年(1944〜47年録音)
●ギタリスト:タイニー・グライムス

スウィング期の4弦マイスター

ビンテージ録音の中からギターが特に暴れている曲をコンパイル。アイク・ケベック(ts)との「Blue Harlem」はぬかるみにはまったかのようにどっぷりとブルージィ。一転して、チャーリー・パーカー(as)を従えた「Tiny’s Tempo」などはバピッシュだ。基本的にはC・クリスチャン奏法だが、4弦ギターによるおどけたプレイが持ち味。

タイニー・グライムス/J.C.ヒギンボサム
『Callin’ The Blues』

●リリース:1958年
●ギタリスト:タイニー・グライムス

グルーヴをとことん堪能すべし

大御所ヒギンボサム(tb)を迎えてのブルージィなスウィング作。ジャム・セッション風のリラックスした演奏で、各曲が7〜11分台と長尺だ。フレイン・フレーズや異弦同音フレーズ、ダイナミックなグリッサンドを聴くにつけ、この人は本当に“グルーヴ命”なんだなと改めて思う。“1940〜50年代のグラント・グリーン”といった立ち位置ではないだろうか。

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*本記事はギター・マガジン2021年8月号にも掲載しています。

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