NELKEのギタリスト、伊藤雅景が使用する2枚組のペダルボードとマーシャル1987X NELKEのギタリスト、伊藤雅景が使用する2枚組のペダルボードとマーシャル1987X

NELKEのギタリスト、伊藤雅景が使用する2枚組のペダルボードとマーシャル1987X

5ピース・ロック・バンド、NELKE(ネルケ)のワンマン・ライブが2025年3月12日に恵比寿LIQUIDROOMにて開催された。本公演でギタリストの伊藤雅景が使用したペダルボードとアンプを紹介しよう。

取材/文=小林弘昂 機材解説=編集部 機材写真=星野俊 ライブ写真=橘麻子

Masakage’s Pedalboard

飛び道具を効果的に使用

【Pedal List】
①SHURE / GLXD16+(ワイヤレス・レシーバー)
②Ibanez / WH10 V3(ワウ)
③FREE THE TONE / ARC-53M(プログラマブル・スイッチャー)
④Eastern Music Device / PD-1(オーバードライブ)
⑤ProCo / RAT Ⅱ(ディストーション)
⑥Demeter Amplification / Fuzzulator(ファズ)
⑦Z.Vex / Box Of Rock(オーバードライブ)
⑧Eventide / TimeFactor(ディレイ)
⑨Electro-Harmonix / Ram’s Head Big Muff Pi(ファズ)
⑩ZOOM / MS-50G(マルチ・エフェクター)
⑪Red Panda / Tensor(ルーパー/ピッチ・シフター)
⑫Chase Bliss / MOOD MKⅡ(ルーパー/リバーブ)
⑬BOSS / EV-5(エクスプレッション・ペダル)
⑭BOSS / FV-300L(ボリューム・ペダル)
⑮Sonic Research / ST-200(チューナー)
⑯Voodoo Lab / Pedal Power 2 Plus(パワー・サプライ)
⑰VITAL AUDIO / VA-08 MkⅡ(パワー・サプライ)

伊藤のペダルボードは、歪み、フィルター、空間系をまとめたメイン・ボード(右側)と、飛び道具系ボード(左)の2枚組。

ギターの信号はワイヤレス・レシーバーの①GLXD16+に入力され、②WH10 V3を経由して③ARC-53MのBuffer Inに入力される。

③ARC-53Mに接続されているペダルは以下のとおり。

・Loop 1=④PD-1
・Loop 2=⑤RAT II
・Loop 3=⑥Fuzzlator
・Loop 4=⑦Box Of Rock
・Loop 5=未使用

③ARC-53Mのアウトから⑧Timefactor、⑨Ram’s Head Big Muff Pi、⑩MS-50Gの順番で接続され、左側のボードへ向かう。

左側のボードは⑪Tensor、⑫MOOD MKⅡ、⑭FV-300Lの順番で信号が通過し、アンプへと出力されている。

⑬EV-5は⑫MOOD MKⅡに接続されているエクスプレッション・ペダルで、⑫MOODに録音したループや、リバーブのMIX量を調節できるようになっている。

Interview

音色でも面白いことをやれるようにした
2枚組ボードです。

伊藤雅景
伊藤雅景

Box Of Rock(⑦)がRAT Ⅱ(⑤)やFuzzlator(⑥)よりも後段に置かれている理由は?

「ロリポップサイダー」や「春か未来」にはクリーンが主軸のリフがあったり、NELKEはわりとクリーン・ブーストを使う場面が多いんです。手持ちのペダルでクリーン・ブーストを色々試していた時、Box Of Rockを後段に置いてブースト・チャンネル使うのが一番良かったんですよ。Box Of Rockを前段にしてブーストすることもあったんですけど、それだと音が硬すぎて。

なるほど。

Box Of Rockはオンにすると低音と高音が上がるので、そのあとのペダルがミドルを受け取れなかったんです。なので今はBox Of Rockを歪みセクションの後段にしていますね。

TimeFactor(⑧)のうしろにOP-AMP Big Muff(⑨)を置いている理由は?

