【後編】ショーン・コイル・スミス(シェイム)が語る、サウス・ロンドン発インディー・シーンの最前線について 【後編】ショーン・コイル・スミス(シェイム)が語る、サウス・ロンドン発インディー・シーンの最前線について

【後編】ショーン・コイル・スミス(シェイム)が語る、サウス・ロンドン発インディー・シーンの最前線について

2026年4月24日(金)SHIBUYA CLUB QUATTROにて来日公演を行なったシェイム。2025年9月にリリースした4thアルバム『Cutthroat』は、ツアー中にショーン・コイル・スミス(g)が趣味で制作していたエレクトロニック・ミュージックのアイディアを、シェイムならではのバンド・サウンドへと昇華するなど、新たなアプローチによって制作された意欲作だ。本記事では、ショーンが影響を受けた音楽やライブ、サウス・ロンドンのインディー・シーンについて語ってもらった。

取材・文=森部真衣 通訳=トミー・モリー 人物撮影=古溪一道

YouTubeで古いライブ映像を観たりして、
本当にたくさんの良い音楽に出会えた。

あなたたちはアイドルズやフォンテインズD.C.と並んで語られることが多いですが、現在のポスト・パンクというジャンルに人気が集まっていると思いますか?

そうだね。今はもはやその枠を超えて広がっているよ。“ポスト・ロック”とは、オルタナティブ・ロックだったり、モダンなギター・バンド全般を指すような包括的な言葉になっていると思う。アイドルズはサウンド的にも間違いなくポスト・パンク・バンドだと思うけど、オレにとってフォンテインズD.C.は、どちらかというともっと伝統的なロック・バンドに思えるね。2019年頃に出てきたという理由で、ポスト・パンクというレッテルを貼られた部分もあるんじゃないかな。

同じポスト・パンクとして括られているバンドでも、音楽性がまったく違いますよね。

ロンドンだと、ポスト・パンクというとカナダのノー・ウェイブ系を思い浮かべることが多いんだ。日本でも知られているかわからないけど、今ちょっと盛り上がっているアンジーヌ・ド・ポワトリーヌとか、ああいう不協和音的なノー・ウェイブだね。あとはプリオキュペイションズとか、ウィミンとか……。今ちょっと名前が出てこないけど、あの辺のカナダのシーンには本当にナイスなバンドが多いよ。

それからプロトマーティアもアメイジングなポスト・パンクのバンドだと思うけど、過小評価されているよな。ブラック・ミディも1stアルバム(『Schlagenheim』/2019年)でシーンに踊り出てきたけど、どちらかというとプログレ寄りの方向に進んでいった気がするね。

当初は、あなたたちのような若い人たちがノー・ウェイブやジョイ・ディヴィジョンのような音楽をプレイしていることに驚きがありました。現在はYouTubeやApple Musicが主流の時代だからこそ、メイン・ストリーム以外の音楽に容易にアクセスできたことも影響しているのでしょうか?

まさにそのとおり。やっぱりインターネットの影響は大きいと思う。YouTubeで古いライブ映像を観たりして、本当にたくさんの良い音楽に出会えたよ。オレの場合は小さい頃に親父からいろいろ教えてもらったし、高校に入ると2つ上のニックっていう友達ができて、ニック・ドレイクやジョイ・ディヴィジョンみたいなアメイジングな音楽を教えてくれたんだ。影響力のある誰かから音楽を教えてもらうっていう体験は多くの人がすると思うけど、どんなギター・プレイをしたいかとか、どういう曲を作りたいかが決まったという意味で、それは自分の人生が変わった経験だった。

そしてバンドを始めたらメンバー同士で音楽を共有するようになって、一緒にザ・フォールやストゥージズみたいなバンドを発見していったんだ。それが今も大きくバンドに影響しているよ。

2000年代くらいまでのイギリスでは、流行の音楽に触れる術として、『Top of the Pops』(※テレビの音楽番組)が大きかったと思います。特に90年代はオアシスやブラーを筆頭としたブリット・ポップのバンドを見る機会が多く、たくさんのバンドに影響を与えました。あなたが10代の頃もこういった番組の影響力は大きかったですか?

