2年ぶりの新作『Something Worth Waiting For』をリリースし、7月に開催された『FUJI ROCK FESTIVAL ’26』に出演したフリコ。これまでサポートを務めていたコーガン・ロブ(g)とデヴィッド・フラー(b)を正式メンバーに迎え、新たに4人体制となったフリコのステージは多くの観客の心をつかんだ。ギタマガWEBでは、『FUJI ROCK FESTIVAL ’26』の翌日にニコ・カペタン(vo,g)とコーガン・ロブ(g)にインタビューを敢行。2年ぶりの来日公演、そしてアルバム制作について話を聞いた。
取材・文=小林弘昂 通訳・翻訳=川原真理子 人物撮影=小原啓樹
ギターだけに惹かれていたわけじゃない。
まず音楽があって、それにギターが入っていたんだ。
──コーガン・ロブ
ギタマガWEBでは2年ぶりのインタビューです。まず、昨日のフジロックのステージはいかがでしたか?
ニコ ワンダフル! 素晴らしいひとときだったよ。遅めの時間、夜にライブができるのは良いね。僕たちは夜にプレイすることに慣れているから、心の準備が整うんだ。
コーガン とっても楽しかったよ。
ライブの最後にジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダーの「Ceremony」をカバーしていましたよね。あの曲は、あなたたちのフェイバリットなのでしょうか?
ニコ 僕たち全員のフェイバリット・ソングだよ。
コーガン だからプレイするのがとっても楽しいんだ。僕がギターで覚えた最初の曲のうちの1つなんだよね。
ニコ そうなんだ! (日本語で)シリマセンデシタ(笑)。
ニコは、この2年間で日本語が少し話せるようになったんですね(笑)。今回はコーガンがフリコの正式メンバーになって初の来日となりますので、加入した経緯を教えてもらえますか?
コーガン 2019年にシカゴのThe Bassmentでフリコを観た時にファンになったんだ。それからライブに行くようになったんだよね。僕はザ・コーツ(The Courts)というバンドを始めてシカゴ周辺でライブをしていたんだけど、僕たちのライブにニコがやって来た。そして、“ライブで何曲か一緒にやらないか?”と誘われて、僕は何度か参加することになってね。それからフリコのツアーに参加してベースを弾き、最終的にギターを弾くようになったんだよ。
ニコ そして、ギタリストとして最初のライブが2年前のフジロックだったというわけ。
コーガン そう。最初がね。
ニコから見て、コーガンはどんなギタリストですか?
コーガン ハハハ!
ニコ 彼は素晴らしい。すごいよ。僕たちはギターが大好きだけど、ひけらかすのは好きじゃない。ただ良い曲のための、良いギター・パートを作りたいだけなんだよね。2人とも同じように感じていて、同じ波長の人間がもう1人いるのは素晴らしいことだよ。
逆に、コーガンから見たニコはどんなギタリスト?
コーガン 素晴らしいよ。本当にクリエイティブなパートを作り出す。僕がバンドに加入した当初、自分が参加していなかった1stアルバム(『Where we’ve been, Where we go from here』/2024年)の曲を覚えないといけなくてさ。ニコのパートを覚えるだけじゃなく、ライブでアレンジを変えていた曲もあったからね。
でも、その作業が今回の2ndアルバムへの素晴らしい取っかかりになったんだよ。今回は僕が自分のパートを作ったけど、事前にニコの弾き方を学んでいたから、それにどう反応すれば良いのかがわかっていたんだ。時間はちょっとかかったけどね。
僕もニコも、フリコの前はギタリストが1人しかいないバンドにいたから、ギターが2人いるバンドでやることを覚えないといけなかった。今はとっても自由で、より自然に感じられるよ。
ニコは以前のインタビューで、ビーチ・ボーイズ、ニュートラル・ミルク・ホテル、ヤー・ヤー・ヤーズなどからの影響を語っていました。コーガンはどんなギタリストやアーティストが好きなんですか?
コーガン レディオヘッドから大きな影響を受けたね。ソニック・ユースからも。
ニコ DIIV(ダイヴ)は?
コーガン DIIVもフェイバリット・バンドだ。さっきニコが言ったように、僕はギターだけに惹かれていたわけじゃない。まず音楽があって、その音楽にギターが入っていたんだ。でも、今挙げたバンドは僕のギター・プレイにとって、かなり重要だね。
この2年間で多くのステージに立ち、フレーミング・リップスやモデスト・マウスといったレジェンドのインディー・ロック・バンドのツアーにも参加しましたよね。そのような活動の中で、どんなことを学びましたか?
ニコ モデスト・マウスに関しては、あのギターの弾き方が僕にずっと影響を与えているよ。1本の弦でフレーズを弾いていて、ザ・キュアーのロバート・スミス(vo,g)を彷彿とさせたんだ。そういった曲の演奏をライブで観ることができて、すごくインスパイアされたね。フレーミング・リップスのウェイン・コイン(vo)は、最高のストーリーを語れる人だ。
コーガン ウェインから受けた一番のインパクトは、音楽に対するアティチュードと、それを今でも続けているということだね。“これを楽しめなくなったら……”と彼が言っていたのを覚えている。
どういうことでしょう?
