今回のテーマは、C7(9)やCm7(9)などのテンション・コードです。四和音が三和音に音を1つ足したものであることは前回で説明しましたが、テンション・コードはその四和音にもう1つ音を足したもの、と考えると理解しやすくなります。
文・図版作成=ギター・マガジン編集部
はじめに
テンション・コードはジャズやその流れを汲む音楽には多用されます。一方、音楽ジャンルによってはほとんど、あるいはまったく必要なかったりもします。
初心者の方は今回の内容を見て、「こんなに色々なコードを覚えなくてはいけないのか?」と思ってしまうかもしれませんが、そんなことはありません。テンション・コードは必要な時に必要なものを少しずつ覚えていけばよいと思います。どうか気軽に読み進めて下さい。
テンション・コードとは?
テンション・コードとは、テンション・ノート(tension note)と呼ばれる音が追加されたコードのことです。たいていのものは四和音を土台としています。
第6回目に示した「コードの構成音一覧表」から、テンション・コードの部分を再掲載しましょう。「構成音」欄の中の「テンション」の列に書かれた度数(9、11、13など)に注目して下さい。
▼テンション・コード
コード名 | 構成音 | 読み方 | ||||
ルート | 3度 4度 | 5度 | 7度 6度 | テンション | ||
□6(9) | 1 | 3 | 5 | 6 | 9 | シックス(ナインス) |
□7(9) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | 9 | セブンス(ナインス) |
□7(♭9) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | ♭9 | セブンス(フラッテッド・ナインス) |
□7(♯9) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | ♯9 | セブンス(シャープド・ナインス) |
□7(11) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | 11 | セブンス(イレブンス) |
□7(♯11) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | ♯11 | セブンス(シャープド・イレブンス) |
□7(13) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | 13 | セブンス(サーティーンス) |
□7(♭13) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | ♭13 | セブンス(フラッテッド・サーティーンス) |
□△7(9) | 1 | 3 | 5 | 7 | 9 | メジャー・セブンス(ナインス) |
□△7(♯11) | 1 | 3 | 5 | 7 | ♯11 | メジャー・セブンス(シャープド・イレブンス) |
□△7(13) | 1 | 3 | 5 | 7 | 13 | メジャー・セブンス(サーティーンス) |
□m6(9) | 1 | ♭3 | 5 | 6 | 9 | マイナー・シックス(ナインス) |
□m7(9) | 1 | ♭3 | 5 | ♭7 | 9 | マイナー・セブンス(ナインス) |
□m7(11) | 1 | ♭3 | 5 | ♭7 | 11 | マイナー・セブンス(イレブンス) |
□m△7(9) | 1 | ♭3 | 5 | 7 | 9 | マイナー・メジャー・セブンス(ナインス) |
そもそもテンション・ノートとは何か?という話は、どうしても長くかつ難しいものになってしまうので割愛させていただきます。いずれ音楽理論書や音楽用語辞典で確かめてみて下さい。ここでは単にテンション・ノートは9、11、13と、それらに♭や♯が付いたもの、としておきます。また、9、11、13は、それぞれ2、4、6の1オクターブ上の音です。
次の譜面を見て下さい。これはCメジャー・スケールの音を、1つ置きに並べたものです。
譜面には書き入れていませんが、ここにおいて隣り合った音同士はどれも長3度または短3度の間隔にあります(これはコードの「3度重ねの原則」と密接な関係にあります)。
また度を示す数字は、低い方から1・3・5・7・9・11・13と奇数で並んでいます。これらのうち、1(ド)から見て、1オクターブを超えたところにある9(レ)と11(ファ)と13(ラ)がテンション・ノートです。
さらに、青色の音符と度数を添えたことでわかっていただけると思いますが、9、11、13は、それぞれ2、4、6の1オクターブ上の音です。
※Cをルートとしたコードの構成音にファが入っていた場合、4と解釈する場合と11と解釈する場合の両方があります。また同様に、ラは6と解釈する場合と13と解釈する場合の両方があります。このあたりのことは、次回またはその次くらいに説明する予定です。
さて、テンション・コードのコード名は、土台となるコードの名前の右横に、テンション・ノートの度数を書き入れる形になります。
本講座では、テンション・ノートは必ずカッコの中に書いていますが、カッコを書かない人もいます。
カッコを書かない場合は、やや右上の位置に、少しだけ小さめの文字で入れたほうがよいでしょう。
次は、先の一覧表に書かれたテンション・コードを、土台となっている四和音ごとに分類しつつ、そのフォームを紹介していきます。
6を土台としたテンション・コード
「□6」を土台としたテンション・コードで、わりとよく使用されるのは「□6(9)」でしょう。
コード名 | 構成音 | 読み方 | ||||
ルート | 3度 4度 | 5度 | 7度 6度 | テンション | ||
□6(9) | 1 | 3 | 5 | 6 | 9 | シックス(ナインス) |
C(ド)をルートとした場合の構成音は次のとおりです。比較のために、CとC6の構成音も一緒に示しています。
代表的なフォームは、おそらく次の2つでしょう。
7を土台としたテンション・コード
「□7」を土台としたテンション・コードは多めに紹介してみました。
コード名 | 構成音 | 読み方 | ||||
ルート | 3度 4度 | 5度 | 7度 6度 | テンション | ||
□7(9) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | 9 | セブンス(ナインス) |
