続・ミュートのやり方 初心者集まれ! 指板図くんのギター・コード講座 第21回 続・ミュートのやり方 初心者集まれ! 指板図くんのギター・コード講座 第21回

続・ミュートのやり方 
初心者集まれ! 指板図くんのギター・コード講座 第21回

今回は、ギターでコードを弾く時に、なぜミュートが必要になるのか?といったことについて説明します。

文・図版作成=ギター・マガジン編集部

6:なぜミュートが必要なのか?

コードを弾く時になぜミュート(消音)が必要になるのか? その理由をここでは次の3つに分類します。

  1. コードの構成音以外の音を鳴らさないため
  2. ベース音をコードのルートにするため
  3. 自分の望む響きにするため

それぞれ具体例を挙げながら解説します。

1. コードの構成音以外の音を鳴らさないため

ミュートが必要な第一の理由は、「コードの構成音以外の音を鳴らさないため」です。

あるコードを弾く時に、その構成音には含まれていない音を開放弦で鳴らしてしまうと、別のコードになってしまいますし、自分の意図していない響きが生じてしまいます

例えば次の図のB♭7で、6弦を正しくミュートした場合(左)とミュートしない場合(右)とを、実際にギターで弾いて聴き比べてみて下さい。

※各弦の右横に書かれた文字は音名です。不要な音を赤い色で示しています。
※右の指板図はB♭7ではないので、コード名は書き入れていません。

ミュートしないほうは、不快な響きに感じられたと思います。B♭7の構成音はB♭-D-F-Aですが、ここに構成音ではないEが入ることによって、コード全体の響きが阻害されるわけです。

より極端な例も示しましょう。次の図のコードは同じくB♭7ですが、ジャズでよく使うような3本の弦だけを鳴らすフォームです。これも実際にギターで弾いて聴き比べてみて下さい。ミュートしないと、音同士が半音や全音でぶつかり、非常に濁った響きとなります。

……以上、たった2つの例を挙げただけですが、とりあえず、コードの構成音以外の音を鳴らしてしまうと自分の望んだコードの響きにならない、ということはおわかりいただけたかと思います。

*コードの構成音に関しては本講座ですでに説明してきましたが、途中から読み始めた方で、コードについての知識がまだない方は、ぜひ第1回から目を通してみて下さい。

さて、逆に開放弦がコードの構成音ならば、まったくミュートしなくても良いのかというと、そういうものでもありません。そこで次の項に進みましょう。

2. ベース音をコードのルートにするため

ミュートが必要な第二の理由は「ベース音をコードのルートにするため」です。

※ここでのベース音とは、「鳴らす音のうち、一番低い音」を指しています。

コードは、ルートをベース音にした時に最も安定した響きになります。あるいは、そのコードらしい響きになります。

そのため、コード・ブックに掲載されているコードのうち大抵のものは、ルートがベース音になるように、ミュートすべき弦が指定されています。

これについてはCのキーのダイアトニック・コードを例に説明しましょう。次の図をごらん下さい。どれもルート(◎)がある弦よりも低い弦には、すべてミュートの指定(×印)が入れられています。

※Em7とG7にはミュートすべき弦がありませんが、他と比較するために入れています。

このようにコード・ブックに載っているコードは、なるべくルートがベース音になるよう配慮されているわけです。

ところで、これらの7つのコードをまるでミュートしないとどうなるのかも、ついでに見ておきましょう。次の図は、ミュートを一切しない状態での各弦の音名を書いたものです。本来はミュートすべき開放弦が、そのコードの構成音である場合は青、構成音でない場合は赤で示しました。

赤い字になっているところ、つまりDm7における6弦、そしてBm7(♭5)における6弦と1弦は、コードの構成音ではないため、これらは必ずミュートする必要があります。

一方、青い字になっているところは、コードの構成音ですので、仮にこれをミュートしなくても、コード名は変わりません。ただそれでもやはりルートをベース音にしたほうが、そのコード本来の響きになります。

※C△7、Am7、F△7にとって6弦の開放のE音は構成音の1つになりますが、この3つはやや事情が異なります。C△7において6弦開放はルートに対して3度の音にあたりますが、Am7においては5度の音にあたります。またF△7においては7度の音にあたります。3度や5度をベース音にした場合、そのコード全体の響きは、ルートをベース音にした場合とそれほど変わりませんが(といってよいかどうかも微妙ですが)、7度をルートにすると響きから受ける印象はかなり変わってきます。さらに言えば、テンション・コードにおける9度、11度、13度をベース音にすると、それはもう別のコードの響きに聴こえます。こうした点にはご注意下さい。

