ダニエル・ケスラー(インターポール/Interpol)が語る、バンドのネクスト・チャプターを提示する最新作『This Mirror Weighs a Ton』 ダニエル・ケスラー(インターポール/Interpol)が語る、バンドのネクスト・チャプターを提示する最新作『This Mirror Weighs a Ton』

ダニエル・ケスラー(インターポール/Interpol)が語る、バンドのネクスト・チャプターを提示する最新作『This Mirror Weighs a Ton』

約4年ぶりとなる8thアルバム『This Mirror Weighs a Ton』をリリースしたインターポール。今年4月に開催された“Coachella”にも出演し、ベテラン・バンドとしての強さを改めて世界中にアピールした彼らの最新作は、実験的なサウンド・アプローチを積極的に取り入れ、まさにバンドのネクスト・チャプターと呼ぶべき1枚に仕上がった。去る5月、プライベートで来日していたダニエル・ケスラー(g)に取材する機会を得た。ギター・マガジン初登場となる彼に、アルバム制作、自身のルーツ、そして現在の使用機材までを語ってもらった。

取材・文=小林弘昂 通訳=伴野由里子 翻訳=トミー・モリー

ダニエル・ケスラー

リハーサル・ルームで演奏した時点で、
しっかりとできあがった曲でなければならないんだ。

最新作『This Mirror Weighs a Ton』は、現代的なポップスの質感と伝統的なオルタナティブ・ロックが融合したサウンドになったと思います。どのようなコンセプトを持ってアルバムを制作したのでしょうか?

制作を始めた時点では、どんなビジョンになるのか自分たちもわかっていなかったと思う。オレたちは何かを始める前に“次はこうしよう”と話し合うタイプのバンドじゃないんだ。とにかくまず動き始めて、それから実際に起こったことを通じて、徐々に輪郭がクリアに見えてくる。だから今回は自然に進化していったようなものだったと思う。

まずは手を動かしてみるんですね。

話し合いによって変化するというより、メンバー同士の化学反応や、積み重ねによって進化するバンドなんだよね。曲はオレが最初に持ってくることが多いんだけど、今回はその原型の段階でかなり手応えを感じていたよ。そしてみんなで集まって“インターポールの楽曲”として形作っていく中で、曲に大きな躍動感があることがハッキリ見えてきたんだ。

それから今作は、長年ツアーをともにしてきたベーシストのブラッド(トゥルアックス)と一緒に曲作りをした初めてのアルバムでもある。だからその時点で、すでに新しい要素が加わっていたんだよね。あとはプロデューサーのアンドリュー・ワイアットと仕事をしたいという想いもあった。オレ自身、キーボードをもっと取り入れたいと思っていて、実際この作品にはそういう要素が多く入っているよ。

なぜキーボードをフィーチャーしたかったのでしょう?

より豊かな空気感や、広がりのあるサウンドが欲しかったんだ。アンドリューは素晴らしいキーボーディストでオーケストレーションにも長けているから、一緒にやればきっとそれが実現できるだろうと思っていたよ。

オレたちは基本的に部屋に集まって曲を作る。リハーサル・ルームで演奏した時点で、しっかりとできあがった曲でなければならないんだ。そうして作業を進める中で、今作の曲にはすごく良いエネルギーがあったし、インターポールの次のチャプターや進化を感じさせるものだということがハッキリわかったね。

今作はロザリアやチャーリーXCXとの仕事でも有名なアンドリューがプロデュースを、そしてウィーザーやフレーミング・リップスなどの作品で知られるデイヴ・フリッドマン(ex.マーキュリー・レヴ)がミックスを手がけています。なぜ2人にオファーを出したのでしょう?

