『Face To Time Case』
崎山蒼志
![](https://guitarmagazine.jp/wp-content/uploads/2022/02/2022-0213-disc-review-02-1024x1024.jpg)
【参加クレジット】
崎山蒼志(vo,g)【ゲスト】石崎ひゅーい/たかはしほのか(vo,g)、akin/サトウカツシロ/江口亮(g)、マーティー・ホロベック/OKP-STAR/北村雄太/海/高間有一(b)、bobo/守真人/GOTO/坂本暁良/ゆきやま(d)、モチヅキヤスノリ/宗本康兵/渡辺シュンスケ(p)、他
【曲目】
①舟を漕ぐ
②Helix
③嘘じゃない
④告白(崎山蒼志×石崎ひゅーい)
⑤幽けき
⑥Pale Pink
⑦逆行
⑧水栓
⑨風来 -extended ver.-
⑩通り雨、うつつのナラカ
⑪過剰/異常 with リーガルリリー
⑫タイムケース
焦燥のロックから、色鮮やかな包容力へ
19歳SSW、進化のメジャー2ndアルバム
前作から1年ぶりとなる崎山蒼志のメジャー2nd。akkin/江口亮らアレンジャーを迎えた楽曲とセルフ・アレンジ曲が混在する構成は前作同様ながら、その質感は大きく異なる。前作では物憂げなビブラートを帯びていたボーカルは格段に力強く響いてくるし、ギター越しにロックとブルースを叩きつけるような焦燥感に満ちたかつてのプレイ・スタイルよりも、歌と演奏で孤独を温めるような包容力が深く印象に残る。ボサノヴァ調のアコギさばきとストリングスの調べを柔らかに織り合わせた「幽けき」やエレクトロ・ナンバー「Pale Pink」など、音楽的な探求精神をより色鮮やかに開花させた今作。いきものがかり・水野良樹との共作曲「風来」を始め、「告白」(石崎ひゅーい)、「過剰/異常」(リーガルリリー)といったコラボ曲群も、その音楽世界にさらなる広がりを与えている。シンガー・ソングライターの概念を刷新する19歳の、あまりにも目映く切実な“今”の結晶。
(高橋智樹)
『しあわせになるから、なろうよ』
JYOCHO
![](https://guitarmagazine.jp/wp-content/uploads/2022/02/2022-0213-disc-review-03-1024x1024.jpg)
【参加クレジット】
だいじろー(g)、猫田ねたこ(vo,k)、sindee(b)、はやしゆうき(fl)
【曲目】
①回想増えた
②みんなおなじ
③光あつめておいでよ
④輪の中にいればたいせつにしてあげる
⑤碧に成れたら
⑥悲しみのゴール
⑦夜明けの測度
⑧忘れないで
重層的かつ多角的なアレンジとシンプルで美しいメロディの対比
京都発の男女混成4人組バンドによる、まとまった音源としては4曲入りの2nd EPから3年ぶりのミニ・アルバム。変拍子を用いたプログレッシヴな曲展開、アコギやピアノ、リズム隊が織りなす幾何学模様のようなアンサンブルは相変わらず健在で、その上を舞うシンプルで美しいメロディと鮮やかなコントラストをなしている。全曲の作詞作曲を手がけるだいじろーのギターは、例えば「光あつめておいでよ」では目も眩むような精緻なタッピングを披露したかと思えば、「碧に成れたら」ではひなびたアルペジオを情感たっぷりに爪弾き、「夜明けの測度」では壁のようなディストーション・サウンドで空間を埋め尽くす。聴けば聴くほどその練り上げられた重層的かつ多角的なアレンジに唸らされるが、とっつきにくさは微塵もなく聴き手の郷愁を誘う。どこか“わびさび”を感じさせる曲調が、ポーター・ロビンソンら海外アーティストにも愛されるのも納得だ。
(黒田隆憲)
※本記事はギター・マガジン2022年3月号にも掲載されています。