Interview | 初来日公演を直前に控えた93年のジェリー・カントレル(アリス・イン・チェインズ) Interview | 初来日公演を直前に控えた93年のジェリー・カントレル(アリス・イン・チェインズ)

Interview | 初来日公演を直前に控えた
93年のジェリー・カントレル(アリス・イン・チェインズ)

ギター・マガジン2021年4月号の表紙巻頭特集は『90年代USオルタナティブ』。ソニック・ユース、ダイナソーJr.、パール・ジャムなどをフィーチャーしています。今回、ページの都合上泣く泣く誌面への掲載を断念したアリス・イン・チェインズのギタリスト、ジェリー・カントレルのインタビュー記事を特別公開! 93年10月の初来日公演を直前に控えた時期で、レコーディングの忙しい合間を縫って取材に応じてくれた。ジェリーの使用機材やルーツはもちろん、92年リリースの名盤『Dirt』についても語ってくれている。

取材=Guitar Magazine 翻訳=Yuko Yamaoka Photo by Brian Rasic/Getty Images


本記事はギター・マガジン2021年4月号『オルタナ革命』と連動した記事です。本誌では、ソニック・ユース、ザ・スマッシング・パンプキンズ、ダイナソーJr.、サウンドガーデン、パール・ジャムなどなど、グランジ/オルタナ・シーンを代表するバンドの90年代当時のインタビュー記事を掲載しています。ぜひチェックを!

エディ・ヴァン・ヘイレンが
“ほら、コレやるから!”って1本くれたんだ。

現在はレコーディング中とのことですが、何を制作しているのですか?

 7曲入りのEP(『Jar Of Flies』/94年)を録っていたんだ。かなりおもしろいものになると思うよ。

今日はギターのことを中心に聞きたいのですが、まずメインで使用しているG&L製Rampage(通称:Blue Dress)について教えて下さい。どんなところが気に入っていますか?

 長い間使ってきたよ。ギターを始めて以来ずっとあれを弾いてきたようなものだから、それはもうしっくりきているのさ。お気に入りの1本になってしまったんだろうな。なぜG&Lを選んだのか、これといった理由はなかったんだけれど、弾いているうちに好きになったってことだね。

手に入れたのはいつ頃ですか?

 そうだな、もう8年くらい前になるかもしれない。今は俺のサインがトップに入ったシグネチャー・モデルをデザインしてもらっているところでね。そのプロト・タイプが間もなく届くはずだ。たぶん来年には市販もされると思う。あのモデルは4〜5年前に製造中止になっていたんだけど、俺のために製造が再開されたんだ。

ピックアップにはセイモア・ダンカン製JBを搭載しているそうですね。

 いろんなピックアップを試してみたけど、結局このJBのサウンドがピッタリきたんだ。それに俺はかなりハイ・ボリュームのシステムを使っているから、高出力な部分はピックアップには求めていなくてね。それでもJBはかなり良い感じにスクリームするけど。

トレモロにはケーラーのシステムを付けていますよね。フロイド・ローズを選ぶギタリストが多い中、あなたはなぜケーラーを愛用しているのですか?

 ケーラーはあのギターに最初から付いていたもので、俺が選んだものではないんだ。テクニカルな面では確かにフロイド・ローズのほうが優れたシステムだと思う。でも、俺にはケーラーがすっかり馴染んでしまったんだよ。長く使っているうちに、劣っている部分などは全然気にならなくなってしまったんだろうね。

ほかにも何か改造している点があったら教えて下さい。

 フロイド・ローズのロック式ナットを付けたことぐらいかな。そのほうが良いと思ったんでね。あとはトレモロを少し下げたりしたけど、それ以外は買った時のままだ。

ボディには青いドレスを脱いだ女性のペイントが施されているようですが、あれは誰が描いたんですか?

 ああ、あれ(笑)? 実はペイントじゃないんだよ。雑誌の切り抜きでね。昔テープで貼り付けたんだ。

あなたは時々、Music Manのエディ・ヴァン・ヘイレン・モデルも使っているようですが、それはエディ本人からもらったものだそうですね。

 そう。彼らと一緒にツアーをしていた時にもらったんだ。その時はツアーが開始されてから5ヵ月ぐらい経っていたんで、エディともかなり親しくなっていてね。彼はちょうどあのモデルの開発に関わっていたところで、アンプなどにも取り組んでいた。俺も何度か弾かせてもらったんだけど、あのギターのフィールがとても気に入ってさ。サウンドも素晴らしかったから“俺も買いたいな”って言ったんだ。するとエディが“バカ言うんじゃないよ。ほら、コレやるから!”って1本くれたんだ。俺は今あのギターを2本持っているよ。それとPeaveyの5150ヘッドなんかも持っているんだ。それは家でジャムったりする時に使っている程度だけどね。

エレキ・ギターは、ほかにどんなものを?

