Interview|ビートルズ楽曲をルーツ・スタイルでアレンジする名手=ジョエル・パターソン Interview|ビートルズ楽曲をルーツ・スタイルでアレンジする名手=ジョエル・パターソン

Interview|ビートルズ楽曲をルーツ・スタイルでアレンジする名手=ジョエル・パターソン

録音の中盤で弦が死んでしまったけど
逆にその良さが出ているよ

今作で使用したギターはギブソンJ-50だけですか?

 フラットトップはJ-50しか持っていないんだ。今までいろんなギターを使ってアルバムを作ってきたけど、むしろ1本のギターだけでアルバムをまるごと作ってみたいと思ってね。レコーディングの中盤で弦が死んでしまっていたけど、逆に「Across the Universe」はその良さが出ているよ。

すごくプライベートな部屋の雰囲気を感じる録音ですが、マイキングの方法などでこだわった部分は?

 録音はベッドルームで行なっていて、古いRCAのリボンマイクを1本だけ使っている。リボンマイクはサウンドホールに近付けると低音が出過ぎてしまうし、離し過ぎると部屋のサウンドが強く出てしまう。サウンドもダークになりがちだからミックス時にトレブルを加える必要がある。僕はギターから30~50cmくらい離して少し寝かせて立てて録ったね。

『Handful of Strings』ではES-295なども手にしていますが、あなたが所有しているギターにどういったものがあるのか教えて下さい。

 1963年製のジャズマスターが唯一のフェンダーで、トレブリー過ぎず、ベースに寄り過ぎず、レコーディングで威力を発揮してくれている。1956年製のES-295はジャズもブルースもイケるからライブでも使うし、僕のトレードマーク的な存在だね。チェット・アトキンス風にプレイする際にビグスビーを重宝しているよ。あとはES-175とES-345も持っていて、後者はオルガン・トリオで活躍しているね。1963年製のブロードウェイはギブソン傘下時のエピフォン製で、ビグスビーが付いていてライブでも使いやすいジャズギターだ。

YouTubeの「Rollin’ And Tumbllin」ではストラトトーンも弾いていますよね?

 ストラトトーンは50年代製のグッドなサウンドで、ネック状態が良くないけどスライドなら問題なくプレイできるから、おもにオープンDでプレイしている。

左からハーモニーの1950年代製ストラトトーン、ギブソンの1956年製ES-295、1963年製J-50(写真=本人提供)。
左からエピフォンの1963年製ブロードウェイと1963年製フェンダー・ジャズマスター(写真=本人提供)。

愛用のアンプは?

 ギブソンのGA-20Tだね。『Handful of Strings』のジャケットに写っている個体だよ。バディ・メリルっぽい4声のスライドはプリアンプに直接通して録音しているんだ。

『Handful of Strings』の「After You’ve Gone」はチェット・アトキンスのようなチャーミングなサウンドです。リバーブなどはどのようにかけているんですか?

 このアルバムはストレートに録音して、あとでディレイを加えたりしたね。『Hi-Fi Christmas Guitar』はエコープレックスとフェンダーのリバーブ・ユニットを使っていて、さらにあとでプレート・リバーブも加えている。この方法だとあとから調整しづらいいんだけど、デジタルに頼らずに実体のエフェクトを使うことでベターなサウンドになったよ。

僕もバーニー・ケッセルを
YouTubeで見て勉強しているんだ

これまで日本に来たことがありますか?

 いつか行きたいなと思っているけど、まだ実現していないんだ。アジアはジョナサン・ドイルのスウィング・バンドで韓国に行ったことがあるだけだね。日本に行くなら、ぜひ時間を作っていろいろな場所を周ってみたいね。

あまり簡単に海外にも行けなくなってしまいましたが、ぜひ日本でもあなたの演奏を聞きたいです。最後に、日本のギター・ファンにメッセージをひと言お願いします!

 こっちはまだ25%くらいのキャパでライブが許可されている程度で、実質誰もやってないようなものだ。僕は代わりに練習をしまくってジャズの理論に本格的に取りかかっているけど、ライブをやらないと中々頭に入っていかないんだよね。日本のみんなだって練習しているんだろう? 僕もバーニー・ケッセルをYouTubeで見て勉強している。日本人でES-350をバーニーみたいにクールに弾いている人を見かけたから、僕もぜひ彼に学びたいね。近い将来そっちで僕もライブをプレイできたらと思っているんだ。

日本にもカントリー・ファンはいますので、ぜひグッドな音楽を作り続けて“Please Please Us(私たちを満足させて下さい)”!

 もちろんさ(「Please Please Me」 のイントロを弾いてくれる)!

作品データ

『Let It Be Acoustic Guitar!』

IN MY LIFE PRODUCTION/IMLP-1502/2021年2月15日リリース

『Let It Be Guitar!』

IN MY LIFE PRODUCTION/IMLP-1504

―Guitarist―

Joel Paterson