リー・キアナン(アイドルズ)が語る、EarthQuaker Devicesから発売されたシグネチャー・ペダル“Gary”の使い方と開発エピソード リー・キアナン(アイドルズ)が語る、EarthQuaker Devicesから発売されたシグネチャー・ペダル“Gary”の使い方と開発エピソード

リー・キアナン(アイドルズ)が語る、EarthQuaker Devicesから発売されたシグネチャー・ペダル“Gary”の使い方と開発エピソード

アイドルズのギタリスト、リー・キアナン。2024年11月にEarthQuaker Devicesから発売された彼のシグネチャー・ペダル“Gary”は、ファズとオーバードライブを搭載した2 in 1ペダル。しかし、そのサウンドやコントロールが個性的で、なかなか全容を掴むのが難しい……そこで2026年1月に来日していた彼を直撃し、Garyについてのインタビューを行なった。すでに本機を所有している人はもちろん、何か面白いペダルを探しているというプレイヤーも必見!

取材・文=小林弘昂 通訳=トミー・モリー

リー・キアナン
2026年1月末、都内某所にて(撮影=小林弘昂)

鬼金棒の味噌ラーメンも好きだね。
あのスパイシー味噌は本当にうまいよ。

今回はプライベートな来日なんですか?

仕事とプライベートの半々だね。日本とNAMM Show、どっちに行くかを決めなきゃいけなくて、最終的に日本行きを選んだんだ。NAMMっていろいろありすぎるよね? オレは疲れ過ぎていたこともあってさ。

日本にペダルボードを持ってきているそうですが、友人とレコーディングなどをしているのでしょうか?

どこまで話していいのかわからないけど、RIS-707というアーティストとのコラボレーションに参加しないかと打診されてね。そのついでに、日本でEarthQuaker Devices関連の何かができるかもしれないと思ったんだ。それと明日はアイドルズのボーカリスト、ジョー(タルボット)との別プロジェクトの活動もやるよ。だから全部の仕事を上手くまとめて、休暇もできたらいいなと思ったんだ。日本に仕事だけでいるのは嫌だから、ちゃんと遊びにも行くつもりだよ。

2025年1月の来日はアイドルズのツアーだったので、あまり遊ぶ余裕がなかったのでは?

そうだよ。でも実は、去年の5月にも日本に来ていたんだ。2週間休暇を取ってパートナーと一緒に大阪と京都に行ったよ。王道の観光ルートだね。ツアー中は本当に時間がなくて、せいぜい2日滞在できるくらいだ。その間に走り回って、食べて、買い物して、すぐ出国することになる。だからゆっくりできたのは本当に良かった。京都は静かで落ち着いていて、本当に素晴らしかったよ。今度は北海道に行きたいと思っていて、札幌が次の候補だね。

札幌はラーメン天国です。

イェー! オレはラーメンが大好きなんだ。特に醤油。あとは鬼金棒の味噌ラーメンも好きだね。あのスパイシー味噌は本当にうまいよ。ちなみにカメラも大好きで、フィルム・カメラをたくさん持っているんだ。日本に来ると珍しいものを探すんだけど、今はどれも本当に高いよね。数年前は日本でよく楽器も買っていたんだけど、最近は値段が何もかも高くなっている。ギター、ペダル、シンセ、カメラ……古いものやクラシックなものは全部かなり高くなっているよ(笑)。

今回、日本で誰かのライブを観ましたか?

名前は覚えてないんだけど、知り合いと行ったBeatcafeっていうバーがあって、オーナーのカトマンが面倒を見ているバンドが演奏していたよ。カトマンに“観に来いよ!”って誘われたんだ。

基本的にファズは
前段に置いたほうが好きなんだ。

今日はEQDから発売されているあなたのシグネチャー・ペダル、Garyについてインタビューさせてください。

オレのメイン・ペダルの1つだよ。もともとのアイディアは、EP『Meat』(2015年)に収録されている「The Idles Chant」のレコーディングで使った古いファズのサウンドをエミュレートすることだった。あのソロは何回かチョーキングしているだけなんだけど、そのファズを通したことで、信号が破綻してトップに達した時に金切り声みたいに鳴っている。でも、そのファズは壊れてしまってね。もう手に入らないから、同じことができて、実用的にも使えるペダルを作りたかった。極端な音と使える音を行き来できるようにしたのはそのためだね。

EarthQuaker Devices / Gary

(写真を見せながら)昨年の来日公演時のあなたのペダルボードですが……。

そこに写っているペダルのいくつかは、今はもうボードに入っていないな。けっこう変わっているよ。

コンスタントにペダルが入れ替わっているんですね。

オレの入れ方がガサツだったりして、テックはいつも嫌な顔をしているよ。だから最終的には彼が接続順をアレンジするんだ。Tone Job(EQ/ブースター)はいつも使っていて、ライブでは必ずこれでトーンを整えている。

