2025年4月に日本武道館で2年ぶりの来日公演を行なったエリック・クラプトン。追加公演も含めると合計8日間もライブが行なわれ、日本武道館110回公演も達成した。本記事では、今回の来日公演のステージに用意されていたエリック・クラプトンのアコースティック・ギターを紹介しよう。
取材・文=小林弘昂 通訳=トミー・モーリー 機材撮影=西槇太一
Eric Clapton’s Acoustic Guitars
2015 Martin
000-42K Goro’s Commemorative Edition
初めてツアーで使用したアコースティック
goro’sの髙橋吾郎へのトリビュートとして、クラプトンと藤原ヒロシが製作に関わった000スタイル。2015年に全世界39本限定で発売された。
クラプトンは本器のサウンドをとても気に入っており、手に入れてから10年間はスタジオのみで使用していたが、今回のツアーで初めて外に持ち出されたとのこと。
ボディ・トップはイタリア産のアルパイン・スプルース、バックとサイドはハワイアン・コアが採用されている。指板とブリッジはエボニーで、ブリッジにはgoro’sのゴールド・インレイが。
ピックアップはSchertlerのDYN-G-P48が取り付けられていた。48Vファンタム電源で駆動するモデルで、XLRケーブルを介してDIに接続される。また、DYN-G-P48に加えてステージ上に設置されたマイク(DPA Microphones / 4011-TL)でも収音され、PA側で2つのサウンドをミックスして出力。
弦はマーティンから発売されているクラプトンのシグネチャー、92/8 Phosphor Bronze Light(.012〜.054)を使用。
DanD Guitars
Custom 12 String Acoustic Guitar
クラプトンの依頼を受けてダン・ディアンリーが製作
ギター・テックのダン・ディアンリーが主宰するブランド、DanD Guitars。ギターの量産はしていないが、ブランドとしてDanD Guitarsを名乗っているのだそう。そして本器はダンがクラプトンのために自ら製作した12弦アコースティック・ギターだ。
2020年、ダンが1985年に製作したドレッドノートをクラプトンに見せたところから“カスタムで12弦のアコースティックを作ってくれないか?”と依頼され、製作が始まる。ボディ・シェイプは1937年製のD-28を、ネック・シェイプはクラプトンがマーティンのHD12-28を気に入ったことから同モデルをベースにすることになり、まずは6弦アコースティックのプロトタイプを製作。その後12弦を完成させたという。製作準備から完成までには半年ほどかかったのだとか。
クラプトンからのリクエストは、大きくリッチな音を出すためにドレッドノート・サイズにすること、トラディショナルな木材と製法を用いること、そして楽器としてのバランスを保つためにスロテッド・ヘッドを採用することだったという。
ボディ・トップはシトカ・スプルース、サイドとバックはインディアン・ローズウッド。スキャロップドXブレイシングを採用しており、ブレイシングはすべて1ピースのシトカ・スプルースによって作られている。
日によってセットリストが変わるため毎晩使用されるわけではないそうだが、「Alberta」ではレギュラー・チューニング、「Motherless Child」ではオープンGチューニング(G-D-G-D-B-D)に4カポで使用。
ピックアップを搭載していないため、本器はステージ上に置かれたマイク(DPA Microphones / 4011-TL)のみで収音される。
弦はマーティンのSuperior Performance Bronze Extra Light(.010〜.047)。カポはShubb製を愛用しており、可動レバー部が反りかえった近年物(Cシリーズ)ではなく、旧型のストレート・タイプ(Lシリーズ)を好んでいるとのこと。たまにブラス製のカポを使うこともあるそうだ。
DanD Guitars
Custom Parlor Acoustic Guitar
クラプトン所有器と同仕様のパーラー・ギター
本器もダンが製作したパーラー・サイズのアコースティック・ギター。ボディ・トップはスプルース、サイドとバックはローズウッド。ダンはフレイム・メイプルを使ったバインディングがお気に入りとのこと。
このギターは2本製作されており、そのうちの1本はクラプトンが自宅に保管しているという。そして残りの1本は、DanD Guitarsに“クラプトンと同じものを作ってほしい!”というオーダー・メールを送ってきたユーザーのために製作したもので、本器がそれである。
ヘッド裏の黒いテープには、オーダー主の妻と娘のイニシャルが入れられている。
たまにクラプトンが手に取るため今回のツアーにも持ってきたそうだが、ライブで使用することはないという。