アンドリューはとても親しい友人なんだ。オレたちはもともと友達で、ずっと仲が良い。だから音楽を通じてというより、人生を通じて友人になった感じなんだよね。

バンド・メイトのポール(バンクス/vo,g)は、ウータン・クランのRZAと別プロジェクト(バンクス&スティールズ)をやっているんだけど、実はアンドリューはその曲(「Wild Season」)に関わっていて、オレはポールからアンドリューに関しての良い話を聞いていたよ。

そうだったんですね。

アンドリューは本当に個性的な人で、そこが大好きなんだ。オレたちとすごく合うんじゃないかという予感もあったし、実際そのとおりだったね。声をかけた時も、ものすごく乗り気だったよ。彼はロザリアやビリー・アイリッシュ、マイリー・サイラスみたいな大物アーティストとも仕事をしているけど、マイク・スノー(Miike Snow)というバンドをやっているからインディーのバックグラウンドを持っている。あとはニューヨーク出身だから、そういう部分にオレたちとの共通点を感じるんだよね。

でもオレはそれ以上に、彼の持っている感覚がこのバンドにすごくマッチすると思ったし、彼にとっても普段とは違うことをやる機会になるんじゃないかと思ったんだ。彼はインディー・バンドと頻繁に仕事をしているわけじゃないけれど、本当にたくさんの時間と労力を注いでくれたよ。だから5人目のメンバーみたいな存在になったんだ。

制作に関して、かなりの貢献をしてくれたんですね。

実際、この作品のキーボードの大半は彼が弾いているからね。キーボードにしても、プロダクションのアイディアにしても、彼が提案してくるものはどれも曲やバンドに合っていると感じられるものばかりだった。

バンド・メンバー以外の人と仕事をする時はとても繊細になって、何かがしっくりこないと本当に目も当てられないような状況にだってなり得る。しかも上手くいくかどうかわからないから、相手が友人ともなると、なおさら難しくてね。でも今回は最初から完璧な組み合わせだとわかったよ。本当に彼とやって良かったと思うし、そのおかげでより良いアルバムになったと思っている。

デイヴ・フリッドマンに関しては?

6枚目のアルバム(『Marauder』/2018年)で一緒に作業をしているんだけど、その時点で彼はすでにグレイトな経験があったし、友人関係でもあったから、オレたちは彼と仕事をするのが大好きなんだ。安心してミックスを任せられるとわかっているし、一緒にできるのは本当に喜ばしいことだよ。

彼は今回のレコーディング現場にはいなかったけど、オレたちの曲のことを完璧に理解してくれていた。まるで部屋に入ってきた博士が、“君たちがこれまでやってきたことは全部知っているよ。何をどこに配置すべきかもわかっている”と言うような感じだったね。魔法使いみたいな人なんだ。現代を代表する偉大なアーティストの1人でもあると信じているよ。

20年後でも、30年後でも、50年後でも、
ちゃんと意味を持つサウンドにさせたい。

ギター・サウンドはエッジィでありつつ、ディレイやリバーブを巧みに使って立体感を生み出しています。サウンド面に関してはどのようなことを意識していましたか?

オレにとっては、まず何よりも“本物らしさ”が重要なんだ。フィーリングがあって、時代を超越していくものにしなければならない。20年後でも、30年後でも、50年後でも、ちゃんと意味を持つサウンドにさせたいと思っているよ。それがオレのギター・サウンドの根幹にある部分だね。

これはオレが古いギターをプレイしていることに由来していて、今回レコーディングで使ったのも60年代のギターだった。レコーディングでは60年代のアンプも使っていて、そのうちの何台かはこれまでのインターポールの作品でも使ってきたものでね。だから、そういったところに“正真正銘のサウンド”が潜んでいるんだ。その一方で、“過去の作品とは少し違う何かを見つけられないか?”とも考えていている。

それはどのように探していくのでしょう?

料理のレシピに新しい材料を加えるようなものかな。“これは理にかなっている”“これを入れるともっと良くなる”と感じるものを見つけるんだ。かなり主観的なものなんだけどね。

それからポールは、いつも機材をガラリと変えている印象がある。常に新しいペダルを探しているし、感情や情景を表現するための新しいサウンドを追求しているんだ。だから結局のところ大事なのは、“曲を最も良い形で表現するために何が必要か”ということなんだと思うよ。

ギターではなく鍵盤をメインにした楽曲も増えていますが、そのような場合どのようなギター・フレーズを意識しますか?