コーガン あのレベルで演奏をし、なおかつオーディエンスのために大がりなライブをやることだね。“それを楽しめなくなったら、やるべきじゃない”と言っていたよ。それが僕の頭から離れなかった。だから僕は、“楽しめなくなったら、どうすれば楽しめるようになるかを突き止めよう”って思ったよ。みんなのために演奏することは、この世界で最高なことのうちの1つなんだからね。
鬱で苦しんでいるアーティストは多い。いろんなスケジュールをこなしてツアーをするのは大変だけど、“どうすれば楽しめるようになるのか”を突き止められれば、きっとそれが一番良いんじゃないかな? ウェインはそのことについて僕たちによく話をしてくれて、あれはとてもインパクトがあったよ。
ギターに関しては、
コーガンがいろんなことを試したほういい。
──ニコ・カペタン
今年4月に、4人編成となって初となる2ndアルバム『Something Worth Waiting For』をリリースしました。どのような作品を目指していましたか?
ニコ 曲作りの方法をもっと追求したかったんだ。僕がキーボードを弾いて、コーガンがギターを弾く形の追求も続けたよ。そして、ものすごく静かな部分と、ものすごくラウドな部分をもっと推し進めたんだ。僕たちはそれが大好きだからね。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのディストーションのような耳をつんざく音が大好きな一方、ニック・ドレイクも大好きで、この2つのアーティストには似通ったところがあると思っている。
コーガン そうだね。今回のアルバムでは、4人組になろうとしている僕たちの演奏が聴けると思う。今なら下さない決断もあったけど、だからこそ、このアルバムは魅力的なんだ。4人でどうプレイすればいいのかを見つけようとしたんだよね。今はレコーディングから時間が経ったから、ライブではアルバムと少し違う演奏をしている曲もあるんだけど。
バンドとして新たなスタートを切るような気持ちもあったのでしょうか?
コーガン 少なくとも、僕にとってはそうだったよ(笑)!
ニコ ツアー生活をしながらの曲作りの方法を見つけようとしていて、それが歌詞の内容につながった部分が大きかったね。おもに移動の話で、バイクとか、船とか、そういったことだよ。
ギターに関しては、歪んだトーンとクリーン・トーンのバランスを心がけた。これからも、そこは追求し続けるよ。“どうやったらインパクトのある形で両方を取り入れられるか?”をね。
コーガン そうだね。それは大切だよ。
今作は全体的に、部屋の鳴りやバンドでの一体感を意識したようなサウンドが印象的でした。「Guess」ではピッキングの生音もしっかり録音されていますよね。
ニコ あれは全部ライブで、1stテイクだったんだ。
「Still Around」ではアコースティック・ギターを重ねていて、重厚なバンド・サウンドの中にキラキラとした質感が加えられているのが美しいと思いました。
ニコ ありがとう! (日本語で)アリガトウゴザイマス。
レコーディングでニコが使用したアコースティック・ギターは、サンバースト・カラーのSeagullですか?
ニコ そうだよ。(日本語で)ハイ、ヤスイデス! デモ、イチバンスキデス。ハイ。(ここから英語)スペシャルなギターなんだ。
シンセのサウンドも効果的に入れられていますが、ギターではなくシンセを選んだ理由は?
コーガン 僕がシンセ・サウンドを追求したくてね。ニコが持ってきた曲を2人でアレンジする時、よくシンセを試してみるんだ。上手くいかないことがほとんどだけど、たまに上手くいく。僕は常にシーケンスを試してみたいんだよね。そうすればギターも弾けるから。「Still Around」はとても雄大で、Prophetを初めて使った曲だったんじゃないかな?
ニコ そうだね。コーガンはよくやっているよ。スペースを埋めるために、新曲を作る時はProphetでシーケンスを作って、ライブではギターも弾いているんだから。
コーガン 僕はシーケンスを流して、あまりしっかり聴かないでいるのが好きなんだ。そうすると脳の一部が刺激されるんだよね。だから音符のことを考えているわけではないんだよ。音符から離れて、ランダムなエレクトロニックから何かを見つけようとしているんだ。
ニコ Tensorっていうペダルだよね?
コーガン そう。弾いたフレーズをランダムに再生してくれるんだ。良くないこともあるけど、そこが魅力だね(笑)。
「Choo Choo」は後半になって勢いが増していく壮大なロック・ソングです。これは一発録りでしたか?
ニコ いや、違ったね。
コーガン 何度も重ねたけど、どれも一気に丸々やったテイクだよ。
このようなバンドの一体感を録音するためのコツはありますか?
