Interview | 山内総一郎(フジファブリック) 『I Love You』を彩ったファンク・ギター・サウンド Interview | 山内総一郎(フジファブリック) 『I Love You』を彩ったファンク・ギター・サウンド

Interview | 山内総一郎(フジファブリック)
『I Love You』を彩ったファンク・ギター・サウンド

楽器として人格があるようなものというか
癖があるほうが好きですね。

LOVE YOU」のブリッとしたカッティングがとても良い音でした。使ったギターは?

 あれはストラトですね。Super Reverbとストラトだけです。ピックアップはフロントとセンターのハーフ・トーンですね。言い方が難しいですけど、ポコポコするというか、ハーフ・トーンにはアンニュイな感じがあるんです。センターとリアのハーフ・トーンも良かったんですけど、僕はけっこう弦を殴るように弾いてたりするので……。

と言いますと?

 殴るっていうのは、6弦のチューニングが少し上がるくらいピックをななめに当てて弾いているということで。そうすると、フロント・ピックアップの“バイーン”っていうところが出るんです。だからピックアップ・ポジションはフロントとセンターのハーフ・トーンになったような(笑)。

SHINY DAYS」は逆にパキッとしたサウンドですね。

 たぶんストラトのセンターかな。

同じギターでもガラッと印象が変わりますね。印象としては「LOVE YOU」がプリンス的で、「SHINY DAYS」がトーキング・ヘッズ的なカッティングだと感じました。

 ありがとうございます。両方大好きです。デヴィッド・バーン良いですよねぇ……。ストラトは、カッティングで嫌な音になりにくいという感じがします。ほど良くまとまってくれるんですよ。

今回のレコーディングでは54年製のテレキャスターを一番使ったんですよね?

 54年製と、自分のシグネチャーのMaroonという2本のテレキャスでほとんどのベーシックを作っています。今回、54年製は「LOVE YOU」以外では何かしらで使っていますね。ハムバッカーみたいな太い音が欲しい時にもテレキャスターを使ったりします。

テレキャスターは万能ですよね。

 万能です。でも、フロント・ピックアップって全然使わないなと(笑)。

リアばっかり(笑)?

 リアとセンターばっかりですね。「手」は7カポで、センター・ポジションでアルペジオを指弾きしています。

では、Maroonはどのように?

 クリーン・トーンにしてセンター・ポジションで使うとコロコロした音になるので、ミニマルなフレーズで使っていますね。今回は「Dear」や「たりないすくない feat. 幾田りら」で弾きました。

赤い果実 feat. JUJU」のソロもすごく良い音ですよね。普通はES-335のような箱モノをチョイスしたくなると思うのですが、どんなギターを使ったんですか?

 実は335も試したんです。一度はそのテイクをOKにしたんですけど、良い音すぎて、よくある感じになっちゃって(笑)。翌日になっても悔いが残っていたので、TeiscoのSS-4Lで録り直しました。“良い音で録れたな〜!”って、うれしかったのを覚えています。

ビザール・ギターから、ああいうふくよかな音が出るということにビックリしました。

 右手の弾く強さによって歪み量って変わってくるじゃないですか? だからこの曲は、ちょっとでも歪みが多かったらやり直して、何テイクも弾きました。“ギターって難しいな”って思いながらやりましたね……。

今作ではJUJUさん、幾田りらさんという女性ボーカリストが参加していますが、女性の歌声に対してのギター・アプローチで気をつけたポイントはありますか?

 たぶん、女性の声に対してギターって邪魔しやすいんですよ。やっぱりある程度の隙間があるところに声が入ってるのが良いと思ったんで、隙間がある曲ばっかりになっています。幾田さんの曲も、JUJUさんの曲も、ギターは和音を6弦から1弦まで振り下ろしているプレイじゃなく、単音のバッキングだったり、オブリだったりがメインですよね。

Jelly Jonesのエレクトリック・シタールも使ったんですよね?

 実はいつもサブリミナル的にけっこう使ってるんですよ。今作で一番聴こえるのは「楽園」かもしれないですね。歌のうしろとか、リフのシンセのうしろで弾いています。エレクトリック・シタールって音が遅く出てくるじゃないですか? その分ズレが出て奥行きができるので、特にリフで使います。「若者のすべて」(『TEENAGER』収録)のサビの前も入っていますしね。

このように素晴らしい機材をたくさんお持ちの山内さんが、機材を選ぶ時に大事にしているポイントとは?

 昔から変わらず、“持った感じ”ですね。だからまず、楽器屋さんで持たせてもらいます。“弾いていいですか?”の前に、“すみません、持たせてもらっていいですか?”って(笑)。見た目と、持った瞬間に良い感じかどうか。音で言えば、アンプもギターもペダル類も、やっぱりそれ自体に楽器として人格があるようなものというか、癖があるほうが好きですね。“こういう風に鳴らしてほしいんだろうな”とか、“こういう風に鳴るように作られたんだな”っていうのがわかるものが良いです。結局そういうものばかりが手元に残っていますね。

製作者の意図というか。

 そう。作った人の癖というかね。だから古い/新しいは関係なく、自分が思う楽器というものは骨董品ではないし、資産だとも思ってないし、鳴らしてナンボだと思っています。作った人の気持ちが絶対に入っていると思うから、そういう音がするもの……言葉にするのは難しいですけど、魂が入ったものが好きだなぁと。

山内さんも魂を込めて『I Love You』に命を吹き込んだと思います。最後に、今作の聴どころを教えて下さい。

 ギミックなしで録ってるところもあるので、その素直さがギターとしての聴きどころだと思います。アルバムとしては、こういったご時世、希望がわくようなサウンドにできたらなと思って作りました。バンド一丸となってこういう作品ができたので、全体としてのオーラというか、そういったものを感じてもらえたら良いなと思います。

あとは6月のツアーで最新の機材のサウンドも楽しんでほしいですね。

 そうですね。また色々と企んでいますので、楽しみにしていて下さい。

作品データ

『I Love You』
フジファブリック

ソニー/AICL-4025/2021年3月10日リリース

―Track List―

01.LOVE YOU
02.SHINY DAYS
03.赤い果実 feat. JUJU
04.たりないすくない feat. 幾田りら
05.楽園
06.Dear
07.あなたの知らない僕がいる feat. 秦 基博
08.手
09.光あれ

―Guitarist―

山内総一郎