※ルート以外の音をベース音にした場合、そのコードは分数コードで表記されることもあります。分数コードについては、本講座の第11回をご参照下さい。

3. 自分の望む響きにするため

ミュートが必要な第三の理由として、「自分の望む響きにするため」というのもあります。ここでの「響き」とは、「ボイシング(=音の重ね方)」と言い換えてもいいでしょう。

1つのコードにも色々な押さえ方があるわけですが、特に「このコードを、この響きで鳴らしたい」と思った時は、コード・ブックに載っているのとはまた違う押さえ方が必要になりますし、それによってミュートすべき弦も変わってきます。

具体例を示します。次の2つの図はどちらもAm7-D7というコード進行ですが、上段はコード・ブックに普通に載っている形で押さえたもので、下段は3本の弦だけで弾くものとなっています。

この例は単純ですが、要するに、「弦3本のみの響きのほうが望ましい」というシチュエーションでは、ミュートすべき弦も増えるということです。

次の2つの図はどちらもC△7-C♯dim7-Dm7(9)-G7(13)というコード進行の例です。上段は、コード・ブックにふつうに載っている形で押さえたもので、下段はすべてのコードの1弦をミュートしたものとなっています。

下段の押さえ方のどこがポイントかというと、4つのコード全体を通じてトップノート(一番高い音)が2弦5フレットのまま動かない、というところです。これによって、コードが動いていく中でも一本筋の通った響きが得られるわけです。

次の2つの図はC-G-Fというコード進行です。上段はコードをフルに押さえた例、中段は高音側の弦3本だけを鳴らす例、下段は1弦と3弦のみを鳴らす例です。上段から下段に行くにつれ、音は薄く(軽く)なり、ミュートすべき弦は増えていきます。

以上の例のように、自分が望む響きを得るために、コード・ブックでは特にミュートの指定がない弦をあえてミュートする場合もあるわけです。

補足1:右手のコントロールについて

ミュートすべき弦は、要するに鳴らさなければよいわけなので、右手のコントロールでその弦に触れないようにできるのであれば、それでもOKです

例えば4弦から1弦のみを鳴らす場合は、次の図のように、右手で6弦と5弦は弾かないようにピックをコントロールすればOKです。それでも触れてしまいがちな5弦は左手の指でミュートしておきます。

また低音弦2本だけを鳴らすのであれば、右手で6弦と5弦のみを狙いつつ、それでも触れてしまいがちな4弦だけをミュートすれば、ほぼ大丈夫でしょう。

指板図に書かれたミュート記号を見て、「これ全部、左手の指でミュートしなくてはいけないの?」と思う人がいるかもしれないので、念のため書いておきました。

補足2:コード・ブックにおけるミュートの指定について

本講座では、ミュートすべき弦は開放弦の位置に×印を付けることによって示しています。

しかし次の図のように、開放弦の位置になにも書かないことによってミュートすべき弦を示しているコード・ブックもありますので、一応ご注意下さい。

今回ははここまで。次回のテーマは「コード・フォームを自分で作る」です。コード・ネームを見ただけで、そのコードのフォームを自分で作れるようになれば、もうコード・ブックを見る必要はなくなります。

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本講座の関連コンテンツ

指板図くんのギターコードブック

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本講座を書籍化した本です。オールカラーで144ページ。電子書籍もあります。

【CONTENTS】
◎コードとは?コード進行とは? 
◎Cの構成音と、いろいろな押さえ方 
◎C6、C7、C△7の構成音と、いろいろな押さえ方 
◎Cメジャー・スケールを覚えよう 
◎ルートとは?度とは? 
◎コードの構成音一覧 
◎三和音とは? 
◎四和音とは? 
◎テンション・コードとは? 
◎omit3とは?add9とは?sus4とは? 
◎分数コードとは? 
◎続・分数コードとは? 
◎コードは平行移動で覚えよう 
◎続・コードは平行移動で覚えよう 
◎フレット数の書かれていないコード・ブック 
◎続・フレット数の書かれていないコード・ブック 
◎コード・フォームを自分で作る 
◎続・コード・フォームを自分で作る 
◎自分独自のコード・フォームを作る 
◇巻末スペシャル:Fコードの押さえ方と攻略法
◇付録:いろいろ確認できる4つの指板図!