MR .BIGが2025年2月に大阪と東京で正真正銘のラスト・ライブ、『The BIG Finale! Forever In Our Hearts』を開催。最後のステージとなった2月25日(火)の日本武道館公演でポール・ギルバート(g)が使用したアンプを、本人の解説と共にご紹介しよう。
取材・文=小林弘昂 通訳=トミー・モーリー 機材撮影=小原啓樹
Paul Gilbert’s Amplifiers
・2005 Marshall / JTM45/100 & Marshall / 1960B(Left)
・Fender / ’65 Twin Reverb(Right)
・Marshall / 1959SLP(Sub)

・Fender / ’65 Twin Reverb

ポール・ギルバートがMR. BIG最後の日本武道館公演で使用したアンプは3台。ポールの背後に置かれたマーシャルJTM45/100と1960Bの組み合わせ、’65 Twin Reverb、そしてポールの目の前に置かれた’65 Twin Reverbである。3台すべてクリーン・サウンドにセッティングし、同時に出力している。マーシャル1959SLPはサブ。
ポールの目の前に置かれた’65 Twin Reverbは、本人曰くモニター用とのこと。ポールはライブ中に耳栓をしているため、出音を体感するためにこの位置にセッティングしてるのだそう。

’65 Twin Reverbは2台ともShureのSM57で収音されていたが、ポールの背後に置かれた’65 Twin Reverbのみ、片方のスピーカー・アウトからKlark TeknikのLBB100(DI)に接続され、そのままPAにも信号が送られていた。

JTM45/100は、マーシャルの40周年を記念して2005年に限定発売された100Wモデル。HIGHの2にインプットし、各ノブはPRESENCEが7、BASSが2過ぎ、MIDDLEが5過ぎ、TREBLEが7過ぎ、NORMAL VOLUMEが0.5程度にセッティングされていた。

ポールの背後に置かれた’65 Twin Reverbは、VIBRATO chの1にインプット。BRIGHTスイッチをオフにし、各ノブはVOLUMEが3、TREBLEが3.5、MIDDLEが2過ぎ、BASSが3過ぎ、REVERBが2にセッティングされていた。トレモロは未使用。
上に置かれたサブ用のマーシャル1959SLPのノブは、メインのJTM45/100と同じ位置にセッティング。

ポールの目の前に置かれた’65 Twin Reverbは、VIBRATO chの1にインプット。BRIGHTスイッチをオフにし、各ノブはVOLUMEが3、TREBLEが3、MIDDLEが3.5、BASSが2過ぎ、REVERBが1過ぎにセッティングされていた。トレモロは未使用。
Interview
どんなに会場が大きくても
マーシャルのボリュームを1まで上げることはない。
先日の日本武道館公演で使用していたアンプは、すべて日本でレンタルされたものでした。
ツアーでは色んな国をめぐるから機材をレンタルすることも多くてね。自分のアンプはツアーに持って行かず、現地でレンタルするっていう形で何年もやってきた。だから、どこでも手に入る最も信頼性の高い機材を使うのが良いと気づいたんだよね。
その結果、アンプはマーシャルの1959SLPという100Wのラウドなモデルを気に入っている。1959SLPにはマスター・ボリュームがないから、ボリュームをかなり上げないと歪まないんだ。僕はアンプを歪ませることはないよ。だってクレイジーなまでにラウドになるからね! 目盛りで言うとボリューム・ノブは0.5くらいしか上げてない。
0.5程度でも十分な音量が得られるんですね。
“本当に上げているの?”っていうくらいだけど、これでも凄くラウドでパンチのあるクリーン・サウンドなんだ。それとフェンダーのTwin Reverbを2台使っていて、これもラウドでクリーンな音だね。
ペダルボードからのシグナルはどのアンプにも同じ状態で入力されていて、サウンド・エンジニアにどれが好きかを聞いてみたんだけど、僕も彼もマーシャルのサウンドを一番気に入っていたよ。
アンプは大きなクリーン・サウンドが出せるのが条件だと。
ペダルボードには気に入った3~4台の歪みやブースター、コーラス、クリーン・サウンド用のコンプレッサーを入れている。これがあると、どんなにクリーンなアンプを使ってもペダルを頼った音作りができるんだ。インドでのライブではマーシャル1959SLPが手配できなくて、Ampegのベース用のSVTを用意してもらったんだけど、ラウドでクリーンなサウンドが出ることはわかっていたし、実際にグレイトな音だったよ。
2023年の来日公演ではマーシャル1959SLP、フェンダー’65 Twin Reverb、そしてRoland JC-120の3台を使っていましたよね。しかし、今回はマーシャルJTM45/100と2台の’65 Twin Reverbを鳴らしていました。なぜJC-120をはずし、’65 Twin Reverbを2台使うことになったのですか?
前回JC-120を使ったのは一種の実験でね。Twin Reverbはグッドなクリーンがかなり有名だし、1959SLPも素晴らしいクリーン・アンプだけど、JC-120だってクリーン・アンプとしてグレイトだよ。だから実験できたんだ。
アンプのセッティングで気をつけていることはありますか?
僕のPAモニターにはギターの音を返してもらっていなくて、目の前に置いているTwin Reverbがギター・モニターなんだ。僕は聴力を失っていて、もともと高音が聴き取りづらい。それとほとんどのミュージシャンがライブ中にイン・イヤー・モニターを使っているけど、僕は耳栓をしていて、それによって高音がカットされてしてしまう。だから自分はアンプを近くに置き、その音を感じることが重要なんだ。
もちろん使うアンプによって異なるけど、Twin ReverbはBASSを3か4くらい、MIDDLEとTREBLEを5あたりにすることが多い。こうしておけば安全だね(笑)。耳に優しい設定にしているんだ。特にラウドな時はそうしているよ。

マーシャル・アンプは50Wではなく、やはり100Wがベスト?
100Wのほうがヘッドルームが広くて、ボリュームを上げてもクリーンが出せるからね。でも、50Wでもほとんど問題ないよ。JTM45のような30Wくらいのアンプを使った時も大丈夫だった。
MR. BIGでは武道館や大阪城ホールといった大きな会場でプレイすることが多くて、万が一に備えて100Wのヘッドルームがあるのは良いことだ。だけど、どんなに会場が大きくてもマーシャルのボリュームを1まで上げることはない。もし50Wのアンプしか用意できなくても、きっと大丈夫だと思うね。
The BIG Finale! Forever In Our Hearts
2025年2月25日(火)日本武道館
【Setlist】
01. Mr. Gone
02. Good Luck Trying
03. Price You Gotta Pay
04. Big Love
05. Temperamental
06. Up On You
07. Green-Tinted Sixties Mind
08. Alive And Kickin’
09. Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)
10. Undertow
11. Instrumental Medley
12. Paul Gilbert Guitar Solo
13. Colorado Bulldog
14. Promise Her The Moon
15. Take Cover
16. Wild World
17. Addicted To That Rush
18. Billy Sheehan Bass Solo
19. Shy Boy
20. Forever In Our Hearts
-Encore-
21. To Be With You
22. Just Take My Heart
23. Good Lovin’
24. Baba O’Riley
25. I Love You Japan