実はそういう曲の場合、オレはギターを弾いていないことが多くて、ピアノをプレイしている。普段ならギターで曲を書き始めるところをピアノで始めているということだね。だから自分自身をギターから遠ざけている感覚があるんだ。でもそれと同時に、普段ギターに込めている感性をそのままピアノに注ぎ込んでいるよ。声が違うだけで、オレにとっては同じ種類の感情表現なんだよね。

インターポールの曲はほとんどがオレのギターから始まるんだけど、「Iron City」はピアノで書いた曲だし、最初にできたのもピアノのパートだった。「Sudden」もピアノから始まった曲で、あとになってほかのパートを加えていったよ。それから「Enemy」も同じだね。あとからギター・パートを追加したんだけど、そのギターはポールが弾いているんだ。

「Wings On Fire」や「Wake Up」などのギター・リフで進めるような楽曲は、リフから作り上げていったのでしょうか?

その2曲はどちらもリフから始まったね。メンバーに聴かせる前の段階で、ギターを使って最初から最後まで曲全体のアレンジを作っていたんだ。だから曲そのものは形になっていたから、ほかのパートと一体化するようなフィーリングを作ることを目指した。つまり、その作業がインターポールの楽曲になっていくんだよね。

「Wake Up」の冒頭とラストで鳴っているギターはダビングを一切していない。ドラムと一緒に録った1stテイクをそのまま残したんだ。すごくエモーショナルでライブ感があって、“これ以上のものは録れない”と感じたからね。だからある意味、ライブ演奏をそのまま使ったような感覚に近い。

インターポール
左から、ブラッド・トゥルアックス(b)、ポール・バンクス(vo,g)、ダニエル・ケスラー(g)、ブランドン・カーティス(key)、サム・フォガリーノ(d)

フガジのおかげで、
まったく違う曲作りの方法を考えるようになったよ。

The xxやアイドルズなど、現在第一線で活躍しているアーティストはインターポールからの影響が大きいなと最近改めて感じたのですが、あなたたち自身もそれは感じますか?

その質問には答えられないな。ぜひ彼らに尋ねたいね。でも、そう言ってもらえるのは光栄だよ。どちらも本当に素晴らしいバンドだから。

先日出演したCoachellaでは、インターポールのほかにもストロークス、ジャック・ホワイトなど、あの時代にデビューしたアーティストの存在感を若い世代にアピールできたと思います。そのようなことは感じますか?

オレたちはCoachellaに5回も出演していて、これは本当にクレイジーなことだよ。初めて出演したのは2003年だった。そう考えると、Coachellaがここまで様々なものを包含する巨大な存在へと成長したのは、本当にアメイジングなことだと思う。

あのライブ配信の規模は驚異的だ。本当にたくさんの人が観ていて、1つの国際的な文化現象と言えるほどの存在になったよね。今回、実際にストロークスのステージも少し観たんだけど、彼らは本当に素晴らしいバンドだし、永遠に残り続けるような名曲をたくさん持っている。そういう意味で、彼らの音楽は時代を超えているんだ。

そして驚くのは、そうしたバンドの多くが同じ時代に登場したということ。今聴いてもまったく色褪せていない。ジャック・ホワイトは間違いなく僕らの世代を代表する偉大なアーティストの1人だね。メディアによって大きく取り上げられたムーブメントの中には、時々ある種の“誇張”が行なわれていて、実際にはそれほど特別なことが起きていなかったケースもあると思う。

そうですね。

でも、2000年代初頭に注目された多くのバンドに関しては違っていて、今でも彼らの音楽が素晴らしく聴こえるのは、実際そこに何か特別なものが存在していたからなんだ。ヤー・ヤー・ヤーズを始め、すごいバンドが数え切れないほどいたよ。本当に驚くべきことだし、特別な出来事だったんだと思う。

正直、こんな風になるとは想像していなかったよ。もし2003年の自分に、“将来どうなると思う?”と聞いたら、“アルバムを1枚か2枚出して、そのあとはみんなオレたちのことを忘れてしまうんじゃないかな?”と答えるだろう。だから今こうして8枚目のアルバムについて君と話していること自体が本当に素晴らしいし、とても特別なことだと思っているよ。

改めて、あなたに影響を与えたギタリストやアルバムを教えてください。

音楽は子供の頃からずっと人生の大きな一部だった。オレには兄が2人いて、2人とも音楽にものすごく情熱を持っていてね。だから音楽はいつだってとても重要な存在だったんだ。ティーンエイジャーになって本当にいろんな音楽スタイルを発見していったんだけど、今でも聴くたびに思わずふり返って驚嘆してしまう存在がいる。

それは誰でしょう?

