2023年12月20日にFENDER FLAGSHIP TOKYOにて、ギター・マガジン主催のイベント“We Love Fender Vintage Style!!!〜ヴィンテージ・スタイルの現行ストラトキャスター4本を徹底比較!〜”が開催された。このイベントは、フェンダーの最新ラインナップからビンテージ・スタイルのストラトキャスター4種をピックアップし、Suspended 4thの鷲山和希による試奏で聴き比べるというものだ。その模様をレポートしよう。
文=福崎敬太 撮影=白石達也
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同じ50年代スタイルのストラトキャスターをシリーズ違いで弾き比べる!
ギター・マガジン2024年1月号の企画「黄金期の系譜を引くフェンダー・ビンテージ・スタイル」および、それと連動したデジマート・マガジンの動画では、Suspended 4thの鷲山和希によるAmerican Vintage II、Vintera II、Made in Japan Heritage、Made in Japan Traditionalの弾き比べが実現した。
今回レポートする“We Love Fender Vintage Style!!!〜ヴィンテージ・スタイルの現行ストラトキャスター4本を徹底比較!〜”は、これらに呼応したイベント。1965年製ストラトキャスターを愛用する鷲山に、前述の4シリーズにラインナップされた50年代スタイルのストラトキャスターを弾き比べてもらい、シリーズごとの特徴や違いについてインプレッションを聞く、という内容だ。
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この日にぴったりなBGM、Suspended 4thの「ストラトキャスター・シーサイド」が流れる中、会場に鷲山が登場。
挨拶もそこそこに、まずはAmerican Vintage II 1957 Stratocasterを手に、デモ演奏を披露した。そのまま試奏コーナーへと続き、まずはAmerican Vintage IIのレビューからスタート。
American Vintage II 1957 Stratocaster
フェンダーのビンテージ系シリーズのフラッグシップ・シリーズであるAmerican Vintage IIには、特定の製造年にフォーカスしたモデルがラインナップされている。今回試奏した1957 Stratocasterは、その名のとおり1957年製ストラトキャスターを再現した1本だ。アルダー・ボディ、Vシェイプ・ネックを有するこの1本を鷲山はどう評価したのか。
鷲山 クランチ〜オーバードライブで弾いてみましたが、弱く弾いたらクリーンになるし、右手のタッチが出ますね。あと何よりもネック・シェイプが触ったことある感じ。自分が普段弾いている1965年製のネックはかまぼこっぽい形なので、これを持ったらより“50年代を弾いているな”っていう感じがしました。指板のラジアスも7.25インチなので、その手触りもビンテージらしいですよね。
で、現行モデルっぽい新しい音、というよりは、当然ビンテージらしい音が出る。高音域が良い意味でイナたいというか、アンプのトレブル下げたくなるハイではなく、抜けるわけでもこもるわけでもないちょうど良いところ。リアにしても耳がいたくならない、“わかる! ビンテージっぽい!”っていう音ですね。
クリーンも一筋縄じゃいかない感じで、ただ綺麗なだけじゃなく、雑味がある。こういうギターのほうが特徴がとらえやすくて、“コイツがどういう音を出したいのか”を察知しやすいのかなって思います。
色も良いですね。ピックアップやノブの色がピックガードと違う感じもビンテージっぽいです。
Vintera II 50s Stratocaster
2023年に発表されたVintera IIは、メキシコのエンセナダ工場で作られる新たなビンテージ系シリーズ。今回ピックアップした50s Stratocasterは、“50年代”の特徴をとらえた1本だ。ボディはアルダーだが、前述のAmerican Vintage II 1957 Stratocasterがラッカー塗装だったところ、本モデルはポリ塗装で仕上げられている。それがサウンドにどう影響しているのだろうか。
鷲山 American Vintage II 1957 Stratocasterと全然違いますね! “面で鳴る”というか、ローからハイにかけて、同じタイミングで出てくれる。フルレンジで、あまりピーキーじゃない、制御しやすい1本というイメージがあります。
で、どのピックアップ・ポジションでも“このギターの音が出ちゃう”っていう感じで、キャラクターに統一感がある印象です。“元気さ”がどのレンジにもあって、フレッシュ。年代的には新しい音楽性にも対応できる、オールマイティな感じがしますよ。
弾き心地は、ちょっとナローというか、Vシェイプでもキツくない。60年代のシェイプに近づいたV、という感じかな。
ポリ塗装のほうが響きがギュッとなるというか、タイトに鳴ってくれる。やっぱりカッティングがしやすいです。左手に弦の揺れが伝わらない気がして、そのほうが俺の好みでムチャができるんですよね。ガシャガシャ弾くモダンなカッティングが合いそう。
Made in Japan Heritage 50s Stratocaster
2020年に登場した日本製の最上位ビンテージ系シリーズ、Made in Japan Heritage。監修を担当したのはフェンダー・カスタムショップのマスタービルダー、名匠マーク・ケンドリックで、ピックアップの高さなど、デフォルトのセッティングも指定されているそうだ。また、前出の2モデルとの違いには、ボディ材にアッシュを採用していることなどが挙げられる。本モデルを弾いた鷲山の感想を見ていこう。
