新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。
デザイン=MdN
※本記事はギター・マガジン2024年12月号に掲載された記事を再編集したものです。
いてもたってもいられなくなって、試奏しに行くことにしました
レス・ポール・タイプが欲しくてついついネットで色々漁っている内に、とある楽器屋さんのページで、とても良さそうなアコースティック・ギターを見つけました。ヘッドウェイのHF-415 URUSHI/STDというモデルで、マーティン 0-18だったりを想起させる形です。塗装に“うるし塗り〞が施されているそうで、これまたどんな音がするのか気になります。
自分の所有するアコースティック・ギターは、オベーション(“Adamas〞、“Celebrity〞、どちらもエレアコ)と、ギブソン LG-1で、どちらも個性全開のギターです。レコーディングなどでもって普遍的に取り扱うことのできるアコースティック・ギターを長い目で探していた節もあったので、一旦とりあえずレス・ポールとの格闘をやめ、アコースティック・ギターの事を考え出しました。アコースティック・ギターをネットで探すうち、日に日にやっぱりあのヘッドウェイのギターがいいんじゃないか?という思いが強まり、いてもたってもいられなくなって、試奏しに行くことにしました。
お目当てのギターのある店の近くに、もう一店舗楽器屋があり、心の準備も兼ねてちょっと覗いてみようと思い一旦そっちに入ってみます。
ざーっと店内を散策していると奇妙なギターを見かけて、あまりに気になってしまい、お目当てではないもののつい弾いてみることにしました。アコースティック・コーナーにあった、70年代KAWAI製のアーチトップと思わしきギターです。フロントにのみピックアップ(ハムバッカー)がついていました。ネックが24フレットまであり、その影響もあってか、フロントといいましてもややセンター辺りについたピックアップが愛らしいです。後付けにも思えます。持ってみるとめちゃくちゃ軽くてびっくりしました。僕の持っているダンエレクトロ U-1にも匹敵しそうです。箱モノの中でも相当軽いのではないでしょうか。ネックは極薄で、握りやすく、軽やかにコード・チェンジできそうです。
鳴らしてみるとその鳴りっぷりに惚れ惚れとしました
フェンダーのChampに繋いで試奏しました。ツマミはシンプルなボリュームとトーンのみです。一度弾いてみると、凄く素直な音が飛び出しました。ハムバッカーの搭載されたフルアコっぽい甘さがありつつも、ハイの抜け方がシャープです。トーンを絞るとよりしっかりしたジャズ・トーンが鳴らせます。後付けと思われる白いピックガードがついていたのですが、ペラペラしていて演奏するたびに蝶々みたいに舞います。それもいい味を出していました。素直な音色と、扱いやすさ、軽さから結構取り回しが効くのではと思い、少々購入を悩みました。値段も4万円弱と、リーズナブルな良い値段です。いや、お目当てのギターがあるんだからそれを弾いて一旦考えようと冷静に判断し、御礼を言い店を出ます。
そうして辿り着いたもう一店舗でお目当てのヘッドウェイと対面します。既に佇まいがいいです。弾いてみたいですと伝え、試奏の準備の後、手に取ります。思っていたよりもコンパクトです。鳴らしてみるとその鳴りっぷりに惚れ惚れとしました。優しく弾いても、強く弾いてもバランスの良い音色で、どこかピアノを思わせます。レスポンスが良く、自分の強弱にどこまでも忠実に鳴ってくれる感じがあります、アコースティック・ギターらしい音の硬さと響きの甘さの塩梅も自分好みでこれは買いだと即決しました。購入後KAWAIのアーチトップ・ギターのことも思い出しましたが、取り敢えず今日買うのはやめておこうと一旦帰宅するのでした。
ヘッドウェイは既にレコーディング等で使っています。サイドバック等に塗られた、うるしの艶やかな質感が本当にかっこいいです。綺麗な音色、これから長く重宝してゆきそうです。
著者プロフィール
崎山蒼志
さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。