ペダルボードの中で、Garyはどういう設定で使っていますか? 日本では“どう使うのが正解か?”という回答を求める声が一定数あるので、あなたの使い方を教えてほしいです。

正解なんてないと思う。オレの使い方に合わせて作られているようなところがあるけど、Garyの好きなところは、シンプルであると同時にクレイジーにもなれるところだ。

左chはオーバードライブで、ほかのペダルとの相性が良い。ちゃんと共存できるんだよ。強いキャラクターがあるわけじゃないけど、どちらのノブも12時に設定すればナイスなオーバードライブでトーンを支えてくれる。例えば「I’m Scum」のサビとか、『Brutalism』(2017年)や『Joy As An Act Of Resistance』(2018年)の多くの楽曲では左chでブーストさせているんだ。

EQDのGray Channelっていう2chのオーバードライブを覚えているかな? 左側のGreen chにトグル・スイッチで選択できるNモード……いわゆるニュートラルなモードがあってね。そのGreen chがGaryの左chに受け継がれているんだよ。これによって、Garyの左chはより意味を持ったものになっている。

右chのファズについては?

強く弾くと金切り声みたいに鳴って、タイトでバリバリに割れて、時にはスクリームするようなノイズを生み出すファズが欲しかったんだ。それでEQDのジェイミー(スティルマン)に電話で“こういうのが欲しいんだけど……”と伝えたんだよね。YES!ノブを全開にすれば信号は完全につぶれるし、逆に絞ればかなりキャラクターのあるグッドなファズになる。Tone JobやSpeaker Crankerと重ねても良いし、ほかのペダルとも組み合わせたってかまわない。実際、オレもほかのペダルとけっこう組み合わせているよ。昨日レコーディングで使った時はYES!ノブが11時くらいで、ちょうど爆発する手前っていう感じだった。

前段にファズchを、後段にオーバードライブchを配置しているのが特徴ですよね。接続順を変更できるミニ・スイッチを搭載させるという案はなかったのでしょうか?

そういうスイッチが好きじゃないんだ(笑)。オレはプログラマブル・スイッチャーを使っているけど、結局は足で直接ペダル本体を踏んで操作している。2chのペダルなら、なおさらだね。もしGaryにトグル・スイッチがあったら、きっと蹴ってしまうだろう。スイッチを間違って蹴ってしまうことは実際によく起きていて、だからなくしたかったんだ。ジェイミーとはオーバードライブとファズの順番を変えられる仕様について話をしていたんだけど、正直オーバードライブやディストーションのうしろにファズを置いたサウンドはあまり好きじゃなくてね。基本的にファズは前段に置いたほうが好きなんだ。

意外ですね。

ペダルの接続順の一般則みたいにオーバードライブをファズの前段に置いて突っ込むと、ローエンドがブワっと持ち上がって、楽しくもない、グッドとも言えないものになりがちだ。“ただの死んだ音”っていう感じだね。オレは必ずしもルールを信じているわけではない。リバーブを最初につないで、それをファズに突っ込むと最高にクールになる時もある。でもファズはうしろにつなぐと機能しないことが多いよね。だからGaryでは“ファズ→オーバードライブ”という順番をキープしたかったんだ。

リー・キアナン

アイドルズ流のロックなサウンドが必要だったりする。
それをちゃんと出せるのがGaryなんだ。

Garyはノブが上下で大きさが違いますが、その理由はありますか?

上の2つのノブはお楽しみのためにあるから、あえて大きくしている。下の2つのノブはボリュームだから、要するにGaryはゲイン2つとボリューム2つだね。正式名称は忘れたけど、YES!ノブは特定のパラメーターを動かしている。バンド幅か何かを可変するためのもので、シグナルの流れを変えるんだ。

YES!っていう名前に深い意味はなくて、ペダルをもっと楽しんで使えるように遊んでいるだけなんだ。ペダルに表記された情報をあまりにも気にすると、“これはこういう操作ができるんだよな?”と思ってしまう。例えば“Filter”みたいなことが書いてあれば、使い方を限定してしまうことがあるよね。でも、ふざけた感じで“YES!”と書かれていれば、とりあえず回してみるだろう? オンにして何が起きるかを試すわけで、それがオレのやり方だ。新しいペダルは、まずボードにつなげて鳴らしてみて、良ければそれでグレイト。わざわざマニュアルを読んでノブの意味を調べることはしない。

右chのYES!ノブを12時以降に上げると音が出なくなるのが面白いです。使い方のコツはありますか?

12時を超えていない状態でも、強く弾けばシグナルは一気に落ちるんだ。逆に軽く弾けば、ちゃんとシグナルは通る。GaryのうしろにTone Jobをつなげば、レベルをプッシュしてシグナルを持ち上げることもできるよ。オレはそういう使い方だね。あとはDeath By AudioのREVERBERATION MACHINE(リバーブ)をGaryの後段につないで、リバーブやゲインを足すことも多い。

トーン・コントロールがないことで不便だと感じたことはありませんか?

