ギター・マガジン 2021年4月号 ギター・マガジン 2021年4月号

ギター・マガジン 2021年4月号

90年代オルタナ革命

ギター・マガジン2021年4月号は、ソニック・ユース時代のサーストン・ムーアを表紙にした(なんと29年ぶり!)、90年代USオルタナティブ・ロック特集!!! ソニック・ユース、ダイナソーJr.、ニルヴァーナ、パール・ジャム、スマッシング・パンプキンズなど、当時のバンドを大きく取り上げています。今回は特集担当編集者の小林弘昂が見どころを紹介!

ギタマガがついに
オルタナ/グランジ特集を!

 どうも、今回の企画を担当した編集部の小林です。いや〜、ついにやりましたね。ギタマガ初の90年代USオルタナ特集。ギタマガってオルタナ/グランジ・バンドのギタリストを全然扱わないっていうイメージがないですか? 僕はそういうイメージがあって、学生時代(2007〜2014年くらい)に“何であのバンドもこのバンドも来日したり新譜を出したりしてるのにギタマガは全スルーするの!? 取材してよ! 機材が知りたいよ!”とブチ切れながら読んでいました。入社後にそれとなく聞いてみると、なんと“オルタナ関連は売れないから”という理由が……。ドアホウ! バックナンバーを漁ってみたところ、2004〜2014年くらいまでが超冬の時代で、マジでオルタナ・バンドの記事が少なかったんですよ。膝から崩れ落ちました。

 でも今は時代が変わりました。ジャズマスターやBig Muffがこんなにも市民権を得ているんですよ? 少し前では考えられなかったことです。それと数年前までのFUJI ROCKやSUMMER SONICには海外のロック・バンドがたくさん出演していましたよね。本当に良い時代でした。ソニック・ユース、ダイナソーJr.、スマッシング・パンプキンズ(もう日本に来てくれないんですかね……泣)といった90年代のレジェンド・バンドたちを生で観る機会があったので、多くのリスナーが当時の音楽にアクセスするようになり、オルタナ・バンドの人気はずっと衰えなかったのだと思います。

 僕もずっと90年代オルタナが好きで、入社してからJ・マスキス、サーストン・ムーア、スティーヴン・マルクマスといったレジェンドたちに直接インタビューをさせてもらったり、ピクシーズやティーンエイジ・ファンクラブの機材撮影をさせてもらったこともありました。いつかは表紙で特集を作りたいなと思い、何度か企画書を出したものの“う〜〜〜〜ん、売れないからなぁ”と難色を示され却下。ドアホウ!

 そして2021年、ついに“じゃあ、ずっとやりたいって言ってた90年代オルタナ特集やるか。準備しといてね〜”と編集長。しかし、キャンプ大好き子煩悩パパ、筋トレ見習いテクニカルITボーイ、広島出身の詩人(和菓子digger)、三度の飯より読書好きの宇宙人……ほかのギタマガ編集部員たちのオルタナ戦闘力は皆無です。誰も頼れません。で、蓋を開けてみると……はい〜、やっぱりほとんどの記事担当が僕でしたね。じゃあ好きにやっちゃいますよ〜? ということで編集担当の僕が、この2021年4月号の見どころをじっくり解説していきましょう!

吉野寿(eastern youth) × 向井秀徳(ZAZEN BOYS/NUMBER GIRL)特別対談!

 今からちょうど30年前、1991年はダイナソーJr.『Green Mind』、スマッシング・パンプキンズ『Gish』、パール・ジャム『Ten』、サウンドガーデン『Badmotorfinger』、そしてニルヴァーナ『Nevermind』という大名盤がリリースされた、まさにオルタナ元年とも言える年です。しかし、92年生まれの僕は90年代の記憶なんぞほぼありません。やはり当時の雰囲気などを知るには、リアルタイムで90年代の音楽を吸収していた方々に話を聞くのが一番です。

 そこで特集のスタートは、吉野寿さんと向井秀徳さんのオルタナ対談! パンクがハードコアへ、そしてハードコアがグランジ/オルタナへ進化した過程を始め、変則チューニングや、ギターを弾く際の心構えなど、たっぷり語っていただきました。向井さんの希望により、取材は下北沢SHELTERで行なわれたそうです。

 ちなみに、本特集内ではCo/SS/gZの名越由貴夫さんのオルタナ・インタビュー記事も掲載しています。ファミレスで2時間、90年代と機材のお話をたっぷり。名越さんはわざわざマッドハニーのTシャツを着てきてくださって、幸せな時間でした。

オルタナ・ギタリスト名鑑

 お次は、29人分の90年代オルタナ・ギタリスト名鑑。当時の写真とともに、彼らの音楽ルーツや使用機材を紹介しています。29人分の原稿を書いてみて、改めてハードコアとパンクが彼らを作り上げたんだな〜と実感しました。この記事を参考に、いろんな音楽や機材に興味を持ってもらえれば幸いです!

オルタナ誕生ヒストリー

 吉野さん&向井さん対談でも話題に上がったパンク→ハードコア→グランジ/オルタナという進化の過程。こちらのコーナーでは1950年代まで時間をさかのぼり、90年代オルタナ・ギタリストが生まれるまでの歴史をロック・ミュージックの変遷から紐解いていきます。原稿は村田善行氏!

ガチ勢14名が選ぶ、私的90年代オルタナ名盤

 グランジ/オルタナが大大大好きであろうギタリスト14名に、「“好きな90年代のアルバム3枚とお気に入りの楽曲”、そして“最も好きなオルタナ・ギタリスト”を教えて下さい!」というアンケートをお願いしました。今回はニルヴァーナ、パール・ジャム、ソニック・ユースなどをメインで取り扱った90年代USオルタナ特集ですが、こちらのコーナーでは“オルタナ観”をそれぞれのギタリストにお任せし、セレクトしていただきました。ご協力いただきましたみなさん、ありがとうございました!

