崎山蒼志の未知との遭遇 第15回:ギターは最高 崎山蒼志の未知との遭遇 第15回:ギターは最高

崎山蒼志の未知との遭遇
第15回:ギターは最高

新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。

デザイン=MdN

ずっと、かけがえのない楽器です。

 時間が過ぎるのはとても早く、楽しみにしていた宝箱のような日も、怠惰に過ごしてしまう日も、あっという間に遠くうしろのほうに駆けていってしまいます。そんな日々、気づけば、嬉しい時や悲しい時、なんにも考えていない時でさえ、身の回りにギターがあればすぐ手に取って弦をはじいているこの頃です。昔覚えた曲を弾いたり、最近知った曲を頭の中で反芻しながら、なんとなくコピーしてみたり、浮かんだままにフレーズを爪弾いてみたり。例えば、どこか自分自身が物憂げな時は、そんな具合で浮かび上がってきたフレーズやコード進行が言葉より幾倍も自分の感情を表していたりして、音楽、楽器って本当に不思議だなと思います。それが私の心と移りゆく時間の狭間の付箋のように、大事なものとして、重なってゆきます。そうして最終的に、ひとつひとつ、大きくは曲という形になっていくのです。

 また、たまたま「ここはこうして、こう!」と押さえた和音が気に入って、あとになってその和音が、音楽の知識となって大活躍することもあって、ギターはまるでRPGみたいです。総じて何を綴りたかったのかと言いますと、ギターと時間は自分の生活において、とっても密接に関係しているなと改めて感じたということです。

 音楽こそ時間芸術ですし、ギターは時間をかけて練習するものなので、何を当たり前な、ということではあるのですが、生活においてギターと自分との距離が近ければ近いほど、小さな魚のようにすり抜けていってしまうような人生の些細な出来事や、その時その時で変化する自分自身の音楽の趣向をスケッチするように、ギターは機能しているなと思いました。

 とにかくギターを弾くのは楽しいのです。楽しい時も、辛い時もその感情を露わにして、または何もかも忘れるように無心になって奏でているうちに、どんどんと音の世界にのめり込んでゆきます。ずっと、かけがえのない楽器です。

 前回、strymon のNIGHTSKYというリバーブ・ペダルを購入したことをここで書きました。

 1ヵ月ほど使用してみて、まさに広大な夜空のようなペダルだと再確認しております。今回は自分が好きな設定など、ご紹介できたらと思います。

 まずは3つのリバーブのモード切り替えができるTEXTUREでは、自分は最も音の立ち上がりがゆっくりなdiffuseモードが好みです。非常にムーディで、TONEのFILTERをlow passに設定し、HIGH CUTをしていけば、立ち込めていく霧のような印象を受けます。このペダル、TONEなどの設定次第ではあるものの、リバーブの質感が非常にクリアです。HIGH CUTなしでVOICEセクションのINTERVALを+5thにしたシマー・サウンドは、確実に夜空が立ち上がります。好きな設定です(あまりにも機能的なVOICEセクションが夜空を作る!)。

 あと、音の追従性が美しいので、あまり色んなツマミやモードを意識せず、MIXの設定だけにフォーカスして遊んでいても、濃密なリバーブ体験をくり広げられそうです。

 なんといっても面白いのは、モジュレーションの部分でしょう。3つのTARGETから選びモジュレーションをかけることができます。僕が注目したいのは、pitchというモードです。SHAPEをenvにすれば、ピッキングの強弱によって音が曲がる! まるで音速のUFO、非常に面白いです。TARGETをFilterにすれば、SHAPEでどれを選ぶかや、TONEなどとの兼ね合いもありつつ、ギターとは思えない柔らかく跳ねるようなシンセ・サウンドが……。自分は卓球台で弾む玉を想起しました。

 半端ないシーケンサー機能については、また来るべき時が来ましたら…! 今回もありがとうございました。

著者プロフィール

崎山蒼志

さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。

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