ザ・ローリング・ストーンズのギターにまつわるストーリーを探っていく連載。今回もブライアン・ジョーンズに注目したい。デビュー当初、VOXのティアドロップ・ギターと同様によく手にしていたのが、薄いグリーンが印象的なグレッチの6118ダブル・アニバサーリーだった。このギターを手にしたきっかけとは。
文=鈴木伸明 Photo by Michael Ochs Archives/Getty Images
スライドにも使える箱モノのギターをグレードアップ
デビュー以前のブライアンのメインギターは、ハーモニーのストラトトーンH46マーズというフルアコのモデルだった。ディアルモンド製ピックアップが2発搭載されていて、ライブやレコーディングなど、あらゆる現場でこのギターを使っていた。なお、キース・リチャーズもハーモニーのフルアコを愛用しており、そちらはミーティアH70というモデルだった。ブライアンがグレッチに乗り換えたあとも、キースはしばらくハーモニーを愛用し続けていた。
ローリング・ストーンズのギタリストがふたりともハーモニーを愛用していた理由は、ギブソンやフェンダーに比べると、半値以下ぐらいの安価で購入できたことが大きかっただろう。ローリング・ストーンズが憧れたアメリカのブルースマン、さらにキンクスなど当時のイギリスのバンドマンたちも含めて、ハーモニーのギターを使っていたプレイヤーは多かったのだ。
ブライアンがグレッチを購入したのは、1963年6月7日発表のデビュー曲「Come On」をレコーディングした直後と言われている。ちなみに「Come On」のレコーディングは、同年5月10日、ロンドンにあったオリンピック・サウンド・スタジオにて行われたという記録があり、録音からわずか4週間後にリリースされていた事実にも驚く。
デビューが決まり、レコーディングを経験したブライアンは、楽器をグレードアップしたいと考えて、63年の5月、ロンドンの楽器店サウンド・シティにて、63年製のグレッチのダブル・アニバーサリーを新品で購入したようだ。