不便だと思ったことは一度もないかな。左chは先述のとおりフラットなオーバードライブで、トーンをいじるというよりはシグナルを強くする役割だ。さすがにゲインをMAXにすればアンプとの関係でトーンは変わるけど、ゲインとボリュームが両方12時くらいなら純粋にグッドなブーストだよ。厚みを足すというより、プッシュする感じだね。

でも右chは確実にトーンが変わってくる。YES!ノブは絞れば分厚いファズになるし、上げていくといろんな周波数が顔を出してくるんだ。プレイ次第でも変わってきて、ハード、ソフトどっちにプレイしてもサウンドが別物になるよ。それが面白いところで、人によっては“12時手前までしか使えない”と感じるかもしれないけど、その範囲だけでも無限のサウンドが作れる。そこに左chのオーバードライブを足してブーストするとぶ厚くなるしね。さらにYES!ノブを上げればボリュームが出せるし、逆に薄くもできる。オレにとってはトーン・ノブであり、ゲイン・ノブであり、周波数のノブでもある。まるでラジオのチューニングみたいなものだ(笑)。

あなたはシングルコイルのギターをメインで使用しています。Garyでシングルコイルに合わせたチューニングを施している部分はありますか?

特別なチューニングはしてないよ。この仕様が好きなだけだ。特に理由があるわけじゃないけど、ハムバッカーは本当にたまにしか使わない。若い頃はSeymour DuncanのInvader SH8が載っていたトム・デロング(ブリンク 182)のシグネチャー・ストラトキャスターが大好きだったけどね。あのピックアップは本当にクールだよ。でも友達からUSA製のテレキャスターを借りてから一気にハマってしまった。ギターを持った瞬間に、“これをプレイしなくちゃいけないんだ!”となることがあるよね? 重さ、ボディとネックの厚み、全部が気に入ったよ。シングルコイルのサウンドは細くてパンチがあって、意外にも低音が出ることがあるよね。

Garyをオンにするタイミングは?

最近もかなり使っていて、映画『Caught Stealing』(2025年)のサウンドトラック制作でも使ったよ。オクターブ下の音にGaryのファズを組み合わせて、空気感のある深いドローンを作っている。そういう時のノブは9時くらいで、ドローンにテクスチャーを加える感じだ。

あとはフィードバック中にオン/オフするのも好きだ。一気に暴れたり崩壊したりするから、ほかのペダルを狂わせられるんだよね。だから常に決まった用途のために使っているわけじゃないよ。むしろほかの人に“どう使っているのか?”と聞くと、自分では絶対思いつかないような使い方をしている人がいるのが楽しいね。ドラムの処理、特にスネアに使っている人がけっこういて、そういうのも面白い。オレの感覚ではただのオーバードライブとファズだから、ドラムに使うっていう発想はなかったな。

Garyを使い始めてから2年ほど経過していると思いますが、サウンドメイクの幅が広がったのでは?

ああ。右chのファズ・サウンド自体は10年くらい前に持っていたものでね。それが今は自分の好きな形に収まって、いつでも使えるようになった。サウンドの選択肢は確実に増えたし、それと同時に昔のサウンドを取り戻すこともできたよ。曲によっては、アイドルズ流のロックなサウンドが必要だったりする。それをちゃんと出せるのがGaryなんだ。

EQDのユニークなポイントはどこだと思いますか?

初めてEQDを知った時は、正直よくわかっていなかった。でもOrganizer(ポリフォニック・オルガン・エミュレーター)の音を聴いて一目惚れしてね。女の子が“このペディキュアは絶対必要!”みたいになるような感じで、どうしても欲しくなって、彼らにコンタクトしたら助けてくれたよ。すべてが好きになってしまい、『Brutalism』のレコーディングでは本来使うべきではないようなところでも3~4曲で使ったね。コードやサビで使うとめちゃくちゃに聴こえるんだけど、Organizerが作り出す音が大好きだった。

Organizerが最初の入口だったんですね。

EQDのことをより深く知るようになって話をしていくうちに、ますます好きになったよ。ジェイミーやジュリー(ロビンズ)を始め、チーム全員がクリエイティブで、親切で、素晴らしい人たちで、関わる瞬間のすべてが楽しかった。

彼らがすごいのは、創作を止めないことなんだ。“もう1つオーバードライブを作ろう”じゃなくて、“もっと何かできるオーバードライブを作ろう”という発想が止めどなく生まれ続けている。常に進化しているんだ。ジェイミーはいつも新しいペダルのアイディアや、面白くて楽しいコンセプトを考えているんだよ。EQDは本当に素晴らしい人たちで、大好きだね。

リー・キアナン
EarthQuaker Devices/Gary