2026年4月24日(金)SHIBUYA CLUB QUATTROにて来日公演を行なった、サウス・ロンドン出身のポスト・パンク・バンド、シェイム。2025年9月にリリースした4thアルバム『Cutthroat』は、ツアー中にショーン・コイル・スミス(g)が趣味で制作していたエレクトロニック・ミュージックのアイディアを、シェイムならではのバンド・サウンドへと昇華するなど、新たなアプローチによって制作された意欲作だ。ギター・マガジンWEBでは、ショーンへのインタビューを敢行。本記事では、幼馴染でもあるメンバーたちとの出会いや音楽的ルーツ、そして新作の制作について詳しく話を聞いた。
取材・文=森部真衣 通訳=トミー・モリー 人物撮影=古溪一道

ほかのどのジャンルよりも
メタルから多くのギター・テクニックを学んだ。
バンド・メンバーは10代の頃からの友人だそうですが、どこで知り合ったのでしょうか?
オレとチャーリー……このバンドにはチャーリーが2人いるんだけど(笑)、オレとチャーリー・スティーン(vo)は小学校が一緒でね。7、8歳くらいの時に出会って以来、ずっと親友なんだ。オレの親父はプロじゃないけどギターを弾いていたから、その頃からギターを教えてもらっていて、チャーリーとオレでバカみたいなフォーク・ソングを作ったりしていたね。
そのあと、チャーリーが高校に行ってエディ(g)とジョシュ(b)に出会うんだけど、エディは(チャーリー)フォーブス(d)と小学校が一緒で、そこで今のバンド・メンバー全員が知り合ったんだ。
それからどんな経緯で一緒にバンドを組むことになったんですか?
もともとフォーブス(d)とエディ(g)は2人編成でバンドを組んでいて、エディが歌う形で少し曲を作っていたんだ。で、フォーブスの親父がブリクストンにある“The Queen’s Head”っていうパブの常連で、そこはファット・ホワイト・ファミリーっていうバンドが2階でリハーサルをしていた場所なんだけど、フォーブスとエディはそのパブの上で練習をさせてもらっていたらしい。
ある晩、パーティーでオレとエディが話す機会があって、バンドの話になった。お互い音楽のテイストも合っていたから、エディから“バンドに入らないか?”と言われて、“ぜひやりたい”って答えたんだよね。するとエディが“ボーカルも必要なんだ”って言うから、“チャーリー・スティーンはどう?”って提案したら、“えっ、まさかぁ!”って笑われたよ(笑)。
そのあと、最初に集まった時点ではジョシュ(b)はいなくて、のちに説得してバンドに入ってもらった。ジョシュはもともとドラマーだったからベースをやることに乗り気じゃなかったんだけど、もうその時点でバンドのポジションが全部埋まっていたから、結局ベースをやってもらうことになったんだ。
そのまま現在にいたるまで活動を続けているんですね。
みんな大学に行く予定だったんだけど、1つの計画を立てた。日本にもあるかわからないけど、イングランドの大学は入学を1年延期できる制度があって、実質1年間休学できるんだよね。だから、“1年休んでその期間にバンドが上手くいったら大学には行かない。もしバンドが上手くいかなかったら大学に行き、バンドは一旦保留にしよう”って決めたんだ。それから1年が経つ頃にはチームもできていたから、結局そのまま進んできたよ。気づけばもう12年近く経っている。
なるほど。では改めて、あなたのギタリストとしてのルーツを教えてください。
最初にギターに触れたキッカケは親父で、彼はフィンガー・スタイルのギタリストなんだ。ボブ・ディラン、ヴァン・モリソン、ニール・ヤングあたりをよく弾いていたし、レッド・ツェッペリンも大好きでね。だからそういった音楽や、父の演奏をずっと聴いて育ってきた。
初めて本当に好きになったギター・ミュージックはベックだったかな。親父もベックが好きで、特に『Odelay』(1996年)や『Mutations』(1998年)にすごく惹かれたんだ。最初はアコースティックな音楽から入ったけど、ベックをキッカケに離れていったね。
原点のベックに出会ったあと、あなたたちが今やっている音楽にどのように結びついていったのでしょうか?