オレは1997年生まれで、音楽に興味を持った時はそれより前の音楽ばかり聴いてきたんだよね。でも、成長期にリリースされたギター・ミュージックで一番影響が大きかったのはアークティック・モンキーズだったと思うし、そのあとに似たようなバンドもたくさん出てきたよ。

あと“XFM”っていうラジオの存在がすごく大きくてね。今はBBC Radio 6でDJをやっているローレン・ラヴァーンが番組をやっていたんだ。その朝の番組を通学中によく聴いていて、アークティック・モンキーズやストロークスがしょっちゅう流れてたよ。もちろん、そういうサウンドのフォロワーも大量に出てきたけど、正直そのあたりがオレのお気に入りのジャンルだったことはないかな。

ティーンエイジャーの頃はむしろジェフ・バックリー、ニルヴァーナ、ピクシーズみたいな90年代のオルタナティブ・ロックにハマっていたね。

左から、ショーン・コール・スミス(g)、ジョシュ・フィナティ(b)、チャーリー・スティーン(vo)、チャーリー・フォーブス(d)、エディ・グリーン(g)
左から、ショーン・コール・スミス(g)、ジョシュ・フィナティ(b)、チャーリー・スティーン(vo)、チャーリー・フォーブス(d)、エディ・グリーン(g)

ウィンドミルは
今でも最高の場所の1つだと思うね。

サウス・ロンドンのインディー・シーンは10年ほど前から非常に賑わっており、スクイッドやブラック・ミディは日本の若者にも人気です。サウス・ロンドンは、なぜ良質な音楽が生まれるのでしょうか?

必ずしもサウス・ロンドンっていう場所が理由じゃないと思う。こういうシーンはだいたい1つの箱を中心に形成されるものなんだ。オレらが出演してきた“ウィンドミル(The Windmill)”っていうライブハウスはすごく良い場所で、観客が良いだけじゃなく、箱の仕組み的に活動を始めたばかりのバンドでもかなり早い段階でライブができるんだよね。ブラック・ミディはデモを店長のティムに送った3日後にはライブをやっていたらしいし、そういう意味で最高のスタート地点なんだ。

活動を始めてすぐにライブができるシステムによって、多くのバンドにとっての登竜門になっているんですね。

今は本当に多くのバンドがウィンドミルを通ってきているから、場所自体に強いカルチャーが根付いてる。ウィンドミルがサウス・ロンドンにあるっていうだけで、そのバンドがブリストル出身だったとしてもサウス・ロンドンのバンドとして括られたりするしね。ほとんどジャンルみたいな扱いになってるんだ。

こういうインディペンデントな箱が重要な理由の1つはそこにあって、そのシーンや場所から1つでも良いバンドが出てくると、それに影響を受けたバンドが“ここに行けば自分たちも世に出られるチャンスがあるかもしれない!”って、どんどんそこに集まってくるようになる。だからウィンドミルはめちゃくちゃ重要な場所だよ。

音楽ファンがそういった話を聞くと、80年代から90年代にかけてマンチェスターの音楽的象徴だったハシエンダのようなものを感じます。ウィンドミルは2020年代のハシエンダになっていくのでしょうか?

ほとんどそんな感じだろうね。ハシエンダはハッピー・マンデーズのようなレイブ・カルチャーだったり、Factory Recordsのイメージが強いけど、ウィンドミルと似ている部分は確実にあるよ。どっちかというとニューヨークのCBGBみたいな小さなロック・クラブに近いかな。例えば70年代後半〜80年代のCBGBには、テレヴィジョンやトーキング・ヘッズ、デボラ・ハリーがいて、とにかくクレイジーだったから。

ウィンドミルのシーンがそこまでのレベルになるかはわからないけど……あそこまで行くには相当ハードルが高いよね(笑)。今のロンドンにはほかにも良い箱があって、最近では例えばロンドンの南東部にあるジョージ・タバーン(The George Tavern)も良いところだよ。いろんなバンドが毎晩演奏しているし、新しいバンドもどんどん出てきている。でもやっぱりウィンドミルは今でも最高の場所の1つだと思うね。

最近あなたが気に入っているインディーズ・バンドはいますか?