鷲山 これ良いっすね〜。これまでのものとは、また違ったアンサーがありましたね。なんとなく俺が思っていた日本製のイメージとは、違う感じがします。
出てくるサウンドはピーキーというか、しっかり個性があるんですけど、色んなフレーズに対するアクセスのしやすさはVinteraっぽい。ラッカー塗装らしい広がり感もあり、操作しやすいニュアンスもある、凄く好きな感じのギターですね。
あと、コンター加工のフィットする感じとか、ほかのものと微妙に違うんですよね。持った感じは大きく感じるんですけど、日本人が作っているからか、弾いてみると凄くフィットする。
ネックもVシェイプだけど、一番しっくりくる。作っている時に日本人が確かめると、こういうシェイプになるんだろうなっていう、小指がアクセスしやすい感触があるんですよ。Vネックだけを弾き比べていくと、その違いがわかりますね〜。
あと、めっちゃ歪ませても、ミックス・ポジションで抜けてきます。ハーフ・トーンのほうがコード感がわかるっていうのは凄い。邦ロックだとコードをかき鳴らす場面が多いと思うんですけど、そういう時にこのミックス・ポジションを使うと、音階も伝わるドライブ・サウンドになると思います。
ピックアップの高さが関係しているんですかね? (マーク・ケンドリックのレシピに沿った)プロの調整でいきなり弾けるというのは、Heritageシリーズの大きなポイントかもしれないですね。
Made in Japan Traditional ’50s Stratocaster
この日のラストは、フェンダーの伝統を体現する日本製のMade in Traditionalシリーズから、’50s Stratocasterをピックアップした。本シリーズを監修したのはマスタービルダーのクリス・フレミング。ボディ材には軽量なバスウッドを採用しており、指板ラジアスは9.5インチと、モダンな要素も取り入れた1本だ。
鷲山 また全然違う音ですね〜。実はこのMade in Japan Traditionalシリーズが一番好きなんですよ。デジマートの試奏動画で弾いた時も“自分っぽいな”って思ったんですけど、やっぱりそう感じますね。音のビンテージらしさと、アクセスのしやすさやフィーリングの出しやすさっていうモダンな要素のバランスが、一番自分に合っている。
American Vintage IIは一番ビンテージっぽい一方で、これはビンテージ3割、モダン7割みたいな印象なんですよ。ハイ・ポジションではしっかりビンテージらしいサウンドで、ロー・ポジションだと音がまとまるモダンな感じがある、ハイブリッドな感触。
あと、Uシェイプのネックで9.5インチのラジアスというのも大事ですね。サウンドにも影響すると思うんですけど、自分のプレイにも影響があると思うんですよ。こっちのほうが自分の表現がしやすい感じがしました。好きですね〜。
ほかのギターでは“いききれない”フレーズも、このギターだったら受け止めてくれる感覚があります。現代のロックではリアをガッツリ使いたいじゃないですか。それがこのギターが一番使いやすいかもしれない。
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そして、4本の試奏を終えた感想を聞かれると、このように答えてくれた。
鷲山 ステージで使うとしたら、Made in Japan Traditionalですね。自分スタイルとして、ビンテージなほうにもモダンなほうにも、どちらにもいきたいんですよ。その中間に立っているギターが好きなんです。
それに、バンドのスタイルによって合うギターが変わってくるじゃないですか。自分がブルースだけをやっているなら、絶対にAmerican Vintage IIを使いますよ? でも、今の自分をコーディネートしてくれるギターとしては、Made in Japan Traditionalでしたね。
全体的には、ビンテージっぽいハイがどれも出ているけど、うまくまとまっているという印象でした。あと、各生産国のビンテージに対する考え方も違うんだなって。
メキシコは“こういうビンテージ観か!”っていうのも思ったし、日本製は住んでいる国なだけあって“わかる!”っていう部分が多かった。ジャパンからは“ビンテージにもモダンにもいける”っていう優しさを感じましたね。
イベントの最後には、“もう1度弾いてみたい”ということでMade in Japan Heritage ’50s Stratocasterをピックアップし、「INVERSION」のリフをベースに素晴らしいインプロヴィゼーションを披露。
50年代スタイルという同じテーマを持った4本のギターについて、その特徴や得手不得手がわかる貴重なイベントとなった。
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試奏者
鷲山和希
わしやま・かずき●2014年に結成された名古屋在住の4人組ロック・バンド、Suspended 4thのボーカル&ギター。65年製のビンテージ・ストラトキャスターを愛用する。
- 鷲山和希 公式X:https://twitter.com/mysw
- Suspended 4th 公式X:https://twitter.com/Sus4_official
- 鷲山和希 公式Instagram:https://www.instagram.com/kazuki_washiyama_/
- Suspended 4th 公式Instagram:https://www.instagram.com/suspended4th_official/
- 鷲山和希 公式YouTube:https://www.youtube.com/@kazukiwashiyama3392
- Suspended 4th 公式YouTube:https://www.youtube.com/@Suspended4th