今回はコード進行の解説にしばしば出てくるローマ数字の意味について説明します。
文・図版作成=ギター・マガジン編集部
コード進行は「I-VIm-II-V7」などのようにローマ数字を使って表記されることがあります。本講座でもこのローマ数字がすでに何度か出てきていますが、これが一体何を意味するのかについてはまだちゃんと説明していなかったので、ここで説明します。
ローマ数字の意味
メジャー・スケールを構成するそれぞれの音は、第1音から順にローマ数字の「I、II、III、IV、V、VI、VII」(1、2、3、4、5、6、7)で表わされます。Cメジャー・スケールでは次の譜面のとおりです。
※クラシック畑の人は、単音を表わすローマ数字はi、ii、iii〜と小文字で書くかもしれません。
譜面は示しませんが、Cメジャー・スケール以外のメジャー・スケール(Dメジャー・スケール、Eメジャー・スケール、など)も第1音はI、第2音はII、第3音はIII〜と表わします。
またナチュラル・マイナー・スケールは、メジャースケールに対して第3音、第6音、第7音が半音低いので「I、II、♭III、IV、V、♭VI、♭VII」と表わされます。
そしてダイアトニック・コードを表わす場合は、ローマ数字に加えてコードの種類を表わす記号や数字(m、7、m7、△7など)を付けます。
*マイナー・キーのダイアトニック・コードは、前回も示した【お手軽版】です。上で示したナチュラル・マイナー・スケールから導き出させるダイアトニック・コードとは5番目のコード(VとV7)が違うのでご注意下さい。
なおコード進行は「I△7-VIm7-IIm7-V7」と書くこともあれば、「I-VI-II-V」とローマ数字のみで表現することもあります。
ローマ数字で表記するメリット
このようにコードをローマ数字で表わすことの一番のメリットはどこにあるかというと、どんなキーでも同じ書き方で済んでしまう、ということでしょう。
この下にある4つの一覧表は、各キーのダイアトニック・コードのコード名と、ローマ数字による表記の対応を示したものです。この一覧表を見れば、例えばキーがCメジャーの時のDm7-G7という進行と、キーがFメジャーの時のGm7-C7、キーがAメジャーの時のBm7-E7は、どれもローマ数字で「IIm7-V7」と表現できることがわかると思います。
*この一覧表では煩雑さを避けるため、♭や♯が付くキーは省略しました。
*マイナー・キーのダイアトニック・コードは、前回も示した【お手軽版】です。
メジャー・キーのダイアトニック・コード(三和音)
キー | I | IIm | IIIm | IV | V | VIm7 | VIIm7(♭5) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Cメジャー | C | Dm | Em | F | G | Am | Bm(♭5) |
Dメジャー | D | Em | F♯m | G | A | Bm | C♯m(♭5) |
Eメジャー | E | F♯m | G♯m | A | B | C♯m | D♯m(♭5) |
Fメジャー | F | Gm | Am | B♭ | C | Dm | Em(♭5) |
Gメジャー | G | Am | Bm | C | D | Em | F♯m(♭5) |
Aメジャー | A | Bm | C♯m | D | E | F♯m | G♯m(♭5) |
Bメジャー | B | C♯m | D♯m | E | F♯ | G♯m | A♯m(♭5) |
メジャー・キーのダイアトニック・コード(四和音)
キー | I△7 | IIm7 | IIIm7 | IV△7 | V7 | VIm7 | VIIm7(♭5) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Cメジャー | C△7 | Dm7 | Em7 | F△7 | G7 | Am7 | Bm7(♭5) |
Dメジャー | D△7 | Em7 | F♯m7 | G△7 | A7 | Bm7 | C♯m7(♭5) |
Eメジャー | E△7 | F♯m7 | G♯m7 | A△7 | B7 | C♯m7 | D♯m7(♭5) |
Fメジャー | F△7 | Gm7 | Am7 | B♭△7 | C7 | Dm7 | Em7(♭5) |
Gメジャー | G△7 | Am7 | Bm7 | C△7 | D7 | Em7 | F♯m7(♭5) |
Aメジャー | A△7 | Bm7 | C♯m7 | D△7 | E7 | F♯m7 | G♯m7(♭5) |
Bメジャー | B△7 | C♯m7 | D♯m7 | E△7 | F♯7 | G♯m7 | A♯m7(♭5) |
マイナー・キーのダイアトニック・コード【お手軽版】(三和音)
キー | Im | IIm(♭5) | ♭III | IVm | V | ♭VI△7 | ♭VII7(♭5) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Cマイナー | Cm | Dm(♭5) | E♭ | Fm | G | A♭ | B♭ |
Dマイナー | Dm | Em(♭5) | F | Gm | A | B♭ | C |
Eマイナー | Em | F♯m(♭5) | G | Am | B | C | D |
Fマイナー | Fm | Gm(♭5) | A♭ | B♭m | C | D♭ | E♭ |
Gマイナー | Gm | Am(♭5) | B♭ | Cm | D | E♭ | F |
Aマイナー | Am | Bm(♭5) | C | Dm | E | F | G |
Bマイナー | Bm | C♯m(♭5) | D | Em | F♯ | G | A |
マイナー・キーのダイアトニック・コード【お手軽版】(四和音)