□7(♭9) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | ♭9 | セブンス(フラッテッド・ナインス) |
□7(♯9) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | ♯9 | セブンス(シャープド・ナインス) |
□7(11) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | 11 | セブンス(イレブンス) |
□7(♯11) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | ♯11 | セブンス(シャープド・イレブンス) |
□7(13) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | 13 | セブンス(サーティーンス) |
□7(♭13) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | ♭13 | セブンス(フラッテッド・サーティーンス) |
Cをルートとした場合の構成音は次のとおりです。
それぞれのフォームは次のとおりです。
これらのうち「□7(9)」は、ジャズをやらない人でも覚えておきたいコードです。ファンクやファンク系のロック、ポップスなどの曲によく出てくるからです。
また「□7(♯9)」は、ジミ・ヘンドリックスがよく使っていたため「ジミヘン・コード」と呼ばれることが多いです。ロックにもけっこう出てきます。歪んだギターで弾くと、かなり破壊的な響きになります。
△7を土台としたテンション・コード
「□△7」を土台としたテンション・コードは次の3つです。
コード名 | 構成音 | 読み方 | ||||
ルート | 3度 4度 | 5度 | 7度 6度 | テンション | ||
□△7(9) | 1 | 3 | 5 | 7 | 9 | メジャー・セブンス(ナインス) |
□△7(♯11) | 1 | 3 | 5 | 7 | ♯11 | メジャー・セブンス(シャープド・イレブンス) |
□△7(13) | 1 | 3 | 5 | 7 | 13 | メジャー・セブンス(サーティーンス) |
Cをルートとした場合の構成音は次のとおりです。
フォームは次のとおり。
m6を土台としたテンション・コード
ここから先はマイナー系のテンション・コードです。もう個別の解説は不要かと思いますので、表と、Cをルートとした場合の構成音と、フォームの図のみを示していきます。
コード名 | 構成音 | 読み方 | ||||
ルート | 3度 4度 | 5度 | 7度 6度 | テンション | ||
□m6(9) | 1 | ♭3 | 5 | 6 | 9 | マイナー・シックス(ナインス) |
m7を土台としたテンション・コード
コード名 | 構成音 | 読み方 | ||||
ルート | 3度 4度 | 5度 | 7度 6度 | テンション | ||
□m7(9) | 1 | ♭3 | 5 | ♭7 | 9 | マイナー・セブンス(ナインス) |
□m7(11) | 1 | ♭3 | 5 | ♭7 | 11 | マイナー・セブンス(イレブンス) |
m△7を土台としたテンション・コード
コード名 | 構成音 | 読み方 | ||||
ルート | 3度 4度 | 5度 | 7度 6度 | テンション | ||
□m△7(9) | 1 | ♭3 | 5 | 7 | 9 | マイナー・メジャー・セブンス(ナインス) |
以上で、一覧表に示したコードはすべて紹介しました。ここからは補足となります。
補足1:テンション・コードでは完全5度が省略されやすい
今回紹介したテンション・コードのフォームを見て、5(完全5度)が省略されたものが多いことに気づいた人もいると思います。
テンション・コードの場合、どうしても構成音が多いので、指が届く範囲ですべての構成音を押さえるのが難しいわけです。そんな時、まっ先に省略されるのが5なのです。またテンション・コードは響きが複雑なので、抜けのよいサウンドにするために、5を抜くこともあります。
ついでですが、覚えておくとお得な「□7」のフォームがあります。これらは1と3と♭7の3音だけでできたC7です。
C7を土台としたテンション・コードのフォームは、この3音だけのC7に、テンション・ノートを加えると出来上がります。押さえるのもわりと楽なフォームなので、よく使われます。
補足2:テンション・ノートが2つ以上付くコードもある
先に示した一覧表には1つも書きませんでしたが、テンション・ノートが複数あるテンション・コードもあります。たとえば次のようなものです。
コード名 | 構成音 | ||||
ルート | 3度 4度 | 5度 | 7度 6度 | テンション | |
□7(9,11) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | 9,11 |
□7(9,13) | 1 | 3 | 3 | ♭7 | 9,13 |
□7(9,11,13) | 1 | 3 | 5 | ♭7 | 9,11,13 |
参考までに、フォームも1つずつ示しておきましょう。C7(9,11)は3を、C7(9,13)は5を、C7(9,11,13)は3と5を省略したフォームになっています。
今日はここまで。次回はomit3、sus4、add9といった、少し変わった名前を持つコードについて説明します。
本講座の関連コンテンツ
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【CONTENTS】
◎コードとは?コード進行とは?
◎Cの構成音と、いろいろな押さえ方
◎C6、C7、C△7の構成音と、いろいろな押さえ方
◎Cメジャー・スケールを覚えよう
◎ルートとは?度とは?
◎コードの構成音一覧
◎三和音とは?
◎四和音とは?
◎テンション・コードとは?
◎omit3とは?add9とは?sus4とは?
◎分数コードとは?
◎続・分数コードとは?
◎コードは平行移動で覚えよう
◎続・コードは平行移動で覚えよう
◎フレット数の書かれていないコード・ブック
◎続・フレット数の書かれていないコード・ブック
◎コード・フォームを自分で作る
◎続・コード・フォームを自分で作る
◎自分独自のコード・フォームを作る
◇巻末スペシャル:Fコードの押さえ方と攻略法
◇付録:いろいろ確認できる4つの指板図!