前回に続いて今回も、単純なコードを変化させて別のコードのフォームを作る方法を説明します。
文・図版作成=ギター・マガジン編集部
前回は、Cのロー・コードを元にして、C6、C7、C△7、Csus4、Cadd9のフォームを作りました。今回はCのハイ・コードを出発点とし、C→Cm→Cm7→Cm7(9)という順に徐々に複雑なコードへと変化させていく方法を説明します。
予備知識
今日の内容を理解するのに必要な予備知識は次の3つです。
- Cのハイ・コードのフォーム
- C、Cm、Cm7、Cm7(9)の構成音
- Cのハイ・コードに対応したCメジャー・スケールのポジション
以上の3点について軽く説明しまししょう。
1. Cのハイ・コードのフォーム
今日取り上げるCのハイ・コードのフォームは次の2つです。左は6弦がルートのフォームで、右は5弦がルートのフォームです。
2. C、Cm、Cm7、Cm7(9)の構成音
C、Cm、Cm7、Cm7(9)の構成音は次の表のとおりです。
コード名 | 構成音 | ||||
---|---|---|---|---|---|
C | 1 | 3 | 5 | ||
ド | ミ | ソ |
Cm | 1 | ♭3 | 5 | ||
ド | ミのフラット | ソ |
Cm7 | 1 | ♭3 | 5 | ♭7 | |
ド | ミのフラット | ソ | シのフラット |
Cm7(9) | 1 | ♭3 | 5 | ♭7 | 9 |
ド | ミのフラット | ソ | シのフラット | レ |
3. Cのハイ・コードに対応したCメジャー・スケールのポジション
前回紹介したCメジャー・スケールのポジションはロー・コードに対応するものでした。今回はハイ・コードに対応する次の2つのポジションを使います。
次の譜面と図は、6弦8フレットのドを起点としたCメジャー・スケールです。これは6弦をルートとしたCコードのフォームの周辺に何の音があるかを調べるのに使います。
次の譜面と図は、5弦3フレットを起点とするCメジャー・スケールです。こちらは5弦ルートのCコードのフォームの周辺にある音を調べるのに使います。
予備知識は以上です。
6弦ルートのCの各弦の度数を知る
まず、6弦ルートのCを他のコードに変化させる方法から説明しますが、その前にCのハイ・コードの各弦が、ルートに対して何度の音にあるかを調べておきましょう。
6弦8フレットのドからCメジャー・スケールを弾き始め、1弦8フレットのドまで弾き続けます。この時「ドレミファソラシドレミファソラシド」を、「123456712345671」と口で言いながら弾くようにします。
そして、Cを構成する6弦8フレット、5弦10フレット、4弦10フレット、3弦9フレット、2弦8フレット、1弦8フレットのそれぞれが、何度の音になっているかを確認します。
また前回と同じく、ここから先は次のような図で指使いを示します。
では、このCのハイ・コードを、Cm、Cm7、Cm7(9)に変化させていきましょう。
CからCmを作る(6弦ルートで)
まずCをCmにするために、両者の構成音を確認します。
コード名 | 構成音 | ||||
---|---|---|---|---|---|
C | 1 | 3 | 5 | ||
ド | ミ | ソ |
Cm | 1 | ♭3 | 5 | ||
ド | ミのフラット | ソ |
このとおり、CとCmはどちらも’1’(ルート、完全1度)と’5’(完全5度)を持ちます。そしてCが’3’(長3度)を持つのに対し、Cmは’♭3’(短3度)を持ちます。
ということは、Cのハイ・コードのフォームのうち、’3’の音を鳴らしている弦のフレットを1フレット下げて(=半音下げて)’♭3’にすれば、コードはCmに変化するわけです。
‘3’は3弦9フレットにあります。これを押さえている中指を弦から離し、人差指でセーハしている8フレットの音が鳴るようにすれば、Cmの出来上がりです。
CmからCm7を作る(6弦ルートで)
CmをCm7にするために、まず両者の構成音を比較します。Cm7はCmに’♭7’を加えたものです。
コード名 | 構成音 | ||||
---|---|---|---|---|---|
Cm | 1 | ♭3 | 5 | ||
ド | ミのフラット | ソ |
Cm7 | 1 | ♭3 | 5 | ♭7 | |
ド | ミのフラット | ソ | シのフラット |
次に’♭7’が、ギターの指板上のどの位置にあるかを探します。6弦8フレットのドを起点としたCメジャースケールを弾くと、4弦9フレットが’7′であることがわかります。これを1フレット下げた4弦8フレットが’♭7′です。
そしてCmのフォームをCm7に変化させるには、4弦10フレットを押さえている小指を離し、人差指でセーハしている4弦8フレットの音が鳴るようにすればOKです。
これにより、4弦10フレットで鳴らしていた’1’の音は失われますが、’1’は他にも6弦と1弦で鳴らしていますので、問題ありません。
Cm7をCm7(9)にする(6弦ルートで)
次にCm7をCm7(9)にするために、両者の構成音を比較します。Cm7(9)は、Cm7に’9’を加えたものです。
コード名 | 構成音 | ||||
---|---|---|---|---|---|
Cm7 | 1 | ♭3 | 5 | ♭7 | |
ド | ミのフラット | ソ | シのフラット |
Cm7(9) | 1 | ♭3 | 5 | ♭7 | 9 |
ド | ミのフラット | ソ | シのフラット | レ |
そして’9’の音がどの位置にあるかを、6弦8フレットのドを起点としたCメジャー・スケールで探します。この時、「ドレミファソラシドレ」を、「123456712」ではなく「123456789」と数えます。すると3弦7フレットに’9’があることがわかります。