ジミ・ヘンドリックス。彼は十分過ぎるほど評価されている人だと思うけど、それでも当時から時代を遥かに先取りしていて、あまりにも独創的だったよね。スタイルという意味では彼が最高で、すべてが本当に驚異的だ。ティーンエイジャーの頃に初めて聴いた時は発見だったけど、今聴くとそれが驚嘆になるなんだ。

そしてオレがギタリスト、ソングライターとして最も大きな影響を受けた存在はフガジだ。もしも彼らがいなかったらインターポールも存在していなかったと思うね。フガジは一般的にはギター・バンドだとか、ギターがグレイトなバンドとして語られることは少ないだろう。でもオレはフガジに出会った時、“こんなギターの弾き方があるのか!”という衝撃を受けたんだ。

フガジのどのような部分に影響を受けたんですか?

ミニマリズム、より少ない音数、1つの音を長く伸ばすこと、そして2本のギターによるカウンター・リズム……そういうものを通じて、“音楽はテクニックの問題ではないんだ”と考えさせられたね。

高校生の頃はギター・ソロもかなり上手くプレイできていたんだけど、今はもう弾けない(笑)。フガジを聴いて気づいたのは、どれだけ速弾きができるか、どれだけ技術があるかということは重要じゃないっていうことなんだ。大事なのは物事へのアプローチで、さっき言ったようなミニマリズムや、“Less is more”という考え方。彼らのおかげで、まったく違う曲作りの方法を考えるようになったよ。だからオレにとって最も影響力の大きかったバンドと言えるね。ソングライターとしても、インターポールを始めようと思ったキッカケとしても。

インターポール
左から、ブランドン・カーティス(key)、ブラッド・トゥルアックス(b)、ダニエル・ケスラー(g)、サム・フォガリーノ(d)、ポール・バンクス(vo,g)

ほかのギターを探すことや、
プレイすることも止めた。

ここからは機材に関して聞かせてください。現在メインで使用しているギターは?

1968年製の赤いカジノだね。ES-330も持っているけれど、メインで使っているのはカジノなんだ。ES-330をプレイすることは本当に稀なんだよね。ライブではカジノとグレッチのAnniversaryを使い分けていることがほとんどで、この2本がメインのギターだよ。

レコーディングでは、カジノとAnniversaryをどう使い分けていますか?

今回は全部カジノで録ったんだ。これってまるで服を選ぶような感覚で、“この曲にはこのシャツが合うな!”という感じなんだよね。グレッチは『El Pintor』(2014年)でたくさん使ったから、あのアルバムの曲を弾く時はグレッチを手に取ることが多い。

グレッチにはすごく独特なサウンドがあって、ハッキリした個性を持っているんだ。一度、“この曲のサウンドはこれ!”と決めてしまうと、オレはあとから別のギターに戻すのがほとんど不可能でさ。料理を作る時に、“これには胡椒は入れない”と決めるようなもので、そう決めたらあと戻りはできないんだよね。

(笑)。メインのカジノを入手した時のことを覚えていますか?

1stアルバム(『Turn On The Bright Lights』/2002年)を作る前にカジノを買ったんだけど、まるでずっと探し続けていたようなサウンドでね。“やっとたどり着いたんだ。もうほかに何も必要ない”と心から感じたんだ。もっとたくさんのギターを薦めたがる人たちもいるけれど、オレは“これこそがずっと出会うべきだったギターだ”と思えたよ。すごくしっくりきたんだ。でも残念なことに、そのギターはいつかのツアー中に盗まれてしまってね。

そうだったんですか……。

だから今使っている1968年製のカジノは、『El Pintor』を制作していた時に手に入れたものなんだ。盗まれてしまったあと、昔からオレたちのことを応援してくれているブルックリンの“Main Drag Music”という楽器店が、“68年製のカジノが入荷したよ”と教えてくれて、オレのために取り置きしてくれたんだ。

まずはそのカジノを借りて『El Pintor』をレコーディングしたんだけど、すぐに“オレとこのギターは出会う運命だったんだ”と思うようになったね。特別なギターと出会うと、それは大切な存在となり、自分自身の延長みたいなものになってくる。だからほかのギターを探すことや、プレイすることも止めた。そしてこのカジノがオレにとって特別で唯一無二の存在になったんだよ。

ホロウ・ボディのギターを使いこなすコツはありますか?