このBig Muffは破壊用というか。ライブでは「カレンデュラ」で強引にハウらせたり、グシャグシャにする時に踏むものですね。なので歪みセクションのうしろだったらどこでも大丈夫。どんなペダルが前段でオンになっていようが、Big Muffを踏んだら全部同じ音になります(笑)。

破壊用なのにOP-AMP Big Muffのノブは控え目ですね。

volumeノブを上げすぎるとオフにした時にスカスカに感じちゃうので、メインの歪みよりもちょっとだけ音量が上がるようにしています。

……現代っ子ですね?

でもライブの最後ではMAXになっていますね。「カレンデュラ」の最後では隙を見つけて全部のノブを上げます。

メインの歪みは何ですか?

RAT Ⅱですね。PD-1はクランチ用で、RATと一緒に使うことはないです。ARC-53Mの黄色いラベルが貼ってあるスイッチが全部PD-1用のプリセットで、緑がRAT、赤がFuzzlatorです。FuzzlatorだけはRATと組み合わせますね。

TimeFactorはMIDIでARC-53Mとつながっていて、一番右の“CLEAN”が「カレンデュラ」のイントロで使う、ほんの薄っすらアナログ・ディレイがかかっているプリセットです。その1つ左の“Reverse”ではPD-1にTimeFactorのリバース・ディレイがかかるようになっていて、「春か未来」とかでオンにします。そのPD-1とリバース・ディレイにBox Of Rockが加わるのが、2つ左隣りの黄色い“BOOST”ですね。「ロリポップサイダー」のイントロとかで使います。

TimeFactorはRATやFuzzlatorと一緒に使うことはあるんですか?

RATとは使っていなくて、ギター・ソロ用のFuzzlatorにはTimeFactorのアナログ・ディレイがかかるようになっています。

ということは、RAT以外の歪みペダルにはディレイがかかっているんですね。

そうです。TimeFactorには色んなバンクを保存していて、それをARC-53Mのプリセットで呼び出せるんですよ。TimeFactorのAチャンネルにはアナログやリバースなど色んなディレイをプリセットしているんですけど、Bチャンネルにはどのバンクにも発振手前のロング・ディレイをだけが入っていて。だからBのスイッチを踏めば、どのバンク、プリセットでも同じ音が出せます。

ワウはどのように使っていますか?

ギター・ソロだったり、サビ前の盛り上がりで使うことが多いですね。DEPTHのノブはMAXです。

その状態でワウをオンにすると音量がかなり大きいのでは?

いや、音量はそこまで大きくないんですよね。けっこうエグくかかります。VOXのワウみたいにオシャレな感じにはならなくて、“ギュワー”っていう感じですね。

Fuzzlatorはギター・ソロ用とのことですが、セッティングのコツはありますか?

Toneノブは3時くらいでフラットな感覚なんですよね。たまにフロントかセンター・ピックアップでソロを弾くこともあります。

MS-50G(⑩)にはどんなエフェクトをプリセットしているんですか?

The VibeというUni-Vibe系ですね。ビブラート・モードで使っています。最近Uni-Vibe系のペダルを探していて、DryBell Guitar EffectsのVibe Machineを買ったんですけど、使いこなせないまま売っちゃったんです。でも“やっぱりヴァイブ系欲しいな”と思って、これを入れてみたら凄く使いやすくて(笑)。「生徒A」のリフとか、「努力教信者」とかではBig Muffを踏んで、さらにThe Vibeもかけますね。MS-50Gは昔から持っていて色んなことを試したんですけど、The Vibeはめっちゃ使えます。

ほかに使うエフェクトは?

今はThe Vibe専用ですね。

2枚目のボードには飛び道具的なペダルが並んでいます。

ライブで「カレンデュラ」を演奏する前は、Tensor(⑪)のPITCHをランダム、BLENDを100%にして、HOLDさせて世界観を作っていますね。

MOOD(⑫)はMC中に次の曲のリバース・ギターをループ内に録っておいて、流したい時に使うんです。「Incarnation」のアウトロで自分が単音を弾くところは少し寂しくなっちゃうので、事前にMOODに録音しておいたパッド・シンセみたいな音のキーを流すという感じですね。

伴奏的な役割で使うと。

そうですね。MOODの左のスイッチはリバーブ・モードなんですけど、単体でもけっこう使うことが多くて。このリバーブがかなり幻想的で、「夏果て」のボリューム奏法の時や、「花図鑑」のアウトロのアルペジオなどで踏んでいます。

BOSSのEV-5(⑬)は何につながっているんですか?