しかし、この3弦7フレットは、8フレットを人差指でセーハしている限り、押さえることはできません。
そこで、他にも’9’がある箇所を探します。6弦8フレットを起点としたCメジャー・スケールを「ドレミファソラシドレミファソラシドレ」と弾き、これを「1234567123456789」と数えます。すると、1弦10フレットにも’9’があることが判明します。
そしてCm7をCm7(9)にするには、余っていた小指で1弦10フレットを押さえます。これでCm7(9)の出来上がりです。
これにより1弦8フレットで鳴らしていた’1’の音は失われますが、’1’は6弦で鳴らしているので、問題ありません。
以上、Cというメジャー・トライアドを、Cmというマイナー・トライアドにし、続いてCm7という四和音にし、最後にCm7(9)というテンション・コードにしました。コードの構成音とCメジャー・スケールを知っているだけで、単純なコードを複雑なコードに変えていくことができるわけです。
5弦ルートの各弦の度数を知る
次に5弦ルートのCを、Cm、Cm7、Cm7(9)に変えていく方法を説明します。手法はほぼ同じなのですが、6弦ルートの時とはまた違うノウハウも出てきます。
まず5弦ルートのCの各弦が、ルートに対して何度の音にあるかを調べます。5弦3フレットからCメジャー・スケールを弾き始め、1弦3フレットまで続けます。この時「ドレミファソラシドレミファソ」を「123456712345」と口で言いながら弾くようにします。
そしてCを構成する、5弦3フレット、4弦5フレット、3弦5フレット、2弦5フレット、1弦3フレットのそれぞれが、何度の音になっているかを確認します。
このCを、Cm、Cm7、Cm7(9)に変化させていきます。
CをCmにする(5弦ルートで)
コード同士の構成音の比較は先ほどやりましたので、以下では省略します。
まずCをCmにします。5弦ルートのCにおいて、’3’は2弦5フレットにあります。これを1フレット下げて2弦4フレットの’♭3’にすれば、Cmの出来上がりです。なお、指の入れ替えは必要になります。
CmをCm7にする(5弦ルートで)
CmをCm7にするには、このフォームに近いところで’♭7’を探します。5弦3フレットのドを起点にして、ドレミファソラシ(1234567)と弾くと、3弦4フレットが’7′であることがわかります。これを1フレット下げた3弦3フレットが’♭7′です。
3弦3フレットを鳴らすには、Cmのフォームで3弦5フレットを押さえていた小指を離すだけでOKです。これでCm7が出来あがりました。
3弦5フレットで鳴らしていた’1’の音は失われますが、’1’は5弦3フレットでも鳴らしているので、問題ありません。
Cm7をCm7(9)にする(5弦ルートで)
次に、Cm7をCm7(9)にするために、’9’がどこにあるかを探します。5弦3フレットを起点としてドレミファソラシドレ(123456789)と弾くと、2弦3フレットに’9′があることがわかります。
そしてこの’9’を鳴らすために、Cm7において2弦4フレットを押さえていた中指を離します。
しかし’9’を加えた代わりに、重要な’♭3’が失われてしまいました。‘♭3’は、そのコードがマイナーであることを決定する重要な音ですので、これを消してしまうと、Cm7(9)とは言えないコードになってしまいます。
失われた’♭3’を取り戻さなくてはなりません。そこで別の箇所にある’♭3’を探します。
5弦3フレットからドレミ(123)と弾くと、4弦2フレットが’3’ですので、そこから1フレット下がった4弦1フレットが’♭3′です。
しかしこの4弦1フレットは、3フレットを人差指でセーハしている限り押さえることはできません。よってここで1つの「決断」をし、指使いをガラリと入れ替えます。
具体的には、人差指でのセーハはやめます。そして中指で5弦3フレット、人差指で4弦1フレットを押さえ、残りの3弦、2弦、1弦の3フレットを薬指でベタっと押さえます。これにより、Cm7(9)の構成音がすべて揃ったフォームが出来上がります。
なお、この押さえ方が難しい人は、1弦を省略したフォームでもかまいません。次の図の右側がそれです。これには’5’の音がありませんが、本講座で何度か説明してきたとおり’5’は省略可能です。
今回はここまで。次回は、知っているコードを変化させるのではなく、まったくゼロからコード・フォームを作る方法を説明します。
本講座の関連コンテンツ
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本講座を書籍化した本です。オールカラーで144ページ。電子書籍もあります。
【CONTENTS】
◎コードとは?コード進行とは?
◎Cの構成音と、いろいろな押さえ方
◎C6、C7、C△7の構成音と、いろいろな押さえ方
◎Cメジャー・スケールを覚えよう
◎ルートとは?度とは?
◎コードの構成音一覧
◎三和音とは?
◎四和音とは?
◎テンション・コードとは?
◎omit3とは?add9とは?sus4とは?
◎分数コードとは?
◎続・分数コードとは?
◎コードは平行移動で覚えよう
◎続・コードは平行移動で覚えよう
◎フレット数の書かれていないコード・ブック
◎続・フレット数の書かれていないコード・ブック
◎コード・フォームを自分で作る
◎続・コード・フォームを自分で作る
◎自分独自のコード・フォームを作る
◇巻末スペシャル:Fコードの押さえ方と攻略法
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