Interview|エムドゥ・モクター砂漠で鳴り響く激情のギター Interview|エムドゥ・モクター砂漠で鳴り響く激情のギター

Interview|エムドゥ・モクター
砂漠で鳴り響く激情のギター

何を作曲するべきかは自然な環境が教えてくれるんだ。

では、新作『Afique Victime』の話も聞かせて下さい。本作の公式資料には“自然主義的なフィールド・レコーディング”という言葉がありましたが、制作はどのように行なっているんですか?

 この作品は、俺にとって非常に心地良い方法でレコーディングしたんだ。マイキーは、俺がレコーディング・スタジオの雰囲気が好きではなく、ライブ演奏のほうが好きだということを知っている。そこで俺たちは、あまりストレスを感じない録音方法を考えたんだよ。“今回のアルバムは少しずつ作っていこう”ということになって、1曲だけ録音する日をとったら、少し時間を空けて次の1曲を録音する、というような流れで進めていったんだ。1週間で2曲録ったら、そのあとの2週間は録音しないこともあったね。とても長いツアーの期間中に録音していったから、ライブで感じたエネルギーをレコーディングに注入することができた。最終的に俺たちの生活の一部として、日常的にレコーディングが行なわれていたね。

楽曲はどのように作っているんですか?

 あくまでも俺の場合だけど、俺にとって“音楽を作る”ということは、部屋に閉じこもって紙に書き上げるように自分を仕向けるということではない。何を作曲するべきかは自然な環境が教えてくれるんだ。自分の環境や周りの人々の人生がどのようにくり広げられていくのかを観察して、そこから曲やアイディアを見つけているのさ。

ギター・パートはアモウドとどのように役割分担をしていますか?

 アモウドがスケールやコードを、俺がソロを弾いている。だけど、俺たちは長い間一緒に演奏しているから、演奏中にどうすればお互いにうまく掛け合うことができるかをすでにわかっているんだ。彼は俺の曲をすべて暗記していて、それは俺が自分の頭の中で理解してる特有な覚え方と同じなんだよ。だから、“彼に何をやってもらいたいか”なんて指示を出す必要はまったくないんだ。俺たちはスタジオに楽譜やノートなどを持っていっていなくて、持っていくのはトラック名が書かれたリストだけ。それを見ながら、“次はこれをやろう”と言って、すぐに演奏を始めるのさ。

1曲目の「Chismiten」のイントロから、強烈にあなたのギター・スタイルを感じることができます。こうしたプレイやギター・ソロはインプロヴィゼーションで演奏しているのですか?

 そうだね。演奏するたびに、自分が伝えようとしているメッセージによってその音は違ってくる。音楽っていうのは、常に枠にはまった正確なものではなくて、いつのどの瞬間でも進化することが可能なんだ。曲を演奏する時は毎回、その場の環境と曲がどのように混ざり合うかによって、微妙に異なる“テイスト”が生まれるんだよ。

インプロヴィゼーションで演奏する時、特定のスケールを意識して多用したりはしますか?

 特に好きなのは、Dマイナーだね。あとはリズムを意識しながら弾いているよ。

アルバムではエレクトリック・ギターと同じくらいアコースティック・ギターでのプレイも素晴らしいです。エレキとアコースティックはどのように使い分けていますか?

  ありがとう。演奏する曲によって変わってくるだけで、それぞれのギターには“あるべき適切な場所”と“独自のテイスト”があって、曲ごとにある特定のギターを必要としているんだ。ソロではエレクトリック・ギターを使いたいという気持ちが強くあるけれど、愛についての曲などだとアコースティック・ギターのほうが良いと思う。

ニジェールには今でも楽器を売っている店がないんだ。

ニジェールにおける楽器のマーケットについても興味があります。楽器店にはどのようなブランドのギターが並んでいますか?

 残念ながら、ニジェールには今でも楽器を売っている店がないんだ。だから俺は母国でギターを買ったことがないんだよ。ギター・マガジンさんがニジェール初の楽器店をオープンしてくれないかな(笑)?

考えてみます(笑)。さて、アルバムをリリースしたばかりですが、今後の活動についてどのように考えているかも聞かせて下さい。

 今のところ、あまり予定は入れていないね。今は次のツアーに向けての練習と準備に集中しているところさ。

では最後に、日本のリスナーにメッセージをお願いします。

 日本でコンサートをやって、日本のファンをこの目で見て、実際に会えるのをとても楽しみにしている。それからみんなには、地球上の平和を維持するために常に努力すること、自分自身を大切にすること、また、人と人とが尊敬し合える関係を育むために性別を問わず人を尊重して、いつも他人、特に子供やお年寄りを思いやる気持ちを持つことをアドバイスをしたいね。

作品データ

『アフリク・ヴィクティム』
エムドゥ・モクター

Beat Records/Matador Records/OLE1614CDJP/2021年5月21日リリース

―Track List―

01. Chismiten
02. Taliat
03. Ya Habibti
04. Tala Tannam
05. Untitled
06. Asdikte Akal
07. Layla
08. Afrique Victime
09. Bismilahi Atagah
+日本盤ボーナス・トラック

―Guitarists―

Mdou Moctar、Ahmoudou Madassane