ES-335みたいなギターはそれほどハウリングしないけど、カジノやグレッチみたいなホロウ・ボディはすごく簡単にフィードバックが起こる。だから常にコントロールしなければならないんだよね。オレはそれをある程度受け入れられて、そういうワイルドさがすごくしっくりくるんだ。不思議なんだけど、オレにとってはそっちのほうがホームに帰ってきたような感覚なんだよね。

ES-335は見た目こそカジノとほとんど同じだけど、オレにとってはまったくそういう感覚がない。何かが違っていて、サウンドもしっくりこないんだ。カジノにはシングルコイル・ピックアップ特有の繊細さがあって、いつ暴れ出してもおかしくないようなレスポンスの良さもある。まるで暴れ馬みたいなもので、扱い方を本当に理解していなければならない。でも一度それを理解すると弾いていてすごく楽しくなるし、逆にほかのギターをプレイするのが難しく感じるんだ。本当に奇妙なことだよね。

ライブではフェンダーの’68 Custom Princeton Reverbを2台使用しているようですね。

ライブではリイシュー・モデルだけど、レコーディングで使っているのは1968年製のPrinceton Reverbなんだ。インターポールの全作品でPrinceton Reverbを使っているんだよ。3枚目のアルバム(『Our Love To Admire』/2007年)以降は、ずっと特別にしている1台のPrinceton Reverbだけを使い続けているんだ。

なぜ小さいアンプを選んでいるのでしょうか?

自分でもよくわからないな(笑)。でもPrinceton Reverbのリバーブが好きで、このサウンドはオレにとってすごく自然に感じられる。それに暖かみと独特の個性もあるんだ。時代を超越したような響きで、とても表現力豊かだね。自分自身と強く結びつくサウンドなんだ。

アンプ自体のボリュームを上げて歪ませていますか? それともクリーンなサウンドにセッティングしていますか?

歪みはペダルで作っているよ。Princeton Reverbは小さいけれど、かなりラウドな音まで出せる。でもオレはそういう使い方はしない。歪みは全部ペダルで作っていて、アンプ自体で歪ませることはないんだ。アンプはクリーンなサウンドを作っているよ。

左から、ブランドン・カーティス(key)、ダニエル・ケスラー(g)、ブラッド・トゥルアックス(b)、ポール・バンクス(vo,g)、サム・フォガリーノ(d)

実際に機材を感じていたいし、サウンドも聴きたい。
あの少し雑然とした感じが好きなんだ。

あなたの音作りに欠かせないエフェクターは?

KlonのCentaurは好きだね。それからVOXのValve-Toneも好きで、1stアルバム以降の全作品で使っているんだ。最近はBenson Ampsのアナログ・ディレイ(DELAY)を気に入っているよ。Bensonはオレゴン州ポートランドの会社で、本当に良いメーカーだと思っている。DELAYは今作でも使っていて、今のところオレにとって欠かせないのはこのあたりだね。

Klon Centaurはオリジナルのものでしょうか?

残念ながら違うんだ。コピー・モデルだよ(Pedal Monsters / Klone)。オリジナルだったら良かったんだけどね。Klonのクランチ・サウンドには独特のものを感じるよ。50年前から存在していたとしても不思議ではないようなサウンドなんだよね。今、新たにKlon系のペダルを作っている人たちも、それをちゃんと理解していると思う。“本物らしさ”を持ったペダルを作り出す方法を見つけたんだろうね。

カジノ、Princeton Reverb、Klonの組み合わせには、何か本物らしさがあると思っている。これらの機材1つ1つがすごく理にかなって感じられるんだ。オレは未来的すぎるものよりも、もっと普遍的なものを求めているんだろう。1960年代、あるいは2085年のものと言われても納得できて、ちゃんと良いサウンドのものだね。そういうものに、とても共感するるんだ。

ペダル3台でライブを行わなければいけない場合、何を選びますか?

今挙げた3台(Klone、Valve-Tone、DELAY)だね。うん、そうだと思う。

あなたたちのバンドのサウンドにリバーブは不可欠だと思いますが、どういう機材を使っていますか?

