ギター・マガジンWEBのオープニング特集『シティ・ポップ偉人伝。山下達郎を支えた名ギタリスト達。』の好評を受けまして、ピックアップした3人の名手による名フレーズを譜例とともに紹介することが決定!! まずはバッキングの名手=松木恒秀(紹介記事はコチラ)が奏でた、歌伴名演からお届けします。
文=井川恭一 譜例作成/解説=石沢功治
松木恒秀が奏でた
温かいブラック・グルーヴ。
『SPACY』(77年)収録の「LOVE SPACE」は、細野晴臣(b)&ポンタ(d)のレアな組み合わせのリズム隊に松木(g)、というセットによる演奏。この時が松木と細野の初顔合わせで、椅子の上であぐらをかき、ちょっとすかした態度の細野(松木よりひとつ年上)に親分肌の松木が気を害し、ポンタが間をとりもったという。
それはさておき、バリー・ホワイトの「愛のテーマ」を思わせる幸福感溢れるビートにのってまず耳をひくのは松木のカッティング。歌に入っての1~2小節目にタラララ、3小節目から高音部に移動してトゥルルルと聴こえる16分音符4つが、実に心地良く奏でられている。それはリー・リトナーというよりデヴィッド・T・ウォーカーに近い、黒っぽさと温かみのあるカッティングだ。
このタラララとトゥルルルのせめぎあい、に聴く者は気持ちよく運ばれていくことになり、この名盤の絶妙のオープニング・ナンバーとなった。
ボーカルを包み込む抱擁力。
『FOR YOU』(82年)収録の「MUSIC BOOK」は、コーラスをかけたソリッドな音色のカッティングが2本、左右に振られている。
ステディな左トラックのプレイと会話するように、時に重なり、時に輪唱しながら随所に合いの手のオブリを入れていく左トラックのプレイ。その絶妙なコンビネーションの間に達郎の伸びやかな歌声がとてもよく映えている。
歌に優しく寄り添う、とても抱擁力感じる名演だ。