MOODのループもしくはリバーブ・チャンネルのミックス量を操作するもので、0〜100%でコントロールできるようになっています。MOODは再生したループを1回ストップさせると消えちゃうんですよ。なので、ループを回し始めたら、まずミックスをゼロにしておいて、必要な時に適切な音量をエクスプレッション・ペダルで操作して出すという。逆に音を落としたい時はエクスプレッション・ペダルで切る。そうすれば曲中のどこでも再利用ができます。

便利なのか不便なのか……(笑)。

めちゃくちゃめんどくさいです(笑)。

ボリューム・ペダル(⑭)はロー・インピーダンスのモデルですね。なぜこのモデルを使ってるのでしょう?

FV-300Lはペダルのトルクとカーブが凄く直線的というか、スムーズすぎてフェーダーみたいな上がり方をするんですよ。

音痩せはありますか?

あんまり音痩せを考えていなくて、パッチ・ケーブルもバラバラで、メイン・ボードではめっちゃ長いパッチを引き回しています。FV-300Lをつなぐとハイが落ちるんですけど、自分のセットだとそれがちょうどいいんですよね。しかもワイヤレスも使っているので、ギターの信号がけっこうダイレクトに入力されるので、うしろのペダルで音を鈍らせないといけないんです。

たしかに。

直線的に信号を通っているのがARC-53M、TimeFactorとかのデジタル系なので、そのままだとけっこうパキパキな音になるんですよ。なのでFV-300Lをはずすと音が変わっちゃいます。

このボードはどういうテーマで組みましたか?

フレーズ以外に、音色でも面白いことをやれるようにした2枚組ボードですね。レコーディングでも活躍していて、特に飛び道具系のエフェクトは左側のボードがないと成り立たないくらい重要なシステムです。

Masakage’s Amplifier

Marshall / 1987X(Head) & Marshall / 1960A(Cabinet)

Marshall / 1987X(Head) & Marshall / 1960A(Cabinet)

余裕のヘッドルームでペダルの信号を受け取るプレキシ・リイシュー

NELKEのリード・サウンドをつかさどる伊藤のメイン・アンプは、50Wの1987Xと1960Aキャビネットの組み合わせ。真壁陽平が所有する1987Xの音色に影響を受け、2024年末に導入したとのこと。アンプはクリーン・サウンドにセッティングされている。

インプットはHIGHの1を使用し、HIGHの2とLOWの1をチャンネル・リンクさせている。各ノブはPRESENCE=3.9、BASS=3、MIDDLE=3、TREBLE=0、HIGH TREBLE(LOUDNESS 1)=1、NORMAL(LOUDNESS 2)=4にセッティングされていた。

なとり音造 / Occult Dip Box TYPE RH、Shin's Music / Baby Master 2

センド/リターンには“なとり音造”のバッファー(Occult Dip Box TYPE RH)と、Shin’s MusicのBaby Master 2が直列で接続されている。Baby Master 2は1987Xの音量を抑えるアッテネーターとして使用。

Setting

Interview

NELKEには
マーシャルのほうが合うなと気がついたんですね。

伊藤雅景

メイン・アンプはマーシャルの1987Xですね。

去年、中古で買いました。実は買ってすぐの頃、ハンドルを持ち上げたらヘッドが上下真っ二つに割れたんですよ……。お店に連絡したら新品と取り替えていただけるとのことだったんですけど、ライブが詰まっていて交換するタイミングがなく、今はガムテで留めています。音は出るし、もういいかなと(笑)。

なぜ1987Xを選んだんですか?