 ちなみに僕もフェイバリット・アルバムをめちゃくちゃ悩んで3枚選び、文言もかなりの時間をかけて書いていたんですよ。当初は誌面に掲載予定だったんです。しかし……ページ制作担当者のN君から“すみません。ページの都合上……掲載漏れとなりました! ✋ ? ”と笑顔で言われまして。悔しいのでこちらで紹介させて下さい。超ベタな3枚ですみません!

編集部小林の私的オルタナ名盤BEST3

パール・ジャム
『Ten』(1991年)

FAVORITE NUMBER:「Even Flow

凄まじすぎるエディ・ヴェダーのボーカル。それに負けじとギターを弾きまくるマイク・マクレディ&ストーン・ゴッサード。圧倒的なフィジカルとアツい気持ちがぶつかり合っていて、今の時代に聴くと泣けてきます。AC/DC以上のスモール・イン・ジャパンで別の意味でも泣きたくなりますが、いつか日本でライブを観られる日がきますように!

ザ・スマッシング・パンプキンズ
『Siamese Dream』(1993年)

FAVORITE NUMBER:「Cherub Rock

キラキラと輝くドラマチックな楽曲が詰め込まれた宝石箱のようなアルバムです。このレコーディングで使われたオペアンプ期Big Muffのサウンドがカッコ良すぎて、僕も20歳の時に77年製Big Muffを手に入れたんですが、弾いた瞬間に「Cherub Rock」のリフと同じ音が出て感動しました。この作品を聴くと今でもあのドキドキを思い出します。

ダイナソーJr.
『Without A Sound』(1994年)

FAVORITE NUMBER:「Grab It

肩肘張らずに聴けるアルバムなので、J・マスキスのふにゃっとしたボーカルとスムースなディストーション・ギターがスーっと体に染み込んできます。僕は十代の頃に摂取しすぎました。爆音ソロが心地良い「Feel The Pain」や「Grab It」、アコギで奏でるメランコリーな「Outta Hand」、ポップだけど切ない「I Don’t Think So」など良曲多数。

ギター・サウンド考察

 こちらも村田善行氏による、“90年代グランジ/オルタナ・ギター・サウンド”の考察記事。ソニック・ユース、ダイナソーJr.、スマッシング・パンプキンズ、パール・ジャムの4バンドを例にあげ、その特徴を分析しています。実は昨年の段階から村田さんに“いつやるかわからないんですけど、90年代オルタナ特集の原稿執筆をお願いしたく……”と、いろいろご相談させていただきました。この場を借りて御礼申し上げますっ!!

アーカイブ・インタビュー集

 そして本特集の最大の見どころが、90年代当時のアーカイブ・インタビュー集。90〜99年までのギタマガ・バックナンバーの中から厳選した、ソニック・ユース『Goo』、『Dirty』、スマッシング・パンプキンズ『Gish』、『Siamese Dream』、ダイナソーJr.『Where You Been』、サウンドガーデン『Superunknown』、ペイヴメント『Crooked Rain, Crooked Rain』、ブリーダーズ『Last Splash』、フレーミング・リップス『Clouds Taste Metallic』、そしてパール・ジャム『Vs.』といった超名盤の発売当時のインタビューを掲載! レコーディングで使用した機材情報ももちろん必見ですが、まだ若かった彼らは敵対するシーンのギタリストを超ディスりまくり。当時の空気感なんかも感じてほしいです。

 さらに、ギタマガが過去に撮影していた秘蔵のソニック・ユース(2001年)、スマッシング・パンプキンズ(2000年)、ダイナソーJr.(2016年)、ペイヴメント(1997年)、パール・ジャム(2003年)のライブ機材写真も掲載。ぜひ誌面でチェックして下さい!

 90年代のバックナンバーを漁っていると、“この人にも取材してるの!?”と驚くようなレア・インタビューがたくさんあり、どれを掲載するか本当に悩みました。レモンヘッズ、マシュー・スウィート、ヨ・ラ・テンゴ、ベック、日本のバンドだとBOREDOMSなんかも。特にアリス・イン・チェインズのジェリー・カントレルのインタビューも掲載したかったのですが、ページの都合上泣く泣くカット。しかしご安心を! 3月15日(月)にギター・マガジンWEBにてジェリー・カントレルのインタビュー記事を公開します!!!

 コロナ禍でライブに行けず、スタジオにも入れず、次第にギターからも離れてロック・ミュージックも聴かなくなった僕は、この一年間TWICEと『5時に夢中!』にしか興味がなくなっていました(『5時夢』は3月いっぱいでふかわりょうさん&原田龍二さん&水曜コメンテーターのみなさんが卒業……悲しすぎる)。しかし、今月号を作るにあたって改めて聴いた90年代のグランジ/オルタナティブ・ロックのカッコ良さったら、マジで凄まじかったです。自分のルーツを再確認できましたし、今の時代に足りていない圧倒的なフィジカルとアツい気持ちが感じられて、めちゃくちゃ気合が入りました。

 今月号は作っていて本当に楽しかったので、ひとりでも多くのオルタナ・ファンの方に届くとうれしいです! ご感想お待ちしております!

ギター・マガジン 2021年4月号
  • 定価本体800円+税
  • 品種雑誌
  • 仕様A4変形判
  • 発売日2021-03-13