パッと思いつくバンドが2組いるよ。最近、ギースのサポート・アクトで観て、全部シングル曲を気に入ったのがウェストサイド・カウボーイだね。かなりオルタナティブ寄りのバンドで、少しアーケイド・ファイアっぽさも感じたな。ドラマーも最高だったし、ギタリストが「Don’t Throw Rocks」で披露するスライド・ギターはアメイジングで、かなりエモーショナルだったね。

それと、オレたちのサポート・アクトをよくやってくれている仲の良いバンドで、ブリーチ9:3っていうのがいる。EPを2枚出しているんだけど、デフトーンズっぽい感じで、ほとんどメタルに近いサウンドなんだ。今後かなり活躍していくと思うし、メンバーも本当に最高なヤツらだよ。かなり才能があると思うし、特にボーカルのバリー(クインラン)はオレが今まで見てきた中でもトップ・クラスのソング・ライターの1人だと思う。だから今一番推したいのは、間違いなくブリーチ9:3だね。

今までに観てきたライブの中で最も記憶に深いものは?

いくつかあるんだけど、ザ・ハイヴスのライブは本当に印象的で、初めて観た時のことをハッキリ覚えているよ。ラスベガスのフェスで一緒になったんだけど、いわゆるレジェンド系のバンドが並ぶようなラインナップで、アンダー・トーンズとかが出ていてね。全体的にちょっと落ち着いた雰囲気だったんだけど、ハイヴスが出てきた瞬間、もう爆発みたいな感じで、本当にそれ以外の表現が見当たらなかったよ。彼らの有名な曲はもちろん知ってたけど、ライブがどんな感じなのかは全然知らなかったんだ。

観客はみんなシックな衣装を着ていたんだけど、ステージ・クルーは忍者みたいな格好していてさ。ギターを空中に投げて、それをテックがキャッチしたりして本当に最高だったよ。ハウリン・ペレ(vo)もフロントマンとしてめちゃくちゃ面白かった。

ほかに印象に残ったライブ・パフォーマンスはありましたか?

LCDサウンドシステムも挙げたいね。初めてのGlastonburyに行った時に観たんだけど、ライブが本当に素晴らしかった。彼らの音楽も好きだったけど、あそこまでエネルギッシュなライブだとは思っていなかったね。

でも、もし1バンドだけを選ぶならニック・ケイヴ・アンド・ザ・バッド・シーズかな。ニック・ケイヴ(vo)はオレが観た中で最高のフロントマンだと思う。少なくとも全盛期の時は無敵だったよ。ウォーレン・エリス(violin)とニック・ケイヴのライブは本当に圧巻でね。とにかく観客を完全に支配するんだ。

チャーリー・スティーン(vo)
チャーリー・スティーン(vo)

2026年4月24日(金)SHIBUYA CLUB QUATTRO

【Setlist】
01. Axis of Evil
02. Concrete
03. Tasteless
04. Cowards Around
05. Nothing Better
06. Fingers of Steel
07. Six-Pack
08. Alphabet
09. Quiet Life
10. Lampião
11. Born in Luton
12. Adderall
13. Water in the Well
14. Spartak
15. Angie
16. Dust on Trial
17. Snow Day
18. One Rizla
19. Cutthroat

作品データ

Cutthroat
シェイム

Dead Oceans
DOC384JCD
2025年9月5日リリース

―Track List―

01. Cutthroat
02. Cowards Around
03. Quiet Life
04. Nothing Better
05. Plaster
06. Spartak
07. To and Fro
08. Lampião
09. After Party
10. Screwdriver
11. Packshot
12. Axis of Evil

―Guitarist―

ショーン・コイル・スミス、エディ・グリーン