キー | Im7 | IIm7(♭5) | ♭III△7 | IVm7 | V7 | ♭VI△7 | ♭VII7(♭5) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Cマイナー | Cm7 | Dm7(♭5) | E♭△7 | Fm7 | G7 | A♭△7 | B♭7 |
Dマイナー | Dm7 | Em7(♭5) | F△7 | Gm7 | A7 | B♭△7 | C7 |
Eマイナー | Em7 | F♯m7(♭5) | G△7 | Am7 | B7 | C△7 | D7 |
Fマイナー | Fm7 | Gm7(♭5) | A♭△7 | B♭m7 | C7 | D♭△7 | E♭7 |
Gマイナー | Gm7 | Am7(♭5) | B♭△7 | Cm7 | D7 | E♭△7 | F7 |
Aマイナー | Am7 | Bm7(♭5) | C△7 | Dm7 | E7 | F△7 | G7 |
Bマイナー | Bm7 | C♯m7(♭5) | D△7 | Em7 | F♯7 | G△7 | A7 |
このようにローマ数字を使った表記は、あるコード進行をどのキーでも当てはまるように抽象化してとらえたい時に役立ちます。
一覧表を曲のキーの変更に役立てる
先の一覧表は、曲のキーを変えて演奏したい時にも役立ちます。
例えばあなたがギター、友達がボーカルを担当していて、その友達から「原曲のキーが高すぎて歌えないからキーを少し下げてほしい」と言われたとします。またその原曲のキーがCメジャーで、主なコード進行がC-Am-Dm-Gだったとしましょう。
C-Am-Dm-Gの指板図は次のとおりです。ごらんのとおりギターで押さえやすいコードが並んでいます。
このC-Am-Dm-Gは、ローマ数字を使って表現するとI-VIm-IIm-Vになります。
*コードの種類を示す”m”や”7″を省いて「I-VI-II-V」と書くこともあります。これを口で言う時は「イチ、ロク、ニー、ゴー」と発音する人が多いです。
このI-VIm-IIm-V7は変えないまま、キーをまず半音だけ下げてみることにします。
Cメジャーを半音下げた時のキーはBメジャーですが、それぞれのコードが何に変わるかを知るために、先の一覧表を参照します。
ただ一覧表から該当する箇所を見つけるのはちょっと面倒だと思うので、次の表を作りました。これは原曲のキー(Cメジャー)と半音下げたキー(Bメジャー)のI、IIm、VIm、Vのみを一覧表から抜き取り、左からI、VIm、IIm、Vの順で並べ替えたものです。
キー | I | VIm | IIm | V |
---|---|---|---|---|
Cメジャー | C | Am | Dm | G |
Bメジャー | B | G♯m | C♯m | F♯ |
これでC-Am-Dm-Gというコード進行全体を半音下げるとB-G♯m-C♯m-F♯になることがわかりました。指板図は次のとおりです。
しかしこのコード進行は4つのコード全部に人差指のセーハが必要になるので、ギタリストとしては避けたいですよね? またこれを半音(1フレット)下げたB♭-Gm-Cm-Fもすべてセーハが必要になるので難易度は変わりません。
そこでさらに半音下げてキーをAメジャーにしてみましょう。それぞれのコードが何になるかは次の表にまとめました。
キー | I | VIm | IIm | V |
---|---|---|---|---|
Cメジャー | C | Am | Dm | G |
Aメジャー | A | F♯m | Bm | E |
A-F♯m-Bm-Eになることがわかりました。指板図は次のとおりです。
これでセーハが必要なコードはF♯mとBmの2つだけになりました。
しかしこれでもまだ押さえるのが無理か、または指が疲れそうだと思ったら、さらに1音下げたGメジャー・キーで弾くことを考えます。
キー | I | VIm | IIm | V |
---|---|---|---|---|
Cメジャー | C | Am | Dm | G |
Gメジャー | G | Em | Am | D |
これでコード進行はすべてロー・コードだけで弾けるG-Em-Am-Dになりました!
これでボーカルの友達もOKなら一件落着です。
しかし原曲に対して完全4度低いキーなので、さすがに低すぎるかもしれません。仮にこのキーで友達が歌えても「彼・彼女の声質をもっと活かすにはもう少しキーを上げたほうがいいな」などと思ったら、その時はカポタストを使いましょう。
カポタストを付ける位置は、キーがAメジャーなら2フレット、Bメジャーなら4フレットになります。どちらも指使いはG-Em-Am-Dのままで大丈夫です。
今回はここまでです。
なお、前々回の最後に「最終回まであと3回です」と書きましたが、今回の内容を急遽追加したため、1回分増えました。よって次回はまだ最終回ではありません。また次回のテーマは「II-V(ツー・ファイブ)」です。
本講座の関連コンテンツ
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【CONTENTS】
◎コードとは?コード進行とは?
◎Cの構成音と、いろいろな押さえ方
◎C6、C7、C△7の構成音と、いろいろな押さえ方
◎Cメジャー・スケールを覚えよう
◎ルートとは?度とは?
◎コードの構成音一覧
◎三和音とは?
◎四和音とは?
◎テンション・コードとは?
◎omit3とは?add9とは?sus4とは?
◎分数コードとは?
◎続・分数コードとは?
◎コードは平行移動で覚えよう
◎続・コードは平行移動で覚えよう
◎フレット数の書かれていないコード・ブック
◎続・フレット数の書かれていないコード・ブック
◎コード・フォームを自分で作る
◎続・コード・フォームを自分で作る
◎自分独自のコード・フォームを作る
◇巻末スペシャル:Fコードの押さえ方と攻略法
◇付録:いろいろ確認できる4つの指板図!