NELKEが始まった頃はHiwattのDR-103を使っていたんですけど、それが壊れてしまって、半年くらいライブハウスに置いてあるマーシャルのJCM900を借りていた時期があったんです。でも正直、Hiwattには満足していなかったというか、バンドにはあんまりマッチしないなと思っていて。そのタイミングで、NELKEにはマーシャルのほうが合うなと気がついたんですね。

そんな時に、真壁陽平さんの1987Xを弾かせてもらう機会がありまして。1987XはJCM900特有のシャリシャリ感がまったくなくて、かっこいいクランチが出せると感じて買いました。

HIGHの1にインプットしていますが、チャンネル・リンクをしていますね。

リンクをしないとローが足りないんです。このアンプ、BASSがあんまり効かないんですよ。なので足りない部分をLOUDNESS 2で補う感じです。LOUDNESS 2を上げていっても聴感上は音が大きくならないので、わりと上げちゃいますね。

TREBLEはゼロになっています。

ゼロですね。メインのクラプトン・モデルがハイ寄りの音なので、ここからはもう上げられないです。

でもPRESENCEが4まで上がっていますね。

PRESENCEは耳に痛いところよりも上の帯域が上がる印象があって。ここを上げるとエフェクト乗りもけっこう変わってきます。

TREBLEとは別なんですね。

別ですね。TREBLEは完全に痛いところが上がってきちゃいます。逆にMIDDLEがTREBLEに近いような感じもあって、MIDDLEは痛くないTREBLEが上がるというか。難しいですね。

ただ、最近導入した“なとり音造”のバッファー、Occult Dip Box TYPE RHがその高音域に対していい仕事をしてくれています。恵比寿リキッドルームのワンマンから導入したんですけど、このTYPE RHは音の重心を下げつつ、音の密度が上げてくれるような不思議なペダルで。イン/アウトを逆にしたり、RIRIKOが使っているTYPE iと比べたりしながら、一番自分に合うセッティングを選んでいます。

メインのLOUDNESS 1はノブが1くらいしか上がっていませんけど、音量はどのくらいですか?

これでも超デカくて、バンドの音がかき消されるくらいなんですけど、センド/リターンにShin’s MusicのBaby Masterを入れていて、それで音量を下げています。Baby Masterも真壁陽平さんの真似です(笑)。

キャビネットは?

これは自分のものではないんです。よくライブをさせてもらうShibuya Milkywayというライブハウスに凄く良いマーシャルの1960Aがあって、PAの人に聞いたらスピーカーのコーンが換わっているらしいんですね。なので、恵比寿LIQUID ROOMでのワンマン・ライブではMilkywayの1960Aをお借りしました。

LIVE INFORMATION

NELKE ONEMAN LIVE TOUR 2025-2026 “Diary”

  • 2025年10月05日(日) 仙台darwin ※SOLD OUT
  • 2025年10月10日(金) 金沢 AZ
  • 2025年10月22日(水) 福岡 BEAT STATION
  • 2025年10月24日(金) 広島 SIX ONE Live STAR
  • 2025年10月25日(土) 岡山 IMAGE ※SOLD OUT
  • 2025年11月03日(月) 北海道 cube garden
  • 2025年11月15日(土) 高松DIME
  • 2025年11月16日(日) 神戸 Harbor Studio
  • 2025年11月28日(金) 大阪 BIG CAT
  • 2025年11月30日(日) 名古屋 THE BOTTOM LINE ※SOLD OUT
  • 2026年01月14日(水) Zepp DiverCity(TOKYO)

NELKE オフィシャルHP
https://nelke.aremond.com/

作品データ

『Paragraph』
NELKE

2025年3月10日リリース

―Track List―

  1. 努力教信者 (NELKE ver.)
  2. 燻る
  3. 虹の色よ鮮やかであれ (NELKE ver.)
  4. Believe in Breeze
  5. 生徒A (NELKE ver.)
  6. 夏果て
  7. ロリポップサイダー (NELKE ver.)
  8. Vivification (NELKE ver.)

―Guitarists―

RIRIKO、伊藤雅景