ニコ バンドでプレイすることだね。そうすると飛躍的に成長できると思う。だから、ひたすらバンドで演奏しないといけないんだ。
最近はライブ・バンドのサウンドをデジタルで真似ようとする人が多いけど、それはできないよ。僕たちは特にモータウンとかの70年代のレコードが大好きなんだけど、あれはライブ・バンドがレコーディング・ルームで演奏していたから、ああいうサウンドになっているわけで。
コーガン 僕は宅録をかなりやってきていて、昔は音源をライブ・バンドのように聴かせるため、かなりの時間を費やしていたよ。最初にドラムを録って、それからギターとベースを録って……という風に別々にレコーディングしていたんだけど、それを成し遂げるためには、ものすごく上手いプレイヤーでないといけないんだ。
でも、バンドでは個別に録音する代わりに全員で10テイク演奏して、その中から一番良いものを選べばいい。そうすることで、部屋で一緒に鳴っているサウンドになるからね。だから昔からそういう録音方法が行なわれてきたんだ。つまり一番のアドバイスは、“バンドで演奏すること”だね(笑)!
「Hot Air Balloon」は2本のギターの役割分担がほかの曲よりも明確ですよね。それぞれどのようなイメージを持ってギター・フレーズを考えていきましたか?
ニコ 僕のギター・パートに関しては、大抵アイディアがあるんだ。ギターとボーカル、もしくはピアノとボーカルで考えるけど、その時のギター・パートをキープしたくてね。頑固ってわけじゃないけど……何て言えばいいのかな?
コーガン 曲の中心、土台になるもの、かな。
ニコ 僕のパートは曲の土台になるものなんだ。だからギターに関しては、コーガンがいろんなことを試したほういい。
コーガン すぐにできる時もあれば、時間がかかる場合もあるけどね。ニコが持ってくる曲には、すでに彼のパートが書かれていることがあって、それをもとに2人でいろんなことをやってみるんだよ。「Hot Air Balloon」はちょっと時間がかかったよね。1ヵ月ぐらいだったかな?
“ギターはもういい!”って言うバンドが多いけど、
僕たちはギターが大好きなんだよね。
──ニコ・カペタン
レコーディングで使用したギター、アンプ、エフェクター機材について教えてください。
ニコ 先にやってくれ。苦手なんだ(笑)。
コーガン 手伝ってあげるよ。ニコの機材も知っているからね。
ニコ コーガンは僕の機材も知っているんだよ。
コーガン 僕はアルバム全編で、赤いジャズマスターをメインで使ったよ。「Choo Choo」ではダーク・レッドのジャズマスターを使っていて、それは今日ここに持ってきている。で、その2本のギターをMagnatoneのTwilighterに通してレコーディングしたんだ。Twilighterは僕の大好きなアンプなんだよね。
ライブではTwilighterを使っていないですよね?
コーガン ライブではニコがDeluxe ReverbとBassmanの2台を使っているから、僕もDeluxe Reverbを使ってるんだよね。でも、レコーディングでDeluxe Reverbを使うと、なかなかニコとは違う音が出しにくい。その点、Twilighterだとまったく違う音になるから、パートのアクセント付けになる。だからとっても気に入っているよ。
ペダルは山のようにあるんだよね。百聞は一見にしかずだから、あとでボードを見せてあげるよ。
ありがとうございます。ニコがレコーディングで使用した機材は?
ニコ 昔から持っている白いジャズマスターを使ったよ。それは父親と一緒に組んだカスタム・メイド・ギターなんだ。それからSeagullのアコースティック・ギターとシンラインも使ったかな。シンラインも父親と組んだカスタム・メイド・ギターだね。僕は機材にあまり詳しくなくて……これだけだったかな?
コーガン アンプはフェンダーのPrinceton Reverbを使ってたよ。
ニコ そうだ。Princeton Reverbのヘッドとキャビネットだった。
コーガン あとは何度かBassmanも使ってたかも。
最後に、これからフリコでどんな活動をしていきたいか、今後の展望を教えてください。
ニコ しばらくツアーに出ていなかったから、家で曲作りをしていたんだけど、3枚目のアルバムに向けて、さらに追求することができたよ。アップ・ビートなピアノの曲をよく作っていて、それに超強烈なギターを合わせている。説明するのは難しいけど、それを追求するのがとても楽しいんだ。インスパイアされているから、次に何ができるか楽しみだね。
コーガン 個人的には、さらに幅を広げたい。今はすごくクリーンに弾くことと、すごくシンプルなパートを作ることに興味があるんだ。それをもっと突き詰めて、インスパイアされたいと思っているよ。
ニコ あと、すごく変なチューニングの新曲もある。(コーガンに向かって)「Martyr」だよ。
コーガン そうなんだ。僕はレギュラー・チューニングで弾いているから、どれのことだかわからなかった(笑)。
ニコ ギターは常に僕たちとともにあるだろう。“ギターはもういい!”って言うバンドが多いけど、僕たちはギターが大好きなんだよね。(日本語で)ギターガダイスキデス。
作品データ

『Something Worth Waiting For』
フリコ
ビッグ・ナッシング/ウルトラ・ヴァイヴ
ATO0709CDJ
2026年4月24日リリース
―Track List―
01. Guess
02. Still Around
03. Choo Choo
04. Alice
05. Certainty
06. Hot Air Balloon
07. Seven Degrees
08. Something Worth Waiting For
09. Dear Bicycle
10. Necessary(Bonus Track)
11. Dirty Diamond(Bonus Track)
―Guitarists―
ニコ・カペタン、コーガン・ロブ
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