 レコーディングではレス・ポール・カスタムを弾くことが多いね。もちろんG&Lも同じくらいよく使う。G&Lはもともとレス・ポールとストラトキャスターの両方のサウンドをカバーするようにデザインされているから、とてもヘヴィな木で作られている。俺はこのG&Lのサウンドがとにかく好きなんだよ。レコーディングで使うのは今言った2本くらいだね。

映画『ラスト・アクション・ヒーロー』(93年)のサウンドトラックに収録されている「What The Hell Have I」にはシタール的なサウンドが入っていますが、あれはCoralのElectric Sitarですか?

 そう。ヘヴィな部分はG&Lで弾いて、シタール・ギターも使ったんだ。

Dirt』(92年)収録の「Down In A Hole」や、『Sap』(92年)ではアコースティック・ギターを使っていますね。

 「Down In A Hole」で使ったのはテイラーの6弦だ。この手の曲で使うのは、テイラーの6弦か12弦。それだけだ。

バカげた質問ですが、もし無入島にアコースティック・ギターかエレキ・ギターのどちらか1本しか持って行けないとしたら、どちらを選びますか?

 どちらか1本あればそれでいいよ。俺はあまり楽器にこだわらないんだ。常にフル・ボリュームでプレイしていなければ気が済まないってタイプでもないしね。もちろん大音量でやるのは楽しいよ(笑)。

アコースティック・ギターも自分を表現する上で重要なものだと考えていますか?

 どちらも重要だね。メロウな曲を書いていたり、自分自身がメロウな気分になっていたら、すべてをアコースティック・ギターでプレイしたいと思うだろう。逆にアグレッシブな気分だったらエレクトリック・ギターを持って、頭がスッ飛ぶまで弾きまくるだろうってことだね。

ところで、あなたはKISSのエース・フレイリーに憧れてレス・ポールを手に入れたとの噂を聞きました。

 そうなんだよね(笑)。でも、俺が実際にレス・ポールを手にしたのは、ほんの2〜3年前のことなんだ。エースが好きでレス・ポールが欲しいと思っていたのは子どもの頃の話さ。70年代くらいだ。ギターが弾けなくても、とにかくレス・ポールがカッコ良いから欲しいと思っていたんだよ。それが今やレス・ポールを2、3本持っていて、レコーディングでも使っている(笑)。

アンプやエフェクターなどは?

 BognerのプリアンプやTube Worksのパワー・アンプを使っている。それからリバーブとコーラスを得るために、Inteliverbのマルチ・エフェクターを少し使っているよ。でも、俺にとってエフェクターはそこまで重要なものではないね。

レコーディングとライブで使用する機材は変えているのですか?

 いや、基本的には同じだ。でも、レコーディングでは違うトーンを求めて別のアンプを使うこともある。古いマーシャル・ヘッドをつなげたりとかね。今進行中のレコーディングでは、ギターはほとんどギルドのアコースティックを使っていて、エレキはその上に少し重ねている程度だ。アンプはフェンダーのTwin Reverbを使っている。

アンプのセッティングで常に気にかけている部分などはありますか?

 そうだな……俺は変わったサウンドを追求しているわけではないし、そもそもサウンドは自分の手から出てくるものだと思っている。自分がギターをどうプレイするかにかかっていると思うんだ。アンプのセッティングは確かに重要な要素のひとつではあるけれどね。だから、俺はさっき言ったようないくつかのアンプをラフに使っているよ。

あなたはギターの弦をすべて半音下げてチューニングしていますよね。

 だいたいそうしているね。それから、時には6弦をさらに全音ドロップ(C♯)している。

どういったきっかけでドロップ・チューニングを使うようになったのですか?

 このチューニングによるプレイを初めて聴いたのは、ヴァン・ヘイレンの「Unchained」(『Fair Warning』収録/81年)だったな。ロー・エンドが出た、ムカつくようなサウンドがとてもクールだと思ったんだ。ずっと昔のことだけれどね。

ジェリーの作曲方法や音楽ルーツなどは次ページで!