それからは友達に教えてもらって、メタリカとかアンスラックスみたいな、70〜80年代のメタルにどっぷりハマったんだ。ほかのどのジャンルよりもメタルから多くのギター・テクニックを学んだし、今でもリフを作る時に活きていると思う。
そのあと、ニルヴァーナやピクシーズ、ジョイ・ディヴィジョンに出会ってからはグランジとかポスト・パンクに傾倒していって、それ以降はもうずっとその道を歩んでいる気がするよ。

おもちゃ屋にいる子供みたいな気分になるのが
一番良いと思うよ。
最新作『Cutthroat』は、前作までと比べるとよりヘヴィでダンサブルなサウンドになったと思います。最初にアルバム全体のコンセプトを決めてから制作を進めたのでしょうか?
ある程度、意識していた部分はあったね。2nd(『Drunk Tank Pink』/2021年)と3rd(『Food for Worms』/2023年)はかなり内省的で、特に2ndは曲の構成もかなり冒険的だった。でもライブをやるようになると、結局1stアルバム(『Songs of Praise』/2018年)のシンプルでテンポの速い曲に頼る場面が多くなってきたんだ。オレたちは“激しいライブをやるバンド”っていうイメージができてきたから、やっぱりクレイジーなモッシュが起きるような曲が必要になってきたんだよ。
だから今回は、“複雑なことを完全にやめるわけじゃないけど、もっとストレートな曲をやろう”という意図はあったと思う。「Cutthroat」や「Nothing Better」みたいな曲がまさにそうだ。今のライブでは、スローでオープンな雰囲気や、ちょっと変わった展開も作れる。その一方でシンプルなロックでみんなが飛び跳ねられる瞬間も作れるから、ライブでは良い流れを作れるようになったんだよね。
表題曲「Cutthroat」にはダンス・ミュージックだけでなく、ヒップホップの要素も感じました。
「Cutthroat」はかなりクレイジーな経緯でできた曲なんだ。オレが作ったエレクトロニックなループが出発点なんだけど、冒頭の“ダダダダダダ〜”っていうリフは、最初はシンセ・ベースに少しコーラスを加えた音で作っていて、ドラム・ビートに合わせたようなものだった。
それをフォーブスに聴かせたら、“ワォ、気に入ったぜ!”となって、今度はそのエレクトロニックな要素を全部ギターに置き換えて、すごくヘヴィにしたんだ。だから、最初からギターで作っていたらこういうリフには絶対にならなかったと思う。別の楽器で作ったフレーズをギターに置き換えたからこそ、たどり着けたんだ。
ボーカルのメロディ・ラインも展開が豊富で、最後まで飽きさせない構成になっていますよね。
しばらくはボーカルを入れずに置いておいたんだけど、数ヵ月後に作曲合宿をした時、チャーリーがブラック・ミディで活動していたセス・エヴァンスと一緒にボーカルを考えたんだ。セスが“ヴァースはカニエ・ウェストっぽくしてみたら?”と提案してくれて、“Big, beautiful, naked women fall out the sky”っていう歌詞(※¥$の「Back To Me」内の歌詞)が生まれたんだよね。ちょっとバカげていて、シュールな感じになったよ。
サビのメロディ・ラインくらいまではその合宿でできたんだけど、そのあとの構成はスタジオでプロデューサーのジョン・コングルトンがかなり面白く仕上げてくれた(笑)。
「Screwdriver」の最初のヴァース部分で効果音的に入っているギター・サウンドが、シリアスな雰囲気を作りつつ、良いアクセントになっています。どんな機材を用いて作ったのでしょうか?
「Screwdriver」はフォーブスが作ったベースラインから始まったんだ。オレは歪ませまくったファジィなギターにディレイをたっぷり加えて、たった2音だけを弾いている。あとはEventideのラック・ハーモナイザーも使っていて、デジタル・ディレイのようなクレイジーな処理をしているよ。
こういう音をスタジオで作ると、ライブで再現するのがめちゃくちゃ難しいんだよね。スタジオではH3000みたいな機材をいじってみて、ヤバいプリセットを見つけたらそれをそのまま使っているだけだったりするからさ。だからあとになって、“どうやってあの音を作ったんだっけ?”となっても、どうやって再現したらいいのかがわからなくなる。でも、それも楽しさの一部だよね。だからやっぱりスタジオに入って、おもちゃ屋にいる子供みたいな気分になるのが一番良いと思うよ(笑)。
「Plaster」のイントロの歪んだ音がユニークで面白かったです。これはシンセサイザーの音でしょうか?