Princeton Reverbに搭載されているリバーブはかなり良くて、普段はほとんどそれを使っている。あと、レコーディングでは使っていないんだけど、最近見つけたリバーブがあってね。

どんなものでしょう?

Industrialectricというペダル・メーカーがあるんだけど、本当に素晴らしいリバーブなんだ。たぶんビルダーが1人で全部作っていて、ものすごくゆっくり製造されているんだよね。注文しても手元に届くまで1年くらいかかるだろけど、本当にアメイジングなサウンドのペダルだよ。あとはリバーブとディストーションを組み合わせたペダル(RM-1N)も作っていて、しかも完全にアナログなんだよね。

一時期はデジタル技術の進歩そのものに魅力があったと思うし、オレたちはまさにデジタル時代に生きているけど、ペダルの世界では今でもアナログを作り続けたり、アナログを大切にしている人たちがいる。世の中がどんどんクレイジーになっていく中で、そういうことが起きているのは素敵なことだよね。

今作『This Mirror Weighs a Ton』のレコーディングで使用したギター、アンプ、エフェクターなどを教えてください。

オレに関して言えば、ほぼ今まで話した機材を使っているよ。今回はポールのほうがいろんなギターを使っていたね。彼はアンドリューが持っていたジャズマスターを弾いていて、アンプはDeluxe Reverbを鳴らしていた。アンプに関しては、2人ともこれ以外のものは特に使っていないと思う。ポールのペダルについては詳しく知らないけど、たくさん持っているんだよね。

最近ではステージ上にアンプやペダルを置かず、Quad CortexやFractal AudioのAxe-Fxなどのデジタル・デバイスに移行するロック・ギタリストも増えています。インターポールがアナログ機材にこだわる理由とは?

良い質問だね(笑)。こういうことに関してオレは昔から変化が遅いほうで、最新のテクノロジーを追いかけるタイプではないんだよ。実際にそういう機材へ移行した友人たちもいて、“グレイトだ。ツアーも楽になるし、毎回同じサウンドを再現できる!”と言っている。でもオレにとってはやっぱり何か別物で、とても未来的すぎるように感じるんだよね。実際に機材を感じていたいし、サウンドも聴きたい。あの少し雑然とした感じが好きなんだ。

最近は誰もが機材をどんどん簡略化している。でもオレはコンピューターがあまり得意じゃないし、覚えるのも遅い。たぶん自分で理解できるものが好きなんだと思う。オレはペダルを切り替える時に両足を駆使して、一度に何台も踏んだりするんだよ。ダンスみたいに、“バン、バン、バン”ってね。そういう動作もプレイの一部として自分と結び付いている気がするんだ。だから例え合理的になれるとしても、それらを手放したいとは思わないんだよね。ステージ上でのエモーショナルなものとも、つながっている気がするんだ。

そのとおりだと思います。

いつかはみんな変わるのかもしれないけど、今のところオレはそういうものが好きなんだ。アンプまでしっかりとケーブルでつながっていることすら好きなんだよ。そういうものを一切使わない人もたくさんいるけど、それら全部をひっくるめて好きなんだ。例えばジャック・ホワイトが合理的なシステムに完全移行するなんて想像できないだろう?

そうですね(笑)。

いろんな機材を使わずにプレイしている姿なんて思い浮かばない。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジだってそうだね。そして彼らはみんな素晴らしいアーティストだ。

本日はありがとうございました。ぜひまた日本でもライブを行なってください。

Me too。オレもそう願っているよ。

そして、その時はぜひ機材を撮影させてください。

もちろん喜んで! こちらこそ本当にありがとう。

作品データ

『This Mirror Weighs a Ton』
インターポール

ユニバーサル
UMCK-1828(通常版)
2026年8月28日リリース

―Track List―

01. This Mirror Weighs a Ton
02. See Out Loud
03. Iron City
04. Wounded Soldier
05. Wings On Fire
06. Ever The Actor
07. So Rides The Reindeer
08. Darling Thoughts
09. Wake Up
10. Enemy
11. Bird and The Serpent
12. Sudden

―Guitarists―

ポール・バンクス、ダニエル・ケスラー