たしかレコーディングの時は古いMoogのシンセを使った。でもライブでやる時はエディがそのシンセのラインをギターで弾いていて、リング・モジュレーターをかけて再現しているんだ。

誰かが突飛なアイディアを持ってきたら、
新鮮でワクワクするんだよね。
「Axis of Evil」のボーカルのうしろで鳴っているフレーズは特にエフェクティブで、ギター以外のエレクトロニックな音とも調和していました。
この曲ではオレはギターを弾いていないんだ。オレはエレクトロニックな部分を全部やっていたからエディがリード・フレーズを弾いていて、彼はたぶんEventideのオクターブ・ペダルを通していたと思う。この曲ではギターの音をエレクトロニックな要素にちゃんと馴染ませたかったんだよね。12年もギター中心の音楽をやっていると、こういうアプローチはすごくフレッシュに感じるし、楽しいよ。
「Axis of Evil」は打ち込みのサウンドが多く、アルバム内でも特に進化が感じられた楽曲でした。今後こういった楽曲も増えていくのでしょうか?
間違いなくそうだろうね。この曲はDirtywave M8っていうトラッカー・シンセサイザーで作ったよ。昔のLSDJをベースにしている機材で、1小節を16のステップに区切って、そこに数字や指令を書き込んでいくんだ。だから基本的には演奏するっていうより、ドラムもシンセも全部プログラミングしていく感じだね。
スタジオから離れていた時間が長かったから、こういうポータブルな音楽制作機材にかなりハマってさ。それにツアー中はギターを演奏するのに飽き飽きしてしまうことも多いから、何か別のことに没頭したくなるんだよね。それでTeenage EngineeringのOP-1 fieldを買って、飛行機や車の中、フェスの楽屋やホテルでもいじっていたんだ。
そうした機材を操作していた時間が、今回のアルバム制作に活かされたんですね。
正直、こういうサウンドをシェイムの音楽に入れることになるとはあまり考えていなかったんだけど、試してみたらちゃんとハマったんだ。だから今後もこのアルバムみたいに、まずエレクトロニックな形で始めて、それをバンドのサウンドに落とし込んでみるっていう方法で作る楽曲が増えていくと思う。こういう曲を、これからもっと発展させていきたいと思っているよ。
「Cutthroat」ではタッピングも披露していたり、「Lampiao」ではラテン音楽らしさを含んでいたりと、今作はあらゆるジャンルの要素を盛り込んでますよね。
そうだね。オレたちはせっかちで、飽きやすいんだと思う。アルバムの楽曲を作り始めてから実際にツアーで回るまで、どれだけ時間がかかるものなのか、みんなよくわかってないと思うんだけど、『Cutthroat』のツアーを始めた頃にはレコーディングしてから1年半近く経っていたし、そのさらに半年くらい前には楽曲自体ができていたわけでさ。しかし、ツアーを終える頃にはその曲を何度も演奏しているから、嫌いになるわけじゃないけど、とにかく違うことがやりたくて仕方なくなるんだよ。
あなたたちのマインドとして、ポスト・パンクのみにこだわっているわけではないということなのでしょうか?
オレたちは自分たちに制限を設けないようにしているんだ。誰かが突飛なアイディアを持ってきたら、新鮮でワクワクするんだよね。もちろん毎回上手くいくわけではないけど、勢いがあって“これはめちゃくちゃ面白いぞ!”と思う瞬間があれば、それがその曲をさらに発展させるべきかどうかのベンチマークになるんだ。
オレたちは、自分たちが聴きたいと思える楽曲を作って、そういうものばかりが詰まったアルバムを作ることを目指している。それはつまり、次に何が飛び出すかわからないような新鮮味があるアルバムということなんだよね。でもコンセプト色が強過ぎてしまうと、楽曲を聴き進めていくうちに展開が予想できちゃうこともあって、新鮮味が失われてしまう。もちろん予想外の変化球がきた時には“ワォ!”って驚くよ。今まさに、そういうことをやっている素晴らしいアーティストはたくさんいると思うんだ。
『Cutthroat』全体をとおして、あなたが思うギター的な聴きどころを教えてください。
全体的にギターの聴きどころがたくさんあると思うけど、オレのギター・ワークの中で一番気に入っているのは「Packshot」だね。オクターブ・ペダルをつないで、不気味なサウンドを作り出しているんだ。
でもこのアルバムでは、オレはおもにリズム・ギターを弾いていることが多い。リフを弾くよりもソング・ライター寄りになってきていると思う。だから曲を作る時はまずコード進行から決めて、そこから膨らませていくイメージだね。
エディはその上にちょっとしたソロとかリフを乗せるのが本当に上手いんだ。コードを渡せば必ずグレイトなものが返ってくるよ。

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